見た目の変遷は少ないリッケンバッカーだが、細部の仕様は安定していない。僕が買った360/12V64(長いので以下、赤いの、などと記す)に採用されていた絃巻きは上等ではなく、十二個のうちの一つが、なんとライヴ中に解体してしまった。面白いような勢いで音程が下がっていくので慌てて巻き上げていたら、手の中にツマミだけが残った。
修理に出すと、このタイプの物は入荷に時間がかかると云われた。他にろくなギターを持っていないので青ざめた。次のライヴが迫っている。
中古楽器店を覗くと、意外と安い値段で同社の十二絃が並んでいた。なぜ安いのかと問うと、買っても売り払う人が多い楽器、との答。なんとなく落胆しながら、ロジャー・マッギン・モデルに似たのを買った。既に少女小説を書き始めていたが、僕は一度として売れっ子だったことはないから、痛い出費だった。しかしローンは組まずに済んだと記憶している。
この丸っこい、クリア塗装の370/12(マイクが多いので品番の桁が多い)は頑丈で、その後も赤い方が不調に陥る度に活躍した。小山の入った新しいラヂデパで、初めて使ったリッケンバッカーもこの丸い奴だ。太朗はこちらのほうが好きだと云う。形が。
音は赤いのと大差無いが、身が詰まっているのか、すこし重たい感じの音がする。
絃巻きが解体したあと、楽器には消耗部分がある、使っていればへたるのだ、と開き直った。それ以前にも使いにくいボリュームやトーンのポットの配置を入れ替えたりはしていたが、以後は見た目が変わる改造にも躊躇しなくなった。赤いのの絃巻きはいま三代目だ。配線もライヴで困った事が起きるたび変えに変え、元のワイヤーもポットも残っていない。ブリッジも、エンドピン辺りのパーツも違う。
シングルコイル・ピックアップは場合によっては盛大にノイズを拾うので、二つのマイクの位相を反転させてハム・キャンセル出来るようにしてある。ファズじみた音も出せるよう直列配線に切り替わるようにもしてある。こういう複雑な配線にはロータリィ・スイッチが便利だ。
丸い方の配線もすっかり変えてしまった。三つのマイクの――ええとネックに近い方からABCと名付けるとして、トグルスイッチによる組合せが「A+B」「A+B+C」「C」であるのが僕には理解しがたかった。
誤解なきよう。ギブソンの3マイクのモデルも、基本的にこういう回路になっている。しかし位相を変えて「A+B+C」で特徴的な音色になるよう工夫していた時期もあり、要するにずらりと三つ並んだマイクは見た目にはかっこいいのだが、見た目ほどの劇的な音色を得るため、王者ギブソンにして試行錯誤しているわけだ。
僕は三つのマイクを、別々にボリューム操作できるように変えた。全体の音量用のポットはまた別に有り、僕がライヴ中に頻繁にいじっているのはこれだ。
「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」「A+B+C」の選択が可能になった。なんで最初からこうなっていないかと云えば、まず操作が煩雑だから。そして聴き手レベルにおいてAとBの音色には大きな違いが無いからだ。ならば――と色々とアイデアはあるのだが、現状の音を気に入ってもいるので実現に至っていない。市販の状態ではあり得ない「B」や「B+C」の音は、なかなか使い出がある。
例えばアンプ・シミュレーターで「A+B+C」や「A+C」ではどうしても上手く音を作れない時、「B+C」にすると途端に良い音になったりもするのだ。
いかにもアナログ人間な僕だが、アンプ・シミュレーターやモデリング・アンプへの抵抗感はまったく無い。ライヴのように音圧を重視されない局面では、どんどん利用しましょう。ピックアップの選択や、トーンコントロール、ゲルマニウム・ダイオードを使っているような古典的エフェクターへの反応が良好な事も多い。「武器ではなく楽器を――喜納昌吉」という言葉に象徴される理想に、心血を注いでこられた技術者たちの、細やかな配慮に心を打たれる。
修理に出すと、このタイプの物は入荷に時間がかかると云われた。他にろくなギターを持っていないので青ざめた。次のライヴが迫っている。
中古楽器店を覗くと、意外と安い値段で同社の十二絃が並んでいた。なぜ安いのかと問うと、買っても売り払う人が多い楽器、との答。なんとなく落胆しながら、ロジャー・マッギン・モデルに似たのを買った。既に少女小説を書き始めていたが、僕は一度として売れっ子だったことはないから、痛い出費だった。しかしローンは組まずに済んだと記憶している。
この丸っこい、クリア塗装の370/12(マイクが多いので品番の桁が多い)は頑丈で、その後も赤い方が不調に陥る度に活躍した。小山の入った新しいラヂデパで、初めて使ったリッケンバッカーもこの丸い奴だ。太朗はこちらのほうが好きだと云う。形が。
音は赤いのと大差無いが、身が詰まっているのか、すこし重たい感じの音がする。
絃巻きが解体したあと、楽器には消耗部分がある、使っていればへたるのだ、と開き直った。それ以前にも使いにくいボリュームやトーンのポットの配置を入れ替えたりはしていたが、以後は見た目が変わる改造にも躊躇しなくなった。赤いのの絃巻きはいま三代目だ。配線もライヴで困った事が起きるたび変えに変え、元のワイヤーもポットも残っていない。ブリッジも、エンドピン辺りのパーツも違う。
シングルコイル・ピックアップは場合によっては盛大にノイズを拾うので、二つのマイクの位相を反転させてハム・キャンセル出来るようにしてある。ファズじみた音も出せるよう直列配線に切り替わるようにもしてある。こういう複雑な配線にはロータリィ・スイッチが便利だ。
丸い方の配線もすっかり変えてしまった。三つのマイクの――ええとネックに近い方からABCと名付けるとして、トグルスイッチによる組合せが「A+B」「A+B+C」「C」であるのが僕には理解しがたかった。
誤解なきよう。ギブソンの3マイクのモデルも、基本的にこういう回路になっている。しかし位相を変えて「A+B+C」で特徴的な音色になるよう工夫していた時期もあり、要するにずらりと三つ並んだマイクは見た目にはかっこいいのだが、見た目ほどの劇的な音色を得るため、王者ギブソンにして試行錯誤しているわけだ。
僕は三つのマイクを、別々にボリューム操作できるように変えた。全体の音量用のポットはまた別に有り、僕がライヴ中に頻繁にいじっているのはこれだ。
「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」「A+B+C」の選択が可能になった。なんで最初からこうなっていないかと云えば、まず操作が煩雑だから。そして聴き手レベルにおいてAとBの音色には大きな違いが無いからだ。ならば――と色々とアイデアはあるのだが、現状の音を気に入ってもいるので実現に至っていない。市販の状態ではあり得ない「B」や「B+C」の音は、なかなか使い出がある。
例えばアンプ・シミュレーターで「A+B+C」や「A+C」ではどうしても上手く音を作れない時、「B+C」にすると途端に良い音になったりもするのだ。
いかにもアナログ人間な僕だが、アンプ・シミュレーターやモデリング・アンプへの抵抗感はまったく無い。ライヴのように音圧を重視されない局面では、どんどん利用しましょう。ピックアップの選択や、トーンコントロール、ゲルマニウム・ダイオードを使っているような古典的エフェクターへの反応が良好な事も多い。「武器ではなく楽器を――喜納昌吉」という言葉に象徴される理想に、心血を注いでこられた技術者たちの、細やかな配慮に心を打たれる。
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