プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ メアリー・マッカーシー「グループ」

2016年09月02日 | ◇読んだ本の感想。
アメリカ文学最短コース遍歴中。
しかしここ数冊、借りて読み始めても“これは読めない”と感じた作品が続いていた。
本当ならばその読めなかった本のタイトルこそが重要な気がするが、控えておかなかったのでもはや不明。
あかん。


この本を読んでいる間中、松任谷由実のはるか昔の曲「ガールフレンド」「続・ガールフレンド」が脳内リピートしていた。

しかしそんなにカワイイ話じゃないけどね、歌と違って。
女子大の生活の中で徒党を組んでいた女の子たちの卒業後の境遇を順番に追っていった作品。
相変わらず、読んでいても8人の登場人物が覚えられなかったワタシだが(^^;)
その場その場で読んでもそんなにモンダイない感じ。そりゃもちろん覚えられるに越したことはないですが。

アメリカ初期だからなあ。まだ“女性としての人生”しか選べなかった時代に(そして次の時代の気配が感じられる時代に)
書かれた作品。……と思ってみてみると1954年が最初の部分の出版で。
えー。60年前ですか。もっとだいぶ前の作品のような気がする。

小説の中で、各女性たちの生まれ育ちの部分が大きく扱われているせいかもしれない。
出身。金持ちが中産階級か(作者が1933年卒業。その時代の大学を卒業した人たちの話なので貧乏人はいない)、
両親は何をしている人か、田舎か都会か、という部分がデータとして示され、
その部分が――小説的にドラマティックというわけでもないが、
人格形成に当然大きな影響を与えているという前提になっている。

最近、あまり見かけないかもね。もちろん幼少期の境遇が人格形成に影響を与えないわけがないのだが、
今は“出身”というとらえ方はあまりしないような気がする。まあ日本の現代小説においては。
“家庭環境”を扱う小説は多いと思うけど。“出身”とは違う気がする。

もっとも日本で“出身”はそもそもあまり書かれなかったかもしれないね。
明治~昭和期の文学作品では、自分が貧乏なことや寒村の出身であることを押し出している作品もあった気がするが。
士農工商の階級意識は明治時代半ばくらいまでは厳然と残ったと思うけど、その後はむしろ出来る限り早く
霧消する方向に流れたか。
一億総中流、なんて言葉もあったくらいだから。

作者のメアリー・マッカーシー。
実はこれを読んで、わたしはこの作品しか残さなかった一発屋(というと語弊があるけれども)だったんじゃないかと思った。
「アラバマ物語」のハーパー・リーのように。
別に生硬とかいうんじゃないんだけれど、淡々と状況を描く小説で、8人を順番に書いて行く手法に、
技術を感じなかったせいかもしれない。素人っぽい話の作りだと思ったのかも。

そしたらがっつり作家・批評家活動をした人のようで、けっこう意外だった。
作家自身もヴァッサー女子大(本訳ではバッサー)卒で、自伝とまではいかなくても周辺に取材した題材であろうので、
生涯に一作品、という作品かと思ってた。
長くて細かい話。まあがんばって読みました。

ただ8人もいると、それぞれの人に思いいれは生じなかったかな……。
そもそもキャラクターも覚えられなかったくらいだし。
4人くらいまでしぼってもっと細かく書いた方が、とも思うが、それで好きな作品になったかというとならなかっただろう。


読んだ、という作品。



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