プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 池上永一「トロイメライ」

2021年06月30日 | ◇読んだ本の感想。
やあ、久しぶり、池上永一。

池上永一は10年以上前に出会い、その頃まで出ていた本は全部読んだ。
いわゆる「ツブした」状態。ツブした後は課題図書リストの最後尾に回し、
そして今回2周目としてまた巡り合った。約12年ぶりですか。
その最初の作品が「トロイメライ」。

面白かったです。めでたし。
久しぶりに読むのが、琉球歴史物だったのはうれしかったなー。
この人、物によってはしっちゃかめっちゃかだからね。それもキライではないが。


まあ感じとしては江戸時代後半だろうか。
商都・那覇の下町で起こる事件。それを追う築佐事(岡っ引き)の武太。
彼を取り巻く人々。の話。

捕物帳は時代小説の一大ジャンルだが、舞台はおしなべて江戸。
それを那覇でやるのが新機軸。
が、単に舞台を那覇に移しただけではなく、池上永一本人が沖縄の人であることを
活かして、王朝琉球の香りをちゃんと漂わせるものとなっている。

江戸物と比べてほわほわしているんですよね。南国的な空気。
もともとはマジックリアリズム的作風だから、単に南国的なのではない、
ファンタジーな雰囲気もある。

でもこの人、かなり沖縄のこと勉強して書いてるんだと思いますよー。
今回の、高札の文章は多分古文書から引っ張ってきたもんなんだと思ってます。
出来ればそれに口語訳をつけて欲しいところでしたが……。
大雑把な意味は小説の中に書いてあるんだけれど、口語訳も欲しいじゃないですか。

沖縄の風物が楽しめる。主に料理。知らないことがいっぱいあって、
蘊蓄というほど堅苦しくなく、面白く読める。

久々に再会した池上永一が相変わらず面白い小説を書いていてくれてうれしいよ。
続編もあるようなので、読むのが楽しみ。



これさー。ドラマにしたらいいよねえ。
1冊で短編6つだから、NHKの短い連ドラにぴったりじゃん。
まあ長虹堤のセットは金もかかれば時間もかかるが。
でも「テンペスト」を作ったNHKじゃないですか。
1話50分くらいで。よろしくお願いします。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« < ライジング若冲 天才か... | トップ | ◇ 北村薫「鷺と雪」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

◇読んだ本の感想。」カテゴリの最新記事