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50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

死んだ彼の電話だろう・・・

2015-02-13 21:08:35 | 小説
死んだ彼の電話だろうかと、クモは酔眼をあげて思った。すなおに勉強部屋に去る子供がいる。クモにはおやすみなさいもいわないで。
「あ」
という彼の一声。父親をコバカにした声だろう。クモはそう思い、ゆっくりと目をあげて窓を見た。九階の窓に走る閃光、稲妻がある。頭を抱えてしまっている。
(男の脳裏は小公園のベンチで二転三転する)
何しろ演劇好きのクモだった。常に鑑賞家は聞き手にまわるものなのかも知れないが、息子のような若者にこうクソまじめに、真人間的の調子に、しかも急に冗舌となって、
「ある地方都市は優れた人間はいてられない。そういうことが雑誌にありました。つまり恋愛もセックスも同じで許されるのは、おだやかな関係にかぎられ、激情は許されない。つまりぼくがいいたいのはですね、ここは自由な首都なのであり、彼女の選択が自由に許されている、ということです。ぼくが、どうしても甘っちょろいとか、おじさまは」
と打ってでられても、クモは戸惑うばかり。そう切り口上にでられても弱ると目でいった。

(つづく)


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