つばさ

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地域独占」に守られた経営の改革は容易ではあるまいが

2013年11月17日 | Weblog

 明治の半ばすぎの東京で、ガスを燃料にした路面鉄道を走らせる計画があった。内燃機関で生みだした動力を、チェーンで車輪に伝えて回すというものだった。現在の東京ガスで「瓦斯(がす)鉄道会社」の設立準備が進められ、市街のどこに線路を敷くかも描いていたという。

▼ガス鉄道には長所がいくつかあった。馬車鉄道のように、馬の糞(ふん)で街が汚れる心配がない。登場したばかりの路面電車と比べても電気を送る架線がいらないため、その分コストが安い。残念ながらガスを食い過ぎることがわかって計画はお蔵入りになったが、そのころの企業家の旺盛なチャレンジ精神を示すエピソードだ。

▼横浜でガス灯がともり、日本でガスが普及し始めたのは1872年(明治5年)。夜道が歩きやすくなり、人々は活動的になった。劇場や商店の中もあかりで照らされ、夜も買い物や芝居を楽しむ人が増えた。ガス灯が電灯に取って代わられた後は調理や給湯へと、いろいろな場面に使い道を広げてきたのがガスの歴史だ。

▼ガスの小売りに異業種の企業などが参入できるようにして、競争を活発にしようという制度改革の議論が始まった。ガス会社に求められるのは暮らしや世の中を便利にする新しい商品やサービスを創りだす力だ。「地域独占」に守られた経営の改革は容易ではあるまいが、明治の草創期の企業家精神を思い起こしてほしい。

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