--海南大附属高校 体育館--
藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。
試合は、全部で5試合。
現在、1試合が経過し、混成チームが1勝をあげた。
続いて、第2戦が行われる。
海南は、第1戦同様のスタメンを起用。
対する混成チームは・・・。
「赤木、次は俺が出る!」
「断る!!」
「何をーー!!」
「わかった。俺が変わる。だが、魚住は引退して随分経つ。体が鈍っているんじゃないか。」
花形が大人の対応。
「愚問だ。」
「さぁ、次は俺たちの出番だな。木暮いくぞ!」
「おっおう。」
「今度は、1-3-1のゾーンで守ろう。うちは、あくまでも、海南の練習相手だからな。
いろんなバリエーションでやってやるのがいいと思う。」
「あぁ、ちげーねぇ。だが、負けるのはまっぴらだ。」
と三井。
「もちろん、勝ちに行く!」
藤真が続ける。
「トップは俺、左右に三井と木暮、センターは赤木、ゴール下は魚住。
リバウンドを取ったら、すぐに速攻だ。ディフェンスは思い切り良くいこう。
三井、木暮、ガンガン打っていっていいぞ。赤木と魚住は、リバウンドを頼む。」
「OK!」
(的確な指示に、リーダーシップ・・・、気合だの、死守だのいっている俺とはかなり違うな・・・。)
と心の中で呟く赤木。
ジャンプボールは、魚住と高砂。
『バチィーン!』
魚住が思いっきり叩いたボールは、海南のエンドラインまで転がっていった。
「バカ!何やってんだよ!ちゃんと味方に渡せよ。」
「すっすまん。」
怒鳴りつける三井に対して、素直に謝る魚住。
魚住にとって、数ヶ月ぶりに行うバスケの試合。
誰よりも興奮し、誰よりもこの練習試合を楽しみにしていたのは、
藤真でもなく、赤木でもなく、魚住だった。
その興奮を抑えられない魚住は、勢い余って、ボールを思いっきり叩いてしまった。
ボールを叩き、ジーンとなっている手を見つめているその瞳からは、涙が流れている。
(バスケもこいつらも、俺にとっちゃ大間のマグロ以上の価値があるんだ・・・。)
『ドガ!』
「バカ!何泣いてんだよ!」
後ろから、三井が蹴る。
「おっおう。」
涙を拭いて、守りにつく魚住を感慨深く池上が眺めていた。
(魚住・・・、ボールに、コートに、バスケに飢えているんだな。お前も福田も変わらないな。)
「1-3-1か。」
「うちは海南の練習相手だからな。」
「手は抜くなよ。」
「まさか。」
牧が一気に加速。藤真と木暮の間を抜きにかかる。
「木暮!」
「おう。」
藤真と木暮で牧を囲んだかに見えたが、
『クルッ』
牧のキラーバックロール。
(速すぎる!!)
木暮側のサイドを抜き、リングに突っ込んだ。
「来い!」
(赤木!)
今度は、赤木と魚住のツインタワーで牧の進路を塞ぐ。
(さすがにデカい!!ならば・・・)
『シュ!』
牧は、半回転から、神にパスを送った。
『バシ!』
「そのパターンはお見通しだ。」
ボールを取ったのは、三井だった。
「何!?」
「三井は逆サイドだろ!」
ゾーンの左側を守っていた三井だったが、散々この牧-神の必勝パターンにやられたこともあって、
左側の清田をフリーにする危険を顧みず、右側にいる神のもとへ走り込んでいた。
「神にパスする」という確信のもとに・・・。
(三井、さすが読みが鋭い。)
赤木の顔が自然とほころぶ。
「藤真!」
「おう!」
混成チームの速攻、藤真がレイアップを決めた。
第1戦に続き、先制点は混成チーム。
だが、
『スポッ!』
神が三井の前から、宣戦布告ともいえる3Pを決めた。
三井を見て、にこりと笑う神。
(また、遠くなりやがったな。)
三井も笑った。
神は、陵南戦よりも50cm遠い、3Pラインから1.5m離れたところから、3Pを放っていた。
三井の胸の熱い想いがメラメラと燃え始める。
(いいねー、この感じ。)
『ザシュ!』
神を振り切り、ミドルシュートを決める三井。
『シュパ!』
神は、木暮を抜いて、ジャンプシュートを決めた。
『ドガァ!!』
藤真のアシストを魚住がアリウープでねじ込む。
『ザシュ!』
木暮を交わして、ジャンプシュートを決める清田。
試合は一進一退の攻防が続いた。
第2戦も残り2分となったところで、再び三井のバスケセンスが光る。
『ドン!』
「オフェンス!清田、ファウル。」
「くそー、三井!」
木暮のところを中心に攻める海南の裏をかいて、素早いヘルプに回っていた三井が、
この試合2つめのオフェンスファウルを奪い取った。
「まだまだだな。」
「ちいっ!」
(ブランクがなかったらと思うと、ホントに恐ろしい男だな。)
牧が呆れ顔で三井を見ている。
(シュート力もさることながら、ディフェンスもよくなっている。
センスだけじゃない、相当な練習もしているはずだ。)
藤真の考えは、当たっていた。
三井は、海南に敗れたあとも、宮城らとともに、練習に精を出し、
特に苦手であったフットワークを中心に鍛えていた。
その成果が本日の表われでもあった。
その後、試合は、神、清田が積み重ねた前半のリードをなんとか守りきり、
海南が僅差で混成チームを下した。
清田のジャンプシュートの確率の向上が目立ち、神のロングシュートも披露された。
海南にとっては、練習の成果が出た試合であった。
だが、一向にインサイドから得点を重ねることはできず、全国大会を前に厳しい現実を突きつけられる。
対する、混成チームでは、三井のディフェンス力、赤木のリバウンド力と、湘北コンビの動きが目立っていた。
(あと1年早く三井が戻っていたら・・・。)
少しだけ悔しさがこみ上げる赤木に、三井の無邪気な言葉が胸に響く。
「横学来いよ!また、一緒にやろうぜ!!」
「・・・。」
ほぼ志望校が決まっていた赤木の心が揺らいだ。
海南 25
混成 24
続く。
藤真の提案により、神奈川混成チーム対海南の練習試合が行われている。
試合は、全部で5試合。
現在、1試合が経過し、混成チームが1勝をあげた。
続いて、第2戦が行われる。
海南は、第1戦同様のスタメンを起用。
対する混成チームは・・・。
「赤木、次は俺が出る!」
「断る!!」
「何をーー!!」
「わかった。俺が変わる。だが、魚住は引退して随分経つ。体が鈍っているんじゃないか。」
花形が大人の対応。
「愚問だ。」
「さぁ、次は俺たちの出番だな。木暮いくぞ!」
「おっおう。」
「今度は、1-3-1のゾーンで守ろう。うちは、あくまでも、海南の練習相手だからな。
いろんなバリエーションでやってやるのがいいと思う。」
「あぁ、ちげーねぇ。だが、負けるのはまっぴらだ。」
と三井。
「もちろん、勝ちに行く!」
藤真が続ける。
「トップは俺、左右に三井と木暮、センターは赤木、ゴール下は魚住。
リバウンドを取ったら、すぐに速攻だ。ディフェンスは思い切り良くいこう。
三井、木暮、ガンガン打っていっていいぞ。赤木と魚住は、リバウンドを頼む。」
「OK!」
(的確な指示に、リーダーシップ・・・、気合だの、死守だのいっている俺とはかなり違うな・・・。)
と心の中で呟く赤木。
ジャンプボールは、魚住と高砂。
『バチィーン!』
魚住が思いっきり叩いたボールは、海南のエンドラインまで転がっていった。
「バカ!何やってんだよ!ちゃんと味方に渡せよ。」
「すっすまん。」
怒鳴りつける三井に対して、素直に謝る魚住。
魚住にとって、数ヶ月ぶりに行うバスケの試合。
誰よりも興奮し、誰よりもこの練習試合を楽しみにしていたのは、
藤真でもなく、赤木でもなく、魚住だった。
その興奮を抑えられない魚住は、勢い余って、ボールを思いっきり叩いてしまった。
ボールを叩き、ジーンとなっている手を見つめているその瞳からは、涙が流れている。
(バスケもこいつらも、俺にとっちゃ大間のマグロ以上の価値があるんだ・・・。)
『ドガ!』
「バカ!何泣いてんだよ!」
後ろから、三井が蹴る。
「おっおう。」
涙を拭いて、守りにつく魚住を感慨深く池上が眺めていた。
(魚住・・・、ボールに、コートに、バスケに飢えているんだな。お前も福田も変わらないな。)
「1-3-1か。」
「うちは海南の練習相手だからな。」
「手は抜くなよ。」
「まさか。」
牧が一気に加速。藤真と木暮の間を抜きにかかる。
「木暮!」
「おう。」
藤真と木暮で牧を囲んだかに見えたが、
『クルッ』
牧のキラーバックロール。
(速すぎる!!)
木暮側のサイドを抜き、リングに突っ込んだ。
「来い!」
(赤木!)
今度は、赤木と魚住のツインタワーで牧の進路を塞ぐ。
(さすがにデカい!!ならば・・・)
『シュ!』
牧は、半回転から、神にパスを送った。
『バシ!』
「そのパターンはお見通しだ。」
ボールを取ったのは、三井だった。
「何!?」
「三井は逆サイドだろ!」
ゾーンの左側を守っていた三井だったが、散々この牧-神の必勝パターンにやられたこともあって、
左側の清田をフリーにする危険を顧みず、右側にいる神のもとへ走り込んでいた。
「神にパスする」という確信のもとに・・・。
(三井、さすが読みが鋭い。)
赤木の顔が自然とほころぶ。
「藤真!」
「おう!」
混成チームの速攻、藤真がレイアップを決めた。
第1戦に続き、先制点は混成チーム。
だが、
『スポッ!』
神が三井の前から、宣戦布告ともいえる3Pを決めた。
三井を見て、にこりと笑う神。
(また、遠くなりやがったな。)
三井も笑った。
神は、陵南戦よりも50cm遠い、3Pラインから1.5m離れたところから、3Pを放っていた。
三井の胸の熱い想いがメラメラと燃え始める。
(いいねー、この感じ。)
『ザシュ!』
神を振り切り、ミドルシュートを決める三井。
『シュパ!』
神は、木暮を抜いて、ジャンプシュートを決めた。
『ドガァ!!』
藤真のアシストを魚住がアリウープでねじ込む。
『ザシュ!』
木暮を交わして、ジャンプシュートを決める清田。
試合は一進一退の攻防が続いた。
第2戦も残り2分となったところで、再び三井のバスケセンスが光る。
『ドン!』
「オフェンス!清田、ファウル。」
「くそー、三井!」
木暮のところを中心に攻める海南の裏をかいて、素早いヘルプに回っていた三井が、
この試合2つめのオフェンスファウルを奪い取った。
「まだまだだな。」
「ちいっ!」
(ブランクがなかったらと思うと、ホントに恐ろしい男だな。)
牧が呆れ顔で三井を見ている。
(シュート力もさることながら、ディフェンスもよくなっている。
センスだけじゃない、相当な練習もしているはずだ。)
藤真の考えは、当たっていた。
三井は、海南に敗れたあとも、宮城らとともに、練習に精を出し、
特に苦手であったフットワークを中心に鍛えていた。
その成果が本日の表われでもあった。
その後、試合は、神、清田が積み重ねた前半のリードをなんとか守りきり、
海南が僅差で混成チームを下した。
清田のジャンプシュートの確率の向上が目立ち、神のロングシュートも披露された。
海南にとっては、練習の成果が出た試合であった。
だが、一向にインサイドから得点を重ねることはできず、全国大会を前に厳しい現実を突きつけられる。
対する、混成チームでは、三井のディフェンス力、赤木のリバウンド力と、湘北コンビの動きが目立っていた。
(あと1年早く三井が戻っていたら・・・。)
少しだけ悔しさがこみ上げる赤木に、三井の無邪気な言葉が胸に響く。
「横学来いよ!また、一緒にやろうぜ!!」
「・・・。」
ほぼ志望校が決まっていた赤木の心が揺らいだ。
海南 25
混成 24
続く。