川柳茶房 Toujirou

笑いの少ない川柳ですが・・・。

侘助

2022-11-27 18:40:15 | 日記

11月下旬というのに暖かい日が続く。先日はたんぽぽの綿毛がきれいに咲いていた。今日も昼間は20度を超えている。庭に出ると侘助の花が咲いていた。我が家の侘助は白である。天候のせいか今年の侘助は例年になく美しい。妻は早速ひと枝きって一輪挿しに生けた。

侘助は、椿の一種で、花は一重で小さく半開き状に咲く。庭の隅で申し訳なさそうにしているので“侘助”かと思っていたら違っていた。侘助という千利休の下男がこの花を育てたので侘助と名付けられたという説。慶長の役の際、侘助という人が日本に持ち帰ってきたことから彼の名がついたとする説。茶人笠原侘助がこの花を好んでいたため侘助となったという説など諸説あるようである。

侘助の白に心も洗われる

一年を詫びて侘助庭の隅

侘助の白の中から白一輪 陶次郎


ベッドの絶叫

2022-11-21 17:03:22 | 日記

ベッドの絶叫夜のブランコに乗る

林ふじをの代表作の一つである。

林 ふじを(本名 林和子)

大正15年(昭和元年1926年)東京生れ。結婚後小田原で暮らす。一女をもうけたが、夫が戦死。病弱であったためか、娘を育てることが困難で義弟夫婦に養女に出す。昭和28年(1953年)妻子ある川柳作家との縁で川柳を始める。川柳の手ほどきをした男性が藤の花が好きだったことからふじをと号した。番傘投句から始めて後に「川柳研究社」の句会に出席、川上三太郎に師事。三太郎から「女性であるから何よりもまず女性の手になった句を書く」ようにと指導される。昭和34年(1959年)2月19日病死享年34歳。

簡単に経歴を書いたが、川柳の創作期間はわずか6年ほどである。死因は胃潰瘍と何かの本で読んだ記憶があるが、どの本だったかは失念した。セックスを本格的に詠んだはじめての女性川柳人と言われ、セックスを赤裸々に詠んだ句が多い。

掲出の句だが、ふじを没後55年にあたり出版された林ふじを「川柳みだれ髪」によると昭和34年の作品である。同年2月19日に死亡しているので絶筆に近い句と言ってもよいのではなかろうか。何年も前にこの句を読んだ時、強烈な描写に驚いた。字面だけ読むと官能句である。しかし、この句死ぬ一、二か月前に詠まれたとはとても思えないようになった。ここで書かれているベッドは異性と愛し合うベッドではなく、病室のベッドではなかろうか。絶叫は、快楽の叫び声ではなく、病による激痛に耐えられなくなっての絶叫ではなかろうか。「夜のブランコ」という暗喩は「闇にいて抗えない力によって揺れているブランコ。すなわち自分の運命」ではなかろうか。そう考えるとこの句は官能句ではなく「死の恐怖、生きることへの執着」を書きたかったのではないかと思えるのである。川柳みだれ髪 Ⅵ絶叫より13句を記しておく。いずれも昭和34年の作品である。

ベッドの絶叫夜のブランコに乗る

何かしゃべれば幸せが逃げさうな

師と歩む師を超えようとするあがき

金に換算あと幾月のいのちとも

傷ついてむさぼりあってまた別れ

顔洗っても還って来ぬ素顔

ママ死なないで神サマといふ子を信じ

生命線プツリとやせたてのひらよ

負担などない愛人の見舞状

力なき手に愛情をまさぐるよ

こんなにも愛されて病むじれったし

バースデイひととき君の掌(て)と遊ぶ

イエスではない眼あたしにだけわかる

師川上三太郎の追悼吟を書いてこの稿をおわる。

ちりいそぐあはれうすむらさきのはな

 

 


十日メール川柳句会

2022-11-16 11:03:29 | 日記

熊本県川柳研究協議会(以後熊川協)には十日メール川柳句会なるWEB句会がある。お題が出され参加者は2句投句する。10日締め切り後投句者全員で1名あたり5句共選し、一句にコメントが求められる。結果は投句者にのみ通知される仕組みである。

事務局のYさんが一人でご苦労されて11月で27回を数える。毎回メールでお誘いいただいていたが、これまで投句したことはなかった。今回は、真風の句会でたまたまお話をしたCさんに熱心に誘われ、ちょうど締切日で、十分推敲できなかったが投句した。お題は「掬う」。

結果は投句者に送付されるが、熊川協のブログには投稿されない。ブログに載れば誰かが読む。誰かが興味を持つかもしれない。少しでも川柳人口の拡大に貢献できるかも知れないと思うのだが・・・。Yさんの努力が十分生かされていないのは残念である。

侮った影に足元掬われる     陶次郎

灰汁掬うひと手間旨し冬の酒   陶次郎


川柳広場 さるすべり

2022-11-13 18:31:53 | 日記

11月の真風の例会で、慶之介さんに私家版 川柳広場 「さるすべり」をいただいた。慶之介さんとご子息の莱浮(らいふ)さんとの共著で、エッセイとエッセイの中に川柳がちりばめてある。慶之介さんの川柳愛と川柳人口拡大への努力がひしひしと感じられる。川柳界は私も含めて、言うだけで、行動した気になっている人は多い。慶之介さんの真摯な取り組み姿勢には頭が下がる。掲載された慶之介さんの句から3句。

メーデーの旗の中行く肩車

シナリオに無いことばかり老いの章

青春の樺美智子は生きている

莱浮さんとは県川柳研究協議会主催の色紙展と川柳大会でお互いスタッフとして汗を流した。今回エッセイを読ませていただいて、よく勉強しておられるのが分かった。川上三太郎から渡辺隆夫氏や小池正博氏など現代川柳作家の句も読んでおられるようだ。掲載句12句から5句。

星滲むゴメン明日は笑うから

じゃぐわぁーんシンバル今日を突破する

吸い付いたヤモリの白い腹惑う

坑道の糸でんわから紅茶の香

Reを重ねニョキと逆立ちするゴボウ

どの句も堂々とした句体で、斬新な発想、表現力が魅力的である。


真風 (まじ)

2022-11-13 14:23:42 | 日記

10月から、川柳 真風(まじ)吟社の例会に参加している。ここの例会は課題吟1句を投句して、当日参加者全員での互選である。互選は投句された句を全部鑑賞できるのがいい。一般的な句会では一人の選者が入選句を披講する。当然ボツ句は日の目を見ない。句会の目的も、「入選句の数を競う」だけのものと勘違いしている会員もいるように思うことがある。互選は投句された句全部について、出席者が意見なり感想を発言する。だから私と違う目線での意見も聞くことができるからうれしい。

10月の句会で主宰のあじさいさんに、ご自身の出版されたばかりの句集をいただいた。「言の葉で人生は輝く」時代別に3章からなっている。

「言の葉で人生は輝く」より5句

ためらいの気配も見せずかたつむり  暗中模索より

世間体捨てれば蝶になる予感     切磋琢磨より

神様が通る真夜中の病棟

苛立ちを知ってる今朝の茹で卵    一意専心より

母さんが可愛くなっていく介護

あじさいさん、ありがとうございました。