お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

H1N1 -- 大混乱の予防接種事情

2009-11-16 | from Silicon Valley

Source: NBC News

例年より早い流行の兆しにワクチンの供給開始は間に合うのか?供給は需要に追い付くのか?とメディアでの報道も過熱気味だった新型インフルエンザ(H1N1 Flu)。アメリカではワクチンの接種は大統領府による「行政主導」で「子ども優先」と報じられてきました。(本ブログ「いつだって子ども優先」)。

ところが、実際にワクチンが市場に出回り始めてみると、そこはアメリカ。どうも実態はニュース報道とは大きく違っているようです。

まずは親たち。10月下旬に行われたメディアの世論調査に10人中4人の親が「自分の子どもには予防接種を受けさせない」と回答し、議論を喚起しました。接種をためらう理由は「副作用が心配」「商品テストが不十分」など誰もが抱く当然の懸念ですが、「行政主導で子ども優先」を叫ぶ大統領府の決定を敢然と無視するかのような親の反応は、行政決定がすぐに学校での強制一斉接種に直結する日本とはかなり違います。

親たちの反応の根底にあるのは小児医療に対するアメリカの常識。従来から義務教育諸学校でもインフルエンザの予防接種が実施されてきた日本では想像しにくいのですが、米国では従来18歳未満の子どもにはインフルエンザの予防接種はしません。インフルエンザに限らず、米国では、見識あるファミリードクターは子どもに余分な注射や医薬品の投与はしない、というのが医療関係者にも親たちにも常識(もちろん法定予防接種は別です)。日本とは違い、抗生物質の”予防的”な投与なども子どもにはまず行われません。

テレビでは今日も子どもへワクチン投与の映像が繰り返し報道されていますが、子どもの優先順位がいかに高かったとしても、米国では、実際に予防接種を受けるかどうかはあくまでも親の判断。実際、子どもたちがどのくらい予防接種を受けるか?動向が注目されるところです。

ワクチンの供給状況も州により、地域により大きく異なっているようで、実態が見えず、よくわかりません。筆者の住む北カリフォルニアのサンタクララ郡では、医療関係者への接種分にも足りない程度のワクチンしか確保できていないと報道されており、第一弾の入荷はわずか8,000。追加20,000を確保したなどと報じられても、実際には周囲のだれも予防接種を受けていません。かかりつけ医に問い合わせても「まだ到着していません。いつ来るかわかりません」との返事。それだけでなく「到着しても呼吸器疾患のある方が優先ですから‥‥」と、何度も電話で状況を問い合わせてばかりいる私に、やんわりとクギをさされました。9月早々から従来型インフルエンザの予防接種を実施してきた薬局チェーン Walgreen'sにも新型ワクチンは届いていません。

ところが、すぐ隣のカウンティに住む友人から「(HMOの)カイザー病院は潤沢にワクチンを確保していますよ。僕の友人の子どもはもう済ませましたよ」との情報。が、彼とは別の職場に勤めていて、彼と同じカイザーの保険に入っている友人は「そんなこと全然聞いてないわよ」とけげんそう。カイザーに問い合わせてみましたが、加入メンバー以外には情報提供していない由、はっきりした回答が得られません。

ネットを検索していたら、コロラド州デンバー郊外に住むレポーターが、近所の学校の体育館で実施された予防接種(先着順)に子どもを連れて行き、のろのろとしか進まない長蛇の列に朝9時から並び、午後1時半すぎにやっと予防接種を終えるまでの4時間超の体験を綴ったドキュメンタリー風ブログがありました。
興味深いのは、記事の最後に出てくる彼女の兄弟の逸話。アリゾナ州フェニックスではWalgreen'sで簡単に予防接種が受けられる由。長蛇の列に並ぶどころか、わずか2分しかかからなかったというくだりです。

アメリカの医療が市場原理にゆだねられており、しかも州ごとに異なる法律で規定されていることをつくづく実感させられるのはこういう時です。連邦政府が製造から供給までを完全に統制すると宣言した新型インフルエンザの予防接種でさえもこの有様。オバマ大統領が取り組んでいる医療改革がいかに大変なことか、ご想像ください。




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