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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

創業した年の年末調整と確定申告(会社を設立した場合)

2015-10-09 17:00:00 | 源泉徴収と年末調整
■サラリーマンを辞めた年に会社を設立した場合

サラリーマンを辞め、会社を設立した年の年末調整はいきなり「応用型」です。年末調整の「基本型」は、1年を通して同じ職場に勤めていて、その職場からもらう1年分の給与について税額を計算するというパターンです。年度途中で転職して年末には別の職場に在籍している場合には、前職分と年末の職場の分を合計して年末調整をします。

年度途中でサラリーマンを辞めた場合には、サラリーマン時代の給与と自身が設立した会社の給与(役員報酬)を合計して年末調整をします。サラリーマン時代の給与の額は勤務先から発行を受けた「源泉徴収票」【注】に基づきます。

■サラリーマンを辞めた年は創業準備で終わった場合

会社を設立した年は創業準備で終わってしまった場合には年末調整ではなく、「所得税の確定申告」をしなければなりません。「事業所得もない(個人事業者でもない)、医療費控除も受けないのに確定申告ですか?」と思われるかもしれません。しかし、年末調整は年度末に勤務している人(会社役員含む)に対して行われる手続ですので、創業準備で終わった場合には年末調整で税額を精算することはできないのです。

確定申告といっても手続は簡単です。退職した勤務先から発行を受けた「源泉徴収票」【注】を持って税務署に行き、「昨年、会社を辞めました。その後はどこにも就職していません。」といって源泉徴収票を見せれば1時間程度で手続は済みます。

【注】源泉徴収票の発行は受けましたか?「記憶にない・・・」という人は探してください。おそらく、退職した月の給与明細と一緒にもらっていると思います。自分で設立した会社の給与は自身で計算しなければならないことはいうまでもありません。

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★手続を忘れていると(正確にできていないと)税務署や市役所から指摘を受ける場合があります
あらゆるケースでそうであるとは限りませんが、手続を忘れていると(正確にできていないと)税務署や市役所から手続をするように促される場合があります。その時期は翌年の3月以降です。年末調整はとっくに終わり、確定申告も終わろうとしている時期です。まさに、「寝耳に水」です。

パート・アルバイトと正社員の税金の違い?(理解していない雇用者が多い)

2015-10-03 12:30:00 | 源泉徴収と年末調整
パート・アルバイトと正社員とでは雲泥の差です。特に、正社員を目指しながらパート・アルバイトに甘んじている人にとっては正社員という立場は羨望の的です。

しかし、これは意外に知られていないことなのですが、パート・アルバイトと正社員の税金の扱いは全く同じなのです。立場の弱いパート・アルバイトの給料は税制上も優遇されるべきではと考える人もいますが、全くそういったことはありません。共に給与所得として同じように課税されます。特定の給料は課税が免除される(税務関連役所へ報告の必要がない、記録を残す必要はない)といったことはありません。ただし、給料が少ない分、所得に応じて所得税率が低くなるだけです。

このような誤った認識は、雇用者側(会社や個人事業主)にもあり、次のような誤った事務処理をしていることもあります。

■給与台帳を作成していない(記録を残していない)
「雇用期間が短い」とか「出入りが激しい」とかは関係ありません。給料を支給した以上は、支給した者全員の給与台帳を作成しなければなりません。給与計算ソフトを使用している場合には「登録」が必要です。

■扶養控除申告書を入手していない
扶養控除申告書を書いてもらっていない場合には、たとえ月額1万円の給料であっても源泉徴収が必要になります。「源泉徴収の対象額(月額)を超えることはないので源泉徴収は不要」といえるようにするには扶養控除申告書を入手しておく必要があります。

■源泉徴収をしていない(乙欄に注意)
月額8万8千円以上の月は当然として、月額8万8千円未満であっても掛け持ちで勤務している者については「乙欄」で源泉徴収をしなければなりません。乙欄?

■源泉徴収票を発行していない
給料を支払った者全員について源泉徴収票を発行しなければなりません。「税額がゼロ」「家族の配偶者・扶養控除の対象」「年末調整はしていない(年度途中でやめた)」は関係ありません。

■源泉所得税の納付書に記入していない
源泉所得税の納付書を記入するにあたっても源泉徴収税額がゼロであっても「人員」「支給額」に含めなければなりません。源泉徴収をした場合には「税額」に含めるのは当然です。

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★月額8万8千円未満は源泉徴収不要
あらゆる判断・手続・事務作業をした結果であることをご理解いただけたかと思います。

★雑給という勘定科目
「雑給」という勘定科目を使用することは多いです。役員の給料は「役員報酬」、正社員の給料は「給料手当」、それ以外(パートやアルバイトなど)を「雑給」として処理します。人件費をこの区分で処理することは管理上大切なことですが、雑給の源泉徴収処理が適切に行われていないことが非常に多いです。中には、「雑給で処理しておけば源泉徴収は不要」といった誤った考えをしていることがあります。「雑給は月額8万8千円未満なので(源泉徴収が不要なので)」は甘いです。危険です!

会社を設立した直後の源泉徴収事務(まずは税務署に行きましょう!)

2015-09-04 18:30:00 | 源泉徴収と年末調整
会社が役員や従業員の給与(給料、賞与)、弁護士や税理士などに報酬を支払う場合、それらを支払う都度、支払金額に応じて所得税を差し引くことになっています。これを「所得税の源泉徴収」といい、所得税を差し引いて(源泉徴収して)税務署に納付する義務がある者を「源泉徴収義務者」といいます。

■源泉徴収した所得税はどうやって納付するのか?

税務署所定の納付書で納付します。この納付書は自ら税務署にもらいに行く必要があります。黙っていても税務署が届けてくれません。

源泉徴収した所得税は月ごとに源泉徴収した翌月10日までに納付します。例えば、1月中に源泉徴収した所得税は2月10日までに納付しなければなりません。ただし、一定の要件を満たし、所定の手続をした場合には半年分(1月から6月、7月から12月)を一括して納付することができます。

納付そのものは銀行、信用金庫などの金融機関でします。もちろん税務署で納付することもできます。

■年末調整をする

給与(役員報酬を含む)の源泉徴収と切っても切れない関係にあるのは「年末調整」です。

年末調整は、給与所得者(サラリーマン、会社役員)の1年間の税額を確定・精算するという給与所得者にとっての「確定申告」です。給与所得者は1ヶ所からの給与所得しかなく、ほかに所得がない場合には、年末調整だけで税額が確定することから自ら確定申告をする必要はありません。

給与(毎月の給料、賞与)から源泉徴収されている所得税は、一定の仮定の基づく「仮の税額」ですので、どうしても最終的な税額とは異なってしまいます。そこで、年末調整という精算手続が必要となるのです。

◆◆◆源泉徴収に関する知識を手っ取り早く身に付ける方法(それは税務署に行くことです!)◆◆◆

会社は必ず役員報酬という給与を支払うので、会社を設立した瞬間から源泉徴収義務から逃れることはできないと考えなければなりません。会社を設立する人は法人税の計算方法や節税には関心はあるのですが、源泉徴収には無頓着なことが多いです。会社を設立したら「まずは源泉徴収!」と肝に銘じてください。

以下は源泉徴収に関する知識を手っ取り早く身に付ける方法です。設立時の慌ただしい時期でも、この方法でしたら何とかなると思います。

■税務署へ「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する(設立届と同時に提出する)

実務上は会社設立と同時に源泉徴収義務者になったとして「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。この届けは法人設立届出書と一緒に提出します。

面倒でも、どんなに忙しくても、まずは税務署に行ってこれを提出するのが源泉徴収事務のスタートです。この届けの用紙はわずか1枚で、税務署員に教えてもらえば数分で記入できます。この届けを提出しておけば、源泉徴収に関する様々な連絡や情報が税務署から書面で送られてきます。

■「源泉徴収のしかた」というパンフレットをもらう

「給与支払事務所等の開設届出書」を提出するときにもらってください(国税庁のサイトからでも入手できます)。

無料です。約30ページで源泉徴収の要領が大変わかりやすく説明されています。給与や報酬から源泉徴収する税額の計算方法、納付すべき税額、年末調整などについて詳しく説明されています。源泉徴収を理解するにはまずはこれを読む必要があります。

■「源泉徴収税額表」をもらう

これも、「源泉徴収のしかた」と一緒にもらってください(国税庁のサイトからでも入手できます)。

給料や賞与から源泉徴収すべき税額を、給料や賞与の額および扶養親族の人数から定めた表です。これがなければ源泉徴収はできません。

毎月の給料からの源泉徴収は正確に!

2015-01-11 13:00:00 | 源泉徴収と年末調整
「給料からの源泉徴収が間違っていても年末調整で精算すれば・・・」

確かにそうかもしれませんが、あまりにも精算額が多いと従業員が不信感を抱きます。また、還付が多すぎると会社にとって予期せぬ出費(?)となってしまいます。ですから、毎月の給料からの源泉徴収は正確に行っておかなければならないのです。

★年少扶養親族を控除対象としていた
平成23年から16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象外になりました。にもかかわらず、これを毎月の給料では扶養控除の対象としているケースがあります。特に、今まで年少扶養親族のいる従業員がいなかったので年少扶養親族の扱いを知らず、新たに年少扶養親族がいる従業員がいるようになった場合にこのミスが目立ちます。扶養親族の人数で年税額は相当異なってきますのでご注意ください!

★古い源泉徴収税額表を使っていた
平成25年から従来からの所得税に復興特別所得税が2.1%上乗せされています。これにより毎月の給料から源泉徴収する額を示した源泉徴収税額表も改正されています。古い源泉徴収税額表を使用した場合には2.1%少なくなります。2.1%も全従業員の年間分になると相当な額です。ご注意ください!

ここ数年で税制が目まぐるしく変わりました。税制が変わったときはその年最初の給料の源泉徴収から注意が必要となります。

年末調整でしたね・・・

2014-12-01 18:00:00 | 源泉徴収と年末調整
そう思えば今年もそんな季節なんですね。

今年の年末調整は昨年の「復興特別所得税」のような大きな改正事項もなく、ほぼ前年どおりです。ですから、昨年までに年末調整作業を経験した人は昨年の資料(扶養控除等申告書や源泉徴収簿など)を参考にすれば済みます。

初めて年末調整作業をする人は何時の時代も大変です。年末調整作業の前提として源泉徴収制度があります。源泉徴収の対象となる所得(収入)は多岐にわたり、年末調整の対象となるのはその中の「給与」だけです。しかし、「何が給与か(誰への支払いが給与か)?」という判定が容易でない場合もあります。世間一般で年末調整といえば、「生命保険に加入している人は税金が戻ってくる」「住宅ローンのある人も税金が戻ってくる」という程度の認識しかありませんが、それは年末調整作業の結果にすぎません。その結果に行きつくまでの資料収集や計算には膨大な労力を要するのです。

【国税庁サイト】平成26年分年末調整がよくわかるページ

年末調整に限らず、あらゆる税務手続をするにあたっては、信頼できる情報源の確保が欠かせません。年末調整に関してはこれです。国税庁のサイト以外の市販の書物や情報はあくまでも参考程度にしかなりません。年末調整に関して不明なことがあれば、このサイトで徹底的に調べてください。

◆調べたいことが見つからない!

▲それは「探し方」が悪いのです。安易に他の情報に飛びついてはいけません。とことん国税庁のサイトに食らいついてください。