まい・だいありー・ばい・えむ ~都わすれ~

振り返れば、まんざらでもない日々をめざす雑記帳。

フリージアの香り

2023-03-31 23:11:19 | ヒトリゴト
沈丁花・梔子・金木犀どれも大好きな香り。
けれども多分一番好きなのはフリージア。

今、母にお供えているのは母が好きだったフリージア。
部屋の中、ほのかに香ります。

私が実家を出たのが31歳の時。
実家からバイクで15分。5km離れたところへ引っ越し
今の夫と暮らし始めた。
ずっと夜の仕事だったから昼間の生活が嬉しかった。
家の近所に古い市場のようなスーパーがあって、
季節の花、水仙やフリージアなどを大きな束で
安く売っていた。新聞紙でくるんでもらって持ち帰り
母に電話する。

「フリージアいる?」
「いるいる!嬉しい!」

大きなビニール袋をバイクの両ハンドルに引っ掛けて
立てかけるように花束を入れ足元に載せて走る。
いつもより慎重にゆっくりと走る。


「まぁーどしたん!ようけ(たくさん)あるんじゃねー!」

嬉しそうに花瓶に生けてあちらこちらに飾る。

「あー、○○さんにもあげよう。」

今度は近所に配って回る。

「ええ匂いじゃねぇー、みんな喜んどっちゃったよ。(喜んでいたよ)」

母の笑顔を思い出す。





私は実家を出ることに躊躇っていた。
家を出るということは、夜の仕事を辞めるということで
金銭的な援助ができなくなる。
母に話す前に兄に話した。
「好きな人と一緒に暮らしたいけど、私が家を出たら
生活が困るでしょう?」
「大丈夫じゃけぇ、何とかなるけぇ、大丈夫。」
兄は背中を押してくれた。

私がいなくなったら母は寂しいだろう・・・
きっと不機嫌なことが多くなるだろう。
どんなことをしたら喜ぶだろうか
それで、花であったり、特売で安くなった日用品を
買って持って行くようになった。

「まぁー安いねー助かったよ、有難うね」

と言いながら、いつも帰り際、私に数千円のお小遣いを渡す。
要らないと言っても必ず「年金が入ったんじゃけぇ」と言う。

年金支給が毎月ではないことをのちに知った。
そして、その額の少なさも・・・

フリージアの香りでそんなことまで思い出す夜。



コメント (10)
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