もうひとつの初恋、そして和解
番組編成の仕事が忙しく1時間早く放送局に出勤したサンヒョクに、女子職員が郵便物を渡した。
郵便のほとんどがカードの請求書や何か招待状だとこぼす先輩に
軽く微笑んで郵便物を確認していたサンヒョクの表情が一瞬こわばった。
たくさんの郵便物の中でサンヒョクの目を引いたのは、
ユジンとチュンサンから届いた結婚式の招待状だった。
サンヒョクはユジンとチュンサンが再会したことは知っていた。
サンヒョク自身はまだ直接会っていなかったが、チュンサンが失明したということも話に聞いていて知っていた。
そしてふたりが当然結婚するということもすでに知っていた。
しかしこうやって実際にふたりの結婚式の日取りが印刷された招待状を受け取ってみると、
複雑な気持ちになるのは否定できなかった。
夜遅く家に戻ったサンヒョクは、ぼんやりと椅子に座って招待状を眺めていた。
その招待状にはチュンサンとユジンの名前ではなく、サンヒョクとユジンの名前が書かれていた。
それはまさに、以前サンヒョクがユジンと結婚式を挙げるために準備してあった招待状だった。
新郎キム・サンヒョク、新婦チョン・ユジン。
もしチュンサンがイ・ミニョンとして帰って来さえしなかったら、ユジンはすでにサンヒョクの妻になっていただろう。
しかし運命はいつも予想を超えた形で人生を翻弄する。
ユジンはチュンサンの妻になり・・・、サンヒョクはまた別の人を探すことになるだろう。
ユジンがチュンサンと結婚するという話を聞いても、
以前のようにつらいとか胸が苦しくなるというようなことはもうない。
しかし過去の痛みがよみがえり、泣きそうな気持ちになるのはどうしようもなかった。
サンヒョクは寂しく笑うと、今まで大切に保管してあった昔の招待状を破り捨てた。
そうして引き出しの奥にしまってあった一通の封筒を取り出した。
その封筒には昔、ユジンとチュンサンがフォトスタジオで一緒に撮った写真が入っていた。
チュンサンがユジンとの別れを決意し旅行に出かけた時に、
ユジンと一緒に撮った写真を全部捨ててくれとサンヒョクに頼んであったものだ。
しかし、サンヒョクはその写真をどうしても捨てられずに今までとってあった。
写真の中で楽しそうに笑っているユジンとチュンサンの顔はどことなく似ていた。
ふたりの顔がこんなに似ているのは ふたりが強く愛し合っているからだ。
ふたりがこの写真を撮った後、どれほどつらい思いをして別れただろうか。
サンヒョクはふたりの永遠の幸せを願った、
そして、この写真を返さなければと思った。
サンヒョクの長い初恋が完全に終るのだ。
サンヒョクがそんなことを考えていると携帯電話がけたたましく鳴った。
誰だろう・・・・・・携帯電話を確認するサンヒョクの目に笑みが浮かんだ。
チェリンだった。
(つづく)