ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

ギターはどう録る?

2006-12-05 06:01:48 | 録音
 タイニーテラーかAC15か、後者だとしたらどのスピーカーの載ったモデルか。これだけ迷うという事は、自分にはどちらも必要ないのではないか? カタログやウェブサイトを眺めながら、自分の踏ん切りの無さに苛立つ日々が続いている。
 目先のことだけ考えて動けばいいのだ、という気もする。とすれば目の前のライヴはクリスマスイヴの渋谷屋根裏で、先日は備え付けのマーシャルでなんとかなった。
 次のライヴはどこだ? あ、一月末日に池袋のFree Flow Ranchというバーで演るんだった。水曜と土曜はライヴを楽しみながら飲めるという、ウェスタン風のバーである。小山が歌っていると現地の映像にしか見えない。ギターアンプなんか置いてあったか? 有るとしたらフェンダーだろうな(偏見)。

 実はフェンダーのアンプもマーシャルのアンプも、回路は殆ど同じなのだ。フェンダーアンプの音自体は好きなのだが、レンジの広いJensenやJBLのスピーカーがラヂデパには合いにくいというイメージがある。かといってあの店にAC15を持ち込んだら、旅行者がトランクを置きっぱなしにしているみたいに見えるだろうな。
 ある人から、偏見を抜いてローランドのCUBE-60を試してみろとも云われている。多彩なアンプの特性をデジタル的にシミュレートできる、いわゆるモデリングアンプである。偏見は無いつもりなのだが、僕はとうてい使いそうもない機能満載なので、ちょっと腰が退ける。犬を買いに行って、しかもこいつならニャーともピヨピヨとも啼きますと云われたら、違うかな、と思うでしょう?

 ときに面白い製品の存在を知った。AxeTrakという、三十センチ立方程度の箱だ。内側に小さなギター用スピーカーとマイクロフォンが閉じ込めてある。箱は吸音構造になっていてスピーカーの音は外に洩れにくい。電気信号をわざわざ空気振動にし、再び電気信号に戻して録音するための、なんだか乱歩の小説に出てきそうな箱である。
 なんでこのプロセスが欲しいかといえば、僕も科学的な説明は出来ないのだが、いったん空気中に開放してやらないと、エレキの音というのは人の耳にとって「良い音」になってくれないからだ。この問題を解決したというか解決に近づけてくれたのがデジタル技術によるシミュレーターの数々で、それでいいじゃないかという話も無くはない。ただ音色がメイカーの想定内に収まってしまうので、演奏者の個性は出しにくい。

 このアクストラックと同様の発想でギター音を録音していた時期が、僕にもある。エレキギターの音というのは実に録音しにくい。AC30をスタジオに持ち込んでライヴステージに近い状態で録った事があるが、結果は散々だった。
 仕方なく家でPignoseの電池式アンプで録ってみた。よほど良い音だった。実験を重ねた。
 ピグノーズの前にSANSAMPという最初期のアンプシミュレーターを挟み、ピグノーズの裏蓋を少し開いて音色を調節する、というのが当時の僕なりの結論だった。とても小さな音で録るのだ。そしてミキサー側で音量を思い切り上げると、古城で壁一面のマーシャルを鳴らしているのかという、物凄い音になった。近所迷惑にもならない。
 どこかで犬が鳴いたら、その声も入ってしまうけどね。

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