プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< ザ・マジックアワー >

2008年06月23日 | ☆映画館で見た映画。
いや、無理ですから絶対に!!

もー、始まって半分くらいまでは画面を正視出来なかった。
わたしは爆弾がいつ爆発するかという類のハラハラと、主人公が恥ずかしい行動をするハラハラが
ものすごく苦手なんだ!!前回の「THE有頂天ホテル」は後者だったが……
今回は思いっきり前者。この作品の設定ではバレることがわかりきってるやないか!

バレるまでは目を閉じるシーンがあまりにも多く……
「なぜわたしはお金を払ってまで、ここで目をつぶっているのか」ふと疑問に思う刹那。
なので、コンクリシーンからようやくちゃんと見たと言っても過言ではない(?)。
三谷監督、お願いですからもう少しわたしが正視出来る設定で作って下さい。


名作たる要件が、しっかりした幹があり、バランスのいい枝葉がついているというような
ストーリー展開にあるとしたら、この作品は名作にはなり得ない。
トランプのお城。危ういバランスで成り立っている。
が、このバランスをよく作り上げたよ。……この場合のバランスは調和という意味ではなくて、
かろうじて形を保っているという意味のバランス。アクロバティック。三谷監督らしいね。

今回は舞台臭がなかった。あらどうしたんでしょ、と思うほど。
今までは、「笑いの大学」にしても「THE有頂天ホテル」にしてもバリバリ舞台っぽくて。
まーしょーがないよねー、三谷幸喜だしーという部分がないではなかった。
舞台と映画。似て非なるものだけに、かえって切り替えは難しかったと思う。
ようやくカメラワークに慣れたのかね。良かったねえ、三谷さん。


やっぱりこの人の書くものは、転がるシチュエーション勝負。
(と言っても、振り返ってみれば、「古畑任三郎」とか「王様のレストラン」なんかは
まだ話に幹があるんだよなー。これを、話の基幹部を作る能力がなくなったとは
思いたくないんだが……。プロデューサーの好みじゃなく、本人が好きなものを
作れるようになったんだ、と好意的に解釈しておく。)
一人一人がトランブの切り札。まるで手裏剣のように、一瞬鋭くひらめく。
そう考えると、寺島進の部屋に作りかけのトランプのお城があったことが何とも暗示的。
(……でもなんであそこにトランプの城が……)

※※※※※※※※※※※※

役者がこれでもか、と出てくるところは「THE有頂天ホテル」と同じだけど、
前回より断然使い方が上品になっていた。前回は、使わなきゃソンという感じで
なりふり構わなかった気がするが、今回は多少渋い。
カメオ出演(というのか?)の皆様で、いい使い方&演技だと思ったのは
山本耕史・天海祐希・鈴木京香。
見ていて気付かなかったのは、寺脇康文と梶原善、谷原章介、堀部圭亮。だって顔違うやん。
市川亀治郎の使い方は少々お遊びが過ぎる……が、面白かったけどね。

柳澤慎一の使い方に味があったなー。このキャスティングはしみじみ良い。絶妙。
この人をここに据えたことで、マジック・アワーの言葉の重みが10倍くらいになる。
ここにもっと大御所を持ってきてみい、途端に嘘くさくなるで。


主要登場人物だけでも、とってもいっぱいいるんですけど……。

佐藤浩市は、わたしの好みからすると、主役でずーっと見ているには濃すぎる顔なのだが……
この年になって、少々崩れて(失礼)来ましたね。そこが良かったね。
多分ギラギラしていた10年前には出来ない役だったろう。
加齢による役得。役者にとっては大事な財産だよ。加齢で失っていくタレントも大勢いますからね。

個人的にはあまり好きじゃない深津絵里も、この役は面白く見られた。
アテ書きの良さが出ていた。いかにも、じゃない役を逆手にとっている。
これで綾瀬はるかのような役なんかやったら鼻につきますよー。

妻夫木聡は、実はあまり眼中にない役者で、今回も可不可なくといったイメージ。
が、元来アイドル路線にどっぷりという立場であっておかしくないのに、
自分を役者として持ってきていることは好印象。
「約三十の嘘」はあまり面白い映画とは思わなかったが、妻夫木が役者をしているのが印象的だった。
可もなく不可もなくということは、邪魔にもなっていないということだから、
意外にいいことなのかもしれない。

西田敏行は、すごくいい役者だと思うんだけど……
好きなんだけど、やっぱりシリアスな役をするのは無理があるかなあ。
コメディが染みつき過ぎていて。どう演技をしても、薄皮一枚の下に喜劇性が感じられるというか。
しかもこの作品はコメディで、その中のシリアスな役でしょ。難しいよ。
ベストなキャスティングではなかったかもしれない。
三谷幸喜と西田敏行は、役者としてとか脚本家としての力量というより、相性という点で、
実は合わない。いかにも合いそうに見えるからこそ、上手く微調整が出来ないというように見える。

似たような意味で、今回の戸田恵子も多少不満だ。
女優としてはすごく好きなんだけど、今回はちょっとツキ過ぎたかも。
彼女にとってはこの役は挑戦じゃなかったよね。
手のうちの役どころという感じで「おっ」と思わせるものがないかな。役柄としては面白いのだが。
わたしは悪ノリして「部屋からフロントに出てくる画面切り替えの時も髪型変えれば面白いのに」
と思ったりしていた。少し悪ふざけが過ぎるか。

小日向さんはいつでもいい味でいい位置にいるなあ。
「何のかんの言っても、俺が村田大樹の一番のファンだからさ」という台詞には、
こんな全編これコメディという作品にも関わらず、泣かされましたよ。少しくやしい。
この人は特に意外性がなくてもいい。まあ、意外性でいうと……あのアヤシイ海賊ファッションかいな。
でもあんな衣装を着てても、小日向さんは普通に小日向さんだよなあ。

綾瀬はるかが意外にまとも。わたしは彼女のイメージでは、数年前の「八犬伝」の
トンデモ衣装と大根演技が染みついていて……成長期なんだから、あまり固定観念で見ちゃ
かわいそうですな。番宣ではもっとスゴイ役どころに見えていたので、作品中では
想像よりスゴくなかった。マジメの度が過ぎての暴走がもう少し見たかった気がする。

伊吹吾郎はまさに「動じない男」。っていうか、あの動じなさはオカシイぞ。
おかしいからいいんだけどさ。彼も時代劇の色がついて、あまり器用じゃないイメージも
あるんだけど、バーテンダーの衣装もガス会社検査員の衣装も、全部似合っていた。

香川照之。うーん、可もなく不可もなく。香川照之ならもうちょっと出来たんじゃないか?
もっと毒々しくても良かったかもしれない。もっとクドく。憎たらしさ度が足りない。


でねー、今回個人的に演技大賞をあげたいのは!
寺島進が良かったと思うんですよ!前回の役どころではあまりのクドさに辟易したが、
ああいう渋い演技も出来るんですねえ。さすが役者。
多分、素はかなりクドい人だろうが……かなり見直した。
控えめさが魅力的だった。最後まで崩れなかった。

※※※※※※※※※※※※

今回の美術も良かったね。
あのセット、すごく好き。すごく好み。ホテル・アバンティも好きだったけど、
今回の作りもの感アリアリのセット、いいねー。ようやったなあ。
……ただ、キャストが初めの方で言う、「まるで映画のセットの中で暮らしているみたい」
という台詞には白けたぞ。メタは嫌いなんだってば。

街角はハウステンボス。俯瞰は長崎。だよね?

ところで、「スカゴ」はわかるとして、「テシオ」と「エボラ」はどこから来ているんでしょうか。
元ネタが絶対あるはずなのに、わからないよう。「ウエストサイドストーリー」じゃないしな……


ま、三谷さんも本作大ヒットが決まったことですし、今後はしばらく休んで下さい。宣伝活動を。
わたしは三谷幸喜が好きだけど、今回の番宣はやりすぎだと思った。
次回は節度ある番宣を。よろしくお願いします。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« < 相棒 劇場版 絶体絶命4... | トップ | ◇ 嬉しい!! »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

☆映画館で見た映画。」カテゴリの最新記事