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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

個人事業者の税務調査

2018-04-06 15:00:00 | 税務調査
今年も税務調査のシーズン(4月から11月頃まで)がやってまいりました。この時期に多い相談は、なんといっても個人事業者からの税務調査についての相談です。個人事業者の多くは税理士に依頼していないことから、自ら税務調査の対応をしなければならず、慣れないことに四苦八苦します。

【ご注意】下記では所得税の税務調査について説明しております。消費税の課税事業者でもある場合には、下記では説明していないような調査も行われます

◆税務調査は断ることができるのか?

誰しも税務調査など受けたくはありませんが、調査対象に選定されてしまった以上は仕方がありません。税務署は調査対象に選定した理由を教えてはくれませんが、調査が進行すれば必ずわかります。それは、税額を過少に申告している疑いがあるからです。どの部分を疑っているかもはっきりとわかります。

調査の日時や場所については希望を聞いてもらえます。日時は平日の日中です。場所は納税者の自宅か事業所ですが、人目につく店頭、事業とは無関係な家族の部屋などは避けてもらうことができます。

◆何を調べられるのか?

事業所得が正しく計算されているかを調べられます。事業所得は「収入(売上)-必要経費(仕入と諸経費)」として計算されますが、この計算が正しいかを調べられます。これを調べるために、帳簿とその基資料(預金通帳や領収書など)を調べられます。

事業所得の計算以外では、所得控除(配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、医療費控除など)や税額控除(住宅借入金等特別控除額)などが間違っていそうな場合には、これらの計算根拠を調べられます。

◆追加で納税が必要となるケース(修正申告)

調査の結果、申告した税額が少ないことが判明した場合には、修正申告で正しい税額に修正し、当初申告(確定申告)での税額との差額を納めなければなりません。この修正申告という手続に関しては調査官から詳細な説明があります。「収入(売上)が・・・円漏れています」、「経費が・・・円二重に計算されています」といった具合です。もし、調査官の指摘が間違っている(税額を過少に申告している理由には該当しない)場合には修正申告する必要はありません。

◆加算税と延滞税(税務調査のペナルティ)

税務調査で修正申告をした場合には、追加納税分に加え「加算税に延滞税」というペナルティも払わなければなりません。これは、「税額を過少に申告したこと」と「遅れて納付すること」に対するペナルティです。

◆調査が長引くケース(事実関係が明らかにならない)

税務調査が長引く場合があります。どのような場合かというと、調査すべき事項についての事実関係が明らかにならない場合です。調査すべき事項についての証拠が残っていない、調査対象者がその提示を拒む場合がそうです。一向に調査が進展しない場合には、税務署は別の方法を検討します。別の方法とは、調査対象者以外から証拠を入手するという方法です。

◆反面調査(取引先からの信用を失うこともある)

反面調査、これも嫌です。取引先に調査官が赴いて、調査対象者の記録と照合作業をするという手法です。取引先の記録で「買った」とあれば、調査対象者の記録に「売った」となければなりません。調査対象者の記録で「買った」とあれば、取引先の記録には「売った」とあるはずです。

◆税務署独自の情報網(裏切り者の出現!)

税務署は独自の調査網を張り巡らして、日々課税に関する情報を収集しています。この情報が絶対的に正しいとは限りませんが、相当強力な証拠であることは確かです。特に、取引先や従業員が提供した証拠はそうです。「あいつ、裏切ったな!」ということもあります。

◆推計値による決着(推計課税)

調査官が懸命に調査をしたにもかかわらず必要な証拠が入手できなかったけれども、調査対象者が明らかに過少申告している場合があります。この場合、税務署としても「証拠がないから許してあげましょう」というわけにはいきません。そこで、推計値により「あるべき税額」を計算し、当初申告した税額との差額の納税を調査対象者に求めるという方法がとられます。推計課税という方法です。これは申告納税制度の理念には反しますが、こうしなければ国家は本来は得られるべきであった税収を失うことになります。

推計値の計算方法は様々です。しかし、基本的には調査対象者と同種の納税者の平均値が採用されますので、調査対象者の個別事情はほとんど考慮されません。要するに、「真面目に帳簿をつけるよりも・・・(笑)」とはならないということです。

◆地方税(自動的に計算される)

主に税務調査を行うのは、国税に関する役所である税務署です。地方税は国税の計算結果を受けて計算されますので、税務署が発見した修正事項はそのまま地方税にも当てはまります。修正申告の内容は、当初の申告と同じように税務署から地方(都道府県と市町村)へも報告されます。

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領収書の保存方法(税務調査ですみやかに提示)

2017-10-23 12:30:00 | 税務調査
税務調査では出金の事実と内容を証明する証拠書類として、必ず領収書を確認されます。税務調査で調査官が求める領収書がなかなか見つからず、冷や汗をかいた人もいることでしょう。

調査官は、一定の母集団から必要な領収書をリストアップします。調査官が求める領収書を速やかに提示できるようにするには、その母集団に関連付けて領収書を保存しておかなければなりません。

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領収書は、あとから探すときのことを想定して保存しなければなりません。

◆総勘定元帳から領収書をたどる

領収書は総勘定元帳と関連付けて保存しておけば探しやすいです。

交際費勘定の総勘定元帳に、「平成29年2月10日、レストラン○○で△△氏と会食、32,400円」と記載されているとします。この領収書を探す場合、領収書がバラバラに箱に詰められた状態では探すのに相当苦労します。ですから、領収書は日付順に保存しなければならないのです。

◆総勘定元帳の日付と領収書の日付が異なる場合

総勘定元帳の日付と領収書の日付が異なる場合があります。例えば、出張旅費の精算をする場合です。出張旅費の精算は出張から帰ってからになりますので、領収書の日付よりも総勘定元帳の日付のほうが遅くなります。その場合は、出張旅費の領収書に精算日を明記しておく必要があります。

小さい会社の場合には、代表者が立替払いをしておき、後日、精算するということがあります。このような場合も、総勘定元帳の日付と領収書の日付が異なりますので、同じ要領で処理します。領収書には「出金日=総勘定元帳の日付」を明記しておきます。

◆請求書の日付と領収書の日付

請求書の日付と領収書の日付は異なることが通常です。この場合、費用の計上日と代金の支払日で考えなければなりません。

費用は請求書の日付で総勘定元帳に記載します。総勘定元帳には「平成29年1月20日、○○商店より、仕入れ200,000円」といった具合に表示されます。

代金の支払いは領収書の日付で総勘定元帳に記載します。総勘定元帳には「平成29年2月28日、○○商店の仕入代金200,000円の支払い」といった具合に表示されます。

この場合の領収書も日付順に保存します。

★領収書の紛失防止
領収書は紛失を防止するため、スクラップブックや台紙(複数枚を紐で束ねます)に貼り付けます。あまりにも多くの枚数を重ねて貼るとめくりにくいですので注意が必要です。

★領収書を分類する
領収書の枚数が増えてくると、領収書を、月別、支払方法別(現金払い、振込み払いなど)、支払先別などに分類することも必要になってきます。

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●経費の勘定科目別に領収書を保存する(総勘定元帳を作成していない場合)

個人事業者で総勘定元帳を作成していない場合には、領収書を経費の勘定科目別、日付順に保存しておきます。調査官は、青色申告決算書あるいは収支内訳書の損益計算書に記載された必要経費の勘定科目の中から、検討すべき事項を決めますので、調査官から指示された勘定科目の領収書の「束」を見せればよいです。

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これからは帳簿を作成する(税務調査ではなく事業発展のために)

2017-10-19 17:00:00 | 税務調査
税務調査を受けた人から、「これからどのようにして帳簿を作成すればよいのですか?」、「簿記の勉強は必要ですか?」、「会計ソフトはどれがいいですか?」という相談を受けます。

簿記とか、会計ソフトにこだわるのではなく、まずは、もっと自然に「事業の数字」について考えてみることが大切です。

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◆帳簿作成のスタートは売上の帳簿から

今まで帳簿を作成したことがない人が、一から帳簿を作成するのは大変なことです。簿記の教科書どおり、会計ソフトの画面に従ってでは雲をつかむようなものです。ほとんどの人が挫折をしてしまいます。簿記の教科書も会計ソフトも取引(現金預金の出入りが中心)を基本としています。取引と決算書の関係など、素人では到底理解できません。

帳簿が初めての人に最初に作成してほしいのは売上の帳簿です。「販売(売上)なくして事業なし」といわれるように、売上は事業の根源です。売上は、「収益-費用」という利益計算のスタートです。売上が収益の大部分を占めますので、売上の計算なくして利益の計算はできません。

◆売上の帳簿にすべての売上を記録する

小売店の場合には、営業時間が終了したあとにその日の売上合計を、「平成29年10月1日、○○円」といった具合に記録します。この積み重ねです。なお、月単位で月合計を集計すると年度合計の計算がしやすくなります。

得意先が事業者である卸売業などでは、販売と同時に代金を受け取るのではなく、請求書を発行してから集金をします。このような場合には、請求書を発行した日に、請求書の金額を売上として記録します。「平成29年10月1日、A商事○○円、B産業△△円」といった具合です。請求額から値引かれた場合には、値引かれた日に値引かれた金額を記録します。この積み重ねです。

◆事業の成果を数字で把握したい

このようにして売上を集計していくと、もっと事業の数字を把握したくなるものです。

「売上は増えてきたけれども、儲かっているのだろうか?」

こうなれば、次は仕入を把握しなければなりません。売上-売上原価(仕入)=売上総利益(粗利)という計算です。売上が増えていても、一定の利益を得た上での売上でなければなりません。

「社員の給料、それから家賃、交通費、通信費、事務用品代・・・。漏れなく把握しなければ・・・」、

必ずこのようになってきます。これが帳簿のスタートです!

◆帳簿は少しずつ進化する

ほとんどの企業は最初から完璧な帳簿を作成しているのではなく、試行錯誤を繰り返しながら「自らのスタイル」を築き上げます。「必要に迫られ」、「必要を感じ」帳簿を作成したけれども、あとから「問題が生じ」それを「改善し」、この繰り返しです。

大切なのは事業に関する数字を把握する必要性を感じるようになることです。必要性を感じれば帳簿の精度がアップします。帳簿の種類も増え内容も充実します。そして、気がつけば、簿記の教科書や会計ソフトの操作画面の意味が理解できるようになっています。帳簿に関する法律(会社法や税法など)も理解できるようになります。

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税務調査で売上計上漏れが発見された理由

2017-10-10 17:00:00 | 税務調査
今も全国津々浦々で税務調査が活発に行われています。税務調査は、忘れかけた、忘れたい過去をほじくり返されるという大変いやなものです。税務調査では、忘れてしまった、憶えていない過去が突如現れることがあります。

早いもので今年もあと3か月を切りました。しかし、税務調査を受けている人にとって来年は、まだまだ遠い未来です。

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会社、個人事業者共に、税務調査で必ずといってよいほど調べられるのは「売上」です。税務調査の対象年度分の売上が、「漏れなく計上されているか」を調べられます。また、多くの納税者もこれが重点的調査項目であることは認識しています。にもかかわらず調査終了後、「どうして見つかったんだ・・・」とか「なかなか優秀な調査官だな・・・」などといってうなだれます。

調査官は売上計上漏れを発見するため次のような点を検討します。これは、どの調査官であっても同じです。

◆未入金分

事業年度中に未入金の部分も売上計上しなければならないことがあります。すでに、事業年度中に販売(出荷や納品)、サービス提供が終了している部分です。

この部分の売上計上漏れを発見する第一の手法は、請求書と売上計上記録(総勘定元帳など)との照合作業です。事業年度中の日付で請求書が発行されているのに、「どうして売上計上されていないのですか?」と迫ってきます。

次に、調査対象年度の翌年度の預金通帳です。特に、年度終了月の翌月の通帳です。翌月中旬日頃までの入金は、通常は前年度の未入金の売上(販売やサービス提供など)と考えられます。この件に関して、「どうして調査対象期間外の通帳を調べるのだ!?」といって反論する納税者がいます。しかし、この点は調査の通知の時点でも告げられていますので反論はできません。

◆請求書と預金通帳

売上には必ず入金が伴います。ですから、預金通帳と売上計上記録(総勘定元帳)との照合作業をすれば計上漏れの有無は発見できます。通帳では入金されているのに、売上計上されていないのはおかしいです。

◆領収書の控

現金回収分は領収書の控と売上計上記録(総勘定元帳)との照合作業をすれば計上漏れ分を発見することができます。

◆仕入との関係

仕入(売上原価)との関係も調べられます。年度中にAという商品を仕入れ(仕入計上記録あり)、Bという得意先に納品しているのにBに対しての売上計上がされていない場合です。これが売上計上されていないのはおかしいです。

◆事業外の預金通帳

あまりにも売上計上記録が不正確な場合には、事業外の預金通帳にも調査対象が広げられます。代表者の私的な預金口座や家族の預金口座に、売上代金と同じあるいは近似する入金がある場合には、「これ、この分の入金でしょ?」と迫ってきます。

◆得意先への反面調査

これも売上計上記録が不正確な場合に行われます。調査官が得意先に赴き、調査対象納税者との取引状況を調査し、その結果を売上計上記録と照合するのです。得意先に「あなたからこれだけ買いました」といわれれば、その分は売上として認めるしかありません。

反面調査は、まさに税務署の「伝家の宝刀」です。

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★税務署独自の調査網

初めての税務調査では上記の調査手法で「次々と」売上計上漏れが発見されますが、納税者も学習をしますので2回目以降の税務調査では計上漏れ件数が激減します。そこで、税務署はより巧妙な(悪質な)売上計上漏れ(所得隠し)に対処するため、独自の調査網を使って売上計上漏れを発見しなければならないのです。

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次回の税務調査に備える(個人事業者の場合)

2017-10-06 17:00:00 | 税務調査
すっかり秋らしくなってきました。真夏に始まった税務調査の結論がようやく出て、愕然とする人がいる一方、早くも次回の税務調査に向けての決意をした人もいます

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個人事業者は会社と比較して税務申告に対する意識が低い傾向にあり、誤った税務申告を長期間続け、税務調査で多額の追加納税をしなければならないことがあります。多額の追加納税をした場合、数年後に再び税務調査が行われる可能性が極めて高く、その税務調査で前回の指摘事項が改善されているかを確認されます。

◆申告をしていなかった

これはだめです。個人事業者の場合は会社のような登記制度がないことから、事業を開始しても直ちに税務署に知られることがありません。そんなことから、長期間、確定申告をしない人がいます。

事業所得(事業収入-必要経費)があり、そこから所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除など)を差し引いた額がプラスであれば所得税が課税されます。その場合は、税務署からの連絡がなくても確定申告をしなければなりません。

◆帳簿をほとんど作成していなかった

帳簿の作成は個人事業者の義務です。事業を開始したならば帳簿の作成方法を自ら考え出し、それを実行しなければなりません。

とはいっても、最初は自身が作成すべき帳簿についてのイメージさえ浮かばないと思います。帳簿は、確定申告書と一緒に提出した収支内訳書あるいは青色申告決算書の損益計算書の「計算根拠」です。この計算根拠を「科目」ごとに示すものが帳簿です。科目とは、売上、仕入、地代家賃、水道光熱費、旅費交通費などのことです。

帳簿の作成方法のことを「簿記」といいます。簿記の書物を読んでも直ぐに収支内訳書あるいは青色申告決算書は作成できるようになりません。なぜならば、簿記では個々の取引から科目を分類集計しているので、簿記が初めての人には非常に回りくどく感じます。帳簿の基本は取引の大部分を占める入出金の把握です。入出金とは現金(硬貨と紙幣)と預金(通帳)の動きです。これらの個々の動きを漏れなく正確に把握することがスタートです。簿記の教科書ではこのことの大切さを説いているのです。

最近では会計ソフトで帳簿を作成することが当然のようになっていますが、会計ソフトも簿記を基本としています。ですから、漏れなく正確に入力しなければなりません。「お好みに合わせて」の「自動作成」とはいかないのです。

◆取引先の氏名・名称などを明かさなかった

税務署に取引先の氏名・名称などを明かすと、取引を打ち切られる、取引先に迷惑をかけるという「心情」は理解できます。しかし、これだけはどうにもなりません。取引先の氏名・名称などが記載されていない帳簿は、たとえ日付や金額が正しくても証拠として認めてもらえません。税務署は、このような考えの人に対しては考えを改めるまで何度でも税務調査を繰り返します。

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★次回の税務調査ではパーフェクトを目指す!

税務調査で間違いを指摘されると大変悔しいです。同じ間違いをしないためには、間違いの原因を冷静に分析しなければなりません。

収入に関しては漏れに気をつけなければなりません。事業用の預金口座に入金されている分はよいとして、現金回収分と事業用でない預金口座に入金されている分は「注意」しておくしかありません。しかし、注意力には限界がありますので、できるだけ早く記録するという習慣を付けるしかありません。

必要経費に関しては、「事業に必要か?」を冷静に判断することです。必要経費の証拠として領収書の入手と保存が必要となりますが、闇雲に入手保存しておいて後から整理するのではなく、記憶の確かなうちに取捨選択して保存しておく必要があります。

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フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。
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