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海猫日和

色々と思うこと,見たことについてとりあえず気の赴くままに書いてみる.

死物学入門(仮剥製編)

2008-01-23 | 大学
計測が終われば,いよいよ解剖に入っていくことになる.ここでは主に鳥の仮剥製を作る方法について書く.

では仮剥製というものについて少し.

例えばポーズをとったような,ちゃんと台に固定したり箱に入っていたりするような,そういうものは本剥製という.これは,手間もかかるし収納場所も必要となるのでお薦めしない.仮剥製というのは,主に研究,教育目的でよく作られるもので,鳥や哺乳類の皮を剥き,その皮に綿をつめてある程度形を整えたものである.

ちなみに仮剥製を作ろうと思う場合,比較的綺麗な個体であることが望ましい.乾燥や腐敗が進んでいたり,あまりに太っている個体はやめておいた方が無難である.このようなモノから綺麗に標本を作るのは難しい.

写真でも載せようかとも思ったが,色々考えた末にやめておくことにした.

使うモノ
鳥の死体,メス,ハサミ,ピンセット,脱脂綿,ティッシュ,消毒用エタノール,四ホウ酸ナトリウム(たぶんミョウバンでも可),針,糸など


1.まず皮膚を切る
鳥でも何でもだが,動物には正中線というものがある.体の中央部のことで,この部分には毛が生えていない.ここを切っていくのがもっとも手間がかからず,綺麗にできる.エタノールで少し湿らせると羽を除けることができ,正中が見える(ちゃんと浸みこませれば水でも可).正中に沿わせて皮膚を切る.ある程度切ったら,皮膚をひっぱりながらはがしていく.筋肉と皮膚の隙間を切るようにである.

ちなみに血を吐いたりしている場合は,口にティッシュか何かをつめておくと汚れないので良い.

2.皮を剥いでいく
叉骨の少し上くらいまで皮膚を切り,そこを足場に首を引っ張って出してみる.頭蓋骨と頚椎の間を切断する.この際,舌骨もつけて外してしまうといい.頭がでかい種の場合,ここまで出せないので,首の後ろの皮膚を少し切開し,首を切り離す.その後に首を引っ張りだすといい.

首を抜いたら,次は腕を外す.首を持ち,両腕を肘まで剝いてから関節で外す.肘関節まで剝けなければその手前で骨を切る.その後も背中から皮を剥いでいき,腰あたりまできたら今度は脚に取り掛かる.脚も同様にひざ下まで皮膚が剥ける.適当なところで骨を切るか,膝関節で切り離す.

最後は尻である.腰からさらに剝いていき,仙骨を過ぎると尾椎が触れるようになる.そのあたりで適当な尾椎の隙間から切っていく.次いで腹の筋,腹膜と一層ずつ切っていき,最終的に直腸だけ残るようにする.後は直腸を縛って切り離す.腹部の方の目安は,腸骨の先端を過ぎるあたりである.ああ,剥きすぎると尾羽が全部抜けてしまってみっともないことになるので,尾端骨のところまで剝いてはならない.かならずそれより前で切り離すように.

これで皮と肉が分離できた.皮の方になるべく肉や脂肪が残らないようにするのがコツである.ただ,無理にとると穴が開くことがあるので無理のない程度で.終わったら四ホウ酸ナトリウムを内側に軽くふっておく.

3.頭の処理
忘れてはならないのは頭である.頭蓋の後ろに窓のように穴をあけ,そこから脳を取り出す.ピンセットや綿,大型のものなら匙などで取るとよい.次に目玉.脳があったところから前方の骨を崩して取り出すか,無理そうなら外側からピンセットでつまんで引っ張り出す.このとき眼球を破らないように注意する.後は中に綿をつめて皮を元通りに戻す.綿を入れる前に四ホウ酸ナトリウムを少し入れておくこと.

この状態を,フラットスキンという.これも標本の一つの形だ.ただ,これだとちょと見てくれが悪い.

なので

4.これに綿をつめて腹を閉じる
縫い方に特に決まりはないが,縫い目が目立たぬのが望ましい.針も糸も別に普通のもので良い.一応私がやっているのは,連続縫合ではなく,一つずつ結んで切る方法である.結び目の間隔は鳥の種やサイズによって決める.だいたい広くて2cm,狭い時は1cm以下である.

腹の羽の模様に注意して,ずれないように縫っていく.片側の皮膚の内側から針を入れ,もう片方の内側に通して,それを結ぶ.結び目を作ったらそこで糸を切り,次の結び目を作る.

綿は最初に半分くらい入れておき,ある程度縫合が進んだら足していく.当然ながら,首,両腕,両脚には先に綿をつめておく.形を整えたければ割り箸などを切って軸にする.

ちなみに血がついたりして汚れが目立つ場合,縫合する前にエタノールで拭くか,こびりついているなら洗剤で部分的に洗う.脂肪が取れない場合も,たとえばジョイなどの洗剤で洗う.縫うのはその後である.

腹がふさがれば,完成.

あとは形を整えてしっかり乾燥させて,その後でケースにしまって防虫剤を入れるなどしておく.かびたり虫がわいたら悲しいからだ.

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1 コメント

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殺生戒 (獅子吼)
2018-03-02 07:13:48
生き物を自分の趣味や楽しみのために殺してはいけない
さもなくば、己は必ず地獄へ行くぞ  よく己の行いを改心し生き物を殺さぬように償いをせよ
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