ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

マーティさん

2007-05-13 16:07:14 | ライヴ
 集英社の取計らいでマーティ・フリードマンのライヴへ。あまり知られていないかもしれないが、フリードマン氏は小説すばるにコラムを連載中なのだ。
 恵比須リキッドルーム。予想を遥かに超える混雑ぶりに驚く。人気者は違う。バンドはギター×2、ベース、ドラムの4ピース。開演時は音がクリアではなく、この状況で延々とハードロック・インストを演られたら厳しいと感じたが、進行するにつれ音響は改善された。
 重たいリフ、歌謡曲風なテーマに、練りこんだソロ。雑誌でいえばヤングギター的――更にそれを誇張したような音楽性なのだが、徹底してくれているので聴いていて気恥ずかしさを感じない。何を喋っても可笑しくなってしまう明け方のような、奇妙な高揚感に包まれる。歌謡曲マニアでもあるフリードマンの音使いが、べったべたの四七抜き(ペンタトニック)だから尚更である。美空ひばり全集を聴いている感覚に、どこか近い。

 ペンタトニックばかりで攻めると演歌やムード歌謡っぽくなってしまうから、その辺は遠慮がちに――というのが僕らの常識なのだが、敢えてそこに特化して可能性を探るという、逆転の発想が素晴しい。一般に云われるほど日本人に四七抜きが染み込んでいると僕は思わず、むしろシルクロード地域全般を見渡した際の特徴と考える次第だが、いずれにせよ「音楽=ドレミではない」に徹しているフリードマンは偉い。沖縄音階が指癖のデイヴィッド・リンドレー並みに偉く、不思議とルックスも似ている。

 曲の佳さに敵うものなしとでも云おうか、どすの利いたリフより、速弾き入りのソロより、どうしても朗々たるテーマ部が印象に残る。バンドもよくわかっていて、ここぞという部分では絶妙なハモりを聴かせる。局面によって、人力のハモりとフリードマン単独のハーモナイザー技を使い分けていたようだ。最近の「インテリジェント」ハーモナイザーを試した事はないのだが、ああも効果的なのだったら僕も是非導入したい。
 惜しむらくはフリードマンのギターの色や形が「普通」である点で、阿呆を抜かすと思われるかもしれないが、歴々なるショウマンが莫迦げた見た目のギターを使ってきたのには、それなりの理由がある。視覚と聴覚の連動、或いはギャップでもいい、それらは人を無条件に浮かれさせる。

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