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海猫日和

色々と思うこと,見たことについてとりあえず気の赴くままに書いてみる.

発掘

2010-03-02 | memento_mori
さる所から情報をいただいたので,シャチの骨格発掘のお手伝いに行ってきた.

2005年に羅臼で氷に閉じこめられた個体のうち,2頭が埋められていたのだとか.ちなみに他の個体の骨格は道内各地の博物館や大学に保管や展示されている.それ以外の内臓や筋肉や様々なサンプルは,今も各地で研究が行われていたり,保管されていたりする.その辺の細かい話はこのブログでは割愛する.

今回の骨格は,北海道開拓記念館と石狩市教育委員会が引き取ったものだそうである.

以前に某教授が引き取ってきた個体の標本づくりを少し手伝った事もあり,また少々現実逃避がしたかった事もあって,自重せずに行ってしまったという次第.

そんなわけで,私にとってシャチの骨格標本に関わるのは,今回で一応2個体目と3個体目ということになる.

浜の一角に埋めたとの事で,重機で表層を剥がし,その後は人力で掘り進める.

3月になったと言えど,未だに冷え込みはきつく,ついでに海辺なので吹きさらしである.表層の土はかなり分厚く凍っており、重機でもなかなか崩せない.晴れた上に風も殆ど無かったから良いようなもので,これで吹雪いてでもいたのなら,満足に作業できなかっただろう.

最初は肋骨の一部が見つかり,そこから周辺を探って椎骨,腕と探していく.最後に頭である.幼獣の方は,1個体分を掘り終えてから改めて探していく.5年も経つからか,少々海獣らしい臭いはするものの,気になるほどではなかった.寒いためハエもわかず,コガネムシ系の幼虫が見つかったくらいである.よくもまあ,こんな場所にいたものだ.

指の一部など見つからなかった部位もあったが,開始して6時間ほどで大体の作業が終了した.この後,持ち帰った各地で洗浄や並べ替えなど様々な作業は残っているはずだが,現地でできるのはここまでである.

そんなわけで,貴重な経験になったのだった.

写真は後ほど整理できたら貼ります.

様々なる意匠(7) *グロ注意

2009-12-29 | memento_mori
何となく哺乳類シリーズを続けてみる.

今回はちょっと画像がアレなので,苦手な方はスルーを推奨する.

























今回はキツネである.

なぜこんな状態かと云うと,キタキツネだからである.キタキツネの死体が持ち込まれた場合,問答無用で腹を少し開き,ホルマリンにドボンするのが決まりである.

ホルマリンに漬けるとDNA研究用に使えないとか,硬くなるので解剖しづらいとか,そもそも臭いとか色々問題があるのだが,エキノコックスの防除のためなので,仕方ない.

この画像のキツネはしばらくホルマリン槽に漬けておいたものを,1日水洗いしたものである.そうでもしないと刺激臭が強すぎてとてもではないが処理できない.

これを解剖したと云う話.




皮をはいだ後の頭.

臓器など必要部分を採集したら全身を適当にパーツに分け,洗濯ネットに入れてしばらく煮る.



冷凍のものより多少長めに煮る必要があり,さらにこの場合,あとで酵素処理は必須である.細かい部分が取れないからだ.



流し等を使い,肉を剥いでいく.今回は足先など細かい部分の肉は取らず,ある程度つながったままの状態にした.





一応の肉そぎが終わった全身骨格がこれである.酵素処理や漂白をこれから行うことで,割と綺麗な骨になるはず.

交通事故個体と思われたが,意外にも頭は砕けていなかった.もっとも肋骨は何本か砕けていて,肺には出血があったので,道路際で拾ったことと併せて死因はまず間違いないだろうけれども.

だいたいこれで半日作業である.

標本を作ると云うのは時間がかかるものだ.

それが教材として,資料として,様々に活用されることを祈ろう.また,心がけよう.

そんなある冬の日の事.

様々なる意匠(6)

2009-12-25 | memento_mori
頭以外の部位を作ることはあまりない.

手間がかかるからである.

バラの状態で作ることはするのだが,組み立てまで行うのは現状ではちと厳しい.個人的にはもう少し色々作りたいのだが,残念ながら立場上優先順位と云うモノがある.

まあ,それはわきに置いておくとして.

後輩が組み立てたいと云うので作ったものである.私が手伝ったのは半分くらい.








流石にコレが何なのかを訊くのは鬼畜すぎるので,種名はさっさとばらしておこう.

ゴマフアザラシPhoca largha Pallas, 1811の右足(ヒレ)である.

第1趾と第5趾が長く,第3趾が最も短いようである.第2趾が妙な方向を向いているが,これはもう少し全体が広がればあまり違和感はない.指をすぼめている状態になっているので,いまいち見てくれが悪いのである.

…………まあ,そこはあまり突っ込まないでほしい.

実のところ,指の可動範囲がそれなりに広いらしく,うまいことくっついてくれなかったのである.まあ,組み立てを工夫すればもう少しうまくいくのだろうけれども.

たまにはこういうモノを作るのも,悪くはない.

様々なる意匠(5)

2009-12-05 | memento_mori
何となくこのシリーズ.
今回は哺乳類の骨について.

初回からこんなのを出すのもどうかと思うのだが.……まあいい.




さて,何の頭でしょう.わかった方はコメント欄にどぞ.

ヌートリア Myocastor coypus (Molina, 1782)



ちょっと正面から.



下顎.
右側が切歯,真ん中の平らなのが臼歯.

草食で,犬歯は無い.



上顎を下から見た図.……あれ,臼歯が一本抜けとる.……まあいい.

特徴としては切歯が発達していることと,吻部が大きいこと.それから臼歯の形が挙げられる.

*スケール入れ忘れたけど,私の指が写っているので,何となく大きさはわかると思います.



歯は大別して切歯(I),犬歯(C),前臼歯(P),後臼歯(M)に分けられ,動物種によってそれぞれ本数が異なる.全体の本数を式に表すのだが,これを歯式という.

今回のヌートリアでは

(I)1/1+(C)0/0+(P)1/1+(M)3/3=20

と,表すことができる.


ちなみに,いわゆるネズミ類では前臼歯を欠くので

(I)1/1+(C)0/0+(P)0/0+(M)3/3=16

が基本である.



ヌートリアはげっ歯目ヌートリア科に属し,国内では毛皮用に飼育されていたものが逃げ出して定着したと言われる.主に中部や関西で報告が多いようである.この個体は確か広島から来たのだったか.水草を主に食べ,切り取るための鋭い切歯,そしてすりつぶすための平らな臼歯が発達したと云うことになろう.臼歯の形は同じ草食のハタネズミやヤチネズミのモノと似ている.


実はこの個体,約10年前,入学当初に私が初めて解剖したものなのである.皮を剥ぐのに夜中までかかったとか,後ろ足の指に水かきがあったとか,肝臓に肝毛細線虫(Calodium hepaticum)という寄生虫が居たとか,1年生にはなかなか刺激の強いものであった.今でも鮮烈に覚えている.そういえば最終的には先輩の卒論の材料になったのだった.

……感慨深いものである.


様々なる意匠(4)

2009-08-26 | memento_mori
さて,何となくこのシリーズ.

今回は,………………考えてなかった.

実際のところこんな記事書いたり骨を煮てる場合でもないのだが.

…………まあいい.そういう事もあろうて.

学会ポスター?
なにそれ.



……とりあえず,種子食の鳥でも並べてみよう.種名のわかった方はコメント欄にどぞ. 090831追記


1.アトリ Brambring F. montifringilla





2.ウソ Bullfinch Pyrrhula pyrrhula (Linnaeus,1758)




3.イスカ Common Crossbill Loxia curvirostra Linnaeus,1758




4.シメ Hawfinch C. coccothraustes








ひと括りに種子食と言っても,様々な形があるのがわかる.
嘴の太さや形が異なり,それはそれぞれの食性の違いに因るものである.生き物の形態は生態を反映するのだ.

尤も,厳密に種子しか食べないわけではないのだが.動物性蛋白質が必要であれば昆虫なども食べ,季節によっては雑食に近い.






…………しまった!
スケール入れ忘れた.

大きさはでかい奴で4,5cmだと思ってください.ちなみに全て同じ科の鳥.

在庫整理

2009-06-25 | memento_mori
色々と溜まっていたので,久々に色々ばらしたり開いたり煮たりむしったり並べたりしている.

そんなわけで例の如く写真を貼ってみる.いつも通りで,シャーペンは大きさの目安,台紙はB4である.

種名が分かった人はコメント欄にどぞ.
*090701種名追記


まずは小手調べ.


ハクセキレイ Pied Wagtail Motacilla alba Linnaeus, 1758

ちょっと難易度を上げてみる.


キバシリ Treecreeper Certhia familiaris Linnaeus, 1758

倍率ドン.さらに倍.



アトリ Brambling Fringilla montifringilla Linnaeus, 1758

はらたいらさんに3000点(古ッ!



コルリ Siberian Blue Robin Luscinia cyane (Pallas, 1776)



さて,とりあえずこのくらいで.

ナニ,写真が小さい?

うむ.まあ,そういうこともあるんだ.

ちなみに全てスズメ目で,珍しい鳥ではない.


其々の形、其々の在処(2)

2009-01-14 | memento_mori
2回目は,もう一つ大事な部分を取り上げてみる.

尾羽である.


キジ(コウライキジ) Ring-necked Peasant P. c. karpowi

風切羽同様に,枚数は種によって異なる.尾羽は主に速度の調整や,方向転換に用いられる.単に飛んでいるときは畳んでおり,そうすれば体型は流線形に保たれ,速度も落ちず邪魔にならない.進む方向をを変えるときには尻を振り,スムーズに方向転換をする.着地に際しては広げて面積を増すことにより抵抗を増し,ブレーキの役割になる.飛行に限ればこういう役割がある.鳥は翼だけで飛ぶのではなく,全身で飛ぶのである.


アカゲラ Great-spotted Woodpecker D. major

またキツツキ類では,中央部の数枚が特に固い軸を持ち,樹に垂直に止まる際に支えとして用いている.

他の役割としては,種によっては,尾羽の長さや左右のバランスがメスに対するアピールポイントになっているのではないかとする説がある.健康なことの証明であるとか色々言われているが,話がずれるので今回は割愛する.



尾羽周辺には,雨覆の代わりに上尾筒と下尾筒という羽がある.文字通り,尾羽の背面と覆面をカバーする.尾部には,背には尾脂腺,腹には総排泄口が位置するので,これらの羽にはそれらを覆う役割もある.腹や背を覆う羽よりは少し大きめのことが多い.

上尾筒

キジ(コウライキジ) Ring-necked Peasant P. c. karpowi


インドクジャク Common Peafowl Pavo cristatus Linnaeus,1758

上尾筒は,クジャクなどでは装飾として進化しており,求愛に用いられることもある.細かな繁殖戦略や行動についてはここでは触れない.


下尾筒

キジ(コウライキジ) Ring-necked Peasant P. c. karpowi

下尾筒は,あまり目立つ羽ではない.が,全身地味なのに下尾筒など目立たない部位にやけにきれいな模様があるということもたまにある.何でかはわからないが,つがい相手を選ぶ時に重視されるとか,生きていく上で何らかの利点があるのかもしれない.ちなみにチラリズムとか萌えとかそういう意味ってことでは・・・たぶんない(当たり前だ).

・・・お後がよろしくないようで.

様々なる意匠(3)

2009-01-13 | memento_mori
嘴シリーズの三回目.

さて,今回はどうしようか.



ウミウ Japanese Cormorant Phalacrocorax capillatus (Temminck & Schlegel, 1850)

魚食性.くちばしの先端は鉤状になり,魚を捕らえやすい.



ヤマシギ Woodcock Scolopax rusticola Linnaeus, 1758

泥や土の中を探るのに適した長いくちばし.付け根に耳孔がある.




ニワトリ(ウコッケイ)Chicken Gallus gallus domesticus Linnaeus, 1758

地面を掘ったり,地上のものをつまみ上げたりするのに適した嘴.ちなみに黒いのは仕様です.醸されているわけじゃありません.



コガモ Green-winged Teal Anas crecca Linnaeus, 1758

水面に浮いているものを濾すのに適した嘴.植物性中心の雑食.


・・・もう少し統一性があったほうが良いのかもしれない・・・.
(それより写真をもうちょいまともなものにしろよ)

其々の形,其々の在処(1)

2008-12-27 | memento_mori
今回から,色々な形の羽を取り上げてみよう.とりあえず翼を形成するパーツから.

羽と一口に言っても色々と形がある.主には羽軸をもち羽枝が揃ってしっかりした形の正羽と,羽軸がなく羽枝がばらばらの綿羽に大きく分けられる.主に正羽を扱っていくことにする.


ちなみに,このように中央部に走るのが羽軸と呼ばれる部分で,そこから羽枝が伸びる.


正羽の場合,羽枝は隣同士が互いにくっつき,一枚のように見える.
これを羽弁と云う.


実体顕微鏡による拡大図.羽枝からはさらに小羽枝と呼ばれる細かい枝が伸び,それぞれがかみあって面を作る.この構造があるからこそ,水を通さず,中に空気を保持することができる.したがって羽がしっかりと生え揃って手入れされていれば中の皮膚は濡れることがなく,寒さにも耐えうる.


前置きはこのくらいにするとして,まずは,飛ぶための羽.
風切羽と言われるものだ.


トビ Black Kite Milvus migrans (Boddaert, 1783)



上が初列風切,下が次列風切と呼ばれる.
羽軸の両側にしっかりと面ができている.これによって風を受け,飛ぶことができる.羽ばたくことにより,初列は主に推進力を,次列は揚力を生む.種によって枚数は違い,(例外はあるが)初列は9枚から12枚,次列は6枚から37枚と幅広い.三列風切という呼び方をする羽もあるが,種によっては装飾の役割が強い.また,次列風切の一部であるとする方が説としては有力である.

翼には風切羽だけではなく,他の羽もある.羽の根元は羽軸しかないわけだが,その部分は何枚もの羽が重なることにより覆われる.それを雨覆と呼ぶ.


初列雨覆


大雨覆


下雨覆

生えている部位や大きさによって名称は違うが,どれでも機能は基本的にかわらない.風切羽を覆い,翼の形を整えるための羽である.翼をなめらかな流線形に保ち,空気の流れをスムーズにするのだ.

もうひとつ,翼を形成する羽に,小翼羽というものがある.


小翼羽

第一指骨についている数枚の正羽を指す.主に離着陸時や低速飛行をする時にこれを広げ,急激な失速を防ぐのだという.小翼羽を広げることにより,翼との間に隙間ができ,ここを気流が流れることによって翼の周りの空気の流れを保つのだという.

このように,翼を形作る正羽には,大まかに風切羽,雨覆,小翼羽の3種類があるわけだ.

・・・つづく.

様々なる意匠(2)

2008-12-21 | memento_mori
くちばしシリーズ第2回.

どうまとめようかと迷ったが,何だか面倒なので単に並べてみるだけにする.種名は例の如くそのうち書きます.わかった方はコメント欄にどぞ.




アカゲラ Great-spotted Woodpecker D. major

太めで短く,尖った嘴.
樹に穴を穿ち,中に居る昆虫を食べるのに適している.






ダイサギ Great Egret Egretta alba (Linnaeus, 1758)

同様に尖った嘴だが,こちらは細長いタイプ.
水中の魚を捕えるのに向いている.昨日の記事に載せたカワセミもこのタイプ.獲物の魚を追い回すより,射程に入るまで待つ待ち伏せタイプの捕食を行う.






コノハズク Scops Owl Otus scops (Linnaeus, 1758)

先端が鉤状に曲がり,肉を裂くのに適した嘴.
小動物や昆虫(蛾やバッタなど)を食べる.


そんなわけでまただらだらと続きます.