海猫日和

色々と思うこと,見たことについてとりあえず気の赴くままに書いてみる.

固定

2010-07-02 | 蟲のはなし
色々な標本を作るために,固定と云う作業を行う.

主には,アルコールやホルマリンに漬けることが多い.
たんぱく質を変性させることにより,腐敗しなくなるためである.

その後で必要に応じて乾燥させたり透徹したりといった工程が加わり,観察や測定はそれから行う.

寄生虫については,主にエタノールで固定する.
組織切片を切りたい場合には,ホルマリンで固定する.

他にも固定液はあるので,分類群や必要に応じて選択することになる.

先日のミズダニ類は,持ち帰った後に何も考えず,通常通りエタノールに入れてガムクロラール液でマウントしてしまったが,どうやらこれはまずかったらしい.

ミズダニ類は通常の節足動物と異なり,正式にはグリセリン,氷酢酸と水で保管するのだとか.

今から入れ替えても大丈夫なのかどうか.
とりあえずやってみるとしよう.

まだいたのか

2008-10-11 | 蟲のはなし
ぼちぼち寒いので見なくなったと思っていたが.

某庵の前でセイヨウオオマルハナバチを捕獲した.





寒くなったので動きも鈍く,捕まえるのに苦労はしなかった.

ああ,何でわざわざ捕まえているかというと,これでも一応特定外来種に指定されていて,生態系への影響が大きいという話があるわけです(外来種についてはリンク先参照).まあ,こいつら自体が悪いわけじゃないが.

見分け方としては,ケツが白いというのが一番分かり易い.

それにしても,某庵の周辺でも見つかるようになるあたり,ここ数年で急激に増えているようだ.はっきりわかるほど影響が出るのはまだ先の事なのだろうが,身の回りの自然というものは,今も刻々と変わり続けているということなのだろう.

ヤキー

2008-06-08 | 蟲のはなし
エゾハルゼミがやたらと鳴く季節になった.

日が昇り,気温が上がってくれば,そこら中から蝉の声が聞こえてくる.蝉時雨とはこういうことを言うのだろう.セミと聞くと,夏の風物詩のようなイメージが強い.確かに暦の上では初夏になったと言って良いのだが.

NFPあたりでは,3種のセミが記録されている.エゾハルゼミ,エゾゼミ,コエゾゼミである.今ごろ鳴くのはエゾハルゼミ.残りの2種はもう少し後,8月くらいにならないと出てこない.ちなみに北海道全体では10種だか11種だかの記録があったはず.

アイヌ語ではセミは「ヤキー」と呼ばれたそうな.鳴き声からということで,確かにエゾハルゼミの声は言われてみれば得心がいく.さらには,ただ鳴いているのではなく,ユーカラを謡っているのだという.

周りの音がかき消されるため鳥類調査の最中にはあまりありがたくない存在なのだが,明確に季節を告げてくれる,そんな存在でもある.

森へお帰り

2008-05-10 | 蟲のはなし
寝ていて,どうにも頭の辺りでゴソゴソすると思っていたら.



こんな人がいたわけですよ(いや,厳密には人じゃないけどさ.

家の中ではあまりエサもなかろうし,知らないうちに潰してしまったらいやなので,窓から外に出してあげることにした.

ところで,このクモさんが誰なのかわかる方いらしたら教えて下さい.私は寄生しない虫には詳しくないので.

ちなみにアイヌ語だと蜘蛛は「ヤオシケプ」(網を編むもの)と呼ばれるとか.主にオニグモなどの,でかくてよく見かける種を指すとされる.こいつは小さいし,たぶん徘徊性で網を張らない奴だと思うので,厳密には違うんですが(その辺の区別があったかどうかは知らんけど).


そんなところに

2008-05-01 | 蟲のはなし


暖かくなったからか,アオダイショウが出てきていた.

去年も見た覚えがあるので,ここが住処なのだろうか.某庵はネズミもいるので,きっとこいつのエサになっているのだろう.

アイヌ語ではヘビのことを「シリカウンカムイ」(地面の上にいる神)と呼ばれる.または「タンネカムイ」(長い神)とも.

もっとも,見た状況によって吉凶の判断をしたらしく,例えば穴の中に入っていくものやカエルをくわえているものを見た場合は,穴から引きずり出したりカエルを放してやったりしないと魂が取られるという伝承があるそうな.一方で,春先の雪の上でヘビを見るとお金に恵まれるとか.

まあ,ヘビというのは色々と悪いイメージで捉えられていることも多いようだが.例えば聖書でも,知恵の実を取って食べるよう人間を唆したのはヘビということにされている.しかし,例えばギリシャ神話では,ヘビは死と再生のシンボルとされ,蛇遣い座になった名医アスクレピオスの杖にもなっている.他にヘビ関連というとウロボロス,ヨルムンガンド(北欧神話),ケツァルコアトル(アステカ,トルテカ文明)などは有名どころなので聞いたことのある人もいるかもしれない.

いずれにせよ農業などとの関係から太古より人間の近くにいた存在であると言えるだろう.近くにいれば,良いところも悪いところも見えるものだ.


春の使者

2008-03-20 | 蟲のはなし
と,聞くと,何を連想するだろう.人によって様々であろうが,とりあえず思い浮かぶものの一つがこれである.






















































ワラジムシ.

某庵にて昨晩発見した.こいつらが動き出すと,そろそろ暖かくなったのだと思う.まあ,夜間には気温がマイナスになりますが.

ところで,ワラジムシとは,甲殻綱ワラジムシ目ワラジムシ亜目ワラジムシ科に属する虫を指す.等脚類などとも言う.ダンゴムシやフナムシなどの親戚である.だいたいはワラジムシ亜目の虫を総称して呼ぶことが多いそうだ.ちなみにこの仲間,世界では1500種,日本でも100種以上は棲息するらしい.・・・そんなに種類があるとは知らなんだ.

虫ネタが続くなあ

2008-02-06 | 蟲のはなし
マリーンズは今年から石垣島で春季キャンプを行っているわけだが,何でも今年の石垣島は雨が続き,カタツムリが大発生しているという.

そんなわけで,そのアフリカマイマイと広東住血線虫について書いてみる.

アフリカマイマイというのは,その名の通りアフリカ原産の大型カタツムリで,でかいものでは重さ100gにもなり,一晩で50mは移動するという.普通のカタツムリのイメージからするとずいぶんと動くものだ.ちなみにえり好みをせずに何でも食べると言われ,農作物を食い荒らすので嫌われている.戦時中に陸軍によって食用として持ち込まれたそうだが,戦後復興が進むと結局食文化に合わなかったのか,あまり食べられないままに放置され,そのまま脱走して定着したということらしい.今のところ奄美諸島以南で定着しているといわれるが,近頃鹿児島などでも見つかっているという.

食性が幅広く,主に島に導入されたために,その島固有の植物にとっては脅威となっている.侵略的外来種ワースト100に指定されている所以である.

さらに言えば,広東住血線虫という線虫の媒介者となることが知られている.

こやつの場合,成虫がドブネズミなどの肺に寄生して卵を産み,ネズミの体外にはL1として出る.そのL1をカタツムリやカエルなどが食べたりして,その体内で成長する.そしてネズミがそれらを食べるという感染環が回っているわけだ.

人間には,この幼虫を持っているカエルやカタツムリ,ナメクジなどをナマや半ナマで食べたり,触った手を洗わずにものを食べたり,カタツムリが這った跡のある野菜などを生で食べたりすると感染する.感染すると好酸球性髄膜脳炎を引きおこし,死亡例もある.特効的な治療法はないので,対症療法しかない.

この線虫は日本でドブネズミやクマネズミに広く分布しているので,何も沖縄だけの問題ではない.だからってカタツムリやナメクジをむやみに恐れる必要はないが,手を洗うとか,野菜はよく洗うなり加熱するなりするとか,予防法はいくつかある.

まあ,要は素手でベタベタ触るなということと,触ったら手を洗えと.

そういう話です.







・・・ガキの頃はよくカタツムリを触って遊んでたモンですが.色々知ってくると怖いものがあるなあ・・・.

そんなわけねえ

2008-02-05 | 蟲のはなし
某庵の居間にこんなものがあった.



一瞬,



















「誰だこんな所にダニを置いたやつは」

などと思ってしまった.・・・だってキララマダニに見えたんだもの.


結局,しっかり見たら植物のタネか何かであることが判明したわけだが.











・・・そんなわけでキララマダニの話でもしよう(何で.

キララマダニとは,ダニ目(Acari)マダニ亜目(Ixodoidea)マダニ科(Ixodidae)に属する大型のダニである.属としてはAmblyommaという.まあ,学名はおいておくとして,日本ではタカサゴキララマダニ,カメキララマダニなどが知られている.キララマダニの名の通り,背中(背板という)にきれいな模様がある.ちなみに英名ではStar Tickと云うようだ.ちなみにマダニのような大きなダニをTick,ツツガムシなどの小さなダニをMiteと呼ぶ.

リンク先に写真あります.
熱帯感染症研究センター

タカサゴキララマダニは主に哺乳類に,カメキララマダニは名の通りカメなど爬虫類に寄生し,吸血する.長くて1ヶ月程度吸血するそうな.ちなみに飽血(平たく言えば満腹ということ)したメス成ダニは10円玉程度の大きさになる.

病原性に関しては不明だが,咬まれたところが赤くなったり腫れたりすることがある.咬まれた時は病院で取ってもらうのが無難である.自分で取ろうとするとだいたいダニの体を押してしまい,ダニの唾液が体に入ってしまう可能性があるからである.この唾液を介して何らかの病原体が伝播される可能性が高まる.さらに言えば,口器が皮膚の中に残ることが多いのと,それによる痛みが残るからでもある.ちなみに南方系のダニなので分布は西日本に多い(ただし関東に居ないわけではない).大腿部や肛門周辺を咬まれることが多いのだとか.

ああ,ちなみに咬まれたからといって必ず病気にかかるわけではありません.あくまで確率がそれなりにあるよという話.病原体を必ず持っているわけではないし,体に入ったからと言って即発病するというシロモノでもない.とりあえず心配なら病院へGO.




・・・こうやってダニの話なんかして乗ってきそうな人は2,3人しか思い浮かばないのだが,まあ,仕方あるまい.造形的にけっこうかっこいいと思うのだが.キララマダニなんてきれいだと思うんですけどねえ.

アニサキスって何だ

2007-11-30 | 蟲のはなし
例えば鮮魚売り場で魚を一尾買ってくるとする.

その魚はどこかの海で獲れたものである.

捌いてみると何やら寄生虫がついていて,それはまだ生きて動いている.果たしてその寄生虫はどこから来たのだろう.






と,いうわけで,アニサキスについてちょっと書いてみよう.

さて,ちなみにアニサキスと云うのは一般には総称である.

学名をそのまま読んだだけでもあるが,主には魚に寄生するような,Anisakidae科の線虫のことを指す.

もっともよく見かけるのはAnisakis simplexという種である.
ちなみにこのグループにはAnisakis, Pseudoterranova, Contracaecum, Raphidascarisなどといった属が含まれるのだが,まあそれは置いておこう.ちなみに分類的には回虫に近い.


このグループは成虫が海鳥やクジラ,イルカなどに寄生するもので,魚に居るのはだいたいがL3というステージの幼虫である.成虫が卵を産み,宿主の糞とともに海に出る.卵から幼虫(L1)が出,それをプランクトン(主にオキアミ)が喰う.オキアミの体内で脱皮をしてL3にまで成長する.これを魚やイカが喰い,その魚やイカをクジラや海鳥が食べるという流れだ.ちなみにこの辺の感染環は全てがわかっているわけではない.

今のところ,代表的な終宿主としてクジラなど,中間宿主としてはオキアミがあげられよう.魚やイカはどういう扱いかというと,待機宿主と呼ばれるのが一般的である.これは,「本来の発育環には必要ではないが,生態学的な事情からその存在がある寄生虫の伝播,感染に有利になるような宿主」と定義される.一般にその体内では脱皮など成長が行われず,主にステージはL3のままで,次の宿主に移る機会を待っている状態を指す.

一口にL3と書いたが,これは終宿主への感染能力を持った幼虫と言い換えてもいい.このステージになって初めて,終宿主である海鳥やクジラといった生物に寄生できるようになるのだ.この状態の幼虫は,よく臓器の表面などで被嚢という形態で居る.自分の身を守るために,殻の中にこもるのだ.被嚢と云う状態はかなり強いので,宿主が死んだあとでも中の虫はしばらく生きている.この状態で,外部の刺激,たとえば温度が上昇したりといったことを受けるとそこから出て,移動,脱皮という動きが始まる.

人から見ればちっぽけな虫ではあるが,外界の変化を感じ取り,自らの生存のために動き出す.何と不思議なものではないか.

生命とは斯くも神秘に満ちている.

小春日和

2007-10-24 | 蟲のはなし
今日は晴れていて,昼間は少し暖かかった.もっとも風は冷たいが.


陽光を浴びるナナホシテントウ.

アイヌ語では「ツキキキリ(お椀・虫)」,「イタンキアクカ(お椀・半分)」「ニセウアルケ(ドングリ・半分)」などと呼ばれる.形を捉えていてなるほどと思う.ただ,あまり生活には関係なかったらしく,説話のようなものは残っていないらしい.

周りの紅葉も進み,秋が深まっているのを感じる.鳥も動き,虫も動く.季節は移ろうが,私はまだここにいる.それが不思議でもあり,少し寂しくもある.

ちょっとおセンチな気分に浸ってみる.そんな秋の日である.