川柳茶房 Toujirou

笑いの少ない川柳ですが・・・。

なかはちエレジーⅡ

2021-07-22 11:07:35 | 日記

なかはちエレジーⅡ

 俳句や川柳を創作していれば、字余りの壁に突き当たります。特に中八は悩ましいものです。

何故嫌われるのか?入門書にも「リズムが崩れる」という理由だけで、それ以外は書いてありません。

句会で稀に中八の句が披講されると「初心者は真似しないように」とか「中八は絶対にダメ」とか指導されたものです。

そのせいか、川柳で中八の秀句と言われるものはないようです。

俳句は中八の秀句も多くあります。

 

       水脈の果炎天の墓碑を置きて去る    金子兜太

 

 585の中八の句です。この俳句を、「水脈の果炎天の墓碑置きて去る」にすると、575の定型に収めることができます。その代わりインパクトが弱くなり、幾人も戦死したであろう、兜太の戦友への痛恨の思いが表現しきれないのではないかと思います。

 

 句の内容によっては中八にした方が効果を発揮しますが、安易に中八にすると散文的になりリズムを崩すだけの句にしかなりません。中八にするにはそれなりの必然性がなければならないと言うことです。ですから一般的には575の定型に作った方が佳句になりやすいのではないでしょうか。

 

 このように考えると、俳句や川柳等の定型詩においては、「句またがり」、「字余り」、「字足らず」などの破調は、作句上のレトリックではないかと思うのです。メタファーのようにうまく使えば読み手の想像力を膨らませますが、喩えが離れすぎると、読み手に意味が伝わらず難解な独りよがり句になるのと同じです。

     中八がそんなに憎いかさあ殺せ      川合大祐

      どう評価すべきか字余りの一句      油谷克己

      信念のある中八は目をつぶる      橋倉久美子

中八の闇は深いのです。

       深い闇中八が孕むレトリック         陶次郎


なかはちエレジー

2021-07-18 22:21:51 | 日記

なかはちエレジー

俳句のように季語必要ない。切れ字は必要ない。口語体で書く。俳句より融通が利くようなイメージをもって川柳を書き始めて10年を過ぎました。しかし、不自由事も多々感じるようになりました。その一つが中八です。

川柳の入門書を読んでいるとたいてい中八は避けるべきと書いてあります。

・・・中七は川柳の柱です。中八の字余り、中六の字足らずはリズムが崩れて、グラグラします。下五もきちんと締めましょう。最後が締まらないと句がだらけます。(番傘川柳本社偏「楽しい川柳」より)

中八がそんなに憎いかさあ殺せ  川合大祐 

中八この句、で書かれているのがいいですね。

中八であるがゆえに、ボツ句になった悲哀、もしくは、「表現の自由」が、定型句に挑戦している様にも思えます。

川柳では、中七の重要性ということが議論のポイントになることが多いようです。私は、「楽しい川柳」に書かれているように、中七は句の要であり重要だと思っています。

しかし、中七を絶対守るべきでしょうか。川柳を「文芸」、「短詩」と考えて、実践している作者からすると、句全体の衝撃や感動が、中七より優先させるべきだと思っています。もちろん、安易に中八や下六の破調に仕立てるのではなく、推敲を重ね破調にした方がより、感動が得られる場合です。

夏草に汽罐車の車輪来て止まる   山口誓子

例が俳句で恐縮ですが、この句は585の中八です。

夏草に汽車の車輪が来て止まる

もし、この句の「汽罐車の車輪」を「汽車の車輪が」にするなら、575の定型になりますが、「汽罐車の車輪」の重厚感が削がれ「夏草」との対比が弱くなると思います。この句は、「汽罐車の車輪」であるべきだと思います。

破調は、破調にしなければ、感動が得られない場合。破調にすることでより感動が大きくなる場合にのみ、効果を発揮するものだと思います。

 


久しぶりの句会

2021-07-03 10:33:04 | 日記

7月2日、コロナ自粛で休会していた「熊本番傘お茶の間川柳会」の月例会です

今回は、選句の時間に虫食い川柳を考えてもらいました。

 

1. ◯に生きるとはちっぽけな男なり      西村如葉

2. ◯◯◯いまややこしいとこを編み      

3. 生甲斐を悟るに暗い◯◯         薮内千代子

4. 或るときは眉引くことも◯◯にみえ    

5. 台所◯にもなれず◯にもなれず       林ふじを

6. ◯◯も規格品とは情けなし         

7. ◯◯をくらしの火とは見てくれず        田向秀史

8. 我が◯を置いて見ている山の地図      渡邊蓮夫

9. 陽と雨の◯◯見捨てたアーケード      内藤凡柳

10. 野仏に話せぬほどの重い◯         尾花白風

 

私は、虫食い川柳はクイズではなく、自分の感性を第三者の目で見つめるものだと思っています。

 

 

今回の私の句2句

課題 ちりぢり

島民は皆ちりぢりに沖縄忌

ちりぢりに私の夢が風に舞う

 

虫食い川柳

ちなみに原作は、「1.恋 2.生返事 3.台所 4.意地 5.妻 母 6.愛情 7.漁火 8.影 9.詩情 10 罪」です。