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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

課税事業者になることによる収入の変化

2022-10-22 18:30:00 | 消費税
免税事業者がインボイス制度導入後、適格請求書発行事業者の登録をして課税事業者になることを選択した場合、その収入は次のように変化します。

◆制度導入前(免税事業者)

販売に際して受け取った消費税相当額全額が収入となります。免税事業者は税務署に消費税を納める必要がありません。

◆制度導入後(課税事業者)

販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費の支払いに際して支払った消費税を差し引いて税務署に納税しなければなりません。ですから、税務署に納税する消費税相当額の正味収入(収入-支出)が減るということです。

◆免税事業者のままでいる

販売の際に消費税を受け取ることができなくなりますので、この分の収入が減ることになります。制度導入前後とも消費込みで取引をしていたとしても同じです。消費税込みでの取引価格のうち消費税相当額(110分び10を乗じれば計算できます)を減額されます。

◆結論

課税事業者になっても、税務署に納税するのは販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費の支払いに際して支払った消費税を差し引いた額ですので、免税事業者のままでいるよりも正味の収入(収入-支出)は多いということです。

課税事業者になる・・・「受け取った消費税-支払った消費税」が正味収入の減少となる
免税事業者のまま・・・「受け取った消費税全額」が正味収入の減少となる

ということです。

◆今すぐ適格請求書発行事業者の登録をしてください

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_shinei.htm

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★免税事業者は被害者意識を持ってはいけない(益税問題は是正すべき)

免税事業者が消費税を受け取りながら消費税を納税しないという「益税問題」はわが国の消費税制度の重大な欠陥でした。インボイス制度がこれを是正する契機になるのは事実です。「是正」ですので免税事業者は被害者意識を持ってはいけません。

すでに消費税率は10%になり、この先さらに上昇することを考えれば、もう益税問題を放置しておくわけにはいかないのです。

「消費税を受け取って納税する」
「消費税は受け取らない」

今、免税事業者は決断を迫られています!

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税込で請求するのでインボイスは不要?

2022-10-15 18:31:00 | 消費税
「税込で請求するのでインボイスは不要」
「だから、適格請求書発行事業者の登録はしない」

このように考える免税事業者がいます。

◆今までも税込でインボイス制度導入後も税込

このような事業者はインボイス制度導入の前後で次のように請求方法が変化します。

制度導入前の請求額・・・110(内消費税10、ただしこれを明らかにしない)
制度導入後・・・100(消費税相当額は請求できない)

◆今までは消費税別でインボイス制度導入後は税込で請求する

制度導入前の請求額・・・100+10(消費税)
制度導入後・・・100(消費税相当額は請求できない)

このようになります。

◆仕入税額控除とは

消費税の課税事業者は、販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費の支払いに際して支払った消費税を差し引いて税務署に納税しなければなりません。この支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。

インボイス制度導入後はインボイスのない支払いについては仕入税額控除ができなくなります。消費税の免税事業者はインボイスを発行できませんので、課税事業者が免税事業者に対して「消費税相当額」を支払ったとしてもその消費税相当額を仕入税額控除することができなくなります。インボイス制度導入前よりもその消費税相当額の「負担が増える」のです。

制度導入前・・・110(内消費税10、ただしこれは明らかでない)

制度導入前はこれでも10の仕入税額控除ができました。

制度導入後・・・100

仕入税額控除ができませんので支払いを10減額するしかありません。

◆免税事業者は消費税相当額の値引きに応じるしかない

インボイス制度導入後、課税事業者は免税事業者に対して消費税相当額の値引きを要求してきます。免税事業者はこれに応じるしかありません。応じたくない場合には、インボイスが発行できる適格請求書発行事業者の登録をするしかありません。そして、課税事業者になって消費税を納税するしかないのです。

◆インボイス制度は免税事業者を排除することになる

免税事業者が消費税を受け取りながら消費税を納税しないという「益税問題」はわが国の消費税制度の重大な欠陥でした。インボイス制度がこれを是正する契機になるのは事実です。「是正」ですので、免税事業者は被害者意識を持ってはいけません。

「消費税を受け取って納税する」
「消費税は受け取らない」

今、免税事業者は決断を迫られているのです。

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インボイスの経過処置は誰のため?

2022-10-15 18:30:00 | 消費税
インボイス制度には経過処置というものがあります。

「経過措置」と聞いて、「結局、当分は免税事業者も今までどおり消費税を請求できる!」とか「経過措置はいつまでも延長される!」と考える人もいるようです。しかし、そうではありません。経過処置は免税事業者に対する救済措置ではなく、免税事業者に支払いをした課税事業者の救済措置であるからです。

◆インボイスがなくても「一定割合」の仕入税額控除が認められる

令和5年10月1日からインボイス制度が始まると、課税事業者はインボイス(適格請求書)のない支払いについては仕入税額控除を行うことができなくなります。しかし、しばらくはインボイスを発行すべき事業者が適格請求書発行事業者の登録を怠っていて、インボイスの発行ができないという事態も考えられることから所定の経過措置が設けられています。

インボイス制度開始から6年間、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%の仕入税額控除が適格請求書発行事業者でない事業者に対する支払いであっても認められます。インボイスがなくても全額ではないけれども一定割合は仕入税額控除ができるということです。

◆経過措置を受けるための要件は非常に厳格

経過措置により仕入税額控除をするには、インボイスのない支払いにつき、それが「適格請求書発行事業者以外」に対する支払いであることを記録しておく必要があります。

「適格請求書発行事業者」に対して支払いを行う際にはインボイスを入手しなければなりません。経過措置が適用されるのはインボイスの発行ができない「適格請求書発行事業者以外」に対する支払いです。インボイスを入手できなかった支払いの全てではありません。

◆やはり免税事業者との取引は敬遠される

インボイス制度開始後も、経過処置によってインボイスを発行できない免税事業者に対する支払いであっても一定割合の仕入税額控除が認められます。しかし、それは細心の注意を払ったけれども「うっかり」免税事業者に対して「消費税相当額」を支払ってしまった場合の救済措置に過ぎません。免税事業者に対しても消費税相当額の支払いをすることを促しているわけではありません。

やはり、インボイス制度導入後は、課税事業者がインボイスを発行できない免税事業者との取引を敬遠することは明らかです。「経過措置を活用」して免税事業者との取引を続けるということは考えられません。

「あなたはインボイスを発行できるのですか?」、取引に先立って必ず聞かれます。

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【インボイス】もう少しわかりやすい言葉はないのだろうか・・・

2022-10-01 18:45:00 | 消費税
インボイス制度スタートまで残りあと1年となりました。某大手新聞社の新聞記事によると、8月末時点で適格請求書発行事業者として「登録をすべき事業者」で「すでに登録をしているのは3分の1程度」とのことです。

「登録をすべき事業者」とは現在消費税の課税事業者で税務署に消費税の申告と納税をしている事業者のことです。このような事業者でも、令和5年10月1日以降は適格請求書発行事業者の登録をしていなければ販売に際してその相手先に消費税を請求できなくなります。

「残る3分の2、登録していない事業者」はこのまま登録をしなければ、令和5年10月1日以降販売に際してその相手先に消費税を請求できなくなるということです。

◆消費税を請求できないということは税務署に申告と納税をする必要がない(それは違う!)

それがそうではないのです。請求書で消費税を請求できなくても、消費税は受け取っているとされます。いわゆる税込価格とされるのです。

令和5年10月1日以前は「本体価格100円+消費税10円」であったのが、令和5年10月1日以降「消費税込100円」になるということです。

「消費税込110円で請求すればいいということでしょ(笑)?」

それがそんなに甘くないのです。インボイス制度を知ればわかります。相手先が「仕入税額控除」をできないのです。相手先は「消費税込110円」を拒み「消費税込100円」とするように要求します。その要求に応じない場合には「取引の打切り」になります。

◆もう少しわかりやすい言葉はないのだろうか・・・

「適格請求書」
「インボイス」
「仕入税額控除」

一般人でこの言葉の意味を知っている人はほとんどいないと思います。事業経営者でも知っているのは少数派です。しかし、この言葉の意味を知らなければ、令和5年10月1日以降はビジネスの現場から排除されます。

インボイス制度に対する認識が深まらず適格請求書発行事業者の登録が進まないのは、「言葉の問題」であることは明らかです。上記の言葉で税金に関するものと認識できるのは「仕入税額控除」だけだと思いますが、これが消費税に関するものであることは理解できないでしょう。

「税法の条文に忠実に」はわかるのですが、インボイス制度の導入は「商取引の根本システムの大変革」なのですから、国にはもっと「わかりやすい言葉」で説明する義務があります。

現状、国民は「ユーチューブ(民間の発信する情報)」に分かりやすい情報を求めています。「言葉の問題」を理由にインボイス制度の導入が進まないという事態だけは何としても避けなければなりません。多くの事業者はわかりやすく説明すればインボイス制度の趣旨と必要性を理解できます。

◆免税事業者は益税問題を認識している

インボイス制度が導入されると、いわゆる益税問題が解決します。免税事業者が消費税を受け取りながら消費税を納税しないという問題です。

免税事業者はこの益税が消費税制度の趣旨に反することを認識しています。そして、すでに適格請求書発行事業者の登録(イコール課税事業者になる)を済ましている事業者もいます。登録をしていない免税事業者の多くはインボイス制度に対して無知なのだと思います。

◆制度導入は2年程度延期すべきでは!

ロシアのウクライナ侵攻の影響により世界中の物価が上昇し、我が国においても各事業者は「価格調整」に躍起になっています。ロシア(プーチン大統領)はおいそれと矛を収めないでしょう。このような状況下でインボイス制度を「見切り発車」すれば商取引は大混乱し、弱小事業者(適格請求書発行事業者の登録をしていない)が値下げの標的にされることは火を見るよりも明らかです。

令和5年10月1日からのインボイス制度スタートは無理です!

最低でも2年程度は延期すべきです(しかし、中止すべきではありません)。

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インボイス制度に対応するためのコスト

2022-08-02 18:00:00 | 消費税
インボイス制度導入を前にして、経営的に気がかりなのはインボイス制度に対応するためのコストです。インボイスに関する事務処理は思いのほか労力を要します。ITに頼り切っているだけでは適応できません。

◆請求書フォームの見直し

インボイス(適格請求書)のことを今まではなかった特殊な様式の帳票であると思っている人が多いです。しかし、インボイスは従来の本体価格と消費税額が記載された請求書に登録番号を付け加えただけのものです。登録番号は社名(個人の場合は氏名)の下部に「登録番号T・・・・」と記載します。

現状の請求書の用紙が余っている場合には、登録番号を追加で記載すればいいということです。登録番号は手書きやゴム印で記載しても構いません。

◆得意先への連絡

得意先への連絡はインボイス制度導入後最初の請求時でかまいません。ただし、仕入税額控除の適否に関して(適格請求書発行事業者の登録をしているか否かを)、あらかじめ調査をしてくる得意先に対してはその調査に応じなければなりません(登録番号を知らせる)。

◆各種業務ソフト(販売、会計など)のバージョンアップと追加購入

各種の業務ソフトはインボイス制度導入を機に処理手順や処理結果(帳票など)が変わってきますので、バージョンアップや追加購入をしなければなりません。特に変化が大きいのは、消費税の申告に直結する会計ソフトです。インボイスの「発行と入手」、個々の取引を処理する段階で明らかにしておく必要があります。

◆支払先の登録状況を調査する

インボイス制度は正確な「仕入税額控除」を確保するための制度です。インボイス制度においては、インボイス(適格請求書)がなければ仕入税額控除ができません。仕入税額控除の計算はインボイスを入手した取引のみを抽出し集計することにより行わなければなりません。

支払先がインボイスを発行できる適格請求書発行事業者であるかを、請求書が送られてくるまで待っているわけにはいきません。請求書が送られてきて「適格請求書発行事業者ではなかった」ということが判明しているようでは遅いです。それでは仕入税額控除ができません。

◆適格請求書発行事業者である支払先からインボイスを入手する

支払先が適格請求書発行事業者である場合には漏れなくインボイスを入手しなければなりません。支払先が適格請求書発行事業者であっても、その支払いに際してインボイスを入手していなければ仕入税額控除はできないのです。

◆取引関係の見直し

適格請求書発行事業者でありながらインボイスを発行しない
課税事業者でありながら適格請求書発行事業者の登録をしていない
適格請求書発行事業者でないのに消費税相当額を請求してくる

このような支払先があると事務処理が大変です。このあたりが、インボイス制度が取引関係の見直しにつながるといわれる理由です。

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