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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

税務調査の担当調査官は1人だけ(調査終了まで思いのほか日数を要する)

2017-09-21 17:00:00 | 税務調査
税務調査のシーズンですので、税務調査に関する相談が増えています。その中で多いのが、「この先、調査はどのように展開するのか?」、「担当者と早く話を付けたい!」、「結論はいつ出るのか?」など調査の進行についてです。

納税者の事業所や自宅などでの帳簿類の調査が終了しても、その場で結論は出ません。現場で収集した資料を署内で検討しなければならないからです。さらには、必要に応じていわゆる反面調査(納税者の取引先への確認)が行われます。このように、最終的な結論が出るまで思いのほか日数を要することから、焦りを感じる人や不安を募らせる人がいます。

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税務署が行う税務調査を担当者する調査官は、ほとんどの場合は1人です。この1人の調査官が調査の通知から納税者の事業所や自宅など現場での調査、修正事項の指摘と修正申告書の受付けまでも担当します。このように担当者が固定されていることは、他の役所や民間企業でもごく普通にあることです。しかし、税務調査ではこのことが「徹底」されていて、ときには融通が利かないと感じる場合があります。

当然ですが、調査官は外出していることが多いです。税務調査というのは、納税者の事業所や自宅など「現場」が基本だからです。調査官の外出中は本人とは連絡ができません。調査官は外出中、その案件に専念しなければならないからです。調査官の外出中には、調査に関しての電話連絡はできないということです。電話連絡は、夕方、調査官が税務署に戻ってからということになります。

調査官は、複数の税務調査を掛け持ちし同時に進行させています。ですから、調査官の「不在」は相当の頻度であることを覚悟しておかなければなりません。そして、不在中は自身の税務調査は「一時停止」ということになります。

調査官にも上司はいます。税務調査は上司の命令と管理の基で行われます。しかし、上司(統括官といいます)は基本的に個々の調査の対象となった納税者の前には特別な場合を除いて姿を現しません。上司が登場するのは、よほど特殊な税務調査や調査が紛糾した場合だけです。

税務調査というのは、「じれったい」ものです。思ったようには進みません。税務調査の通知を受けてから解決(追加納税額が決まる)まで、「最低でも1か月」は必要と考えておくべきです。通知から現場の調査まで2週間、現場の調査2日、ここから最終の結論まで2週間、これで1か月です。この間の精神的苦痛は相当なものです。

★8月は税務調査の能率が落ちる?

8月は夏期休業があるので税務調査の能率が落ちるように感じます。税務署には一斉の夏季休業はありませんが、納税者の事業所や自宅での調査は停止になります(納税者はともかくとして経理担当者や反面調査が必要な取引先は休暇を取ります)。この間、できることといえば、署内での資料の検討と、夏季休業のない金融機関への反面調査だけです。7月中旬に通知を受け、現場の調査が8月上旬、9月下旬になっても解決しない調査も多いようです。

8月と同じく、5月の税務調査も能率が落ちます。世間が休んでいる時期に税務調査が未解決というのは本当に苦痛です。安心して、旅行や外食にお金を使うこともできません。追加納税に備えて残しておく必要があるからです。

秋の行楽シーズン、インフルエンザが蔓延する真冬、桜が咲き世間が前向きになっている春、どの時期であれ税務調査は嫌なものです。二度と税務調査の対象に選定されないようにしたいものです。税務調査で多額の追加納税をした場合には、おおむね3年後に再び税務調査の対象に選定される確率が相当高くなります(100%選定されるといっても過言ではありません)。二度と同じことを指摘されないようにしなければなりません。

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修正申告で追加納税する税額の計算(個人事業者の所得税の場合)

2017-09-19 19:00:00 | 税務調査
例年7月以降11月頃までは税務調査が活発に行われる時期です。調査対象とされた納税者の最大の関心は「追加でどれだけ納税しなければならないか?」であるのは当然ですが、その計算が思いのほか複雑な場合もあります。

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「個人で○○業をしているんですが、先日、過去3年間の税務調査がありまして、売上300万円が申告漏れとなっていることを指摘されました。追加でどれだけ納税しなければなりませんか?」

このような「唐突な!」質問をしてくる人がいます。しかし、これだけでは税額の計算はできません。このような質問する人の多くは、追加納税する税額は「300万円×税率」であると考えています。しかし、そのような計算はしません。次のように計算します。

★申告漏れとなっていた売上を年度ごとに分ける

まずは、申告漏れとなっていた売上300万円を年度(暦年)ごとに分けなければなりません。所得税は年度ごとに課税されるからです。もちろん、この300万円が特定の年度だけである場合は分ける必要はありません。

★漏れていた売上を年度ごとに加算して所得税を計算し直す

次に、年度ごとに申告漏れとなっていた売上を加えて所得税を計算し直します。300万円の年度ごとの内訳が、平成26年100万円、平成27年85万円、平成28年115万円であったとしたら、それぞれの年度の当初申告時の収入にこの漏れていた売上の額を加えてそれぞれの年度の税額を計算し直します。

この作業をする際に必要となるのが「申告書控」です(税務署に提出した申告書と同じ内容のもの)。売上の申告漏れでしたら、収入以外の必要経費や所得控除などは当初申告と変わりません。収入だけを変えて税額を計算し直せばよいのです。

★追加で納税するのは当初申告税額との差額

このようにして計算した税額と当初申告時の税額との差額を追加で納税するのです。このように税額を計算し直して申告し当初の申告との不足税額を納税する手続を「修正申告」といいます。

平成26年再計算税額-同年当初申告税額=平成26年追加納税額
平成27年再計算税額-同年当初申告税額=平成27年追加納税額
平成28年再計算税額-同年当初申告税額=平成28年追加納税額

この合計を納税しなければなりません。所得税の税率は所得が増えるにしたがってアップします。ですから、修正申告の場合の税率が当初申告の税率よりも高くなる場合もあります。

実際の修正申告の作業は、当初申告時と同じ様式の申告書用紙、「第1表」と「第2表」で行います。当初申告時と違うのは、表題の「確定申告」が「修正申告」になるということです。この用紙で、税務調査で指摘を受けた部分を正しい数値にして税額を計算し直すのです。それと、追加で「第5表」を提出しなければなりません。この表には、当初の申告内容を記載すると共に修正申告と当初申告税額との差額を記載します。

上記は、売上の計上漏れを指摘された場合の例ですが、必要経費や所得控除の間違いを指摘された場合も要領は同じです。指摘を受けた年度の該当箇所を正しい数値にして申告書を書き直し、当初申告税額との差額を納税すればよいのです。

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税務調査のルール

2017-07-28 17:00:00 | 税務調査
税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

税務調査のことをルール無用の喧嘩だとか、特定の者しか知ることができない手法や情報がものをいう世界であると思っている人がいます。それは違います。税務調査にはれっきとしたルールが存在するのです。

「国税通則法」という法律で税務調査の手続は定められています。

税務調査に先立ち税務署は原則として納税者に対して事前通知を行う
税務署の納税者に対する説明責任を強化する観点から調査終了時の手続が定められている
税務署が納税者の帳簿書類その他の物件を「預かる」、「提示」「提出」を求めることができるという権限について明確にされている

このようなことが国税通則法で定められています。担当調査官の勘と経験、その場の思いつきで税務調査は行えないのです。

「税務調査が気になる」、「税務調査の通知を受けた」、「現在、税務調査が進行中」、そのような方は上記の国税庁サイトをご覧ください。

★納税者の業務上の秘密と税務調査(問8参照)→個人情報保護と税務調査の関係

よく、税務調査よりも「個人情報保護が優先」されると考えて、対象書類を調査官に提示しない、あるいは最初から保存しない人がいます。

納税者に業務上の守秘義務が課されている場合(医師、弁護士など)、個人の信教に関する情報を保有している場合(宗教法人など)であっても、業務上の秘密に関する帳簿書類の提示や提出を拒むことはできません。調査官は、調査について必要があると判断した場合には、業務上の秘密に関する帳簿書類であっても、納税者の理解と協力の下、その承諾を得て、提示や提出を求める場合があります。当然、調査官には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務が課されています。

《参考》税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)
税理士にも守らなければならないルールがあるのです。

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税務調査を法的に視る―「法的三段論法」使いこなしガイド
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消費税の税務調査(法人税あるいは所得税と同時に行われる)

2017-07-26 12:40:00 | 税務調査
消費税の税務調査は、会社の場合には法人税の税務調査と、個人事業者の場合には所得税の税務調査と同時に行われます。共に、事業年度(会社)と暦年(個人事業者)で課税されること、申告数値の根拠が帳簿類であることから同時に税務調査を行うのが効率的だからです。

法人税と所得税(事業所得)の税務調査の着眼点は、「売上の計上漏れはないか」と「仕入と経費の過大計上はないか」です。

消費税の税務調査でも、「売上の計上漏れはないか」と「仕入と経費の過大計上はないか」は調べられます。しかし、これ以外に「消費税の扱いが正しいか」が調べられます。売上の計上漏れがなくても「計上した売上について消費税の対象となるものは漏れなく対象としているか」、仕入と経費は正しく計上されていても「消費税の対象でない仕入と経費を消費税の対象にしていないか」を調べられます。

◆法人税・所得税、消費税共に修正が必要
「消費税の対象となる売上の計上漏れ」、「消費税の対象となる仕入と経費の過大計上」がこれに該当します。

◆法人税・所得税のみ修正が必要
「消費税の対象でない売上の計上漏れ」、「消費税の対象でない仕入と経費の過大計上」がこれに該当します。

◆消費税のみ修正が必要
「消費税の対象になる売上を計上しているが消費税の計算には含めていない」、「消費税の対象ではない仕入と経費を消費税の計算では消費税の対象としていた」がこれに該当します。

上記での「計上するとは」、決算書に含めるということです。決算書の利益は「収益-費用」として計算しますが、売上は収益、仕入と経費は費用に含めます。法人税と所得税はこの利益に課税されます。一方、会社や個人事業者が税務署に納める消費税は、「販売時に受け取った消費税」から「仕入や経費の支払いで支払った消費税」を差し引いたものです。前者は概ね収益、後者は費用ですが全く同じではありません。

税法上は、法人税と消費税の計算は別々に行うことになっています。また、申告書の用紙も別々です。しかし、昨今では、財務会計ソフトを使って法人税の課税対象となる決算書を作成すると同時に消費税の計算も行います。財務会計ソフトへの入力項目は、利益計算(決算書作成、法人税の課税対象の計算)に関するものと消費税計算に関するものがあり、作成される帳票も双方のプロセスが記載されます。ですから、利益計算と消費税計算は関連しながら同時に行うことができるのです。

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源泉所得税の税務調査(徴収漏れを指摘された場合の手続)

2017-07-23 11:35:00 | 税務調査
源泉所得税の税務調査で源泉徴収漏れを指摘された場合の手続は、法人税、所得税、消費税の場合とは大きく異なります。

◆通知に従い納付する(修正申告は不要)
源泉徴収をする義務というのは、法人税などのような申告納税制度ではなく、対象となる給与や報酬料金を支払った時点に自動的に義務が生じ、徴収した税額を納付しなければなりません。申告という手続を経ないのです。ですから、税務署は源泉徴収漏れを発見すれば、そのまま通知してきます。源泉徴収義務者はそれに従って納付しなければなりません。

◆徴収漏れを指摘され納付した税額を対象者に請求する
源泉所得税は対象となる支払いから天引きしますので、源泉徴収義務者(会社や個人事業者)が負担するものではありません。ですから、税務調査で徴収漏れを指摘された場合には、対象者(給与や報酬料金を受け取った者)に請求することができます。

徴収漏れを指摘された場合に必要となる仕訳は次のとおりになります。

○指摘された税額を納付したとき

《借方》未収入金(納付した源泉所得税)+租税公課(加算税と延滞税)《貸方》現金あるいは預金

未収入金で処理するのは対象者(給与や報酬料金を受け取った者)に請求できるからです。源泉所得税の場合も加算税(不納付加算税)と延滞税は生じます。加算税と延滞税は源泉徴収義務者(会社や個人事業者)が負担します。

○対象者から入金があった場合

《借方》現金あるいは預金《貸方》未収入金

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