Twas the Night Before Thanksgiving
サンクスギビングの前日、子どもたちは農場に遠足に行きました。サンクスギビングにちなんで、七面鳥(Turkey)について勉強するためです。農場には太ったかわいい七面鳥がたくさんいました。子どもたちは七面鳥を追っかけます!子どもたちは七面鳥をギュッと抱きしめます!子どもたちの楽しそうな顔ったら!
そのうち農場の隅に大きな斧が置いてあるのを発見しました。農場主のナゲットさんに「あの斧は何に使うの?」と無邪気にたずねたところ‥‥。
そこからは、さぁ!子どもたちの七面鳥救出作戦の始まりです!
そうなんです。この本はサンクスギビングを七面鳥の視点からみると‥‥の、ちょっとユニークな物語なのです。救出劇はどうなったかって?子どもたちが、とりすました顔で、突然まるまる太ってしまう場面が見ものです!七面鳥の羽がシャツの下からちょっとはみだしていて‥‥、読み聞かせのクラスでは大人気の場面です。
作・画ともダヴ・ピルキー(Dav Pilkey)。たくさんの絵本を書いているベテラン作家の作品です。リズム感あふれ、シンプルながらよくこなれたテキストと、生き生きしたイラストは相俟って子どもをしっかり惹きつけます。
アマゾンの読者レビューには、学校でこの本を読み聞かされてきたために、子どもがその後ターキーを食べなくなったという親御さんからの批判も載っていますが、先生や実際に読み聞かせた経験のあるお母さんたちは「これを読んだからといってターキーを食べなかった子は一人もいません」と書いています。それだけでなく、「そういう心配を押しても、なお読む価値のある面白くて、楽しめる作品」と声を揃えています。
余談ですが、うちの娘は小さい頃からサンクスギビングのターキーが嫌いだったので(この本のせいではありませんが、いまでもほとんど食べません)、よそのお宅にディナーにお呼ばれすると大変に困りました。
何日もかけて丹念に準備されたお手製のスタッフィングがぎっしり詰まった大きなターキーを焼いてご招待してくださるわけですから、さすがに誰も「ターキーは嫌いです」とは言えないのがサンクスギビング。お呼ばれの席では、隣で付け合わせのお芋やインゲンを食べている娘のお皿からささっとターキーをとっては私が手伝って食べていました。今となっては笑い話です。
さて、この本はべつに"肉食反対"の立場から書かれているわけではありません。作者のビルキー自身も菜食主義者だったわけではありませんし、物語にも主義主張を叫ぶような押しつけがましさも、深刻さも何もなく、十分にユーモラスで楽しく、子どもたちが十分に楽しめる無理のない展開で、ごく自然に読めてしまます。
でも、小さな子どものいる、菜食主義の親御さんからは熱烈に支持されている本だそうです。声高に肉食を批判するのではなく、逆に菜食主義を声高に主張するのでもなく、さりげなくわかりやすく面白く「私たちが食べているモノが、どこからどうやって来ているのか」を教えてくれる優れた本、というのが定説のようです。