ネットオヤジのぼやき録

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ガーナの旋風ドグボェ再登場/トップランクが誇る中量級プロスペクトもビッグアップルに集合 - ロマチェンコ VS ペドラサ アンダーカード・プレビュー -

2018年12月09日 | Preview

<1>12月8日/MSGシアター,ニューヨーク/WBO世界J・フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 アイザック・ドグボェ(ガーナ) VS WBO2位 エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)



8月に大竹秀典(金子)を2分余りで粉砕したドグボェが、3ヶ月強のスパンで早くも登場。大竹戦のファイトマネー(6万5千ドルと伝えられている)に大きな不満を漏らし、米本土での継続的な活動に懸念を抱かせたが、10月に入ってトップランクとの複数年契約(年間3試合以上)が発表された。
※Isaac Dogboe signs multiyear deal with Top Rank
10月4日/Bad Left Hook
https://www.badlefthook.com/2018/10/4/17935478/isaac-dogboe-signs-multiyear-deal-with-top-rank

英国ロンドンに居住するドグボェは、プロ入りに際して母国ガーナで自前のプロモーションを立ち上げたものの、安定的なスポンサー獲得には至っておらず、複数のインタビューに応えて王国アメリカに拠点を移す希望を語っていたが、その第1歩を踏み出すことはできた格好。ノニト・ドネア(比)のような大型契約に結び付くか否かは、今後の結果次第ということになる。


挑戦者ナバレッテは、2012年デビューの右ボクサーファイターで、恵まれた体躯を活かした攻撃的なボクシングが持ち味(ほぼファイターと表していい)。圧力をかけながら距離を潰し、外よりの軌道をやや遅れて届く、メキシカン独特の左右フックとアッパーをカマのように振るう。

辰吉丈一郎とアイリッシュのスター,ウェイン・マッカラーに煮え湯を呑ませて、”デストロイヤー”と恐れられたビクトル・ラバナレスを、一回り大きくスマートにした感じ。公称170センチの身長は、試合映像ではもう少し高そうに見える。正確な数値は不明ながら、リーチにも不足は感じられない。

そう頻繁ではないけれど、サウスポーへのスイッチを操る器用さもあり、相手の反撃をかわす際に見せる左右のステップワークは、スピードがイマイチな点も含めて、90年代のバンタム級をかき回した”ラカンドン”を彷彿とさせる。

荒ぶるラバナレスのインファイトに付き合って、まさしく地獄を見た辰吉とマッカラーの二の舞は避けたいところ。パワー VS パワーのガチンコ勝負ではなく、スピードを第一に出はいりを繰り返しながら、ナバレッテの大振りを誘ってカウンターをヒットしたい。とは言え、スポーツブックのオッズが示す通り、戦前の予想は王者の圧倒的有利。


□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
ドグボェ:-1200(約1.08倍)
ナバレッテ:+775(8.75倍)

<2>5dimes
ドグボェ:-1400(約1.07倍)
ナバレッテ:+750(8.5倍)

<3>SportBet
ドグボェ:-1136(約1.09倍)
ナバレッテ:+839(9.39倍)

<4>ウィリアム・ヒル
ドグボェ:1/12(約1.08倍)
ナバレッテ:6/1(7倍)
ドロー:25/1(26倍)

<5>Sky Sports
ドグボェ:1/12(約1.08倍)
ナバレッテ:13/2(7.5倍)
ドロー:25/1(26倍)




チャレンジャーの直近の勝利は、WBA王座(ダニエル・ローマン)への挑戦権が懸かった今年6月のホセ・サンマルティン(コロンビア)戦。対戦時のWBAランクは、ナバレッテが2位でサンマルティンは7位だった。

23歳の若きメキシカンの強打に良く対抗したサンマルティン(最終12回TKO負け)だが、ペルーの試合巧者カルロス・サンブラーノ(元WBA暫定フェザー級王者)に歯が立たず、今や古豪と表すべき同胞のルイス・メレンデス(間もなく40歳/対戦時37歳)、日本のファンにも馴染み深い老トーマス・ロハス(メキシコ/対戦時36歳)の大ベテラン2人にも勝ち切れなかった、言わば二線級の下位ランカー(失礼)。

WBOとWBAの両団体で2位になった裏づけは、そもそも何時誰から上げた白星なのか?と問われても、具体的に「これです」と示すことが難しい。ナバレッテの現状(ポジション)は、”メキシコのローカル・ファイター”に止まらざるを得ず、以前別記事で指摘した通り、主要4団体のランキングの形骸化を如実に物語る。


だがしかし、どんなポジションのどんな相手だろうと油断は大敵。ローカルクラスとは言え、上位~トップレベルに到達したボクサーを甘く見ることは許されない。6月の大竹戦に続き、即決できれば無論それがベストのシナリオだが、早い決着にこだわることなく、足を止めずに丁寧なイン&アウトで立ち上がって欲しい。

かつてのラバナレスがそうだったように、いい意味で開き直った時のアンダードッグを侮ると痛い目に遭う。そしてまた、メキシコのファイターの多くが、体当たり&揉み合い上等のタフ&ラフ・ファイトばかりでなく、ボクシングもそれなりにこなす。

ギクシャクとした変てこなリズムでひたすら前に出て、被弾も厭わず重いフックとアッパーを乱射するラバナレスも、ナチョ・ベリスタインに仕込まれた選手の1人だけあって、ドタバタと騒々しい乱打戦を仕掛ける一方で、無理をせずにジャブ&ステップで距離を維持する技も、必要に応じて難なくやってのけた。


セオリーにはない、ダニエル・サラゴサにも似た独特な”タイミングのズレ”を持っていたラバナレスに比べれば、ナバレッテはまだ洗練されていてスタンダードなスタイルに近い。

その分ドグボェには対処し易いとの見方も成立する反面、通常はマイナスにしかならない筈の「遅さ」を、サラゴサやラバナレスの水準には及ばないにしても、武器に変える術を知っている点は、心してかかる必要があるだろう。

失うものの無い強味を前面に押し出した、大柄で屈強なファイターほど扱いが難しく、パワー&スピードに優れた攻撃に自信を持つ万能型(辰吉やドグボェはこの典型)が一度び乱戦に雪崩れ込むと、その流れから引き返すのは想像以上に難儀な仕事で、厄介な事態になりかねないから・・・。


◎ドクボェ(24歳)/前日計量:120.8ポンド
戦績:20戦全勝(14KO)
アマ戦績:不明
2012年ロンドン五輪ガーナ代表(初戦敗退)
※清水聡に9-10で惜敗/判定の是非を巡り批判的な記事を掲載する現地メディアもあった
2012年ロンドン五輪アフリカ大陸予選準優勝
2013年ABA(全英/イングランド)選手権優勝
2012年ABA選手権クラスB(年齢による区分け)優勝
2011年ジュニアABA選手権準優勝
※階級:バンタム級
身長:160センチ(5フィート3インチ),リーチ:168センチ(66インチ)
※トップランク社公式サイトより
右ボクサーファイター(スイッチヒッター)

◎ナバレッテ(23歳)/前日計量:122ポンド
戦績:26戦25勝(22KO)1敗
身長:170センチ
右(ボクサー)ファイター



全裸になって秤に乗り、周囲を心配させたナバレッテ。リミット一杯でクリアし、関係者全員が胸を撫で下ろす。成功に飢えたハングリネスは、王者に引けを取らない。宿泊先のホテルで予備計量をしっかりやって、準備万端で会場入りしたと見るべきだろう。


□リング・オフィシャル:未発表


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<2>北米(USBA)ウェルター級タイトルマッチ10回戦
王者 アレクサンダー・ベスプーチン(ロシア) VS ファン・C・アブレウ(ドミニカ)



トップランクと契約して2015年の暮れにプロデビュー(6回戦)したベスプーチンは、2013年の世界選手権に出場するなど、ジュニアの時代から頭角を現したロシアのトップ・アマ出身組み。

昨年4月、アンダードッグ路線に突入したブレイディス・プレスコット(コロンビア)を8回判定に下して注目を集め、その後も無名の中堅選手を順調に連破。9月に行った前戦で、USBA(IBF直轄の北米タイトル)のウェルター級王者となったばかり。

カリフォルニア州オックスナードに居を構え、同地を代表する名トレーナー,ロベルト・ガルシア(元IBF J・ライト級王者/マイキーの実兄)の流れを汲む、マルコ・コントレラスらの指導を受けている。
※状況が許せばガルシアもコーナーに入る


上背とリーチには恵まれなかったが、優れたスピード(手足と身体全体)が生み出す回転の速い連打を武器に、積極果敢に出はいりを繰り返しながら、鋭く強いパンチを叩き込む好戦的なサウスポー。

ボクシングを始めたのは8~9歳の頃で、父の友人が自宅の地下室を改造した練習場に通い、14歳で出場したジュニアの地方トーナメントで関係者の目に止まり、ナショナルチーム入りへの道が開けた。

リトアニア出身の辣腕マネージャー,イーギス・クリマス(ロマチェンコやコヴァレフ,O・ウシク,O・ゴズディクらを次々と米本土に送り込む)に口説かれ、家族を母国に残して渡米を決断。



対戦相手は常に自分より大きく、どうしても上半身が直立し易くなってしまう。タイミングのいいカウンターでチャンスを掴み、連打で畳み掛けようと距離を詰めても、棒のように上体が突っ張って足が揃ったところに反撃を食らう悪弊を克服できず、シニアに進んでからはここ一番で勝ち切れかったり、苦戦を強いられるケースが増えたらしい。

制約が少なく自由度が高いプロでは、セミクラウチングに構えた頭の位置を思い切り低くしたり、ノーガードで挑発半ばのフェイントでけん制するなど、生来の眼と反応の良さ+柔軟性を活かした小気味のいいファイトを展開。

計量を終えて本番のリングに上がる時点では、S・ウェルター級(リミット上限:154ポンド)を超えているらしいが、お腹周りにダブついた様子は微塵もなく、鍛え抜かれたナチュラルなウェルターとの印象。


180センチ近いタッパからパワーショットを繰り出すアブレウは、ドミニカ出身の右ボクサーファイター。

4敗の相手は、メキシコの元3冠王ウンベルト・ソト(40歳目前の今も現役)、ミネソタ出身のホープ,ジャメル・ジェームズ(元トップ・アマ)、シカゴ・ベースのプロスペクト,アレックス・マーティン(アマ340勝10敗)、そして7月の前戦で惜敗したリトアニアの大物アマ出身者エギディウス・カヴァリアスカス(21連勝17KO/アマ400戦超)。

昨年11月、手負いのヘスス・ソト・カラスを6回TKOに屠った白星が、過去最大の勲章ということになるが、再激戦区で勝ち残るには、今1歩スピード&機動力が足りない。

ベスプーチンと同じオックスナードで成功を目指すカヴァリアスカスも、コントレラス&ガルシアのチームにサポートを受けており、リトアニアのチャンピオン候補を通じて、アブレウの特徴は十二分に把握と分析が済んでいる。

余計なことはせず、普段通りにやりさえすれば、判定・KO(TKO)のいずれにしろ、ベスプーチンの勝利は磐石。気を付けるべきは、高い集中が途切れる心配の少ないクロスレンジでのパンチの交換よりも、長めのミドルレンジで相打ちを狙う強打(フックよりストレート系とアッパー?)か。




◎べスプーチン(27歳)/前日計量:146.6ポンド
戦績:11戦全勝(9KO)
アマ通算:300勝15敗
2013年世界選手権(アルマトイ/カザフスタン)ベスト8
2015年欧州選手権(バクー/アゼルバイジャン)銀メダル
2013年欧州選手権(ミンスク/ベラルーシ)金メダル
2012年ロシア選手権優勝
※階級:ウェルター級
2009年ユース欧州選手権(シュチェチン/ポーランド)L・ウェルター級金メダル
2007年世界軍人選手権(バクー/アゼルバイジャン)銅メダル
2006年欧州軍人選手権(ティラナ/アルバニア)フェザー級銀メダル
WSB(World Series of Boxing):3戦全勝
身長:173センチ(5フィート8インチ),リーチ:173センチ(68インチ)
※トップランク公式サイトより
好戦的な左ボクサーファイター

◎アブレウ(31歳)/前日計量:146.8ポンド
戦績:27戦21勝(19KO)4敗1分け1NC
身長:178センチ,リーチ:180センチ
右ボクサーファイター


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<3>北米(NABF)ライト級王座決定10回戦
テオフィモ・ロペス(米) VS メイソン・メナード(米)



リオ五輪代表からプロ入りした話題のプロスペクトが、プロ11戦目で初のタイトルマッチに臨む。

若き中量級ホープが一躍注目を浴びたのは、今から2年前の夏。両親の母国ホンジュラスの代表としてリオデジャネイロに派遣されたロペスは、フランス代表のソフィアン・オーミアを相手に優位に試合を進めながら、27-30の判定負け。

リング上でスコアと結果を聞いたロペスは、露骨に不快な表情を浮かべると、鮮やかなバク転を披露してリングを降りる。ホンジュラスの代表団を通じて、AIBA(アマの統括機関)に正式に抗議も行ったがあえなく却下。

「アマチュアボクシング(統括機関とその管理運営体制)は腐っている。真っ黒だ。アメリカの代表選考も酷かったが、オリンピックはそれ以上だ。我々はプロへ行く。茶番に付き合わされるのはもうご免だ。」

実父でトレーナーのテオフィモ・シニアは、取材陣に向かって憤懣をぶつけた。2012年のロンドン大会でも、清水聡が危うく八百長の犠牲になるところだったが、リオでもレフェリングとスコアリングを巡る問題が続出。

※”疑惑の判定”を巡る関連記事
<1>「夢を盗まれた」、リオ五輪ボクシングで物議醸す判定負け
2016年8月8日/AFP(日本語版)
http://www.afpbb.com/articles/-/3096707?pid=18142730

<2>Fighting for Honduras, US-born teen loses to French boxer
2016年8月7日/USA Today
https://www.usatoday.com/story/sports/olympics/2016/08/07/fighting-for-honduras-us-born-teen-loses-to-french-boxer/88373802/

<3>Rio 2016 Olympics: Beaten boxer Teofimo Lopez lashes out at ‘corruption’
2016年8月8日/Indian Express
https://indianexpress.com/sports/rio-2016-olympics/beaten-boxer-teofimo-lopez-lashes-out-at-corruption-2961795/




悪名高きアンワル・チョードリー(パキスタン/AIBA元会長)の永い独裁体制に終止符を打ち、運営体制の正常化と浄化を訴えて登場したウー・チンクオ会長(台湾)も、AIBA幹部の金銭にまつわる不正疑惑を隠匿したとして、規約違反を理由に職務停止の処分を受け、昨年11月に辞任(事実上の解任)。

後継のトップに立候補したウズベキスタンのガフル・ラヒモフ副会長には、麻薬やマフィアとの深いかかわりが報じられ、IOCのバッハ会長(この人物も曲者だが)が直接懸念を表明する異常事態に発展。先月3日にモスクワで行われた総会で、結局ラヒモフ副会長の新会長就任が承認され、正式競技からの除外がいよいよ現実味を帯びている。

「今回の騒動は十分に予見可能だった。ボクシングだけじゃなく、すべてのオリンピックスポーツが、こうした問題と無縁ではない。IOCだって正常とは言えないだろう。オリンピックそのものが、巨大な利権と化している。そしていつも政治とカネの犠牲になるのは、競技に人生を捧げる選手なんだ。スポーツを統括する機関の幹部や職員たちは、いい加減に目を覚ますべきだ。」

「(五輪の正式競技から外された場合)ショックと影響の大きさは計り知れない。しかし、それもまた運命だ。本気で変わる為には、一度落ちるところまで落ちないと駄目なのかもしれないな・・・。」

感慨深けに語るテオフィモ・シニアが、「絶対に忘れない(許さない)」と憤慨する「アメリカの代表選考」とは、ライト級の代表選出にかかわる決定のプロセスに対する疑義である。

リオの132ポンドに派遣されたカルロス・バルデラスは、WSB(World Series of Boxing)の個人ランキング上位2傑に入り、AIBAが定めた選考ルールに基づいて代表権を得た。

米国最終予選(オリンピック・トライアル)で優勝したテオフィモ・ジュニアは、最難関の米大陸予選で見事銀メダルを獲得。ロンドン大会以前なら文句無しの代表当確だが、WSB(とAPB=AIBA Pro Boxing)の上位2傑を優先する、AIBA新ルールのワリを食う格好となったテオフィモ・ジュニアは、急遽ホンジュラスの国籍を取得。


「カルロスと私の息子が戦って、真の代表を決めればいいだけなのに、アマチュア連盟(USA Boxing/米国ボクシング連盟)にはまるでその気がない。AIBAの国際ルールだから仕方がない、我慢しろとその一点張りだ。あと4年待てと平気で言う。冗談じゃない。」

「間違って貰っては困るが、カルロスに恨みはない。彼は優れたボクサーで、代表に相応しい実力の持ち主だ。我々が問題にしているのは、あくまで選考のプロセスなんだ。WSBとAPBが始まった為に、1国1代表の原則に支障が生じる可能性は想定できた。5大陸予選を勝ち抜いた選手が、何故WSBとAPBの後塵を拝さなければならないのか?。」

テオフィモ・シニアの主張はもっともだ。同じ階級の同胞(ライバル)が、WSBとAPBの上位2傑に入った場合、五輪前年の世界選手権(予選を兼ねる)でメダルを獲ろうが、国内予選と大陸予選を勝ち抜こうが、その選手は代表にはなれない。

そもそも、こうした状況が発生した階級について、国内代表を選考する大会を開くこと自体どうなのか?ということになる。テオフィモ・シニアのシリアスな問題提起は、各国アマ連の管理運営について、AIBAと真剣との協議も含めた、抜本的な見直しを迫るものだった。


同じライト級でしのぎを削る選手がAPBの世界チャンピオンになった為、2015年の世界選手権(ドーハ)で銅メダルを獲得しながら、リオ五輪本選への出場が叶わなかったエルヌール・アブドゥライモフ(ウズベキスタン)を以前ご紹介したが、ウズベクの五輪委員会は、悲運に泣いたアブドゥライモフを旗手に起用する配慮を示した。

この美談は、同国がリオに送った代表選手が総勢70名の小さな規模だからできたことでもあり、派遣する選手が500名を超える大所帯のアメリカでは不可能と言っていい。

二重国籍が認められる場合、国籍を変えて出場すること自体にルール上の問題はないが、メダル目的の国籍変更には様々な意見がある。日本の芸人がマラソンで五輪に出る為、カンボジアの国籍取得に踏み切った時、賛否両論が巻き起こる中、バッシングに近い批判も少なくなかった。

この人の場合、家族にカンボジア人がいる訳ではなく、かつメダルを狙えるほどのランナーではなかったことが、逆風を激しくする一因になったように記憶するが、例えば卓球の国内トップ選手を他国に供給する格好になっている中国にも常に一定の批判がある。

我が国は二重国籍が認められておらず、マラソンで才能を発揮した芸人さんは、それこそ眠れぬ夜を幾晩も過ごし、悩みに悩み抜いたのではないか。東京五輪への出場を確実にする為、父親の母国であるカナダ国籍を取得した女子柔道の出口クリスタ選手も、日本国内の熾烈な代表争いから逃げたとの批判を覚悟していたらしく、いずれにせよ、人生を懸けた苦渋の決断だったことは間違いない。


話を元に戻そう。APBとWSBは、AIBAが推進する独自のプロ化路線の両輪であり、絶対に失敗が許されない一大プロジェクトとしてスタートした。

そもそもの目的は、プロのプロモーターによる容赦の無いスカウトから、アマのトップ選手を囲い込んで流出をストップすることにあり、ひいてはトップ・プロの参加を積極的に推奨するIOCの基本的な方針=「五輪は競技レベルにおいても世界最高であるべき」=に沿うとの建前を構築する為に他ならない。

ボクシングの盛んな国ほど、プロとアマの仲は悪いと相場は決まっている。これは洋の東西を問わず、AIBAの幹部たちも、既存のプロに対して明確な敵意を示してきた。

北京五輪終了後に第一弾のWSB(都市別対抗戦)を立ち上げ、2014年秋に本命のAPB(個人戦)を第二弾として発足。しかし、トップアマのプロ流出に歯止めは利かず、遂にAIBAは完全オープン化へと路線を転換。

リオ五輪の本番2ヶ月前、慌しく発表された既存のプロ受け入れは、各国のアマ連を混乱に落とし入れかけた。イの一番に叛旗を掲げたのが王国アメリカ。「プロの参加など有り得ない。非現実的な夢物語だ。」と一蹴。

ワイドショーを賑わせた山根会長(2016年当時)も、AIBAのプレスリリースに対して即座に反応し、「リオにプロが参加?。東京(2020年)でも無理だ。」と、米国アマ連と同じ厳しい論調で拒絶している。


WBAを除く主要3団体が「五輪に参加した選手をランキングから外す」と声明を出し、とりわけWBCは反AIBAの姿勢が鮮明かつ攻撃的で、プロ側も否定的な反応が大勢を占めた。

「他の競技はともかく、ボクシングのプロとアマはまったくの別物。計量(プロは前日/アマは原則当日=勝ち上がった選手はトーナメントの開催中リミットを維持しなければならない)とドラッグテストの問題は勿論、ラウンドの数もルールも、何もかもが違い過ぎる。」

村田諒太と2度対戦したハッサン・エンダム・ヌジカムやタイのアムナット・ルエンロンら、一部のプロ選手が参加はしたものの、AIBAが期待した真のトップクラスは皆無。多くの選手と関係者が危惧していた通り、良い結果を残すことはできなかった。


大陸予選の上位通過者よりもAPBとWSBを優先するAIBAの決定は、今後も覆ることはないと思われる。プロとの敵対関係も短時日での解決は有り得ず、可能性の話をすればゼロではないというだけで、メダルを狙える有力選手の囲い込みを強化する為にも、APBとWSB優先の体制は変わらず継続される。

AIBAと各国の連盟が今すぐやるべきことは、国際審判員を管理統括する独立した機関を作り、八百長と不正工作を仕掛ける側(AIBAの幹部役員も含めて)から、標的となる審判たちを守ることだが、これもまずやらないだろう。




トップランクが全力を傾注して育成にあたるテオフィモ・ロペスは、スピード,パワー,テクニックが高い水準で融合した正統派のボクサーファイターで、攻めながら守るオールド・スクールの衣鉢を継ぐ優れたボクサーだ。

五輪を契機に因縁を結んだバルデラスは、リチャード・シェーファーのリングスター・スポーツの支配下にあり、対立関係にあるトップランク傘下のロペスとの激突は容易に実現しそうにない雰囲気だが、両雄が無事に世界タイトルに辿り着く頃には、王国アメリカの勢力図に何らかの変化が起きているかもしれない。


対するメナードも、アマで活躍してからプロ入りしたホープの1人。WBO王者になる直前のレイ・ベルトランに7回KOで敗れ、今年5月にはデヴィン・ヘイニーにも9回終了後のギブアップに追い込まれたが、まとまりのいいボクサーファイターで、試合ぶりも勇敢かつクリーン。

ロペスの優位は動かないけれど、簡単に引き下がりはしない。負けるにしても、何らかの爪痕は残そうと奮闘する筈。


◎ロペス(21歳)/前日計量:135ポンド
戦績:10戦全勝(8KO)
アマ通算:150勝20敗
2016年リオ五輪ライト級初戦敗退
※ホンジュラス(両親の母国)代表
2016年リオ五輪米大陸予選準優勝
2015年リオ五輪米国最終予選優勝
2015年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
2015年ユース全米選手権ベスト8
2014年ナショナル・ゴールデン・グローブス2回戦敗退
2014年ユース全米選手権3位
※階級:ライト級
身長:173センチ,リーチ:174センチ
右ボクサーファイター

◎メナード(30歳)/前日計量:135ポンド
戦績:37戦34勝(24KO)3敗
アマ通算:82戦(詳細不明)
2007年全米選手権ライト級3位
※北京五輪代表候補
身長:170センチ
右ボクサーファイター




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<4>143ポンド契約8回戦
マイケル・ペレス(米) VS アブディール・ラミレス(メキシコ)



ニュージャージー出身のペレスも、秀逸な戦績と戦果を残した元トップ・アマで、バランスの取れたクレバーな攻防が持ち味。スラリとした痩身をスタイリッシュな構えでまとめ、コンパクトなガードから繰り出すキレのいい的確な左右でポイントを奪う。手足と身体全体のスピードに不足はなく、リズムに乗ると抜群の安定感を見せる。

UFCで活躍中のアレックス・ペレス(プロボクシング:18勝3敗/10KO,アマ:56勝3敗)とは、同じジムで学んだステーブル・メイトだが、血縁関係はないらしい。

北京五輪への出場が叶わず、2008年秋にプロデビュー。ゴールデン・ボーイ・プロモーションズの傘下で戦い続け、リチャード・シェーファーの造反劇で大揺れに揺れた後も、GBPとの契約を更新し続けている。

18歳当時のペレスは、まだ大人の身体が出来合っておらず、アマ・エリートに特有の線の細さが心配されたが、1分け(3戦目)を挟む15連勝(9KO)で台頭。しかし、テキサスの人気者オマール・フィゲロアとのホープ対決に6回終了TKOで敗れて後退。

ローカル・ファイトからやり直し、1分けを挟む9連勝(2KO)を積み重ねたが、 2016年9月のピョートル・ペトロフ(ロシア)戦でよもやの6回終了TKO負け。第2ラウンドに見事な右のカウンターでダウンを奪われ、バッティングで出血。ダメージから回復できないまま、棄権を余儀なくされた。

ペレスを倒したペトロフは、昨年4月渡英。ライト級のWBO王者だったテリー・フラナガンに挑戦して0-3の判定負けに退き、今年3月の復帰戦で140ポンドに上げ、同胞のイヴァン・バランチェク(WBSSへの出場が決まり初戦でIBF王座を獲得)に8回TKO負け。
※ライト級王座を返上して増量したフラナガンも、今年6月にWBO王者モーリス・フッカー(米)に挑戦して1-2判定負け。さらにWBSSに参戦し、初戦で優勝候補のレジス・プログレイス(米/WBC暫定王者)に0-3判定負け。

ライト級とS・ライト級で挑戦機会を模索していたペレスが、目論み通りペトロフに勝っていたら、英国行きのオファーが届いていたかもしれない。「禍福は糾える縄の如し」とは、本当に良く言ったものだ。

そしてこの選手も、コーナーを取り仕切るのはロベルト・ガルシア。ペトロフ戦の結果を受けて体制の見直しもあるやに思われたが、信頼関係にヒビが入ることはなく、昨年4月の再起戦(アルゼンチンの中堅選手に2-1判定勝ち)でもコーナーを率いている。

今回はメキシコの中堅クラスを呼んだが、契約ウェイトは過去最重量。ペトロフ戦で露呈した打たれ脆さへの懸念を、自慢の技術とセンスで払拭できるか。

三十路手前の「ジ・アーティスト(The Artist/ペレスのニックネーム)」が、キャリアの正念場を迎えている。


◎ペレス(28歳)
戦績:29戦25勝(11KO)2敗2分け
アマ通算:112勝10敗
2008年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝(ライト級)
2005年ジュニア・オリンピック優勝(階級不明)
身長:173センチ,リーチ:180センチ
右ボクサーファイター

◎ラミレス(27歳)
戦績:27戦23勝(21KO)3敗1分け
身長:164センチ(正確な数値は不明)
右ボクサーファイター


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<5>ウェルター級6回戦
ブライアン・セバーヨ(米) VS ダニエル・カルサダ(米)



プエルトリコで生を受け、ニューヨーク(ブルックリン)で育ったセバーヨは、ジュニアの時代から将来を嘱望されたトップ・アマ出身組み。GGGをハンドルするトム・レフラーが新たに興した、360プロモーションズと契約している。

恵まれたサイズと重くキレのあるパンチは、確かに魅力的。いわゆるスピードスタータイプではないが、シャープネスとクィックネスもまずまずで、格下の無名選手をあてがわれてプロの水に慣らしている段階だが、パワーにモノを言わせてねじ伏せたりせず、出はいりと崩しの労を惜しまず、打たせずに打つ堅実な戦い方をベースに、時折才気走った動きも混ぜてファンを喜ばす。

父に連れられ、7歳で地元の小さなジムに通い始めると、すぐに優れた才能を発揮。1年後に一家はブルックリンに移り、名門グリーソンズ・ジムで本格的な練習をスタート。順調に成長したセバーヨは、ロンドン(2012年)とリオ(2016年)の出場を逃し、2020年の東京大会を目指す選択肢もあったが、レフラーの積極的なスカウトが奏功してプロ入り。

本格的な勝負は、2019年以降になる筈。ウェルター級~ミドル級までの3階級制覇は勿論、S・ミドル級への進出も見据える大器を、レフラーがいかに成功へと導くのか。プロモーターとしての腕の見せ所になる。




◎セバーヨ(24歳)/前日計量:147.8ポンド
戦績:5戦全勝(3KO)
アマ通算:206勝13敗
2017年全米選手権優勝
2016年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
2016年全米選手権準優勝
2015年リオ五輪米国内予選3位
2014年ナショナルPAL優勝
WSB(World Series of Boxing):3勝4敗
※階級:ウェルター級
身長:178センチ,リーチ:184センチ
右ボクサーファイター

◎カルサダ(27歳)/前日計量:147.6ポンド
戦績:38戦16勝(2KO)19敗3分け
身長:170センチ,リーチ:173センチ
右ボクサーファイター


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<6>ヘビー級6回戦
グィド・ヴィアネッロ(伊) VS ルーク・ライオンズ(米)



リオ五輪の代表だったイタリアのS・ヘビー級ヴィアネッロが、いよいよプロデビュー戦を迎える。

トップランクを率いる御大アラムは、「実はまだ、彼の試合(映像)を見ていないんだ。でも、コーチのアベル(サンチェス:GGGのチーフ・トレーナー)が、彼の潜在能力に太鼓判を押している。大丈夫だ。」と、大枚を投じて(?)スカウトしたS・ヘビーについて述べているが、確かに良いものを持っていると思う。

巨大化が行き過ぎた現在のヘビー級は、2メートル級の巨漢と渡り合う必要性から、180~190センチ台前半の平均的なサイズの選手でも、240ポンドを超える重量を当たり前に身にまとうようになった。

スローモーな大男たちが、ジャブ(軽打)の突き合いとクリンチ&ホールドに終始する退屈な試合ばかりが目につき、スリルとスペクタクルに溢れたヘビー級の醍醐味が消え去って久しい。

「ウラディーミル・クリチコとモハメッド・アリを合体させた、動きに華のあるボクシング。」

母国イタリアのボクシング通たちは、ロベルト・カンマレーレ(北京大会S・ヘビー級金,ロンドン大会銀,アテネ大会銅/五輪3大会連続メダル獲得)の後継者について、そんな風に評して自慢する。サイズとウェイトを考えれば、ヴィアネッロのジャブとストレートの切れ味、そして機動力(ステップワーク)は十分に納得できる水準ではあるが、幾ら何でもアリとの比較は無謀。

3分×5ラウンド制のWSB(World Series of Boxing)でも、後半の息切れ傾向が課題だったけれど、アベル・サンチェスの薫陶を受けてどこまで修正されたたのか。心身のスタミナ強化は、そのままガードの改善にもつながる。

ケンタッキー(アリの生まれ故郷)から生贄として呼ばれたライオンズは、33歳の白人ローカル・ファイター。丸々と肥えた体躯にしては、足を使って良く動く。小兵(正確な身体データは不明)の不利を機動力でカバーしようと懸命に左右に旋回するものの、大きな相手を脅かすパワーもカウンターも無い為、一度捕まると後がなくなってしまう。

残念ながら2万人収容のメイン・アリーナではないが、N.Y.の殿堂MSGのリングで初陣を迎えるヴィアネッロは、「ボクシングを始めた頃から、ずっと憧れの場所だった。」と、まずはアメリカ人の喜ぶコメントで並み居る記者たちをけん制。

「アリとクリチコを合体?。そんな真似、誰にもできっこないよ。」

頭から否定するだけなら最も簡単で、それこそ誰にでもきる。夢と目標は、大きいにこしたことはない。




◎ヴィアネッロ(24歳)/前日計量:236ポンド
戦績:プロデビュー戦
アマ戦績:不明
2016年リオ五輪代表(緒戦:R16敗退)
2017年世界選手権(ハンブルク)2回戦敗退
WSB(World Series of Boxing):7勝(1KO)5敗
※階級:S・ヘビー級
身長:198センチ
右ボクサーファイター

◎ライオンズ(33歳)/前日計量:239.8ポンド
戦績:7戦5勝(2KO)1敗1分け
身体データ:不明
右ボクサーファイター


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<7>143ポンド契約8回戦
ホスエ・バルガス(米) VS ジョン・レンテリア(パナマ)



5歳の時にプエルトリコからブロンクスに移り住み、8歳でボクシングと出遭ったバルガスも、ジュニアで活躍したアマチュア出身組み。

「神童(The Prodigy)」というご大層なニックネームで売り出し中の二十歳は、スピーディな身のこなしと精度の高いカウンター・センスが評判を呼び、早くからプロ・アマ関係者の目に止まっていたらしい。

10代前半~半ばの頃とは言え、シャクール・スティーブンソン(9戦全勝/リオ五輪バンタム級銀メダル)とリチャードソン・ヒッチンズ(6戦全勝/リオ五輪L・ウェルター級代表)に勝ったというから大したものだ。


最初に習ったのは、ブロンクスで長くアマチュアの指導育成に情熱を注いだビクター・ペーニャというベテランのコーチで、モリス・パーク・ボクシング・クラブ(Morris Park Boxing Club)というジムで教えていた。


※13歳当時のバルガスとメンター的存在とも言うべき最初のコーチ,ビクター・ペーニャ

ペーニャはブロンクスではそれなりに知られた存在らしく、とりわけ幼少年の指導に関しては高い評価を受けているとのこと。10代前半で地元メディアの本格的な取材が入るぐらいだから、バルガスの天才少年ぶりも容易に想像がつく。

ジュニアの競技選手としてスタートするや否や、ニューヨーク周辺地域のローカル・トーナメントを総なめにして、全国規模の大会でも大いに顔を名前を売る。

10代半ばになろうかという時期には、未来のメダリスト候補に数えられるまでに成長。次に付いたのは、マンハッタンにあるメンデス・ボクシング・ジム(Mendez Boxing Gym)のエリオット・ナス(ナズ?/Elliot Nass)というコーチで、主に15~16歳(AIBAによる現在の定義では”ジュニア”)のアマチュアを見ていた。



世代(年齢)別のカテゴライズに合わせて、選任のコーチを置く体制と考え方には賛否様々意見はあると思うが、例えばサッカーやテニスなどでは、成長期の子供たちに対する年代別トレーニングは、もはや当たり前の常識となっている。

ボクシングが貧乏マイナースポーツに転落して久しく、もともと高校生以上にしか公式戦が存在せず、永きに渡るプロ・アマ断絶の悪弊に加えて、経済的な基盤が脆弱なことこの上ない我が国に、そっくりそのまま当てはめることはできないけれど、参考にできるとことはあるだろう。


2016年のリオ五輪に向けて準備は万端・・・と言いたいところだが、大きな問題が1つ。年齢制限である。

2008年の北京五輪終了後、本格的なプロ化路線へと舵を切ったAIBAは、シニア男子のヘッドギア(ヘッドガード)廃止を打ち出す。2013年6月の運用開始に合わせて、年齢によるカテゴリーを変更した。

■変更前
(1)シニア(成年):17歳~34歳
(2)ジュニア(少年):15歳~16歳

■変更後
(1)エリート:19歳~40歳
(2)ユース:17歳~18歳
(3)ジュニア:15歳~16歳

1998年5月生まれのバルガスは、リオ五輪本戦開催時には18歳を過ぎており、従来のルールなら予選への出場はまったく問題がない。しかし、新ルールでは年齢制限に引っかかってしまい、予選へのエントリーすら叶わない。

もともとアマチュアに長居をする気はなかったこともあり、2015年11月に17歳でプロデビュー。

フロリダの元プロモーター,ゲイリー・ジョナスとヘンリー・リバルタが新たに立ち上げたマネージメント会社(ProBox Management)と契約を交わし、4回戦で地道な下積みをスタート。

7戦目(2016年10月)で、同胞の無名選手に反則負けを喫しているが、相手がドクターチェックを受けた直後に、背後からパンチを放ってしまったとのこと。


昨年3月にリスタートすると、メイウェザー・プロモーションズとの契約が発表される。あのマネー・メイウェザーが、18歳の少年ボクサーをスカウトしたと話題になった。

これで先行きは安泰、順風満帆と思いきや、6月と9月に2試合をやっただけで、早々と関係を解消。昨年9月と今年4月の2試合は、イヴェンダー・ホリフィールド(Real Deal Sports & Entertainment)が手掛ける興行だったが、トップランクとの正式契約に至った模様。

実父のエラリオ(常にティトの愛称で呼ばれている)がトレーナー兼マネージャーを勤める親子鷹だが、メイウェザー一家はバルガスに関心が薄かったらしく(?)、「期待していた環境ではなかった。」と、父は今回の決定について語っている。



エラリオは試合本番のコーナーも率いるチーフで、リング内外の舵取りをすべて仕切っているが、ボクシングを始めた時に習ったペーニャは、今も変わらずサポートを続けているという。


サウスポースタイルから小気味のいいジャブを飛ばし、ワンツーから左右フックへとつなぐ正攻法。1発の重さと破壊力は今1つとの印象だが、大人の身体が出来上がるに従い、ボクシングも変わる可能性がある。

3度目の8回戦に選ばれたのは、26歳のパナマ人アンダードッグ。前戦でハワイ在住のローガン・ユン(20歳/14連勝11KO)に10回判定負けを献上しており、2戦続けて二十歳のホープに胸を貸す(?)ことになった。

ごく普通にやれば特段の問題は無いと思われるが、背中を向けた相手を殴るなど、スマートな万能型にしては血の気が多く、打ち合いを始めるとムキになって我を忘れそうになる場面も散見される。

丁寧な出はいりで相手を引き出す術に長け、左ストレートを合わせる駆け引きとテクニックにはキラリと光るものがあり、将来性を感じさせてはくれるが、カっとなってディフェンスがお留守になると、”まさかの1発”を食らう恐れを否定できない。

無名の中堅選手をナメて足下をすくわれるホープの姿は、年季の入ったファンには日常茶飯。モチベーションを絶たれて潰れるケースも珍しくないだけに、体が温まり切らない立ち上がりは特に慎重に・・・。


◎バルガス(20歳)/前日計量:142.6ポンド
戦績:12戦11勝(7KO)1敗
アマ通算:72勝8敗
ジュニア・オリンピック,リングサイド・トーナメント等で複数回の優勝経験有り
※年度や階級など詳細は不明
身長:173センチ
左ボクサーファイター

◎レンテリア(26歳)/前日計量:142.8ポンド
戦績:戦16勝(12KO)5敗1分けNC
身長:180センチ
右ボクサーファイター

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