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N.Y.の殿堂MSGで日本人ボクサーが史上初の世界戦 - ドヘニー VS 高橋龍平 直前プレビュー -

2019年01月19日 | Preview

■1月18日/MSGシアター,N.Y./IBF世界J・フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 T.J.ドヘニー(英/アイルランド) VS IBF10位 高橋龍平(横浜光)



本番1週間前の緊急スクランブル。

昨年8月、岩佐亮佑(セレス)を明白な3-0判定に下し、IBFのJ・フェザー級王者となったT.J.ドヘニーが、ニューヨークの殿堂マディソン・スクウェア・ガーデン(MSG)に初見参。

2万人収容のメイン・アリーナではなく、5千人規模のシアターでの開催だが、MSGのリングであることに違いはない。

エディ・ハーン率いるマッチルーム・スポーツとの契約が報じられた先週、MSGで行われる19日の興行(我らがホルヘ・リナレスも登場)に参戦し、防衛戦を行うことも同時に発表されたが、記事が出た時点で挑戦者の名前は明らかにされず、未定(TBA=To Be Announced)のままだった。

1週間前にプレスリリースを行う以上、具体的な候補のピックアップはかなり以前に終わっていて、交渉もほぼ妥結している筈だと年季の入ったファンなら察しはつく。けれどもその相手が、まさか日本人だったとは・・・。


現代の若いファンの方々が、「ボクシングの聖地」と聞いて瞬時に思い浮かべるのは、ネバダの人里離れた砂漠の中に開発されたカジノの街ラスベガスであり、フロイド・メイウェザーが常打ち小屋にしていたMGMグランド・アリーナだろう。

しかし、1970年代前半~半ば頃までは、ニューヨークが世界のボクシングの中心地だった。伝説的な拳豪たちが2万人規模のメイン・アリーナをソールド・アウトにし、ボクシング史を彩る名勝負を繰り広げたMSGは、旧ヤンキースタジアムとポログラウンド(N.Y.ジャイアンツの本拠地として建設)に肩を並べる、東海岸の要所として君臨。

西海岸を代表する大会場,オリンピック・オーディトリアム(ロサンゼルス)とともに、ボクシングの歴史を語る時に絶対外すことのできない重要な場所である。


「リョウタが無事この試合(ロブ・ブラント戦)をクリアできれば、次はMSGでタイトルマッチをやらせたい。」

昨年秋、村田諒太がラスベガスでのV2戦に臨む際、米本土におけるプロモートを主導するボブ・アラムが、「MSGでの防衛戦開催」に言及していたが、周知の通りよもやの敗北で丸腰となり、MSG登場は無念の白紙撤回。

「MSGの檜舞台は、日本(東洋)のボクサーには敷居が高い。N.Yの殿堂で日本人が世界戦のリングに立つ日が、本当にやって来るんだろうか・・・」


横浜光ジムの日本ランカー(11位/OPBF9位),高橋龍平の挑戦が決定したと、各スポーツ紙のWeb版に掲載され、そんな感慨に耽ったことを思い出した。2017年の暮れにバンコクまで足を伸ばし、無名のタイ人にTKO勝ちしてIBFのローカル王座(暫定)に就いたのは知っていたが、いつの間にか世界ランカー(IBF10位)の仲間入り。

IBFランクに入った根拠は、昨年6月に敢行した2度目のタイ遠征で挙げた白星。3度の来日経験があり、和氣慎吾,小國以載,亀田大毅(引退)と対戦したマイク・タワッチャイに、大差の3-0判定勝ち。タワッチャイが正規王者だったらしく、敵地での正規王座吸収が高評価された格好。

東洋大出身でアマの実戦経験(20戦10勝10敗)を持つ高橋は、2012年12月に4回戦でプロデビュー(S・フライ級)。いきなり判定負けを喫して黒星スタートとなり、2戦目もドロー。先行きを不安視される中、3戦目からバンタム級に上げて戦績が安定し、新人王戦にエントリー。見事2014年度の全日本新人王となる。


新人王戦で初めて見た高橋は、トリッキーなムーヴとフェイントで揺さぶりをかけつつ、流れの中でごく自然に左右をスイッチを繰り返すなど、型に囚われないユニークなボクシングをやっていた。

選手の個性や自主性をできるだけ尊重し、多少セオリーから逸脱しても頭から否定したりせず、長所を伸ばすことに心を砕く石井一太郎会長ならではの育成だと、妙に感心したことを覚えている。

キックボクシングからの転向で話題になった久保賢司(角海老/引退→キックで現役復帰)との8回戦で完勝を収めて、ボクシング引退へと追い込んだのが2015年の夏。2016年3月にはオースストラリアへ渡り、アンドリュー・マロニー(WBSSでエマニュエル・ロドリゲスに惜敗したジェイソン・マロニーとは双子の兄弟)に大差の0-3判定負け。
※WBAがデッチ上げたオセアニアの地域王座戦

10月に再起戦をやり、2017年1月に木村隼人(横浜さくら→ワタナベ)との対戦が決定するも、前日計量で3.3キロオーバー(!)の大失態。当然試合は中止され、日本ランキングも失う。

およそ半年の冷却期間を挟み、2017年5月にS・バンタム級で復帰。関西のアマチュアホープからプロに転じた田中一樹(グリーンツダ/63勝14敗・14RSC)に3回TKO勝ち。転級2戦目で入口裕貴(エスペランサ)に判定で敗れたが、直後にIBFのローカル王座(暫定)を獲得。





率直に思うところを述べるなら、世界ランク10位は高過ぎる下駄と言わざるを得ない。客観的かつ冷静にレコードと実績を見つめれば、現在の高橋は「名ばかりの世界ランカー」である。日本ランク11位,OPBF9位の肩書きが相応しい。

スポーツブックの賭け率にも、如実に表れている。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
ドヘニー:-5000(1.02倍)
高橋:+1400(15倍)

<2>5dimes
ドヘニー:-4200(倍)
高橋:+1700(倍)

<3>SportBet
ドヘニー:-3825(約1.02倍)
高橋:+2075(18倍)

<4>ウィリアム・ヒル
ドヘニー:1/33(約1.03倍)
高橋:10/1(11倍)
ドロー:33/1(34倍)

<5>Sky Sports
ドヘニー:1/50(1.02倍)
高橋:12/1(13倍)
ドロー:33/1(34倍)


万馬券のアンダードッグが、前評判を引っくり返すアップセットは日常茶飯・・・とは言うものの、流石に今回はどうだろう。幾つかのインタビューで、「皆が考えるほど楽な挑戦者ではない。」と新チャンプは話し、気持ちを引き締め直している様子が伝わる反面、コメントとは裏腹に表情は余裕たっぷり。

ファイトとボックスを柔軟に切り替え可能なドヘニーに、変則チックな高橋のスタイルはどう映っているのか。戦績が示す通り高橋には1発がなく、サイズのアドバンテージも無し。


ドヘニーも十分に小柄だが、フィジカルは高橋よりも強く、パワーにプラスして機動力でも上回る。岩佐戦では勝利を最優先した結果、慎重な駆け引きの応酬に終始してしまったけれど、格下には力で一気にカタを着けに行くケースも目立つ。早いKO決着を仕掛けてくる場合も想定しつつ、入念なウォームアップで身体をしっかり暖めてリングインして欲しい。

岩佐戦並みは無理にしても、王者がボクシングを選択してくれたら、想像以上に面白い展開が望めそうな気もする。なにしろ高橋は、足と手を止めないことが肝要。開始ゴングと同時にうるさく動いて、危険な中間距離に長く留まらない。普段は省略しがちなジャブを増やし、前後左右のステップを惜しまず、ウィービングとボディワークで頭の位置を常に変える工夫が不可欠。

細かい手数の積み重ねを信じて、無闇に大振りしないこと。距離が潰れかけたら、脇腹とストマックは必ず打っておく。ドヘニーがパワープレイでガンガン前に出てきたら、足だけで捌くのはキツい。先に自分からくっついて、クリンチでインファイトを潰す割り切りも大事。プロボクシングのルールとセオリーの範囲内なら、やれることは総てやり尽くす必要と覚悟を迫られる。

悔いなき敗北など、そう簡単に有り得ないとは思うけれど、ニューヨークの殿堂で世界戦を初めて戦う日本人として、思う存分自分の持ち味を発揮して欲しい。


◎ドヘニー(32歳)/前日計量:121ポンド3/4(55.24キロ)
戦績:20戦全勝(14KO)
アマ戦績:不明
北京五輪代表候補
身長:166センチ,リーチ:172.5センチ
左ボクサーファイター

◎高橋(28歳)/前日計量:121ポンド3/4(55.24キロ)
IBFアジア・パシフィック王者(V1)
2014年度全日本新人王(バンタム級)
戦績:20戦16勝(6KO)3敗1分け
アマ通算:10勝10敗
加茂暁星高(新潟県)→東洋大
身長:164センチ
右ボクサーファイター




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■リング・オフィシャル:未発表


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□NYでシンデレラボーイ誕生なるか 高橋竜平(横浜光)IBF世界Sバンタム級タイトル戦直前インタヴュー
https://news.yahoo.co.jp/byline/sugiuradaisuke/20190116-00111339/

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