It's a Book
今日ご紹介する絵本は「これは本(It's a Book)」。このところ、ニューヨーク・タイムズの子どもの本部門のベストセラーになっています。
21世紀も最初の10年が過ぎ、今や赤ちゃんが最初に触れるメディアは、絵本ではなくてテレビ?、コンピュータ?、携帯端末?、あるいは携帯電話? いずれにしても、赤ちゃんをとりまく環境も完全にマルチメディアの時代です。インターネットは使えるけど・・・本は見たことがない・・・、そんな子どもがいても全然不思議ではない時代になってしまいました。こんな時代に、絵本は?本は?いったいどうなるの?
大きい子が本を読んでいます。
向かい側で小さい子がノートパソコンを膝に乗せています。
小さい子が聞きます。
「それ、何?」
大きい子が答えます。
「本だよ」
「どうやってスクロールするの?」
「スクロールはしないよ。ページをめくるんだ」
「ブログできる?」
「できない。これ、本だもん」
「マウスはどこにあるの?」
「・・・・」
「キャラクタ―を対戦させられる?」
「ううん。本だもん」
「テキストできる?」
「ううん」
「tweetは?
「ううん」
「WiFiは?」
「ううん」
「音、出せる?」
「ううん」
大きい子は呆れて叫びます。
「これは本なんだよ!」
「・・・」
「見てごらんよ!」
「・・・」
本を見た小さい子が言います。
「字が多すぎ!もっと簡単にしてあげる!」
「・・・」
「ところで・・・本って、ほかに何ができるの?」
「・・・」
大きい子の本を取り上げた小さい子は
「パスワード要る?」
「ううん」
「スクリーンネームは?」
「ううん」
と聞くや、とりあげた本を読みはじめました・・・さて・・・?
結末は読んでのお楽しみです。
この結末には、同感される方も、されない方もいらっしゃることと思いますが、ともあれ、絵本"It's A Book"の世界は『すでに起こっている未来』だと言うことは実感されます。少なからぬ子どもにとっては、すでに実体験かもしれません。その意味で、これを読む必要があるのは「インタネット前」世代に属する大人なのかもしれません。ですから、子どもさんにというよりも、親ごさんに是非ご一読をおすすめしたい絵本です。