取次営業orz

取次の営業とは何か

版元廃業

2010-10-27 | Weblog
先頃、版元の理論社が東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。
事業は継続するそうですが、書店在庫は廃業版元と同じ扱いとなります。

版元廃業時の書店在庫の扱いとはつまり――。

・普通委託(新刊・重版)/返品期限105日
・長期委託/返品期限4ヶ月 6ヶ月 など
・常備寄託/返品期限1年

以外の在庫品は全て返品不可、ということです。
返品期限の過ぎた委託・常備品。または延勘品、買切品、注文品がこれに該当します。
版元廃業はもはや珍しいことでもなくなりましたので、書店員の方々もよくご存知かと思います。

しかしながら、版元廃業時には決まって次のようなクレームがあるものです。

「廃業情報が出る前に返品した本が逆送になった」(`Д´) ムキー!
「勝手に送られてきた商品を返品したら逆送になった」(`Д´) ムキー!

まず、確認しておかなければならないは、「フリー返品」という条件についてDEATH。
出版物の販売条件については一度書きました。
※過去記事コチラ

「フリー返品」という条件は存在しません。
では、補充注文で仕入れた「ワンピース59巻」を返品したら逆送になるかといったらなりませんよね。何故か。
版元が返品を受け入れているからです。それだけです。

ですから、「廃業情報が出る前に返品した本が逆送になった」というクレームには全く正当性がありません。廃業如何に関係なく、版元が返品を受け入れれば逆送はありませんし、受け入れなければ逆送DEATH。「版元に返品を受け入れる意思があるにも関わらず逆送なった」というクレームには正当性があります。

次に、「勝手に送られてきた商品を返品したら逆送になった」というクレームですが、もし新刊委託のことをさしているのであれば、これもまたお話になりません。
しかし、「送りこみ」に関しては、書店の言い分が100%正しいということになります。
※「送りこみ」に関する過去記事はこちら

これは営業としてはまいります。
半ばバラモンに強要される形でセット商品等を「送り込む」わけですが、会社としては「送り込み」という行為は存在しておらず、責任は全て営業にあります。
こうなった場合は、"個人的に処理"するしかありません。

いずれにせよ、新刊、長期、常備以外の条件で仕入れた商品は、いつ返品できなくなってもおかしくないということです。

意外とリスキーだと思いませんか?

Coffee Break

2010-10-20 | Weblog
【Q1】

以下は、小学館ビッグコミックスペシャル『うずまき』(ISBN9784091832429)より、佐藤優(作家・元外交官)の解説の一部抜粋である。
1~13のカッコ内に適切な語句を、ア~スから選択し、文章を完成させよ。

( 1 )では、思いやり、いつくしみ、信頼など、数値にすることができない価値を測ることができない。( 2 )のような( 3 )が多い環境で、( 4 )を( 5 )年くらい続けていると「他人の身になって考えること」が苦手か、まったくできない人間が生まれてくる。そして、普通の( 6 )を見下すようになる。
―中略―
( 7 )は大きな勘違いをしている。( 7 )は、( 6 )を無知蒙昧な有象無象と考えている。そして、( 8 )で有象無象によって( 9 )れた( 10 )は、「無知蒙昧のエキス」であるので、そういう( 11 )に( 12 )をゆだねると( 13 )が崩壊すると思って本気で心配している。

■選択肢
ア.競争  イ.10  ウ.司法試験  エ.国会議員  オ.官僚
カ.偏差値秀才  キ.政治家  ク.選挙  ケ.国民  コ.外務省
サ.日本  シ.選ば ス.国家


【Q2】

以下は、小学館ビッグコミックスペシャル『うずまき』(ISBN9784091832429)より、佐藤優(作家・元外交官)の解説の一部抜粋である。
1~13のカッコ内に適切な語句を、ア~スから選択し、取次の現状を表す文章を完成させよ。

( 1 )では、思いやり、いつくしみ、信頼など、数値にすることができない価値を測ることができない。( 2 )のような( 3 )が多い環境で、( 4 )を( 5 )年くらい続けていると「他人の身になって考えること」が苦手か、まったくできない人間が生まれてくる。そして、普通の( 6 )を見下すようになる。
―中略―
( 7 )は大きな勘違いをしている。( 7 )は、( 6 )を無知蒙昧な有象無象と考えている。そして、( 8 )で有象無象によって( 9 )れた( 10 )は、「無知蒙昧のエキス」であるので、そういう( 11 )に( 12 )をゆだねると( 13 )が崩壊すると思って本気で心配している。

■選択肢
ア.仕事  イ.2  ウ.人事  エ.書店員  オ.バラモン
カ.慢心者  キ.書店  ク.営業活動  ケ.営業  コ.仕入
サ.品揃え  シ.指導さ ス.出版業界

※バラモンって何? という方はコチラ







【答え】

Q1、Q2ともに

1.ウ 2.コ 3.カ 4.ア 5.イ
6.ケ 7.オ 8.ク 9.シ 10.エ
11.キ 12.サ 13.ス

責任(計画)販売制の動機を巡って3

2010-10-17 | Weblog
では、責任(計画)販売の動機はどこにあるのか。
残るは――。

■出版社の利益創出が目的である場合

・「低正味・買切」制の場合

A(通常条件):「本体価格1,000円/部数1,000冊/原価30%/取次卸正味70/返本率40%」
B(責任条件):「本体価格1,000円/部数1,000冊/原価30%/取次卸正味50/返本率0%」
を比較してみましょう。

Aの利益=(1000×1000×70%)-(1000×1000×30%)-(1000×400×70%)=120,000円
Bの利益=(1000×1000×50%)-(1000×1000×30%)-(1000×0×50%)=200,000円


ハイ、B(責任条件)の方が儲かります。


・「低正味・部安入帳」の場合

A(通常条件):「本体価格1,000円/部数1,000冊/原価30%/取次卸正味70/返本率40%」
B(責任条件):「本体価格1,000円/部数1,000冊/原価30%/取次卸正味50/返本率20%/3掛入帳」
を比較してみましょう。

Aの利益=(1000×1000×70%)-(1000×1000×30%)-(1000×400×70%)=120,000円
Bの利益=(1000×1000×50%)-(1000×1000×30%)-(1000×200×30%)=140,000円

ハイ、B(責任条件)の方が儲かります。しかしこの場合は、返本率が30%を超えると逆にAの方が儲かることになります。ただ、書店にとって返品は不利な条件なので、そこまで返本率が上がることはないでしょう。

つまり、「責任(計画)販売制の動機は出版社の利益創出である」と結論付けられます。

・・・・・・いやいや、そうじゃないでしょう。

委託条件と根本的に違う点があるんです。それは作り部数(流通させる部数)を出版社は決められない、ということなんです。 書店受注があって初めて成立する条件ですから、作り部数が100冊なのか、10,000冊になるのかは書店次第です。

書店が仕入数を決めるという原則が守られている限り、書店利益の創出のために責任(計画)販売は存在すると考えて間違いないのです。

『あ、あれ、なんか同じようなこと書いた気がするぞ。でもってこれって、出版社が作り部数(流通部数)を決めて、取次がそれを在庫する意思なく仕入れて、書店に条件を崩して送品するということだったよな。てことは結局・・・。』

もとい、やはり「責任(計画)販売制の動機は出版社の利益創出である」と結論付けられます。

書店や取次の利益が(たまたま)発生したとしてもそれは副次的な効果にすぎないということは認識しておく必要があるでしょう。

また、それが認識できている人かどうかを見極めることも、大切です。

■蛇足

そもそも、出版社は書店への販売正味を決めることができるのか。
書店への販売正味を、商取引契約を結んでいる取次以外が設定していいのか。
ボクワカンナイ。

責任(計画)販売制の動機を巡って2

2010-10-10 | Weblog
では、責任(計画)販売制が取次の利益創出を目的としていると仮定した場合は、どんなことが考えられるでしょうか。

■取次の利益創出が目的である場合

企画商品を作るのは出版社なので、それが取次の利益創出を目的としているとは、そもそも考えにくいですね。しかし、出版社に商品を作らせて、それを取次が買取るようなケースがあります。これについて考えてみましょう。

買取ったわけですから、取次への卸正味は通常正味より安いはずです。でも返品はできない。
したがって書店への条件は「低正味・買切」となります。(取次に更にリスクを負う覚悟あるなら返条付もありえますが。ありえませんね。)
つまり責任(計画)販売制と同じような条件が設定されるわけです。

ここからの流れは前回の記事と一緒で、書店の仕入れたい数と取次の送りたい数が一致するまで条件を崩していくことになり、そのリスクはやはり取次(営業)が負うことになるわけです。

出版社的には、作って取次に入れてしまえば、あとは知らんぷりでいいわけですから低コスト、低リスクで利益を創出できると考えられます。広告を打つ必要もありませんし、改装しながら市場に循環させることも必要ありません。

翻って、その役割を取次が担えるのかというところが問題で、答えは当然「否」なわけです。当社専売のような形で取次が商品を買取った場合には、本来出版社が負っていたコストの一部を取次が負担する必要性が出てきます。またコスト面ばかりでなくそのノウハウも必要となるでしょう。
これからそのノウハウを蓄積し、コストについても負担していく考えがあるのであればいいんDEATHけど。

現状は、ただ単に出版社に有利な条件制度といえるでしょう。

じゃあ、なんで取次はこんなことやってるの?

ド━━━(゜ロ゜;)━━ン!!

(つづく)

責任(計画)販売制の動機を巡って1

2010-10-03 | Weblog
責任販売とか計画販売とか、あるいはそれ以外でも、
正味を下げる代わりに、買切とか部安入帳といった条件の企画が最近増えているように思います。

企画の意図を訊ねれば、口を揃えて「書店様の利益を創出するため」という答えが返ってきます。
これは本当でしょうか?
「計画販売制」については一度書いておりますが、その動機、目的という観点から再考してみたいと思います。
※過去記事:計画販売制

■書店の利益創出が目的である場合

通常返品できない条件なので(てゆうか委託条件ではないので)、仕入数を決めるは書店です。まさに計画販売ですね。
ですから、書店が決めた仕入数の総数を取次は仕入れればいいわけです。

リスクヘッジを考えますと、初回は少部数から始めて販売状況を見ながら追加していく。商品によっては、初回はゼロで、客注があれば注文し、問合せが多いようなら店頭展開も検討する、という選択はあって当然でしょう。
もちろん追加できるかどうかはメーカー次第ですし、初回限定品であれば、スモールスタートというわけにはいかないかもしれません。

しかしながら、書店が仕入数を決め、その総数が取次の仕入数(取次に在庫を持つ意思がある場合は「+在庫数」)であるという原則は変わりません。
つまり、この原則が守られている限りにおいては、書店利益の創出のために責任(計画)販売は存在すると考えて間違いないということになります。

・・・・・・。

どうやら責任(計画)販売は書店の利益創出のために存在しているわけではないようです。何故でしょうか?

実際には出版社が作り部数を予め決定し、取次ごとに割り振りを決めます。取次は在庫する意思がないにも関わらず仕入部数を(勝手に)決めます。仕入部数はノルマとなって営業に割り振られます。そして営業は書店に受注促進をするわけです。

しかし、書店が仕入れたい数と取次が送りたい数は大抵の場合一致しません。結局は当初の条件を崩して、返品取るから置いてくれとかいう話になり、取次側が納得できる数になるまで書店に譲歩していくわけです。当然ながら出版社からの譲歩を引き出しているわけではありませんので、書店に譲歩した分のリスクは取次(営業)が負うことになります。そのリスクは営業各部署が部として負う場合もあれば、個人で負わなくてはならない場合もあるでしょう。


これらのことから、責任(計画)販売が書店の利益創出のためにあるのではない、ということがわかってきます。書店が仕入数を決めているとは言い難いからです。

「でも、書店の利益が出ることだってあるだろ!」

これは動機の話なのです。結果的に書店に利益が出た場合でも、それは動機ではなく、副次的な効果にすぎないということです。

ではその動機は一体どこにあるのか?(つづく)

■蛇足

てゆうか私の感覚で言えば、「低正味買切・低正味部安入帳」という条件を書店が歓迎しているとは全然思えないんDEATHけど。
頭が硬いのかしら。