プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 辻由美「炎の女 シャトレ侯爵夫人」

2023年05月23日 | ◇読んだ本の感想。
辻由美は翻訳家、ノンフィクション作家。
1年ほど前に出会って面白かったので、著作はほぼ全部ツブしている。
最初に読んだのが「翻訳史のプロムナード」、これで名前を知ってから、
シャトレ侯爵夫人のことは気になっていた。

ニュートンの学説をラテン語からフランス語に訳した人だそうなんですよ。
18世紀前半の人。自らも科学者・数学者で、女性科学者の魁という立場の人らしい。

科学書を訳すのは相当に難しい。
内容を理解していなければ訳せないわけでしょう。
それを理解できる素養を持ち。その上でラテン語とフランス語に習熟し。
あらゆる翻訳の中で、最もハードルが高いものの一つ。

研究者として、翻訳よりも自分の研究を優先させたくはならなかっただろうか。
翻訳と研究、どちらにも等しい価値を置けたということなのだろうか。
なんにせよ「伝える」ことに重きをおいて、それを実現させてくれたのは有難い。
言語は結局のところは壁であり、思想の交流は言語以外では実現出来ないのだから。

――しかしそんな超弩級の才女が、ファッションセンスに恵まれず、賭け事にのめりこみ、
恋愛においても駆け引きが出来ずに相手に退かれてばっかりというのは
かなり意外だった。

アニメでよくあるように、恋愛、ファッションに奥手なガリ勉少女というイメージでは
ないんですよ。少女の頃から父親の影響で社交生活は充実していたし、
そこまで美人ではなかったそうだが、魅力的で人当たりのいい陽キャらしい。

が、ファッションはごてごてと飾り過ぎ、洗練された趣味とは言い難く、
恋愛においては遊びの恋愛は出来ずにあまりに押しすぎるので、
相手の男が及び腰になり逃げだすパターンらしい。
……そういうところには頭が働かないもんかね?引っ込み思案とかなら
わからないではないが、社交大好き人間だったらしいし。

そして、この人の恋人だったのがヴォルテール。
名前は何度も聞くが、納まり返った名言ばっかりが出て来るので、
生身の人間としてはまったくイメージがない。
が、この本を読んでヴォルテールについても知りたくなったよ。
ある意味で恋多き女だったシャトレ侯爵夫人を、辛抱強く愛し続けた人だったらしいから。
とはいえ、何十年か経ってから、ヴォルテールにも愛人が出来て、
シャトレ侯爵夫人は傷心の日々を送ることになるらしいけど。


そんなに詳しくがっつり書き込んでいる著作ではないけど、
シャトレ侯爵夫人についての本は貴重だし、なにより辻由美の本はサクサクと
読みやすいですからね。気に入っています。
最初は著作だけつぶすつもりだったが、翻訳書も読んでみようかなあと思い始めた。
何冊かは読んでみようと思う。




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