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新・平家物語 第56話 義経の苦悩

2013年01月03日 | 平家物語

 源氏の大将軍義経は、西国から洛にはいり、またたくまに東国へ遠征し、また帰路についた。 彼は身も心も疲れきっている。もともと、平家追討を思いのほか早くに成し遂げ、犠牲者も少なく、三種の神器のうちの二つを持ち帰ることができたのは、平家との和睦という裏工作を、平時忠親子と交わしていたからである。洛の院、公卿は時忠本人からも漏れなく聞いており、そのかわりあまたなる平家の公達、女房達への寛大な処置についても寛容な姿勢を見せていた。しかし、先の平宗盛親子の斬首という頼朝の命には義経も胸を痛めていた。それだけではない、義経の洛での所業についての捏造がことごとく頼朝に告げられていた。堀川邸に戻っても、義経は正室の百合野のもとに向かうことはなかった。静のもとで衣を着替え、湯殿にはいるのである。静は、いままで正室の百合野とともに主・義経の無事を祈って待っていただけに、百合野という頼朝が使わした生贄が憐れで仕方が無いのである。静の申し出も疎い、百合野に会おうとはしない。百合野には、鎌倉からの使いが大勢いる。乳母をはじめ身の回りの何十人が全員、義経の動きを見張り、鎌倉へその仔細を報告している。この監視の中では百合野のもとで休める気にはとてもならなかったのである。一方、平時忠と讃岐殿 時実は師の局とともに幽閉され、鎌倉の手前厳戒の中に監視されていたが、義経の部下が番の武者であったため、その出入りは自由であった。時実の弟右大弁時宗や、叔父の宰相時光などの近親者が常に訪ねてきている。時忠の娘・夕花の姫は弟・親宗にあずけられていたが、親子が揃った今は、もはやこの舘を離れようとはしなかった。この大きな舘はかつて時忠の妹・建春門院が後白河に寵愛を受けたころに住んでいた館である。そして夕花の姫は義経の側室になることに決まっていた。恐らく時忠は娘の今後を案じて、義経に託そうとしたのであろう。また夕花は、義経が捕虜となり時忠の舘を一人参じたときに密かに裏口から逃がしたこともあった。およそ7年ほど前のことである。まだ平家が全盛であった頃、熊野や堅田の海族が平家に捕われたことがあった。そのときに義経は郎党を解放する条件で、ひとり捕虜の身となり時忠の舘を訪れたのである。もちろん平家の荒公達であった能登盛・教経などは義経を許すはずもなく、討ち取ろうとしたが、時忠の娘・夕花の姫は義経に被を持たせ、闇夜に紛れて裏口から五条の橋方面へ逃がしたのである。義経をすいていたことは事実だろう。いまや頼朝からは平家の諸領24箇所も取り上げられ、勘当同然の身になり、義経を想い慕う夕花の悲しみは大きかった。

 そしてあるとき、元々平家方であったあの四国の桜間の介能遠が平時忠に迫った。武者として義経と交わした時忠との密約のことである。桜間の介としては、密約があったからこそ、兄をも源氏方へ寝返らせ勝利に導いたわけである。密約を守るべく行動を起こそうとしない義経に苛立ちを覚えていた。兄への面目もたたないからである。そして、時忠幽閉のこの舘に集まり、義経の真意を問うこととなった。そうしたとき、何故か鎌倉の頼朝から義経を伊予守に任命するという破格な沙汰が下される。いままでの冷たい待遇からは考えられないことである。勘当同然に「義経の命を聞くに及ばず」 と沙汰しておきながら腑に落ちない除目である。とはいえ、伊予には鎌倉直参の地頭職がおり、義経に租税が上がらない仕組みとなっており、謹慎を理由に義経が辞するであろうと考えていた頼朝にとっては、義経があっさり受け入れたことで鎌倉への反抗的な態度とみたのかもしれない。この頃、義経は時忠の娘・夕花を側室に迎え入れている。時忠一族や桜間の介能遠、源行家などの内輪のみの祝言は、実質上は顔ぞろいが目的であったようである。もちろん頼朝の逆鱗に触れたことは云うまでもない。義経の正妻 河越百合野の輿入れに世話をやいた政子の心証も悪くした。こうして将来の災いを摘んでおこうという頼朝の決意は固まるのである。

 京都・今出川に首途八幡宮がある。この地は奥州平泉まで牛若丸に付き添った金売吉次の屋敷跡と伝えられている。1174年、鞍馬寺に預けられていた牛若丸は平氏からの難を避けるため、鞍馬寺を出て奥州平泉の藤原秀衡を頼ることになる。この首途の手配をしたのが奥州の商人・金売吉次である。首途とは「出発」の意味であることから「首途八幡宮」と呼ばれるようになったという。あれから7年、窮地にある義経は再びここを訪れたに違いない。

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