goo blog サービス終了のお知らせ 

【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

複式簿記とは?(世界標準の記帳方式)

2018-04-11 10:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
帳簿を作成するために、帳簿に関することを調べていると、必ず「簿記」という言葉に出くわします。簿記(ぼき)は、英語で「bookkeeping」といいます。「帳簿を作成する=記帳する」という程度の理解でよいです。

簿記の方式には複式簿記と単式簿記があります。帳簿には様々な取引(入出金など貨幣価値で測定できる出来事)を記録しますが、複式簿記と単式簿記とでは取引の把握の仕方が異なります。

複式簿記では取引の両面を記録します。「売上が生じて現金が増えた」、「仕入をして現金が減った」といった具合です。一方、単式簿記では、「売上があった」、「仕入があった」といった具合に記録をします。

わが国に限らず世界中のほとんどの会社は複式簿記で帳簿を作成しています。市販されている会計ソフトも複式簿記の原理で帳簿を作成するためのものです。複式簿記で帳簿を作成するのが世界標準なのです。「複式、単式」という言葉にこだわる必要はありません。簿記といえば複式簿記なのです。

★仕訳とは?取引とは?

簿記を習得するに当たっては、「仕訳」に対する理解を避けて通ることができません。仕訳とは、取引を記録することです。「取引」とは、入出金など貨幣価値で測定できる出来事で、「1万円で売った」、「5千円で仕入れた」、「電車賃3千円を払った」、「現金10万円を盗まれた」、「倉庫が放火され全焼した」などのことです。「会議で有意義な議論をした」、「優秀な人材を採用することができた」、「お客さんに商品をほめてもらえた」などは簿記での取引ではありません。

仕訳は帳簿を作成し決算書を作成するという一連のプロセスの最初の作業です。帳簿や決算書は仕訳の集計結果です。

★勘定科目とは?

勘定科目とは取引を仕訳する際に、取引を分類し集計する単位です。「売った→売上」、「仕入れた→仕入」、「電車賃→交通費」、「現金で支払った→現金」、「資金を借りた→借入金」といった具合に、取引を分類します。その後に、この分類ごとに集計するのです。

★借方と貸方(試算表の集計場所のこと)

仕訳は左右同額で、左右それぞれに勘定科目を割り当てます(仕訳は左右しかありません)。勘定科目が左右のどちらになるかは、勘定科目ごとに決まっています。仕訳の左側を借方(英語ではdebit)、右側を貸方(英語ではcredit)といいます。この「借方と貸方」という言葉の意味に深入りしてはいけません。

大切なことは、仕訳を集計する試算表を理解することです。試算表には個々の仕訳で生じた左側(借方)の勘定科目は左に、右側(貸方)の勘定科目は右に集計します(試算表は左右しかありません)。仕訳は左右の金額が一致しますので、試算表の左右の合計金額も一致します。勘定科目によっては左右両方に金額が集計される場合がありますが、その場合は左右を差引したものが試算表での集計金額です。

この説明は簿記の教科書では必ずされていますので、この部分は必ず読んでください。会計ソフトでは、このプロセスはブラックボックスになっています。会計ソフトにも試算表と称する帳票がありますが、それは実質的には決算書(貸借対照表と損益計算書)と呼ぶべきものです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

ビジネスセンスが身につく簿記
クリエーター情報なし
中央経済社


発生主義ならではの処理の具体例

2018-04-05 12:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
発生主義で帳簿を作成する場合、次のような発生主義ならではの処理が必要で、それに応じた帳簿や記帳が必要となります。

◆売掛金に買掛金

売掛金とは売上代金の未回収部分のことです。発生主義においては、入金を待たずして売上を計上しますので、売掛金という勘定科目が生じ、これを管理する売掛帳を作成しなければなりません。

買掛金とは仕入代金の未払分のことです。発生主義においては、支払いを待たずして仕入を計上しますので、買掛金という勘定科目が生じ、これを管理する買掛帳を作成しなければなりません。

◆前払費用に未払費用

前払費用とは、家賃、保険料などサービスに関する料金を前払し、そのうちサービスの提供を受けていない部分をいいます。この前払費用に相当する金額は、すでに支払いをした記録とは別に、費用の一定額を減額する処理をしなければなりません。

未払費用とは、期間の経過に応じて発生する、借入金の利息、水道料金、電気料金、ガス料金、給料などで、すでに一定の期間が経過しているけれども支払期日が到来していないので支払いを済ませていない部分をいいます。未払費用は、支払いが済んでいないのですから帳簿には表われていません。そこで、未払費用が生じているならばこの処理をしなければならないのです。

◆在庫

納品された商品は仕入という費用勘定に計上されますが、その金額は販売された分と未販売の分に区分しなければなりません。販売された部分のみが売上原価として費用処理され、未販売の部分は在庫として繰り越さなければなりません。

◆減価償却

建物や車両などの固定資産は、長期間にわたって使用するので、減価償却という計算手続で複数の事業年度に配分して費用とします。

★発生主義会計の長所

発生主義の発生という概念は大変抽象的です。しかし、次のケースを考えてみると発生主義には合理性があることを理解できると思います。

●自動車販売会社のA社は、本事業年度に100億円の契約を獲得し全て納品もしたけれども、代金の一部である20億円の回収は顧客(支払能力は十分)との約束で翌事業年度となる。なお、この事業年度中の自動車の仕入代金合計は85億円で全額支払い済である。

現金主義(入出金で収益と費用を計上するという方法)で計算すれば次のようになります。

収入(100億円-20億円)-支出85億円=マイナス5億円

発生主義で考えれば次のようになります。

収益100億円-費用85億円=利益15億円

●同じく自動車販売会社のB社は、本事業年度に80億円の契約を獲得し全て納品し代金も回収した。この事業年度中の自動車の仕入代金合計は85億円であるけれども、うち15億円は支払っていない(無理をお願いして支払いを待ってもらっている)。

現金主義(入出金で収益と費用を計上するという方法)で計算すれば次のようになります。

収入80億円-支出(85億円-15億円)=10億円

発生主義で考えれば次のようになります。

収益80億円-費用85億円=利益マイナス5億円

どちらがよい会社かは一目瞭然です。B社は支払いを延ばして窮地をしのいでいるにすぎません。

発生主義はごく自然な考えなのです。発生主義は経済の発展に伴って徐々に形成され、この先も変化していきます。会計数値には様々な利害が関係してきます(会社、経営者、株主、債権者、投資家など)。会計のルールは、利害関係を調整しながら発展していくものなのです。初めて会計を学ぶ人が理解に苦しむことや、専門家でも簡潔明瞭に説明できないのは当然のことです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

財務会計入門(第5版)
クリエーター情報なし
中央経済社


発生主義?

2018-04-03 18:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
一般の人は、読み方はわかるにしても、意味が理解できる人はいないと思います。発生主義は簿記会計の基本原則です。帳簿と決算書を作成するにあたっては発生主義に対する理解を欠かすことができません。

発生主義とは、帳簿への記録を「入出金の時点以外」でもするということです。売上(収益)は販売の時点で、仕入(収益)は納品の時点で計上するといった具合です。要するに、利益(収益-費用)と収支(入金-出金)は違うということです。

発生主義会計においては、入出金以外の様々な時点で収益と費用を計上しますので、そこには様々なルールが存在します。帳簿と決算書の作成に当たってはそのルールを知り、ルールを守らなければなりません。

★収益に関してはさらに実現主義が

発生主義の中においても、収益に関してはさらに実現主義というルールが求められます。実現主義とは収益の対価が確実になった時点に収益を計上するということです。実現主義も入金を待たずして収益を計上しますが、発生よりもさらに進んだ時点、収益の対価の裏付けを得てから収益を計上するという意味です。「収益は慎重に、客観的に計上する」ということです。

収益の大部分を占めるのは売上です。売上は販売の時点で計上しますが、この販売の時点は業種や業態によって様々です。売上計上時点をめぐっては過去から現在まで、様々な論争が繰り広げられてきました。また、今後も新たな商品やサービスが登場するたびに論争となります。会計における、「終わりのないテーマ」なのです。

★費用収益対応の原則

発生主義における利益の計算では、費用と収益は対応していなければなりません。これは「費用収益対応の原則」と呼ばれるルールです。売上と売上原価の関係はこれにほかなりません。売上という収益(成果)を得るために、売上原価という費用(犠牲)が生じているという対応関係です。

しかし、費用と収益の対応関係を完璧に求めることはできません。給料、交際費、福利厚生費、水道光熱費、通信費、社屋の減価償却費や家賃などの費用は収益と明確な対応関係がありません。売上に対する売上原価のように、売上との直接的な対応関係、つまり比例する関係はありません。

これらは、一定のルールを前提に費用の処理をすることで売上高との対応関係を求めます。そのひとつのルールが、売上と同じ期間の費用を計上するということです。一事業年度分の売上に対して、その一事業年度分の費用(給料や家賃など)を計上するという方法です。もうひとつのルールは、一定の仮説により費用を事業年度に配分するという方法です。有形固定資産の減価償却という設備や備品の取得代金の費用配分計算がこれです。

★論者により説明が異なる(まずは結論であるルールを覚える)

発生主義についての説明は論者によって異なります。結論は同じであっても、結論に至るプロセスが異なります。このことが慣れない人を惑わします。ですから、まずは結論であるルール(具体的な処理方法)を覚えてそれを守ることです。慣れてくると、自分なりの発生主義に対する考えが備わってきます。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

財務会計講義(第19版)
クリエーター情報なし
中央経済社


まずは総勘定元帳から!(税務調査で調べられる帳簿)

2018-03-20 17:01:00 | 経理業務(帳簿の作成)
税務調査では必ず総勘定元帳を調べられます。しかも、最初に調べられます。ですから、税務調査が行われる最初の日には、税務調査の対象期間の総勘定元帳をあらかじめ用意しておき、調査官の指示があったならば直ちに総勘定元帳を提示できるようにしておかなければなりません。

会社に課税される法人税は利益に課税されます。利益は決算書の損益計算書で算出されますが、その損益計算書の基となるのは総勘定元帳です。総勘定元帳は損益計算書を構成する各勘定科目の計算根拠です。売上や経費の中身を知るには総勘定元帳を調べなければなりません。

会社には消費税も課税されます。納税する消費税の計算は、総勘定元帳の中から「消費税を受け取った取引」と「消費税を支払った取引」を抽出し、そこから「受け取った消費税」と「支払った消費税」を計算し、前者から後者を差し引きすることにより行います。

このように、会社の税金と総勘定元帳とは密接な関係があるのです。ですから、税務調査においては、まずは総勘定元帳を調べられるのです。

●総勘定元帳に記載されていることは本当か?

●総勘定元帳に記載されるべき取引が漏れなく記載されているか?

このような観点から、調査官は総勘定元帳を次々に調べます。そして、さらに深く検討すべき事項を絞り込みます。

★総勘定元帳を起点に補助簿を調べられる

総勘定元帳の記載は総括的、集約的であることから、さらに掘り下げた検討を行うには補助簿を調べなければなりません。例えば、総勘定元帳における売上が全得意先の月合計で計上されている場合には、補助簿である売掛帳でなければ得意先別の状況はわかりません。ですから、補助簿を調べるのです。

★帳簿と基資料の照合

帳簿(総勘定元帳や補助簿)は会社が作成するものですから、会社に都合のよい記載をすることができます。虚偽の記載もできます。不都合を隠すこともできます。そこで、税務調査においては帳簿の基資料、それも会社以外の者が作成した外部資料との照合作業を行います。外部資料とは、預金通帳、領収書、請求書、契約書などです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

業種別税務調査のポイント-国税調査官の視点とアドバイス-
クリエーター情報なし
新日本法規出版


消費税の処理には税抜処理と税込処理がある(いずれも利益は同じ)

2018-03-20 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
取引を仕訳するに当たっては、消費税に関連する取引をどのように取り扱うかによって、税抜処理と税込処理の二つの方法があり、いずれかを選択しなければなりません。

◆税抜処理

取引に関する消費税額を抜いて、つまり、取引額を本体価格と消費税額に区別して仕訳するという方法です。消費税が間接税であることからすれば合理的な方法です。

税抜処理においては、受け取った消費税は「仮受消費税」、支払った消費税は「仮払消費税」とし、取引の金額から区別して仕訳をします。納税金額は、事業年度合計の仮受消費税と仮払消費税の差額となり、納税後は仮受消費税、仮払消費税ともゼロとなります。

税抜処理においては消費税に関連するすべての取引を、本体と消費税に区分けしなければなりません。しかし、相手先との価格決定の段階で消費税が区分されていない取引もあることから、納税義務者自らが区分する必要があり大変手間の掛かる方法であります。一般に、税抜処理は事務能力の高い会社が採用する方法です。

税抜処理も会計ソフトがあれば容易に行なえます。ほとんどの会計ソフトにおいて、「『税込入力』の『税抜出力』」ができるからです。しかし、価格表示が消費税込みでされている取引の場合、総勘定元帳や試算表(いずれも税抜き)と現実にギャップを感じてしまいます。例えば、交通費(電車賃など)は、現実の取引においては税込みで行われていますが、総勘定元帳や試算表では税抜きとなってしまいますので、実際よりも費用が少なく計上されているように感じます。

このような実情からすれば、一概に「税抜処理は合理的」ともいえないのかもしれません。

【設例】

年間売上高1080(内消費税80)、年間仕入高864(内消費税64)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。

(1)帳簿
売上1000
仮受消費税80
売掛金1080
仕入800
仮払消費税64
買掛金864

(2)損益計算書
売上1000
仕入800
利益200

(3)貸借対照表
仮受消費税80から仮払消費税64を差し引いた16が未払消費税(納税する消費税)として表示されます。

◆税込処理

消費税込みの取引額でもって仕訳をする方法です。収益には受け取った消費税が含まれ、費用には支払った消費税が含まれることから、消費税額が利益に影響します。しかし、最終的な納税額を費用として処理することにより、利益は税抜処理と同様の結果となります。

【設例】

上記、税抜処理の場合と同じく、年間売上高1080(内消費税80)、年間仕入高864(内消費税64)とします(これがすべての取引で、売上、仕入とも1回限り行われたとします)。

(1)帳簿
売上1080
売掛金1080
仕入864
買掛金864
租税公課16→納税する消費税(80-64)

(2)損益計算書
売上1080
仕入864
租税公課16
利益200

最終的な利益は、税抜処理の場合と同じになります。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

消費税を上げずに社会保障財源38兆円を生む税制
クリエーター情報なし
大月書店