川柳とメタファー
比喩とは、文章中に登場する物事を関連した他の物事に例える手法です。例えを用いることで、読者に対象の物事のイメージ深めやすくする効果があります。
比喩には、明喩(めいゆ)・暗喩(あんゆ)・換喩(かんゆ)・提喩(ていゆ)などに分類されます。今回は暗喩(メタファー)について説明します。
「彼女は天使だ」のように、「~のような」にあたる語を用いない例えです。隠喩は、この例ならば、「天使のようだ」と言わず「天使だ」と言いきって、より対象であう「彼女」の特徴を強調しています。
しかし、「彼女」=「天使」ではありません。暗喩では本来イコールで結びつくはずのないものを「彼女は天使だ」のように言い切るのです。このように、言い切ることによって読む人に暗示的に想像させることができます。
暗示的とは「物事をはっきり示さずに、それとなく知らせること」です。
それとなく知らせることで、逆に読む人にインパクトを与えることができるのです。
川柳を詠む場合、多くは主語を省略するので、「彼女は天使だ」の場合、川柳では例えた対象である「天使」だけを書くことがほとんどです。ですから、例えた語句によっては難解な句になることがあります。
暗喩を用いた川柳作品A
転がったとこに住みつく石一つ 大石 鶴子
ひかえ目にあなたにつくす裏釦 宮田喜美子
集団で動く背広を着た羊 井上せい子
暗喩を用いた川柳作品B
ふりかざしやがてやがての蟹の爪 時実 新子
紫の火もありぬべし寡婦となり 林 ふじを
暗闇へ異形の鈴はかえりたし 渡部可奈子
A群の句は、比喩の対象が解りやすく、句も平易に解釈できると思います。
B群の句は、「蟹の爪」「紫の火」「異形の鈴」の比喩の対象が解りにくく難解な句になっています。
ただ、分かりやすいから「良い句」、難解だから「優れた作品」ではありません。自分が理解できないから「駄作」だと決めつけてもいけません。「作者と読者が感動を共有できるか」が大事だと思います。ですから、暗喩は、自分の理解できるフレーズを使用することが肝要です。決して格好良いいからとか、上級者らしく見えるとかで安易に使用すると逆効果になることが多いようです。
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