2010.4.4 18:42 産経ニュース
在韓米軍
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%A8%E9%9F%93%E7%B1%B3%E8%BB%8D
米韓両国の高官から、対北心理戦とみられる発言や動きが目立っている。米国務省は「対北人道支援を考慮」などと誘いかけ、韓国の情報機関研究所は堂々と金総書記の極秘健康情報を公表した。訪中間近とされる金正日総書記は、中朝の同盟関係を誇示することで援助を獲得、同時に米国牽制(けんせい)を狙っているようだが、米韓中それぞれの動きは明らかに、「ポスト金正日」を見据えている。(久保田るり子)
米韓の対北心理戦「5030」
金総書記の訪中近し-のさまざまな観測に呼応するように、3月下旬から米韓高官の北朝鮮に関する発言が続いた。
「(訪中説に)安全な旅となることを期待している。金総書記が6カ国協議に復帰するという肯定的発言をすることを期待する」(3月22日、米国務省グローリー次官補)
「北朝鮮が望むなら人道支援を検討する」(23日、グローリー次官補)
前向き発言に加えて、米韓軍事同盟の誇示も見られる。
「韓国はすでにミサイル防衛(MD)能力を備えている」(24日、米太平洋軍ウィラード司令官)
「北朝鮮の不安定事態の可能性を念頭に、米韓は人道支援作戦から大量破壊兵器除去にいたるあらゆる事態への準備が整っている」(24日、在韓米軍シャープ司令官)
また金総書記の健康問題や後継者問題にも触れている。
「金総書記は過去1年間、自らの後継者として3男、金ジョンウン氏を組織的に紹介してきた」(24日、シャープ司令官、米下院への書面証言)
「金総書記は糖尿病と高血圧を患っており2週間に一度の人工透析をうけているようだ」(24日、韓国・国家情報院傘下、国家安保戦略研究所の南成旭所長)
これらはいずれも、高官の公式発言であるのが特徴だ。
情報関係者によると、3月中旬に訪韓した米高官は韓国側に、金正日体制について「物理的な時間はあまりない」と伝えていた。そのうえで、米国が持つ金総書記の健康に関する極秘情報や後継者問題に関する分析も伝えたという。
このあとに続いた高官発言を北朝鮮専門家は、「対北情報戦で米韓が秘密裏に進めている作戦計画5030の一環」とみる。「5030」は心理戦で、相手国住民や統治者に向け圧迫や懐柔を仕掛ける作戦だ。
昨年末以来の、「貨幣改革」(デノミネーション、通貨呼称単位の変更)で経済・社会の混乱が続き、ポスト金正日体制づくりに向けた北朝鮮国内の動きがうかがえる中、米韓による心理戦は本格化しているようだ。
金正日総書記の訪中は米中の合作
金総書記が訪中すれば、6カ国協議再開に向けたモメンタム(機運)が強まる。
背景は中国の対北援助だ。昨年10月、中朝国交60周年で記念式典出席のために訪朝した温家宝首相は金総書記と会談し、「米朝協議の結果いかん」との条件付きで「多者(6者)会談を行う用意」を明言させた。この訪朝で、中国は北朝鮮との複数の経済協力協定に合意、調印した。だが支援の実現状況は不明で、中国側は援助実行に核問題進展を絡めている可能性が指摘されている。
金総書記の訪中は、この「経済協力」を進めるほか食糧やエネルギーなど実物援助も獲得するのが大きな目的とみられており、訪中が実現した段階で、北朝鮮は核問題への具体的コミットを余儀なくされる。
ただ、北朝鮮が求めている「米朝協議」については今後に委ねられ、そのハードルは高い。
北朝鮮が要求する6カ国協議復帰の条件は(1)国連安保理決議(1874)の経済制裁解除(2)米国の対北敵対政策の撤回(3)朝鮮戦争の休戦協定の平和協定への転換-で、米国は「制裁は国連安保理決議である」とし、非核化が進まなければ不可能との立場をとっている。また、平和協定は、休戦協定に参加しなかった韓国が「韓国はずし」を警戒しているため、簡単には進まない。
「米中間では確かに協議再開への調整が進んだが、制裁解除は北朝鮮の非核化が大前提-というのがオバマ政権の考えで、その非核化については、日米韓露プラスIAEA(国際原子力機関)による査察が必要というが日本の立場だ」(外務省幹部)
自らの健康問題、そしてデノミ失敗による混乱が続々と外部世界に伝えられる北朝鮮国内の疲弊と社会不安-。金総書記を取り巻く環境は変化の中にある。北朝鮮の突然の体制崩壊が国益に反する中国は、北朝鮮を自らの影響下に置いた中でのソフトランディングを目指している。
米中は核問題で金総書記との取引を開始、米韓はこの機会に心理戦を仕掛けたようだ。金総書記の訪中をめぐって各国の思惑は渦巻いている。
在韓米軍
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%A8%E9%9F%93%E7%B1%B3%E8%BB%8D
米韓両国の高官から、対北心理戦とみられる発言や動きが目立っている。米国務省は「対北人道支援を考慮」などと誘いかけ、韓国の情報機関研究所は堂々と金総書記の極秘健康情報を公表した。訪中間近とされる金正日総書記は、中朝の同盟関係を誇示することで援助を獲得、同時に米国牽制(けんせい)を狙っているようだが、米韓中それぞれの動きは明らかに、「ポスト金正日」を見据えている。(久保田るり子)
米韓の対北心理戦「5030」
金総書記の訪中近し-のさまざまな観測に呼応するように、3月下旬から米韓高官の北朝鮮に関する発言が続いた。
「(訪中説に)安全な旅となることを期待している。金総書記が6カ国協議に復帰するという肯定的発言をすることを期待する」(3月22日、米国務省グローリー次官補)
「北朝鮮が望むなら人道支援を検討する」(23日、グローリー次官補)
前向き発言に加えて、米韓軍事同盟の誇示も見られる。
「韓国はすでにミサイル防衛(MD)能力を備えている」(24日、米太平洋軍ウィラード司令官)
「北朝鮮の不安定事態の可能性を念頭に、米韓は人道支援作戦から大量破壊兵器除去にいたるあらゆる事態への準備が整っている」(24日、在韓米軍シャープ司令官)
また金総書記の健康問題や後継者問題にも触れている。
「金総書記は過去1年間、自らの後継者として3男、金ジョンウン氏を組織的に紹介してきた」(24日、シャープ司令官、米下院への書面証言)
「金総書記は糖尿病と高血圧を患っており2週間に一度の人工透析をうけているようだ」(24日、韓国・国家情報院傘下、国家安保戦略研究所の南成旭所長)
これらはいずれも、高官の公式発言であるのが特徴だ。
情報関係者によると、3月中旬に訪韓した米高官は韓国側に、金正日体制について「物理的な時間はあまりない」と伝えていた。そのうえで、米国が持つ金総書記の健康に関する極秘情報や後継者問題に関する分析も伝えたという。
このあとに続いた高官発言を北朝鮮専門家は、「対北情報戦で米韓が秘密裏に進めている作戦計画5030の一環」とみる。「5030」は心理戦で、相手国住民や統治者に向け圧迫や懐柔を仕掛ける作戦だ。
昨年末以来の、「貨幣改革」(デノミネーション、通貨呼称単位の変更)で経済・社会の混乱が続き、ポスト金正日体制づくりに向けた北朝鮮国内の動きがうかがえる中、米韓による心理戦は本格化しているようだ。
金正日総書記の訪中は米中の合作
金総書記が訪中すれば、6カ国協議再開に向けたモメンタム(機運)が強まる。
背景は中国の対北援助だ。昨年10月、中朝国交60周年で記念式典出席のために訪朝した温家宝首相は金総書記と会談し、「米朝協議の結果いかん」との条件付きで「多者(6者)会談を行う用意」を明言させた。この訪朝で、中国は北朝鮮との複数の経済協力協定に合意、調印した。だが支援の実現状況は不明で、中国側は援助実行に核問題進展を絡めている可能性が指摘されている。
金総書記の訪中は、この「経済協力」を進めるほか食糧やエネルギーなど実物援助も獲得するのが大きな目的とみられており、訪中が実現した段階で、北朝鮮は核問題への具体的コミットを余儀なくされる。
ただ、北朝鮮が求めている「米朝協議」については今後に委ねられ、そのハードルは高い。
北朝鮮が要求する6カ国協議復帰の条件は(1)国連安保理決議(1874)の経済制裁解除(2)米国の対北敵対政策の撤回(3)朝鮮戦争の休戦協定の平和協定への転換-で、米国は「制裁は国連安保理決議である」とし、非核化が進まなければ不可能との立場をとっている。また、平和協定は、休戦協定に参加しなかった韓国が「韓国はずし」を警戒しているため、簡単には進まない。
「米中間では確かに協議再開への調整が進んだが、制裁解除は北朝鮮の非核化が大前提-というのがオバマ政権の考えで、その非核化については、日米韓露プラスIAEA(国際原子力機関)による査察が必要というが日本の立場だ」(外務省幹部)
自らの健康問題、そしてデノミ失敗による混乱が続々と外部世界に伝えられる北朝鮮国内の疲弊と社会不安-。金総書記を取り巻く環境は変化の中にある。北朝鮮の突然の体制崩壊が国益に反する中国は、北朝鮮を自らの影響下に置いた中でのソフトランディングを目指している。
米中は核問題で金総書記との取引を開始、米韓はこの機会に心理戦を仕掛けたようだ。金総書記の訪中をめぐって各国の思惑は渦巻いている。