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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

六道地蔵尊 仏迎え

2023-08-06 23:12:00 | 民俗学

 

 六道の杜を訪れたことについて、2年前の今日触れた。既に六道地蔵尊の仏迎えは終え、執行されていた寿クラブの方たちが片付けをしている時間帯に訪れた。その際にも「昨夜最初に仏迎えに来られたのは何時頃だったのですか」と聞き、「午後10時半ころだった」と聞いた。

 今年は長野県民俗の会の例会として、六道地蔵尊の祭り見学を企画した。前日からの宿泊例会であり、六道の祭りを未明に訪れて朝方解散という例会であった。今年も同じように何時に最初に仏迎えの方が来たか聞くと、やはり午後10時ころだったという。もしかしたら毎年訪れている方なのかもしれない。寿クラブの方たちの予定を聞くと、今年は上川手寿クラブの担当で、次のような日程であった。

8月5日 午前9:30 六道の杜男性全員集合 準備 
    午後3:00 全会員集合 お札、松穂の袋入れ 
    午後4:00 洞泉寺住職による安全祈願ご祈祷 
         終了後慰労茶話会 
    午後8:00 お札販売会場準備、夕食(宿泊者) 
8月6日 午前0:00 お札の販売 
    午前4:00 宿泊者以外会員集合 お札の販売 
    午前11:00 区執行部お賽銭回収 
          後片付け

 この日程からわかるように、お札の販売は午前零時となっており、一応暦の新しくなった6日からということになる。しかし、実際は宿泊担当の寿クラブの方たちは、前日の午後8時に集合し、夕食をとるとすでに仏迎えの人々を迎える体制に入っており、前日から訪れる人がいることを前提に準備をしていることがわかる。もちろん前日のうちに仏迎えに訪れる人は少なく、参拝者の姿が目立つようになるのは午前4時過ぎのよう。その通り、日程でも6日午前4時が宿泊当番以外の寿クラブ会員の集合時間となっている。

 ということで例会の再開は午前4時を目途だった。5年前に訪れた際の印象でも、午前4時以降に参拝者が目立つようになった。そしてピークは午前6時ころ。今年はこの間、参拝者にできる限り質問を試みた。①新盆で訪れたかそうでないか、②どちらの地域か、と。できれば仏迎えの対象者の住まいまで確認したいところだが、長い質問だと全員にアプローチできないと察知し、とりあえず新盆かそうでないか、そして居住地の確認をした。おおよそ午前4時から6時までの2時間。全員とまではいかなかったが、9割以上の方たちには聞き取れたと考えている。

 2時間に聞き取りさせていただいた方は164人。ちなみに参拝には家族や親戚の方が一緒に、という考え方がかつて同様にあり、参拝後に帰途に着く方、いわゆるお札を持たれている方を対象に行った。85名の方が「新盆の迎え」で参拝され、75名の方が「毎年来る」と答えられた。新盆の方が多かったが、予想外に「毎年」という方もおられた。また新盆から3年間は「六道へ」という考え方も生きているようで、3年目と答えられる方も3名おられた。「毎年来られる」と方も聞いていると、新盆で迎えにくるようになってから「ずっと」と答えられる方がいて、新盆がきっかけで六道詣りが続いているというわけである。もちろん毎年とは言うものの、その人数は参拝エリアの戸数から推定すればわずかなものであるが、とりわけ「毎年」と答えられる方は、六道のおひざ元である美篶地区の方たちで、「毎年」と答えられた方のうち52パーセントを占めた。

 参拝者の範囲であるが、次のような結果である。

伊那市天竜川右岸 9パーセント
伊那市天竜川左岸 68パーセント
内美篶地域 38パーセント
内両川手 13パーセント
旧高遠町 15パーセント
旧長谷村 1パーセント
箕輪町 3パーセント
南箕輪村 4パーセント
宮田村 1パーセント

 意外であったのが宮田村である。『宮田村誌』にも六道詣りのことは触れられていない。具体的な地名もできる限り聞いたが、天竜川右岸の比率はかなり少ない。とくに西春近と答えた方は表木の1名のみ。西春近にあるある寺では、六道と同じ仏迎えを始めて、「六道行く必要はない」と寺が諭すという。同様に西箕輪と答えられた方も少なく、そのほとんどが「与地」の方だった。羽広のある寺も六道詣りと同じようなことをしている聞く。ようは六道へ仏迎えに行く人が減少した理由は、てらに起因しているといえる。いっぽうで「与地」から何人も訪れているのには興味深い。与地は天竜川右岸でも、最も西山の麓の集落で、六道からも与地の地は望めるが、当然与地からも六道の杜は望めるのだろう。何かしら意味があるのかもしれない。


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