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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#79 【大器】

2009-03-24 | #04 海南 番外編
愛和学院 72
名朋工業 76




第4Qもまもなく3分を過ぎようとしている。


『シュパ!』


『シュパ!』


森重が、続けて2本のフリースローを沈めた。




「森重選手、第4Qだけで6本のフリースローを決めております。」

「ここにきての集中力が凄いですね。苦手なフリースローを克服しつつあるのでしょうか。
進化する愛知の大器です。」




「もはや、ファウルでは止められないか・・・。」

険しい表情の愛和監督の徳光。




「この試合だけで、パスワークに、スピンムーブに、フリースローか。愛和様様だな。」

笑う名朋監督の冨名腰。




「入れられたら、入れかえせばいい。それだけだ。」

諸星がチームメイトに声をかけた。




『ザシュ!』


強気な諸星が、ドライブからジャンプシュートを決める。




「諸星選手も森重選手に劣らない集中力です。今のでこの試合36点目となります。」




『ピィーー!』



『ドガァ!!』




「バスケットカウントです!森重選手、寺田選手のファウルをものともせず、リングに叩き込みました。
そして、ファウルアウトした杉本選手に代わり、途中出場していた寺田選手も、ここでファウルアウトとなります。
愛和学院は、2名のセンターを森重選手によって、失ったことになります。」

「杉本選手も寺田選手も全国ベスト4のチームのセンターです。決して格下の選手ではありませんよ。」

「それほど、森重選手の動きが素晴らしいということでしょうか。
恐ろしい1年生です。」




「諸星、2-3だ!森重を押さえろ!」

徳光から指示が飛ぶ。




その後、試合は一進一退の均衡を保つ。


愛和は、織田がバランスよく、パスを供給し、諸星が外から中からゴールを奪い、
今村はスティール、スクリーンと影でチームを支え、荻野は森重からリバウンドをむしり取った。


対する名朋は、愛和の2-3に森重が封じられ、攻め倦んだが、
進藤、大石が、高確率でミドルシュートを決め、リードを保っていた。



愛和学院 81
名朋工業 83




だが、試合時間残り2分。

この試合、最大の転機が訪れる。



『バシ!!』




「森重選手、本日10本目のシュートブロックです。今村選手、転がるボールを呆然と眺めております。ん!?んーー!!!
コート場では、森重選手が倒れております!荻野選手も右足の甲を押さえております!!」

「どうやら、森重選手がブロックの着地の際に、荻野選手の足の上に乗って、足首をひねってしまったようです。
ここで、負傷退場となると、愛和学院が俄然有利になってきますね。
乗られた荻野選手の足も気になります。」

「おっ、荻野選手は立ち上がりました!!
続いて、森重選手も立ち上がりましたが、どうやら、どうやら交代です!
森重選手、交代となります!!
名朋にとっては、予期せぬトラブル、愛和にとっては、願ってもない森重選手の退場となります!!」




「おっちゃん、俺はまだいけるぞ。」

「あぁ。だが、無理はしちゃいけね。お前にはまだまだこの先がある。
あとは、あいつらを信じろ。」

「んん。」




「荻野、大丈夫か!?やれるか?」

「しゃちほこを落とされたかと思ったよ。」

「無理するなよ。」

「あぁ。だが、チャンスだぜ。逆転するぞ。」




そして、




『ピィーーー!!』


試合終了を告げるブザーがなった。




「愛知の星か・・・、この愛知ではずば抜けたバスケセンスだが、王朝には勝てまい・・・。ヒロシ、いくぞ。」

「うっ、ん??」

若干、うとうとしていた森重。


(肝のデカさじゃ、こいつが一番だな。)

笑う冨名腰であった。




森重を見つめていた諸星が、声をかけた。

「森重!」

「ん?」

「しっかり、冷やしておけよ。」

「ううん・・・・・・・。」

「ん!?なんだ??」

「梅干??」

「諸星だ!!」



愛和学院 90
名朋工業 85




IHの覇者、名朋工業は、愛知県予選決勝で敗れた。

全国大会出場を果たしたのは、IHベスト4の愛知の星こと諸星大率いる愛和学院に決まった。


「よし!牧、待ってろよ。IHの借りは、選抜で返す!!」




【愛和学院】

諸星 大  45P(3P5本) 4A 5R



【名朋工業】

森重 寛  37P 7A 17R 10B








続く。

#78 【星とポン吉と丸顔】

2009-03-23 | #04 海南 番外編
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<<回想中>> 

2年前のIH全国大会。



続いて、愛和学院は、準々決勝で山王工業と対戦する。

そして、またしても、諸星にとって、屈辱的な出会いをすることとなる。




諸星は、第2Q途中から、負傷した先輩に代わり、SGを任されていた。

山王の勝利がほぼ決定した第4Q、1年生ながら、ベンチ入りしていた#14深津と#15河田が出場する。




「#14、俺がいきます!」

「愛知の星が相手かポン。」

「ポン?」

「何だ、お前?」

「お前は、3Pシュートがヘタだポン。」

「なっなんだ!?ポンって何だ!!」

「試合中だポン。」

「なっ!?」

「はりきりすぎるなポン。」

「なにを!まっ待て!!名を名乗れ!!」


『スタスタスタ・・・』


(こうなったら、バスケでぎゃふんといわせてやる!!ってこのくだり、牧と同じ?)




愛和のオフェンス。


諸星が、3Pライン手前で、ボールを持っている。

深津は、間合いをあけて、ディフェンスをしている。


「そこからは、打たないポン。打っても入らないポン。」

「うるせー、ポン吉!」



『シュ!』


『ガン!!』


「あっ!」

「ほら、入らないポン。」


「ぶしぃ!!」

リバウンドは、河田が掴み取る。


「データどおりだ、黒星の3Pは入られね。深津打たしてかまわないぞ。」

「OKだポン。」


(くそ!諸星だっていうの!)



再び、諸星にボールが渡る。

「打ってくるかポン。」

「ポンポン、うるっせえーっつうんだよ!!」



『キュ!』


(!!)


(速いポン!!)



一瞬で深津を抜き去った諸星が叫ぶ。


「ビッグスターシュート!!」



だが、



『バチィン!!!』



諸星の放ったレイアップシュートを、渾身の力を込めた河田が叩き落した。



「うは!!」


(くそっ!丸顔め!)



倒れた諸星に、手を貸す河田。



「ビックスターシュートってダサいな。」

「うるさい!」

「俺は、河田雅史。あっちのポンポンいっているのが、深津だ。よろしくな、黒星。」

「俺は、諸星だ!」

「うは!そうか、諸星か。」

笑う河田。

「深津ー、諸星だってよ。」

「諸星は、3Pシュートがヘタだポン。」

「どっどうして、そう思うんだ!?」

「試合を見ていれば、わかるポン。海南戦でも打てるところで打っていなかった。」


(けっ、こいつもいい眼してやがるな。)

「3Pが苦手なのは認める。だが、今度は、こうはいかねぇぜ。」

「あぁ。3P練習してこいよ。ビッグスターシュートもな。」

「楽しみにしているポン。」

これが、諸星と宿敵深津、河田との出会いであった。


-----------------------------------------------------------------------



(確かに、1年時の3Pは酷かったな。さすがに、こいつらには見せられねぇ。)

苦笑いをしながら、昔を思い浮かべていた諸星であった。



愛和学院 65
名朋工業 67






続く。

#77 【星と盟友】

2009-03-21 | #04 海南 番外編
愛和学院 62
名朋工業 67




『シュパ!』


開始早々のワンパスから、諸星が3Pが決める。



「大さん、今日は3Pの調子がいいですね。」

と真面目な性格の織田。

「今日はじゃねぇだろ!!」

「そうだ。先輩に向かって失礼だぞ!虎!!今年はだろ!今年!」

とお調子者の今村。

「バカ!俺の3Pは、2年から入る!アホ虎に、バカサ(ツバサ)!」


どうやら諸星は、2年生虎翼コンビのいじられ役らしい。




そのころ放送席では、


「本当に、今日は諸星選手の3Pがいいですね。」

「えぇ。全く3Pが入らなかった一昨年に比べるとまるで別人のようです。」

「一昨年のIH以降、3Pの練習にも力を入れてきたと本人はいっていました。
その成果が現れています。毎年、確実に成功確率がUPしていますね。」




諸星の過去が明るみに・・・。




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<<回想>> 

全国中学生バスケットボール大会 愛知県大会 準優勝校のキャプテンとして、
チームを勝利に導いた諸星は、翌年、愛知県でも名高い愛和学院高等学校に推薦入学を果たす。

そして、2年前、愛和学院の控えSGとして、IH全国大会に初出場。

ベスト8を争う試合、後の盟友となるあの男と出会う。



「監督!あいつも1年なんでしょ?俺が止めてやりますよ!」

「お前には、まだ早い。」

「やってみなければ、わからないでしょう!」

「うむ・・・。第4Q12点差か・・・。経験を積むのもよいか。
この時間、この得点差なら、追いつかれることもなかろうし、よし、やってみろ。」

「任せておいてくださいな。」




「愛知の星、諸星登場だーー!!」

「出ました!愛知の星!!」




「愛知の星?」

「俺は諸星だ。よろしくな。」

「ん!?あぁ。」

「予選から、愛知の星なんて呼ばれている。
俺は、シューティングスターってのがいいなぁと思っているんだけどな。」

「それは、流れ星だ。お前も落ちるぞ。」

「なっ!?」

「はりきりすぎるなよ。」

「なにを!まっ待て!!名を名乗れ!!」



『スタスタスタ・・・』



(こうなったら、バスケでぎゃふんといわせてやる!!)




『バシ!』



(!!!)



(どうだ!!)



男のドリブルを諸星がカット。ワンマン速攻で、相手ゴールを目指す。



『シュ!』



諸星は、レイアップシュートを放った。




だが、




『バチィン!!』




(なにっ!)




シュートは、力強いブロックにより、背後から叩き落された。

振り返ると、そこにはあの男。




「クロ!!」



「クロじゃない。俺は、牧だ。そうやすやすと点はやらんぞ、白星!」

「俺は、諸星だ!」




2年前 IH全国大会 ベスト8の椅子を争った愛和学院と海南大附属。



愛和 84
海南 78




試合終了後・・・。


「黒星。」

「諸星だ!わざとだろ!?」

「お前、外角のシュートが苦手か?」


『ギクッ!』


「なっ何でだよ!?」

「打てるタイミングでも打たなかった。」

「あれは、フェイクだ。あえて、打たなかったんだ!」

「お前の性格なら、打って当然。」

「うるさい!勝ったのは俺たちだ。」

「あぁ。だが、もっと上を目指すなら、ドライブだけじゃ勝てないぞ。
強豪愛和のスタメンだって取れないぜ。」

「・・・。」



(ものの数分しかプレーしてないのに、苦手の3Pや性格までお見通しか。
なかなかの洞察力だな。)



「けっ、全部お見通しってか。牧っていったな、またここでやろうな。」

「あぁ。次は、海南が勝つ。」

握手を交わす牧と諸星。



「海南の牧か、忘れられねぇ相手になっちまったな。」

諸星と反対に牧は・・・。

「愛知の星の白星?ん!?黒星!?まぁ、どっちでもいいか。」




これが、諸星にとって屈辱的な牧との出会いであった。







続く。

#76 【愛知の星】

2009-03-19 | #04 海南 番外編
愛和学院×名朋工業

第3Q 残り39秒

愛和学院 60
名朋工業 64




『シュポ!』


名朋SF大石が3Pを決める。




「このQ、最後の攻防となりそうです。」




時間ギリギリまで、パスを回す愛和。



残り4秒。

愛知の星が動き出す。



『ダム!』


『シュン!』




「諸星選手、スタードライブで、名朋工業、進藤選手を抜き去りますが、
目の前には、森重選手が待ち構えています。」




「今度はIHのときのようにはいかないぜ!」

「ん?」

(IH?)




かまわずステップを踏む諸星。

森重もブロックに跳んだ。




「ビッグスターシュートスリー!!」

諸星が叫ぶ。


「ん???」

森重のブロックは、空を切った。




ボールは高くループし、リングに向かって落ちてくる。




「おっ、ここでしかけてきたか。対河田用のスクープシュート。」

(っといっても、沢北のスクープシュートの真似だけどな。)

と苦笑いの愛和監督徳光。




そして、




『ドン!』


森重の腹が、諸星の体に軽くぶつかった。




『ピィーー!』


ファウルを告げる笛がなる。


(ファウル?)



(にやっ)

笑う諸星が、ボールの行方を確認する。




『ガン!』




外れた。




「ありゃ。」

(まだ正確さが足りねぇか。)




「諸星選手のスクープシュートは惜しくも外れましたが、
貴重な貴重な森重選手の4つめのファウルを奪いました!」

「これは、試合を左右する非常に大きなプレーです。
そして、名朋工業、とてつもなく痛い痛い、森重選手のファウルとなりました!!」




「ビッグスターシュートスリーって・・・。」

と織田虎丸。

「ネーミングださいっすよ。」

と今村翼

「うるせ!諸星の星と大の大でビッグスターだぞ!!」

「しかも、スリーってワンとツーはどこにいっちゃったんですか?」

「っていうか、シュートだって、沢北の真似じゃないですか?」

「うるさい!うるさい!」

「フリースローは、しっかり入れてくださいね。」

「先輩に向かって、何だその口の利き方は!!」

「はいはい。」

織田と今村に突っ込まれ、軽くあしらわれる諸星。

だが、2本のフリースローをしっかり沈め、第3Qが終了した。



愛和学院 62
名朋工業 67




-----------------------------------------------------------------------


『ビィーーー!』


「おっ、第4Q開始のブザーが今なりました。残り10分で、いよいよ愛知県代表が決定します。」

「これは意外、4ファウルの森重選手がそのままコートに現れました。」

「点差からいえば、一旦ベンチに下げてもいいと思いますが、冨名腰監督は、勝負出ましたね。」

「冨名腰監督の作戦が、吉と出るか凶と出るか、残り10分見守っていきましょう!」



愛和学院 62
名朋工業 67







続く。

#75 【愛知の翼と虎】

2009-03-18 | #04 海南 番外編
愛和学院×名朋工業

愛和学院 41
名朋工業 45




「今までどおり、森重がボールを持ったら、ダブルチーム。
ゴール下まで攻め込まれたら、ファウルをしてでも止めろ。あいつのフリースローは入らん。」

ハーフタイム、愛和学院監督徳光から、再度指示が出された。




第3Q中盤。


『ピィーー!』

「愛和#6!」


「・・・。」

(フリースローか。)


『ガン!』



「ヒロシ!外れるとわかっているなら、自分でリバウンドを獲りに行け!」


「そっか。」



愛和は、森重のパスやパスフェイクに、かき乱され、しばしばC杉本が森重を一人で守ることがあったが、
杉本はその度にファウルで対抗した。




だが、止められない。




『バス!!』




「バスケットカウントです!強い強すぎます!!」

「ええ、もはや1人では、森重選手を止められませんね。」




「なんていうやつだ。ファウルの意味がない・・・。
杉本、荻野、森重がゴールに向いたら、かまわずファウルしろ。
シュートを打つ、打たない関係ない。ゴールに向いたら、すぐファウルだ。わかったな?」

「はっはい。」

徳光から指示が飛んだ。



愛和は、森重がボールを持つとインサイド陣がかまわずファウルをした。

さすがに、森重に対する執拗なまでのファウルに、会場は愛和へのブーイング一色となった。



「正々堂々、勝負しろ!」

「森重が可哀想じゃねぇか!!」



「勝つためだ!お前ら、気にするな!!」

大きな声で、愛和選手に告げる徳光。



「けっ、うちも1年坊に情けないぜ。」




第3Q終盤。


C杉本が5ファウルめを犯し、ファウルアウトとなった。

控えC寺田が投入されるも、ファウルアタックは続いた。

だが、森重もファウルアタックに対応し始める。



『キュ!』


『クル!』


(!!!)


(嘘だろ!おい!)


ボールをもらうとすぐにスピンムーブを繰り出し、ファウルをさせる時間を与えず、2人を置き去りにした。

そして、ワンハンドでリングにボールを叩き込んだ。




「まるで、山王工業の河田君のようなプレーです。」

「森重選手の巨体で、あの速さは、防ぎきれませんね!!」




「ヒロシ!やるじゃねぇか。」

「おう。あの坊主の大きい人がやっていたの思い出した。」

(坊主の大きい人?あぁー、山王の河田か。
ここで思い出すか・・・、国体で見てるんなら、もっとはよーから思い出せや。)

冨名腰は苦笑いをしている。



続いて、



『シュッ!』


(!!!)


(何!?今度は、フックかよ!!)


『ガン!』


「あっ、外れた。」



だが、



『ドガドガッ』


『ダン!!』


『ドガァァ!!!』


『ギシギシ・・・』



森重は、ファウルをされまいと、フックシュートを放ったが、外れた。

だが、リングに跳ね返ってきたボールを自ら奪い取り、リングに押し込む。



「フックシュートか・・・。でも、ヒロシ、お前には似合わねぇ。もうすんな。」

「せっかく、メガネの大きい人がしてたの思い出したのになぁ。」

(・・・。神奈川のメガネのことか。最近、もの覚えがよくなったな。)

冨名腰は笑った。




(森重の動きが、更によくなってきやがった。ここらへんで一発だまらせねぇとまずいな。)

諸星の表情が変わった。



『ザシュ!』



今村のスクリーンプレーを利用し、フリーになった諸星がジャンプシュートを決める。

(こんなんじゃ、波には乗れねぇ。もっと、デカい一発だ。)




名朋のオフェンス。

ここにきて、名朋PG中嶋のパスワークが冴え渡る。

それはもちろん、森重の存在によるもの。

森重を抑えれば、大石、里中が高確率で外角を決めていき、外をケアすれば、森重が1on1からゴールを奪った。


『バシ!』


森重と控えC寺田との1on1。

再び、スピンムーブで抜き去り、ゴール下のシュートを放った。



だが、



『キュ!』



『バチィ!』



「ん。」



「お前のスピンムーブは・・・、まだ遅い!!」




「うおぉぉぉ!諸星選手、森重選手のシュートをブロックです!!これは、凄い!!」

「あのジャンプ力、あのパワー、そして森重選手に立ち向かうあの勇気、さすが愛知の星諸星大選手です。」




「お前ら、走れ!!」

「言われなくても、走っていますよ!!」




ルーズボールを取った諸星から織田へパスが通る。

織田は、中嶋を抜き去り、名朋陣内へ駆け上がった。

そして、名朋ゴールに向かい、パスを放つ。




(決めろよ、翼!)




『ダン!』




今村は、力強く踏み込んだ。




「いけ、翼!!」

諸星が叫ぶ。




「あいよーー!」

ボールを空中でキャッチすると、ボールをワンハンドに持ち替えた。




『ドガァー!!』




渾身の力でボールをリングに叩き込んだ。




「これは凄い!!愛知の翼こと今村翼選手が、
愛知の虎、織田虎丸選手からのパスを受け、アリウープを決めました!!」

「諸星選手や森重選手にひけを取らない豪快かつ高いダンクです!!!」




更に、諸星が追い討ちをかける。




第3Q 残り39秒

愛和学院 60
名朋工業 64







続く。

#74 【愛知県予選】

2009-03-17 | #04 海南 番外編
愛知県 選抜県予選 決勝戦会場

愛和学院×名朋工業




「愛知スカイマークセンターからお届けしております第38回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会
愛知県予選男子決勝 愛和学院対名朋工業の試合は、目を離すことのできない壮絶な試合となっております。」


愛知県の決勝戦は、地方局で生放送されるため、2名の担当者が試合の実況、解説をしている。


「残すは、第4Qだけとなりましたが、名朋工業は、このままリードを守ることはできるでしょうか?
大橋さん、どう思いますか?」

「大石選手がいいですね。ここまで3P2本を含む18点。森重選手に次いでのポイントゲッターとなっています。
ただ、その森重選手が、4ファウルを犯しています。
第4Qの早い時間帯に森重選手がファウルアウトするようなら、一気に愛和学院ペースってこともありえますね。」

「そうですね。やはり、名朋のオフェンスもディフェンスも森重選手が中心ですから、
森重選手のファウルアウトは試合を左右する影響力があります。
対する愛和学院の方は、どうでしょうか?」

「さすが、愛知の星、諸星選手が抜群にいいですね。IH時より、外角のシュート率が更によくなっています。
脇を固める2年生コンビの織田選手も今村選手も随所で素晴らしいプレーを見せています。
先ほど見せた2人のアリウープは、この試合1番の盛り上がりを見せたのではないでしょうか。」



『ビィーーー!』



「おっ、第4Q開始のブザーが今なりました。残り10分で、いよいよ愛知県代表が決定します。」




愛和学院 62
名朋工業 67




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<<回想>>

第1Q

先制攻撃は、愛和学院。


『スポ!』


『シュパ!』


「ナイスパスだ、虎!今日は冴えているな。」

「はい!こんなところで、負けるわけにはいかないですよ。
ドンドン、パス回すんで、頼みますよ。」

「誰にいってんだ。IH覇者が相手だろうが、県予選なんかで負けてられるか!」


愛和学院PGの織田が巧みなパスワークから、SG諸星、PF荻野のジャンプシュートをアシスト、
森重との接触を避け、名朋工業をアウトサイド中心で攻め立てた。



「おい!ヒロシ!!もっと、しっかりリングを見て、シュートを打たんといかんぞ!!」

「でも、おっちゃん。俺の周りにはいつも2人おるんやけど。」

「そんなことは大したこたぁない。お前がしっかりポジションを取れば、相手は動けんよ。」

「そっか、簡単だな。」


『ピィーー!!』


2つめのファウルをコールされた。


「バカ!手で吹っ飛ばすやつがあるか!」

「んなこといったって、軽く押しただけで、こいつら簡単に吹っ飛んでしまったで。」

「・・・ったく。まぁ、しょうがねぇな。」


愛和は、森重のディフェンスにおいては、常にダブルチームで防ぎ、
ゴール周辺でボールを持った場合は、ファウルでシュートを凌いだ。



対する名朋は、C森重を囮に、SF大石がドライブで、PF里中がジャンプシュートで、得点を重ねていた。



愛和学院 18
名朋工業 16




第2Q

開始早々、森重が早くも3つめのファウルを取られた。


「あちゃー。あのバカ、手で押すなって散々いっておいたのに・・・。
とはいえ、さすが愛和のダブルチーム、そこいらのチームのダブルチームとは訳が違うな。
ヒロシもてこずってらぁ。」


(どうしたらええんやろ??)


「ヒロシ!よく考えてみろ!
お前に2人のマークがついているということは、1人はノーマークになっているってことだ。
そいつにパスを入れてみろ!」

「おう!そっか。おっちゃん、すげーな。」


『バシ!』




「きました。森重選手です。」




『キュッキュ!』




「愛和も早い対応です。すぐにダブルチームで森重選手を封じにいきます。」




『シュン!』



「ん!?」



『シュポ!』



「森重がパスだと!?」

驚く諸星。



『シュ!』


『ザシュ!』



『バン!』


『スポッ!』




「森重選手からのパスで里中選手が、3本のジャンプシュートを決めました。」

「里中選手のジャンプシュートは、安定感がありますね。」




試合序盤から、森重にボールが入ると、愛和はダブルチームをしかけていた。

この作戦は森重のファウルを、シュートミスを誘い、初めは成功していたが、
第2Q中盤からは、森重がフリーマンを見つけ、アシストに専念しはじめると、
ジャンプシュートの確率の良い里中が、確実にゴールを奪っていった。



そして、



『シュポ!』




「名朋工業、森重選手のアシストにより、大石君のシュートで逆転しました。」

「いやー、森重君は予想外のパスセンス、視野の広さですね。しっかり、フリーマンを見つけています。」




森重が名朋オフェンスの起点となり、素早くパスが回り、一気に逆転した。



「くそ。森重のパスが流れを変えやがったな。」

と諸星。



だが、



「ここだ!」



『バシ!!』



「ん。」



「にわか仕込みのパスワークなんて、愛和には通用しねぇよ!」


森重のパスを諸星が2回連続スティール、再び、愛和がリードした。



名朋のオフェンス。森重がボールをキープ。


「ふん!バカの一つ覚えだな!ここだろ!」


(!!!)


(パスフェイク!?)


諸星とC杉本の意表をつく、森重のパスフェイク。

荻野と1on1となった森重がゴールを襲った。



『ドガァァ!!』




「おし!それでええんじゃ。」

にやけながら、名朋監督冨名腰がいった。




(パスフェイクはまぐれか?だが、こっちも負けてられねぇよ。)



対する愛和は・・・、




「出ました!諸星選手のドライブ!通称、愛知のスタードライブ、炸裂です!!」




諸星が、鋭いドライブを仕掛け、中から得点を奪っていった。


(森重、真っ向勝負だ!)



3分後、第2Q終了のブザーがなった。



愛和学院 41
名朋工業 45







続く。

#73 【全国の強豪校2】

2009-03-16 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

練習終了後のミーティングタイム。

未だに、彦一からの資料に目を通している海南選手たち。




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■千葉県代表 【浦安工業】

IHベスト8、ベスト4の愛和学院にわずか2点差に迫ったオフェンス力は健在や。

IHで愛和学院の諸星さんと打ち合った【千葉の朝日】こと
SG市原朝日は、今大会も絶好調。打倒諸星さんに燃えておるっちゅうこと。

中、外から得点の取れるスコアラーであり、チームを牽引するリーダーシップも併せ持ち、
県予選6試合のうち、3試合で40点以上を叩き出しておる。

市原さん以外の選手は脇役に徹しておるため目立たないが、個々のレベルはめっちゃ高い。

#15の市原さんの弟夕さんも予選出場機会はないけど、不気味や。まぁ、わいの勘やけど。

★★★★★★★☆☆☆


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「朝日か。性格もプレースタイルも諸星そっくりだからな。こいつは。」

と笑う牧。


「でも、予選得点のアベ38.5って凄まじいですね。」

「神さんだって、その気になればこのくらいいけますって。
全国大会では、この信長が、スペースを作り、アシストしますよ!!」

「ありがとう。信長の気持ちに応えるためにも、頑張るよ。」

「神さんだけですよ。俺の味方なのは・・・。」

少し涙ぐむ清田であった。


「弟のほうは、スルーでかまないだろうな。この資料からは、よくわからないし。」

と武藤。


「清田のほうも、スルーでかまわないだろう。」

と小声で高砂。




「次は、静岡県か。」

「だとすると、常誠かな?」

「あぁ。御子柴は、打倒名朋に燃えているだろうよ。」

「選抜予選前に、常誠が湘北に遠征にきたらしい。1勝1敗で、ほぼ互角の試合だったらしいぞ。
ただ、どちらの試合も60点ほどのロースコアゲーム。
実際のところは、常誠のディフェンスが湘北のオフェンスを封じ込めた感じだ。
得点差以上に、常誠の方が強かったとみていいと思う。」

「けっ、相手が湘北で1勝1敗なら、たかがしれてらぁ。」




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■静岡県代表 【常誠高校】

全国ベスト8の実力を持つ全国常連校やけど、IHでは愛知の名朋工業に2回戦で敗れてもうた。

キャプテンであり、チームの顔である御子柴さんは、外角のシュート力に定評がある。

IHの雪辱のために、名朋対策として、ディフェンス力、リバウンド力を強化した。

2-3のゾーンディフェンスの完成度は、他のチームの追随を許さない。
インサイド主体のチームだと、オフェンスに苦労しそうや。

県アシスト王PG源さんのゲームメイクにも注意が必要。

★★★★★★★☆☆☆


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「常誠と当たるようなことがあったら、神に頑張ってもらわないとな。」

「ええ、任せといてください。それと、宮さんにもね。」

「うむ。」

宮益がメガネをかけ直した。




「次のページは・・・と。」

「!!!」

「うっそ!これ正しいのか?」

第一声は清田。


「名朋にはリベンジできなかったな。」

と高頭が牧にいった。


「ふっ。」

牧が笑った。




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■愛知県代表 【愛和学院】

IHの覇者 名朋工業を5点差で破り、見事、県代表の椅子を奪取したIHベスト4の強豪校。

SG諸星さんのドライブは更に磨きがかかり、名朋との決勝戦では、45点を獲得し、県得点王となった。

個人成績でも、2年生PG織田さん(愛知の虎)が、アシスト王&スティール王、
PFの荻野さんが得点、リバウンド部門において2位の成績となり、
リバウンド部門以外は愛和学院勢がトップとなった。

愛知の翼と呼ばれる2年生SF今村さんには、
実際に翼があるのでないかと錯覚させるほどの跳躍力、滞空時間があり、豪快なダンクが売りや。

だが、ムラがあるので、諸星さんに度々どつかれている。

名朋を破った実力は本物、ベスト4は確実と思われる。

その他、資料別添。

★★★★★★★★★☆


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「愛知の星が、あのデカブツを倒したか。まぁ、ただのデカいだけだったから、当然だ。」

「愛知は、神奈川と並び激戦区。
どちらが来てもおかしくなかったが、最後の全国にかける諸星の想いが強かったということか。」

「でも、あの森重をどう防いだのだろう?」

「ん、2枚目もあるぞ。」



選手が2枚目を見る。



「・・・。」

「そういうことか。」

彦一の愛和学院の2枚目には、名朋との決勝戦の様子が詳細に記載されていた。







続く。

#72 【全国の強豪校】

2009-03-14 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

全国大会を一ヵ月後に控え、海南大附属高校の体育館は、より一層の活気と気合に溢れていた。

IH全国第2位の海南大附属高校には、部員数約70名、マネージャー5名の学生が所属し、
学校規模でバスケットボール部に力を入れている。

バスケ部専用の体育館のほか、ウェイトトレーニングルーム、ミーティングルームが完備されおり、
バスケットゴールは実に20を超えていた。


その体育館の中にあるバスケ部の部室に数十枚のファックスが届いた。



『ジジジジジジジジ・・・』



その紙には、こう書かれていた。




【彦一 極秘資料 海南勝利への道!! 全国大会選抜編】 




全国大会に出場する各都道府県の代表校、一校に一枚、予選のデータ、彦一の寸評など、
事細かに書かれていた。



練習終了後のミーティング、レギュラーメンバーに彦一からのファックスが配られた。



「陵南の彦一君か、早速情報を送ってきてくれたか。助かるな。」

嬉しそうに、高頭が紙に眼をやる。

「IHのときは、かなり参考になりましたからね。」

と宮益。

「さて、どんな情報かな。」

神も紙に眼を向ける。



各選手が、覗き込んだ。




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【彦一 極秘資料 海南勝利への道!! 全国大会編】 


いち早く、彦一がお届けする選抜情報!!要チェックや!!



■秋田県代表 【山王工業】

IH2回戦で敗退した昨年の覇者が3連覇を目指す。

県予選全試合50点以上の差をつけて優勝した。

沢北さんは、メンバー表登録されておるものの、県予選ではベンチにさえ姿はなかった。

3ヶ月の短期留学から帰国しておるのはほんまなので、全国大会から出場するちゅう話。

深津さん、河田さんを初めとする3年生はもちろん、1年生の河田弟君、柳葉君の成長も著しい。

全てのポジションで、超高校級が揃う、今大会も間違いなく優勝候補や。

★★★★★★★★★★


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「全試合50点差以上っていうのは、凄いな。」

と目を大きくして武藤がいった。

「湘北のような奇跡のチームが出場しない限り、この大会も山王が一番優勝に近い。」

と真剣な表情の牧。

「1年の柳葉っていうのが気になるな。」

神がデータを見ながら話す。

「ふん。どうせ、たいしたことないっすよ。ぽっとでの1年でしょ?」

清田は、興味なさ気にいった。

「お前が言うな!」

宮益が突っ込む。

「得点は、河田、松本に次いで、チーム3位か。
ほかはそれほど目立った成績ではないが、沢北の代わりに1年を出すとは、相当ポテンシャルは高そうだな。
堂本は、来年のエースを育てる考えか・・・?」

と高頭。

「そうですかね。他に2,3年にいい選手がいないだけじゃないですか?」

つまらなそうに清田がいう。


「お前が、山王ならベンチにも入れない。」

ボソっと高砂がいった。


海南選手が首を立てに振る。


「たっ高砂さん!!あっ、みんな納得している!!」

さすがに落ちる清田であった。




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■東京都代表 【秋月】

開催地によるホームアドバンテージを獲得し、全国の強豪を迎え撃つ。

注目すべき人は、もちろんこの人、大和統さんや。予選6試合中、4回のトリプルダブルを達成した。

東の大和、西の土屋とゆわれ、大栄のオールラウンダー土屋さんに対し、
SF大和さんは、ミスタートリプルダブルとゆわれておる。

小粒なアウトサイド陣が弱点やけど、それを補うだけの十分なC品川さん205cmがインサイドを守る。

攻守の要、大和さんをどう防ぐかが勝利の鍵や。

★★★★★★☆☆☆☆


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「IHで洛安に負けたチームだな。うちの眼中にはないでしょう。
なんせ、うちは洛安に勝ったチームですからね。」かっかっかっ

と清田。

「いや、侮れんぞ。IHでは、チームの相性が悪かっただけだ。
山王の一之倉と並ぶ洛安の林にあれだけきつくマークされたら、さすがのミスタートリプルダブルでも厳しい。」

と高頭。

「でも、逆をいえば、大和さえ押さえれば、問題ないってことでしょ?」

と神がいった。

「うむ。そう思いたいが、Cの品川がIHよりレベルUPしているようだ。ほれ、ここを見てみろ。」

高頭が、彦一の資料を指差す。



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IH都予選
C…#5品川 祥司 P16.2 R8.9 B1.9

選抜都予選
C…#5品川 祥司 P23.8 R12.3 B3.7

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「どれもIHより抜群にいい結果を残している。凄い成長だな。」

真田が答えた。

「品川か。要注意だな。」

と牧。

(高砂一人では押さえられそうもないな。)


「ふん。どうせ、相手に恵まれたんでしょ。」

誰も自分の話を聞いてくれないので、少しいじけている清田。




海南のミーティングは、まだまだ続く。









続く。