50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「すみません。間違って・・・

2015-03-04 20:03:04 | 小説
「すみません。間違っていました」
と若者はさすがに素直にいった。曽根崎心中の舞台は、しかし一種のセックスのカタルシスを呼ぶ。クモはそのカタルシスを確かに期してきていた。節が胸に稲光のように覚えられてあるものだった。そして若者の話声が無人のロビー狭しと響きだし、クモの頭はその話声をむかえた部屋と回想の部屋とにわかれた。そのような感情が信じられないまま、最早黙りこんでクモは耳を傾けている。

(つづく)


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