正月を挟んで一ト月ほど広島の実家に隠っていた。原稿もそれなりに書いたが、吐き出した録音物も少なくない。思い付きを記録できねばストレスになろうと、D888を持ち帰ってあった。及びコンデンサ式のマイクロフォン、中途半端に古くて使いにくいリズムマシン(製品名は秘す)、小さなギター(アリスト)等。
まずラヂオデパートの録りかけの曲になにか重ねようとして、これは早々に煮詰まった。元来頭に響いていた音楽とどこかしら食い違っているからで、はたとそのポイントが明瞭になるまで放っておくに限る。
ヌートリアスのCDには、新曲〈きっと食べてね〉の他、ラヂデパの曲をミキコアラマータが、ミキコアラマータの曲をラヂデパが、という相互カバーも所収する予定である。前者には〈雲雀よ雲雀〉、後者には〈カーブを描く〉が選ばれた。
〈カーブ〉は申し分のない楽曲で、ヌートリアスのステージでも取り上げてきたが、いざラヂデパ流でなると躊躇する。好きなだけに単なるコピーに終わってしまいかねない。ともあれ、この下書きの作業に移る。
ビアンコくんのコード感と僕のそれは、別人なので当然違う。この差異を上手くカバー版に活かしたいのだが、鼻歌で旋律を辿りつつギターを爪弾いている限り、どうしてもオリジナルに引きずられてしまう。
空部屋に妹の、古いコルグのシンセサイザーが在った。電源を入れると辛うじて鳴った。ベースラインを録るのに便利かと引っ張りだした次第だが、遊んでいるうち、旋律を温存しながらのまるきり別のコード進行を思いついた。楽器の違いでここまで頭が切り替わるとは思ってもみなかった。道具の神秘。
リズムマシン、左右のリズムギター、シンセのベース、ボーカル、イントロや間奏を担うリードギター――このくらい重ねると辛うじてバンド演奏らしくなり、メンバーに意図が伝わりやすい。
既にラヂデパの人数を上回るトラック数なのを、怪訝に思われるかもしれない。録音物にはテトリスのようなところがあって、何かを足すと別の何かが足りなくなる。生演奏でその種の不自然を感じないのは、日常生活ではあり得ない音量やダイナミクスに対し、脳が補正をおこなって平坦化するからだ。この現象を録音物で再現しようとすると、聴き手側にも超高級オーディオやリスニングルームが必要となる。MP3など以ての外。
閑話休題、〈カーブ〉の出来に気を良くして、ラヂデパでどうしても上手く行かずこれまで本番で演ることがなかった〈帽子をとって〉、ヌートリアスで出来たらと思い詞だけはミキコ嬢と温めてきた〈やつらはうまくやった、こっちはそうでもない〉等、数日で立て続けに録る。
元々録り残すのが苦手な僕が、こう憑かれたように録りまくっているのには、アナログレコーダーに似て、どこか懷かしさを感じさせるD888の存在が大きい。ここにも道具の神秘。
途中、ギターの音色に変化が欲しくなり、コルグの新製品PANDORA PX5Dを購入。自分へのお年玉。
またしてもコルグである。余程相性がいいらしい。マルチエフェクター的な製品を買うのは初めてで、右も左も分からなかったが、店頭で触ってAC15のシミュレイションが入っているのが――上手くシミュレイトされているかどうかはともかく、その気風を――気に入り、音を確かめもせずに買った。
まだ本格的なレコーディングにもライヴにも使っていないので、バンドギタリストとしてのコメントは差し控えるけれど、家で普通にギターを弾いている人々にとって、抜群に面白い玩具なのは間違いない。なにより小さいのがいい。小振りな財布くらいの大きさ、厚みなのだ。道具の神秘、ここにも宿るか?
まずラヂオデパートの録りかけの曲になにか重ねようとして、これは早々に煮詰まった。元来頭に響いていた音楽とどこかしら食い違っているからで、はたとそのポイントが明瞭になるまで放っておくに限る。
ヌートリアスのCDには、新曲〈きっと食べてね〉の他、ラヂデパの曲をミキコアラマータが、ミキコアラマータの曲をラヂデパが、という相互カバーも所収する予定である。前者には〈雲雀よ雲雀〉、後者には〈カーブを描く〉が選ばれた。
〈カーブ〉は申し分のない楽曲で、ヌートリアスのステージでも取り上げてきたが、いざラヂデパ流でなると躊躇する。好きなだけに単なるコピーに終わってしまいかねない。ともあれ、この下書きの作業に移る。
ビアンコくんのコード感と僕のそれは、別人なので当然違う。この差異を上手くカバー版に活かしたいのだが、鼻歌で旋律を辿りつつギターを爪弾いている限り、どうしてもオリジナルに引きずられてしまう。
空部屋に妹の、古いコルグのシンセサイザーが在った。電源を入れると辛うじて鳴った。ベースラインを録るのに便利かと引っ張りだした次第だが、遊んでいるうち、旋律を温存しながらのまるきり別のコード進行を思いついた。楽器の違いでここまで頭が切り替わるとは思ってもみなかった。道具の神秘。
リズムマシン、左右のリズムギター、シンセのベース、ボーカル、イントロや間奏を担うリードギター――このくらい重ねると辛うじてバンド演奏らしくなり、メンバーに意図が伝わりやすい。
既にラヂデパの人数を上回るトラック数なのを、怪訝に思われるかもしれない。録音物にはテトリスのようなところがあって、何かを足すと別の何かが足りなくなる。生演奏でその種の不自然を感じないのは、日常生活ではあり得ない音量やダイナミクスに対し、脳が補正をおこなって平坦化するからだ。この現象を録音物で再現しようとすると、聴き手側にも超高級オーディオやリスニングルームが必要となる。MP3など以ての外。
閑話休題、〈カーブ〉の出来に気を良くして、ラヂデパでどうしても上手く行かずこれまで本番で演ることがなかった〈帽子をとって〉、ヌートリアスで出来たらと思い詞だけはミキコ嬢と温めてきた〈やつらはうまくやった、こっちはそうでもない〉等、数日で立て続けに録る。
元々録り残すのが苦手な僕が、こう憑かれたように録りまくっているのには、アナログレコーダーに似て、どこか懷かしさを感じさせるD888の存在が大きい。ここにも道具の神秘。
途中、ギターの音色に変化が欲しくなり、コルグの新製品PANDORA PX5Dを購入。自分へのお年玉。
またしてもコルグである。余程相性がいいらしい。マルチエフェクター的な製品を買うのは初めてで、右も左も分からなかったが、店頭で触ってAC15のシミュレイションが入っているのが――上手くシミュレイトされているかどうかはともかく、その気風を――気に入り、音を確かめもせずに買った。
まだ本格的なレコーディングにもライヴにも使っていないので、バンドギタリストとしてのコメントは差し控えるけれど、家で普通にギターを弾いている人々にとって、抜群に面白い玩具なのは間違いない。なにより小さいのがいい。小振りな財布くらいの大きさ、厚みなのだ。道具の神秘、ここにも宿るか?
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