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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

売上(個人事業者の勘定科目)

2022-02-05 13:00:00 | 所得税の確定申告
個人事業者の事業所得の計算において売上(収入)が重要であることはいうまでもありません。また、売上金額は個人事業者に関しての「重要指標」であることから、様々な局面で指標として売上金額が用いられます。すでに2年間も続いているコロナ禍において、持続化給付金の支給から始まった各種公的支援を受けるための要件としても売上金額が指標として用いられています。

売上の計算が正確でなければ事業所得の計算が正確にできないばかりでなく、個人事業者としての指標も不正確になってしまいます。以下、売上の計算にあたっての留意点をまとめておきますので参考にしていただければ幸いです。

◆月単位で計算する

所得税の計算は年度(暦年)単位で行いますので、事業所得の計算の一要素である売上の計算も年度合計ですればいいということになります。しかし、指標ということに関しては月別の売上も重要であることから、売上は月ごとに計算し年額はその合計でするという方式によらなければなりません。

◆いわゆる発生ベースで集計する

「売上は入金のときではなく・・・」、いやというほど読んだり聞いたりしているかと思います。この「発生ベース」の売上の計算は月単位の計算においても徹底しておかなければなりません。

◆売上から差し引くもの(値引と返品)

売上から差し引かれるものがあります。値引と返品です。共にそれらが確定した月に売上から減額します。例えば、5月に請求し(売上は5月)6月に値引や返品が確定した場合には、6月の売上から減額します。

◆売上から差し引かないもの(貸倒れなど)

売上と関連するけれども売上から差し引かないものもあります。例えば、貸倒れ(代金が回収不能になること)や当方負担の振込手数料です。これらは、売上はそのままにしておいて、必要経費に関する勘定科目に計上することによって事業所得を減額します。

◆源泉徴収される職業(売上は源泉徴収される前の金額で計算する)

収入から源泉徴収される職業の場合、売上は源泉徴収される前の金額になります。源泉徴収された税額は税金の前払であって、売上の値引や返品ではないからです。源泉徴収された税額は最終的に計算された税額から差し引きます。

◆消費税の処理(税込処理の場合は売上に含める)

消費税に関しては、売上に消費税額を含める税込処理と、消費税は含めない税抜処理があります。いずれを選択するかは自由ですが(免税事業者は税込処理のみ)、年度を通していずれかに統一しなければなりません。また、年度ごとの比較ということに関しても安易に変更はしないほうがいいと思います。

◆本業以外の収入

売上の計算に含めるのは本業の収入に限られます。事業用車両の売却収入、補助金や支援金は売上には含まないということです。

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★正しい方法を確立してその方法を継続して用いる

事業所始めたならば早期に正しい売上の計算方法を確立して、その方法を毎月毎年継続して用いてください。月や年度によって売上の計算方法を違うと、月や年度ごとの比較ができなくなるからです。

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個人事業者の廃業(確定申告などで還付されるケースも)

2021-02-11 13:01:00 | 所得税の確定申告
個人事業者が廃業した年の確定申告に関する税法の規定は大変「芸が細かい」です。税法は大変緻密で、納税者に厳格で冷酷な部分が多々ありますが、廃業に関する規定については廃業する納税者の心中を察した温かみのあるものとなっています。

還付されるケースもありますので、「廃業したんだから、もう確定申告なんてどうでもいい・・・」では損をしてしまいます。

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◆廃業する年の確定申告

廃業した年であっても、確定申告をするのは翌年の2月16日から3月15日までです。事業所得の計算は廃業する月の分までをします。収入については最後の請求(販売)分まで、必要経費はその収入に関するものを差し引きできます。

◆廃業した翌年に必要経費が生じた場合

廃業後に必要経費が生じることもあります。例えば、遅れて送付されてきた請求書、売上代金の回収不能額(貸倒損失)です。当然、これらについても必要経費に含めることができます。

廃業した翌年、つまり事業所得の収入がゼロの年に必要経費が生じた場合は「更正の請求」をすることによってすでに提出した確定申告書の訂正ができます。しかし、この手続は事後的な必要経費が生じてから2か月以内にしなければなりません。もう少し待ってほしいですね。せめて1年くらいは。

◆事業税の扱い

個人事業者の事業税は、住民税同様1年遅れて課税されます。令和3年分の事業税は、令和2年の所得税確定申告の申告数値を基に、令和3年の5月頃になって都道府県から通知されます。そして、事業税が必要経費となるのは納付をした令和3年です。

令和2年に廃業した場合には、令和3年には事業所得がありませんので、令和3年に納付した事業税は必要経費にはなりません。そこで、令和2年の確定申告でこの事業税を必要経費として計上することが認められています。

◆純損失の繰戻しによる所得税の還付請求

マイナスは繰り越すのではなく、繰り戻すこともできます。令和2年の事業所得がマイナスで、令和1年の事業所得がプラスであれば、令和1年分として納付した所得税の一定額を還付してもらうことができます。

◆事業所得以外の所得との損益通算

廃業後、その年のうちに働き口を探して給料をもらうようになっていた場合には、給料から徴収された源泉所得税が還付されることがあります。

事業所得がマイナスの場合には、そのマイナスを給与所得と損益通算できるのです。たとえば、事業所得のマイナスが100、給与所得はプラス100であった場合、損益通算すれば課税はされません。この場合、給料から天引きされた税金は確定申告により全額還付されるのです。

◆予定納税分の還付

令和2年分として予定納税した分が確定申告による税額よりも多い場合には、確定申告すれば、その多い額を還付してもらうことができます(事業所得以外に所得がないとして)。

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「芸が細かくて温かみがある」のはいいのですが、計算や手続をもう少し簡単にして、さらに申告や手続の期限も延ばしてほしいです。今のような方式では手続を忘れる人のほうが多いと思います。

早急に改正されることを強く望みます!(遡及しての救済もしてほしいです。)

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個人事業者の廃業(気持ちはまだ死んでいない!)

2021-02-11 13:00:00 | 所得税の確定申告
★廃業しても「復活」できます!

廃業すると二度と事業ができないと考えている人がいますが、そんなことはありません!廃業しても、何度でも復活することはできます。廃業するときにも、復活するときにも所定の手続をすればいいだけです。

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◆個人事業者の廃業

廃業とは事業をやめてしまうことです。事業主が高齢になったけれども後継者がいないというのが廃業する一番の理由です。しかし、事業主の死亡、資金繰りの悪化などの予期しえなかった理由でやむを得ず廃業しなければならないこともあります。(個人事業者が会社を設立する法人成りの場合も廃業となります。)

◆税務上の手続は必須(廃業の届けをする)

個人事業の開業・廃業等届出書

廃業した場合には税務署に上記の届けをしなければなりません。事業をしていれば事業所得の確定申告をしなければなりませんが、廃業するとこれが不要となります。届けがないまま事業所得の確定申告をしなくなると、税務署にすれば「事業所得の申告をしていないのか」、それとも「廃業をしたのか」のどちらであるかの判断ができません。

この届けは、廃業してから1か月以内に税務署に提出しなければなりません。提出を忘れていた場合には、廃業した年度の確定申告書と一緒に提出しなければなりません。

◆機会があれば営業を再開したい(あらためて開業の届けをする)

事業活動が停止となり再開の目途が立たない場合には、どんなに営業を再開したいという意志があっても、税務署に廃業の届けをしなければなりません。

ようやく再開することになったなら、今度は税務署に開業の届けをします。以前の事業と事実上つながりがあっても(同一地、同一業種、同一屋号であっても)、あくまでも「開業」です。

◆期間限定の(単発的な)復活

廃業し、事業以外(給与や年金など)で収入を得るようになってから、期間限定で(単発的に)事業をしていたときと同じ仕事を依頼されることもあります。このような場合は、その仕事に継続性がありませんので活動再開とはいえません。これによって得た所得は「雑所得」として確定申告をしなければなりません。

◆許認可や資格との関係

許認可や資格が必要な業種の場合には、廃業する際に許認可や資格を管轄する役所や団体に所定の届けが必要となります。活動を再開するには、全くの「白紙の状態」から、あるいは「特定の審査や手続は省略」できる場合など様々でしょう。

◆屋号と看板

廃業をすれば屋号は自動的に消滅します。看板は取り外さなければなりませんが、そのまま放置していても事業所得が生じていなければ税務署は問題とはしません。許認可や資格との関係では、廃業したら看板を取り外す義務が生じることが通常です。

◆残った設備や商品

事業をしていたころの設備や商品が廃業後も残り、それが生活用に転用できるのであれば使用や消費をしてもかまいません。

◆事業用の預金口座

名義が屋号の預金口座は解約することが望まれます。屋号の預金口座がいつまでも動いていると、税務署に「本当は廃業していない(事業所得の申告をしていない)」と疑われるからです。

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★廃業届の控は大切に保管しておく

税務署に提出した廃業届の「控」は大切に保管しておく必要があります。控とは、提出した届けの「写し」で、税務署の受付印を押印してもらったものです。この押印をもらうには、届けの提出時に「提出用の写し」を持参しなければもらえません。

この廃業届の控はいつ必要になるかわかりません。もしかしたら、「廃業した人に対する公的支援」の際に必要となるかもしれません。

★破産した場合

破産手続を依頼した弁護士の指示に従って確定申告をしてください。破産しても復活はできます!

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個人事業者の休業(必ず活動を再開してやる!)

2021-02-06 22:30:00 | 所得税の確定申告
個人事業者が「休業」する場合の税務手続

8年前にこのような記事を「何の気なしに」書きましたが、昨年4月以降アクセス数が急増しています。当然です。

今!新たな視点で、「休業」にとどまらず、「転業」「廃業」「活動再開」までについて書かせていただきます。

コロナ禍は必ず収束します!人々が肩を寄せ合う、向かい合う生活が必ず戻ります。

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◆休業する理由

休業をする理由には、次のとおり自発的なものと非自発的(強制的)なものがあります。

〇自発的なもの
店舗改装、長期休暇(充電期間)など
〇非自発的(強制的)なもの
災害、事業主の病気やケガ、公的な休業要請など

◆休業は活動再開を前提とする(税務署への届けは不要)

休業は廃業とは違います。休業は様々な事情で営業ができない状態で、事業主には廃業する意思はなく、活動の再開に備えて「設備」「人員」「取引先」は維持しています。休業は、新規開業前の準備期間と同じ状況なのです。

休業についての「届け」を税務署に提出する必要はありません。ただし、休業すると前年よりも収入(売上)が大幅に減りますので、青色申告決算書あるいは収支内訳書の「本年中における特殊事情」に休業した旨を具体的に記載しておく必要があります。

◆休業中でも生じる必要経費

休業中でも必要経費は認められます。休業は活動再開を前提としていることから、設備や人員は維持しておく必要がありますので当然これらについてのコストは生じます。このコストは将来の収益に対応するものなのです。また、「休業中だからこそ」生じる必要経費もあります。たとえば、設備を停止させるには設備を稼働させる場合とは違うコストが生じることがあります。

◆休業が長期化しそう(とりあえずは廃業の届けをする)

休業が長期化しそうな場合には、たとえどんなに活動を再開するという意志が強くても、確定申告においてはどこかで「廃業」と判断しなければなりません。1年の途中から終わりまで(例えば10月から12月)売上がないのであれば休業として確定申告をすればいいですが、確定申告の対象となる丸1年間(1月から12月)にまったく売上がない場合には廃業ということになります。廃業ですので必要経費の計上は認められません。(判断が難しいケースもあります。)

廃業の場合は税務署に下記の届けをしなければなりません。

個人事業の開業・廃業等届出書

◆許認可や資格との関係

営んでいる業種に許認可や資格が必要な場合には、休業する際に許認可や資格を管轄する役所や団体などへ所定の届けをしなければならないこともあります。

◆転業

転業後の事業内容が従来行っていた事業と全く異なる場合であっても、事業主は同一人ですので税務署への届けは一切不要です。ただし、転業後は申告内容(特に事業所得の計算内容)が従来と大きく異なるでしょうから、転業した旨を青色申告決算書あるいは収支内訳書の「本年中における特殊事情」に記載しておく必要があります。

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確定申告書は「一筆入魂!」で記入(公的支援申請に備える)

2021-02-03 19:00:00 | 所得税の確定申告
★持続化給付金の申請における「月別売上」には意表を突かれた!

持続化給付金の支給要件の判定にあたって、所得税の確定申告書に添付する青色申告決算書の「月別売上」に記載した数値が採用されたことに意表を突かれた人は多いと思います。というのは、所得税は暦年単位で課税されるので月別の数字はどうでもよく、「年間の売上」さえ正確であれば、月別の売上にズレがあっても(たとえば、3月分の売上を4月分に含めている)何の問題もありません。しかし、持続化給付金の支給要件の判定においては青色申告決算書に「記載してしまった!?」数値で判定されたのでした。

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◆税務署に提出する書類は記載が「粗雑」でも受け付けてもらえる

ほとんどの役所は、提出書類に不備があれば窓口で受け付けさえしてもらえません。しかし、税務署は申告書に住所や氏名が正確かつ明瞭に記入されていれば、ほかの記載事項はそれなりに記載されていれば受け付けてくれます。

これは税務行政の性質から来ています。税務行政を担う税務署としては、まずは一人でも多くの納税義務者に申告納税義務の第一歩である「申告書の提出」をしてもらう必要があります。そこで、受付けの段階でのチェックは必要最小限にとどめ、不備事項の修正は後日の税務調査などで行うという方法によっているのです。

そんなことから、「あまり自信はないけれども」とか「記入しなかった個所もあるけれども」といった申告書も受け付けてもらえます。また、形式さえ整っていれば内容は虚偽の申告書も受け付けます。

◆確定申告書には税額に影響しない記載事項もある

確定申告書には税額に影響しない(参考程度の)記載事項もあります。このような記載事項については「記載を省略する」「間違って記載した」としても税務署に指摘をされないことがほとんどです。しかし、公的支援においてはこのような記載事項が「重要参考データ」と扱われることもあります。持続化給付金における「月別売上」がそれです。

「事業所の所在地」「屋号」「業種」「減価償却資産の名称、取得年月、事業専用割合」「地代家賃の支払先」「取引先の名称」など、正確に記載しておく必要があります。

必要経費の「科目」も要注意です。対税務署という視点では、科目の名称よりも「必要経費になるかどうか」が重要ですが、公的支援の申請においては「事業実態」を正確に示すことが求められると思います。「とりあえず雑費」といった処理はしないで、各科目への正確な割り当てが必要となります。また、既存の科目で不足する場合は科目の新設もしなければなりません。

「貸借対照表」、会計ソフトを使って記帳をすれば自動的に作成できます。しかし、それでは公的支援の申請には使えないこともあるかもしれません。預金や借入金の残高、元入金さえも申請に必要とされるかもしれません。

「零細な個人事業者の経理のレベルなんて・・・」といった論理は、畑違いの役所には一切通用しないと考えておいたほうがいいです。

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ひとたび役所に提出した書類、さらには人手に渡ってしまった書類は、たとえそれが間違いであっても、もはや訂正することはできません。この先も様々な公的支援が行われるでしょうが、その際には確定申告書控の提出が必ず求められます。だから、確定申告書は「一筆入魂!」で記入し、「確信の持てる」内容にしておかなければならないのです。

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