If You Sailed on Mayflower in 1620
もうすぐサンクスギビング。アメリカの子どもたちにとっては、信仰を抱いてはるばる未開の地にわたってきたピルグリム(清教徒)たちのことを、心新たに学ぶ時です。初めてのサンクスギビングの逸話は比較的よく知られています。昨年このブログでもご紹介しましたが、この逸話をめぐって書かれたお話は、いくつもの絵本になっています。
またピルグリムたちが乗ってきた船、「メイフラワー号」の名前もよく知られています。でも1620年にメイフラワー号に乗ってきた人々の航海が、実際にはどのようなものであったのか?については、ほとんど知られていません。娘のボーイフレンドはアメリカ史を専攻しているのですが、彼に聞いてみたところ、やっぱり「そんなことまでは知らなかった‥‥」とのこと。
"If you sailed on Mayflower in 1620"(もしも1620年にメイフラワー号に乗っていたら)は、そんな歴史学徒も知らないアメリカ史の細部を、子どもの興味関心に沿って、子どもにも理解できる英語で生き生きと描き出した絵本です。4ー8歳対象となっていますが、とんでもない!書かれている史実はたいていの大人も知らない(‥‥どころか、考えてもみたことがない)ことばかり。ですから、読み聞かせる大人も一緒に夢中になって楽しめること請け合いのサンクスギビング蘊蓄絵本です。
作者のアン・マクガバン(Ann MacGavern)は全編をQ&Aで書きました。これが案外子どもに喜ばれ、夢中にさせています。
たとえば「船の中ではみんな何を食べてたの?」というような平凡だけれど読み聞かせる大人にも答えられないような質問や、「子どもたちは何してたの?何して遊んでいたの?」という、いかにも子どもらしい質問もあれば、「乗っていた人はお互いに友達だったの?」「船の中には薬はあったの?」などの、そう言われれば‥‥と大人も真剣に考えこんでしまいそうな問いまであります。
「メイフラワー号の中ではお風呂はどうしていたの?」の問いへの答えは「船にはお風呂がありませんでした。毎日来る日も来る日も同じ服を着て過ごし、毎晩毎晩同じ服を着て寝ていました。66日間ずっとです‥‥」
歴史を身近にし、「"事実"を知るのは面白い」と子どもにも実感こめて理解させることができるのは、きっとこういう絵本ではないでしょうか。歴史に限らず、いわゆる子どもむけの"物語"ではない、ノンフィクショの読書にいざなうきっかけとしても、すぐれものです。