管理職も行政も教えてくれない 学校の「今のあたりまえ」 若い教師に伝えたいこと

今当たり前と思っていることも、よくよく考えてみれば、問題だらけ。若い人には、ぜひ読んで、考えてもらいたいものばかり。

理不尽な「愛国心強要」に勧告

2020-08-13 07:48:35 | 行政
ILOとユネスコは昨年春に日本政府に「愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける」ことなどを内容とする勧告を出した。卒業式・入学式での「日の丸・君が代」の強制によって教職員の思想・良心の自由が侵されている問題を、「アイム89東京教育労働者組合」が、ILO・ユネスコの合同委員会に申し立てたことを受けてのもの。

 勧告は「起立や斉唱を静かに拒否することは…教員の権利に含まれる」とのべ、教員団体との対話は、起立・斉唱したくない教員にも対応できる合意をつくることや起立・斉唱しなかった教員への懲戒処分を避けることを目的とするよう求めている。
「勧告は、下記の6項目で、日本政府および教育委員会に対して是正を求めている。

(a)愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける。その目的はそのような式典に関する教員の義務について合意することであり、規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものとする。
(b)消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒のしくみについて教員団体と対話する機会を設ける。
(c)懲戒審査機関に教員の立場にある者をかかわらせることを検討する。
(d)現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。
(e)障がいを持った子どもや教員、および障がいを持った子どもと関わる者のニーズに照らし、愛国的式典に関する要件を見直す。
(f)上記勧告に関する諸努力についてそのつどセアートに通知すること。

勧告は(a)~(c)において「国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員」の立場に慮り、「懲罰を避ける」ために教員団体と対話せよと言う。「国旗掲揚、国歌斉唱時における強制はやめよ。平穏な不起立に対する懲戒処分は避けよ。」という主旨である。

(a)は国際人権基準における「市民的不服従」を教育労働者に適用したもので重要だ。教師が市民としての権利とともに、その専門性を十全に発揮できる地位と環境が保障されてこそ、子どもたちの学びと成長が実現して行く。子どもたちもまた生涯にわたって市民的不服従が保障されるべきことは同じだ。

(e)に障がいを持つ子どもや教員のニーズに留意を促した意義も大きい。式典が障がい者にも画一的な強制力を及ぼす弊害を受けとめたものと言えよう。

アイムの渡辺厚子氏のレポートによれば、勧告をふまえて9月にアイムと文科省とで交渉を持ったところ、文科省は以下のように回答したという。
①(勧告を)日本語訳はしない。
②関係の地方自治体にのみ英語のまま勧告を伝える。いつとは言えない。
③セアートは日本の国内法を理解せず勧告を出した。例えば懲戒処分については地方公務員法上教職員団体とは話し合えない。
④地方公共団体へ出すべき勧告を日本政府にむけて出している。地方公共団体で対応してもらいたい。」(雑誌「法と民主主義」より)

まだ文科省は後ろ向きで旧態依然の姿勢を変えてはいないが、たとえこれが針穴ほどの小さなものだとしても、こじ開ける糸口にはなりうるだろう。

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