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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

売上(販売と代金回収)に関する基礎資料

2018-09-27 12:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
売上と売掛金に関する帳簿は売掛帳(誰に、何時、何を、いくらで売り、どれだけ代金を回収したかの記録)ですが、売掛帳を作成するには売上や売掛金に関する基礎資料を収集しなければなりません。売上や売掛金は、販売活動の各プロセスが進むに従って生じるわけですから、「注文(契約)」「出荷(納品)」「請求」「代金回収」に関する資料を入手する必要があります。

★注文書
注文が売上に関する記録のスタートです。注文があれば、「誰に」「何時」「何を」「いくらで」販売するということが確定します。注文の段階では売掛帳への記録はしませんが、個々の注文を漏れなく記録して、その全てが売掛帳に正確に反映されているかを追跡しなければなりません。漏れなく記録するということはあらゆる事務作業において大変重要なことです。

★契約書
販売する商品やサービスによっては、契約書で様々な販売条件を決定することがあります。この契約書に記載された契約事項(納品や代金回収の条件など)は、事務作業をするにあたっての参考や判断材料となります。

★受領書(商品を引き渡した記録)
商品の引渡しが売掛帳を記録するスタートです。商品の引渡し日が売上計上の日付になるからです。ですから、商品を引き渡した記録である受領書、つまり顧客の受取印と受取日付などが明らかにされている資料は必ず入手しなければなりません。なお、運送業者経由で引き渡す場合には運送業者の荷物の受取書を受領書とします。

★請求書控
注文や契約の段階での販売内容が最終的には変わってしまう場合があります。その最終的な結果は請求時に明らかにされますので売上計上は請求書の内容と金額で行います。なお、請求書そのものは顧客に渡しますので、それと同一内容の「控」を保存しておかなければなりません。

★領収書控
顧客は請求書で確定した代金を支払ってくれますが、その支払いの記録が領収書控に他なりません。通常、領収書は複写式になっており、複写されたものを控として残しておきます。領収書は連番をつけて管理し、領収書を発行したならば速やかに入金記録を帳簿(売掛帳の総勘定元帳)に残さなければなりません。

★預金通帳
顧客が銀行振込によって代金を支払う場合には領収書の発行を省略することは通常です。ですから、それにかえて預金通帳を手掛かりに入金記録を帳簿(売掛帳の総勘定元帳)に残します。

以上の資料は売掛帳を作成するだめでなく、社内外の調査や監査(税務調査、公認会計士監査、内部監査など)の際に提示しなければならない証拠資料でもありますので大切に保存をしておかなければなりません。

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売掛帳(売上帳、得意先元帳などとも呼ばれる)

2018-09-18 12:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
売上に関する帳簿は、「売掛帳」「売上帳」「得意先元帳」などと呼ばれ、この帳簿で「売上という収益」の集計と「売掛金という資産」の算出(増加-減少=残高の計算)を行います。売上を集計するため、「何時」「誰に」「何を」「いくらで」売ったかを記録しなければなりません。売掛金を算出するため、代金を「何時」「誰から」「いくら」回収したかを記録しなければなりません。

売掛帳は得意先の数だけ作成します。記録と計算は「誰に」という単位でするからです。「どの得意先に」「どれだけ販売したのか(請求したのか)」「入金されたのか」「入金されていない金額はいくらあるのか」がこの帳簿に記録されなければなりません。

いわゆる「販売管理ソフト」では、売掛帳は必ず作成できるようになっている帳簿です。売掛帳は請求業務(請求書発行)と直結した帳簿です。売掛帳がなければ、どこにどれだけ請求してよいのかわかりません。販売管理ソフトでは売掛帳の作成は欠かすことのできない重要な機能なのです。

★売掛金一覧表(複数の得意先を一覧にして概観する)

売掛帳は個々の得意先ごとに、どの商品を販売したかまで記録されますが、複数の得意先についての概略を同時に把握するのには不向きです。そこで、各得意先の「売上」「入金」「売掛金残高」を一覧にした「売掛金一覧表」などと呼ばれる表を作成します(通常は月単位で作成します)。この表も売掛帳同様、販売管理ソフトで必ず作成できるようになっています。

★売掛帳と総勘定元帳(試算表と決算書)の関係

売掛帳は個々の得意先単位で作成します。一方、総勘定元帳では、販売は「売上高」と「売掛金」、販売代金の回収については「売掛金」という勘定科目単位で集計、算出されます。

総勘定元帳は仕訳を勘定科目単位で集約したものですが、この仕訳にデータを提供するのは個々の販売や代金回収の記録をした売掛帳に他なりません。売掛帳は仕訳を通して総勘定元帳と試算表、最終的には決算書に反映されます。このように試算表は売掛帳のデータに基づいて作成されることから、全ての売掛帳の売上を合計した金額、売掛金残高を合計した金額は試算表の金額に一致します。

★販売管理ソフトから財務会計ソフトや在庫管理ソフトへのデータの提供

販売管理ソフトでは売掛帳が、財務会計ソフトでは総勘定元帳が作成されますが、販売管理ソフトの販売と代金回収に関するデータは財務会計ソフトにそのまま転用できることから、同一ソフトメーカーの販売管理ソフトのデータは財務会計ソフトに提供できるという構造になっていることがほとんどです。

さらに、売掛帳の「何を売った」ということに関しては在庫(商品の動き)とも関連してきます。販売管理ソフトは仕入在庫管理ソフトとも連携して在庫に関する情報(品名や品番、払出し)を共有していることが通常です。

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役員報酬(社長の給与)の手取り

2018-09-05 12:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
役員報酬(社長の給与)も従業員の給料と同じように「総額」と「手取り」があります。役員報酬を会社から支払うにあたっては、この手取り金額どおりでなければ「過不足」が生じてしまいます。この過不足は「会社と社長との貸借関係」として精算が必要となり、この精算を怠ると決算数値を「汚してしまう」ことがあります。「社長貸付金」「社長借入金」、経理がずさんな会社の決算書によく表れる勘定科目です。

月額の役員報酬から徴収するのは下記の項目です。

所得税
住民税
健康保険料
介護保険料(40歳以上の場合)
厚生年金保険料

従業員との違いは雇用保険料が無いということだけです。役員報酬についても給与台帳と給与明細が必要であることはいうまでもありません。

★預かった(徴収した)税金や保険料を支払うときの処理

役員報酬を支払うときはともかくとして、預かった税金や保険料を支払うときの処理に戸惑うことがあります。

役員報酬を支払った際に預かった税金や保険料に相当する金額は会社にプールされています。しかし、預かるといっても役員報酬からの天引きですので「預かったという実感」がありません。また、預かったお金を区分けしている、つまり通常の現金(硬貨や紙幣)と区別している、それ専用の預金口座に保管していることもありません。

そこで、税金や保険料を支払うときに再び預かってしまう、社長が会社に資金を提供してしまうことがあります。当然、このようなことは必要ありません。これをしてしまうと社長借入金が生じてしまいます。(実際に資金が不足している場合にはこのようにしなければなりません。)

★出金があるのは給与総額という認識が必要(保険料については会社負担額も考慮)

役員報酬に関わらず従業員給与においても、出金はあくまでも給与総額であるという認識が必要です。手取りと税金や保険料を支払う日が異なるだけで、合計すれば給与総額の出費があるのです。さらに、保険料については預かった額とほぼ同額の会社負担があることを考慮しておく必要があります。

★保険料が引き落とされる預金口座の管理(適宜補充すればよい)

保険料が引き落とされる預金口座の資金補充は、適宜必要な額を補充すればよいです。徴収した保険料相当額を入金した「記録を通帳に残す」べく、徴収した保険料相当額を入金していることがありますが、その必要はありません。

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帳簿組織

2018-04-25 11:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
「帳簿組織」と聞くとなんだか堅苦しく感じるかもしれません。帳簿組織とは、いくつかの帳簿が存在して、ある帳簿に記録された取引から仕訳が行われ、総勘定元帳という帳簿と試算表が作成される仕組みのことです。

帳簿組織を構成する各帳簿は、「仕訳の基データとなる帳簿」と「仕訳の結果としての帳簿」に分かれます。

◆仕訳の基データとなる帳簿

仕訳は様々な基データから行わなければなりませんが、それらが個々バラバラでは仕訳の漏れや重複が起こってしまいます。そこで、次のような「帳簿の体系」を構築し、これらの帳簿を基データとして仕訳を行います。

○売掛帳・・・販売と代金回収の記録
○買掛帳・・・仕入と代金支払いの記録
○現金出納帳・・・現金の出入りの記録(経費の支払いはこれに記録される)
○預金出納帳・・・預金の出入りの記録(経費の支払いはこれに記録される)

これだけの帳簿がそろっていれば、「売る」「仕入れる」「諸経費を支払う」という企業の活動の全貌を「網羅」することができます。仕訳の漏れや重複も防げるのです。

◆仕訳の結果としての帳簿(総勘定元帳)

仕訳の結果は総勘定元帳に分類集計されます。総勘定元帳は仕訳を各勘定科目に集計し、試算表にその数値を提供する役割を果たしています。それぞれの勘定科目が「何月何日に」、「どれだけの金額が」、「どのようなことが原因で」増減したかを記録した帳簿が総勘定元帳です。

会計ソフトの機能は、仕訳を入力して仕訳の結果としての総勘定元帳を作成することですので、仕訳の基データとなる帳簿は会計ソフトの外で作成しなければなりません(会計ソフトによっては販売管理ソフトや仕入在庫管理ソフトと連動させる機能があります)。

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帳簿組織は企業の組織そのものです。企業には「売る」「仕入れる」「諸経費を支払う」という活動をする各組織があり、各組織の活動の結果として簿記の取引が行われています。これをもれなく記録するのが帳簿に他なりません。そして、この帳簿の集合が相互に連動しているのが帳簿組織です。

帳簿を作成していると、仕訳や勘定科目に目を奪われて帳簿組織のことを忘れがちですが、設立して直ぐの会社が帳簿を作成するとき、既存の企業が事業内容の変化などにより組織が変わったときには、この帳簿組織について考えなければなりません。

簿記の教科書においても帳簿組織について説明されています。

取引を仕訳にする(勘定科目に分類する)

勘定科目を試算表に集計する(そのプロセスが総勘定元帳)

試算表の勘定科目を貸借対照表と損益計算書に分割する

この簿記のメカニズムに数値を提供して計算結果を決算書に提供する具体的方法が帳簿組織にほかなりません。

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簿記にゴールはない!(簿記と会計の違い)

2018-04-17 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
簿記のメカニズムは非常に簡単です。

取引を仕訳にする(勘定科目に分類する)

勘定科目を試算表に集計する(そのプロセスが総勘定元帳)

試算表の勘定科目を貸借対照表と損益計算書に分割する

この簿記のメカニズムはすでに完成されたものなので、今後も変わることはありません。簿記は、一度習得すれば、これを一生にわたって活かすことができます。それは、「九九」と同じなのです。また、会計ソフトにデータを入力すれば、上記の作業は自動的にしてくれます。

しかし、それでも簿記(決算書の作成)は難しいです。

簿記での記録の対象となる取引は無数にあり、教科書で説明されていない取引に遭遇することも頻繁にあります。また、取引として記録しなければならない経済事象そのものは日々変化しています。仕訳は、経済事象の性質(本質や背後)を正確に理解しなければできません。ときには、経済事象そのものが、不明瞭、不透明なこともあります。この場合は、勘定科目はおろか金額さえ決まりません。

簿記に障害はつき物です。どこまでいってもゴールは見えません。簿記にゴールはないのです。

★簿記と会計の違い(ゴールがないのは会計!)

「簿記会計」などといって、簿記と会計を同一であるかのような説明をすることがありますが、両者を区別したほうがわかりやすいです。

簿記は上記のとおり、取引を集計して決算書を作成するという計算技術(方法)です。会計は、簿記で集計する仕訳をどのようにするか、つまり「勘定科目」「金額」「日付」をどうするべきかの理論や諸制度です。

簿記の計算技術はすでに完成した原理原則です。簿記はすでにゴールに達しています。しかし、会計は時代によって変化していきます。それは、会計の対象とする経済事象が刻一刻と変化しているからです。時代によって会計が解決しなければならない課題は異なります。会計には次から次に解決しなければならない課題が突き付けられるのです。ゴールがないのは会計です。「今年はうまくいったので、来年も大丈夫!」は甘いです。

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