ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

開眼と筋肉痛

2007-05-15 08:36:50 | ギター
 キャプテン・フックについて。検索で来られた方、これはギターのニックネームです。

 夢弦でのチューニングの狂いは、絃をフラットから凸凹のラウンドワウンドに変えた事、それから放置によって各所の滑りがわるくなっていた事に起因していたようだ。
 ペグをゴトーのロック式に変更しても改善されなかったのが、職人の勧めに応じて呉工業のCRC5-56を、ナット、ブリッヂ、そしてビグスビィの絃留め軸に塗りたくったら、実に良好になった。チョーキングで狂いが出ても、アームを軽く揺らすと戻る。そうそう、これが本来のビグスビィの使用感だ。
 CRC5-56というのは、むかしテレビで「クレゴーゴーロク」と宣伝されていた錆止めスプレー。今も一缶三百円程度で売られている。石油系の溶剤を危険視する声は多いが、何十年も人々に重宝されてきた製品で、楽器にも人体にも大きな問題は生じまい。ブライアン・メイのギターはグリースでべとべとだと聞くし、ブライアン・セッツァーは本当なのかどうなのか、各所に鉛筆を擦りつけているという。機械用のグリースなら石油系だろうし、黒鉛が躯に良いとも思えない。手が汚れないのは5-56です。

 ミニアンプに繋いであれこれと音色を試し、他のギターも取っ換え引っ換えするうち、フックの音が他のギターに比べて(聴覚上)やたらと大きい事に気付いた。クリーンで且つどこかしら鼻詰まりな、ジャズで好まれるような音色だったが故もあろう。もともと頭の中に、なんとなくエレキ時代のジャンゴのイメージがあった。
 ホワイトファルコンやヴァイキングが、本来こういう音色を狙った設計なのだとしたら、僕もエアロスミスも間違っていた。僕はフックのこの特色をシェイプする事ばかり考え、逆に足りない部分が不満だった。発想を変えてみる。個性を強調すべくその名もファットブーストを介してみる。
 音量が上がっただけ? いやボリュームを下げても微妙に違う。傾向は不変なのだが、あたかも印刷物のドットが細かくなったような、それでいてコントラストは上がったような――。音を言葉にするのは難しい。ともかく気に入った。コンプレッサーでも似た結果になるかと思い試したが、こちらは線が細くて好みではなかった。
 アンプはカスタムのチューブ12A。思いついてヴォクスのPathfinder 10(数千円ながら優秀なトランジスタアンプだと思う)に替えてみるも、こちらは薄く硬い印象で今一つ。真空管入りのアンプで、フックの大きなボディがフィードバックを起こさない程度に個性を強調すると良好なようだ。
 出ない、出にくい音色を求めるのではなく、出る音色を磨く。適材適所というか欠点克服メイクというか、なにか凄い教訓を得たような気がする。

 思わず久々に本気でジャンゴをコピー。ジャンゴのフレーズには右手に力を入れねば弾けないものが多く、ちょっと筋肉痛。

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