＜本の感想＞ 『逃亡くそたわけ』

●『逃亡くそたわけ』絲山秋子（中央公論新社）
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/9882/book.html

　これは、精神病院を脱走した男と女の道中記。女は博多っ子で、男は名古屋出身だ。博多生まれであることを誇りに思っている女とは正反対に、男は名古屋生まれであることを隠し、「東京から来た」と言い張っている。

「なして生まれたとこ隠すと？　おかしかー」
「そんなことを言えるのは君が名古屋に生まれたことがないからだよ。だったら一度生まれてみなよ、わかるから」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※p.52～53より

　この会話には大爆笑しつつ、「分かる分かる」と頷いてしまった。名古屋人(もちろん全員ではないが)の心理を見事に現していると言えるだろう。もっとも、最近では愛知万博などで名古屋のイメージが良くなり、「元気な名古屋経済に学べ」という風潮さえ起こるようになった。もはや名古屋人であることを恥じる必要はないのかもしれない。というか、もう恥じなくていいんじゃない？　みんな、堂々と名古屋弁をしゃべろみゃあ。みっともにゃあ？　とろくしゃーこと言っとったらかん！　てゃあぎゃあにしときゃあ、くそたーけ。

　ちょいと脱線しましたが、いろんな形で楽しめる小説ですので、ぜひご一読を。九州の地理に詳しい人、Theピーズをお好きな方にもオススメです。いっぺん読んでみやぁ。