【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

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【個人事業者の税務調査】推計値による決着(帳簿がない、帳簿を見せない)

2019-05-06 10:30:00 | 税務調査
「帳簿や領収書がない」
「帳簿や領収書を見せない」

どうしてもこのような納税者が出てきます。この状況では、一般的な税務調査のように預金通帳や領収書などの基資料から帳簿を検討して、結果としての申告数値を正すという手法を用いることができません。かといって税務調査を打ち切るというわけにもいきません。

そこで用いられるのは「推計値」による決着です。文字通り、推計によって事業所得を算出して、それで修正申告をするという方法です。当然、これはやむを得ない場合の方法ですので、税務署としては可能な限り納税者に資料の提出を求めなければなりません。

◆推計値の算出方法

推計値の算出方法は様々ですが、たとえば下記のような方法があります。

〇事業に関する特定の数値から算出する
帳簿や領収書がないとはいっても、事業を行っている形跡は必ずどこかに残り、数値が残っていればそれを基に推計することができます。たとえば、飲食店における水道やガスの使用量、各種教室の案内パンフレットや生徒の名簿などがそれです。

〇納税者の生活費から算出する
事業で得た利益は基本的には納税者の生活に費やされます。納税者の住居や家族構成から生活費を算出すれば、そこから事業所得を推計することができます。

〇納税者の資産状況から算出する
「現金(硬貨と紙幣)」「預貯金」「株式」「不動産」「貴金属」といったように、資産は明確な形として残りますので、資産からは事業所得を推計しやすいのです。

上記のほかにも様々な方法が考えられます。また、複数の方法を組み合わせて推計値を算出することもあります。

★同業者の平均的申告数値
税務署は調査対象としている納税者と同業の平均的申告数値を把握しています。税務署はこれを参考に推計値を算出しますが、「平均」ですので調査対象者の個別事情は考慮されません。つまり、これよりも実額が低い場合もこれに合わせられ、上記の納税者の資産や生活状況から高いと判断される場合には高い数値を採用します。

★当初の申告から推計値を用いる
申告する際に税務署は申告数値の基となった帳簿や領収書などを調べませんので、推計値を用いて計算した申告書でも受付けてもらえます。しかし、あとの税務調査が大変なのはいうまでもありません。

★帳簿を紛失した
この場合も同じです。しかし、「隠すという意図」がないのですから、可能な限り帳簿の再現に努めるべきです。

★データがパソコンの中(あるいはネット上)にある
これも帳簿の紛失と同じです。可能な限りデータを探すことです。

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あわてない・あせらない はじめての税務調査スマート対応
矢野 幸博
大蔵財務協会