萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第73話 残像act.4-side story「陽はまた昇る」

2014-01-07 10:15:17 | 陽はまた昇るside story
snare 残像の罠



第73話 残像act.4-side story「陽はまた昇る」

切りとられた出口の空は、雲に明滅する。

一歩踏み出して、革靴の黒い反射に太陽の高度を知らす。
そっと頬涼ませる風に行雲が速い、その陰翳が往き過ぎる。
太陽と雲と風、空ゆく交錯に季節を見つめながら英二は微笑んだ。

―きっと追いかけてくる、

予測、というより予定と言った方が良い?
そんな想定に白い制帽を被らす手許、紺色の袖から文字盤がのぞく。
きらり腕時計の反射鏡面に背後を見、そこへ映りこんだ影が呼んだ。

「宮田君、」

穏やかに深く低く、けれど透る声が自分を呼ぶ。
その声に振り向いた先、白髪のグレースーツ姿が微笑んだ。

「消防庁の表彰式、私も同行させてもらえませんか?」

ほら、やっぱり付いてきた。

きっと追いかけて来るだろう、そして話したがる。
こんな予定通りの行動を嗤いながら英二は爽やかに微笑んだ。

「小隊長の許可が頂ければ、」
「その通りですね、国村君の許可を頂きましょう、」

回答に穏かな瞳が笑って、その底で疑惑は満足へと傾く。
いま応えた言葉達にも値踏みはされた、そんな相手を冷徹が嗤う。

―俺が従順で優秀な男か知りたいんだろ?

書庫室のPC端末から、きっと経歴も身上書もチェックされている。
だからこそ小一時間ほど前の初対面より満足感は親しい、そんな相手に笑いかけた。

「こちらに1時間ほどで戻る予定ですが、観碕さんのお時間は大丈夫ですか?」

観碕“さん”

そう明確に呼びかけて、穏やかな瞳すこし細まらす。
いま呼ばれた呼称と相手に眼差しが見る、その思案からエリートが微笑んだ。

「私は嘱託の楽隠居ですからな、自由も保障されています、」

明るいトーンの冗談めかし、そこに衒いも気負いも見えない。
けれど底深く鎮まらすプライドの罅と賞賛が自分には解る。

―若輩の「さん」呼びに値踏みしてる、俺が阿呆か冷静なのか、

内務省系官僚「官庁の中の官庁」出身エリート、警察庁の中枢に居たキャリア。
それは警察官にとって雲上の存在だろう、だから崇められることに慣れきっている。
だからこそ2年目ノンキャリアに「さん」で呼ばれた事実は判断二つに分かれて、その思惑に英二は微笑んだ。

「確かに自由ですね、嘱託で居られるから私も気楽にお話し出来ます、」

敬語、けれど気楽なのだと笑いかける。
現役時代の職位と階級へ敬意、けれど現在の嘱託としてある身近さ。
そんな新旧の立場ふたつながらへ示した言動に品好い笑顔ほころんだ。

「そうですね、気楽に話せるのは楽しいものです。肩書の無い自由でしょう、」

楽しい、それも観碕の本音だろう。
けれど肚底にはもう拭えない身分意識が根深い。

―誰に対しても「君」で呼んでいる癖に、白々しいだろ?

国村君、さっきもそう呼んでいた。
そんな相手の本音と肚底に嗤いながら快活と微笑んだ。

「はい、肩書の重りが無いことが一番の自由かもしれません、」

言葉にした詞に、懐かしい笑顔と声が重ならす。
この詞を15年前に聴いた、あの笑顔と全く違う男が英二に笑いかけた。

「宮田君は出世を好みませんか?」

ストレートな質問だな?
そんな感想に可笑しくて笑いたくなる、けれど爽やかに微笑んだ。

「人並の出世欲はあると思いますが、今は目の前の業務で手一杯です、」

人並、今は手一杯、目の前の業務、
こんな詞を二年目の男が言うなら値は幾らつく?
その想定価格に嗤いたくなる真中で品の佳い笑顔は愉しげにほころんだ。

「これからの若さが眩しいですね、私もそんな時がありました、」

私“も”

自分も「同じ」だと笑いかけてくる。
この言葉ごと老人の目から疑惑は親密へすこし傾く。
けれど「同じ」の意味が指す方向はどちらだろう?そんな思案の先に上司を見、敬礼向けた。

「小隊長、おつかれさまです、」

敬礼を老人は笑顔で見る、けれど眼差しは二つ感情ぶつからす。
その理由は「敬礼の有無」観碕には一度も敬礼していないからだろう?
だからプライドまた罅割れる、そんな視線を頬受ける向こうテノール明るく笑った。

「おつかれさん宮田、お待たせ悪いね?」

軽やかな笑顔は白い制帽かぶりながら広報二人と来てくれる。
制服姿ばかり、けれどスーツの一人に上司は笑いかけた。

「おつかれさまです、御休憩ですか?」

さらり呼名を外して笑いかける。
そこにある意図へ無言の伝心を見てとる前、観碕は微笑んだ。

「消防庁にご同行したくて待っていました、略史編纂の一環ということでお願い出来ませんか?」
「そうですか、広報サン大丈夫ですか?」

気さくに笑いかけて広報担当二人とも頷いてくれる。
その確認に笑って光一はパトカーを指さした。

「じゃあ二手に分かれて行きましょうか、五人だと狭いですから。宮田、先導してくれる?」

サシで話すチャンスじゃない?

そんな提案がパートナーの眼差しから笑う。
こんな事態も予定通りに微笑んで英二は質疑した。

「はい、でも護衛を考えると五人乗りの方が安全かと、」

自分が運転、光一が助手席、後部座席に広報二人と観碕。
そんな配置がいちばん観碕の安全確保がしやすい、けれど「盾」を作ることになる。
そこにある上下関係の軛をどう解釈するだろう?そんな思案に明朗な上司は言ってくれた。

「そうだね、後部座席なら大丈夫とも思いますが、いかがしますか?」

軽やかに肯定しながら本人に選択ごと委ねてくれる。
この回答にも「鍵」を浮ばす視界、元官僚は気さくに笑った。

「宮田君の助手席に座らせて頂けますか?老人の昔話が嫌いじゃ無ければだがね、」

提案型かつ「老人」である現状まで利用する。
こんな言い回しには頷くしかないだろう、それこそ意図通りなままパートナーが微笑んだ。

「それなら宮田とお二人でどうぞ、広報おふたりは私の運転で行きましょう、」
「ええ、お願いします、」

ほっとしたよう笑って広報二人とも歩きだす。
正直なところ気詰まりだった、そんな安堵が二人に見える。

―それくらい「観碕」は重いってことだな、

いま光一に連れられる制服姿から現実は覗かれる。
こんな相手が「標的」なことが可笑しくて、けれど爽やかな笑顔を見せた。

「どうぞこちらへ、」

笑いかけ一台のパトカーに誘導してゆく。
背後がこちら向く一台へ歩み寄り、そのまま運転席を開錠するとスーツ姿は助手席扉を開いた。
扉を自分の手で開ける、そんなことにも好感を醸すのは観碕の素なのだろう、それが「同じ」だと思い知らす。

だから想う、きっと自分も間違えば「観碕」になるのだろう?

―でも俺は正直で自分勝手だから、

心裡に笑って自分と相手の相違を確かめる。
たぶん自分勝手だから自分は違う途を選ぶ、そんな自信とパトカー走らすと助手席が笑いかけた。

「宮田君のお茶、とても美味しかったです。ご家族も茶の心得があるのでしょうね?」

意外とストレートな訊き方なんだ?
意外で、けれど納得しながら英二はフロントガラス越し微笑んだ。

「はい、祖母が少し、」
「お祖母さまの手ほどきですか、流派は?」

何げないトーンがまた訊いてくる、こんなストレートを誰も「篤実」と見るのだろう。
そんな手管も「同じ」で可笑しくなりながらも英二は爽やかな困り顔を見せた。

「ちょっと失念してしまいました、すみません、」

本当に「祖母の」流派は忘れてしまった。
その正直に答えたフロントガラス越し、品の佳い貌が笑った。

「いいえ、今時の人は茶道を知らない方が普通でしょう?だから宮田君のお茶が気になりました、」

茶が気になった、

そんなストレートの言葉に意図を計ってしまう。
きっと茶の事を訊かれるとは思っていた、その通りに観碕は探らす。

―馨さんの茶と同じ味だと解かったこと、俺に宣言したいんだろ?

観碕は馨の茶を呑んだことがある。
それは馨の日記にも記されていた、だからこそ茶を淹れてやりたかった。
茶の味から馨の俤と重ねさせて、けれど馨とは無縁なのだと誤認させてやりたい。

誤認、そこから生まれていく罠に嵌まったと気づいたら、どんな貌するのだろう?

―観碕は自分自身で現場に動いた、それが精神から崩させる、

想い、鼓動にも穏やかなまま自分の罠は編み上げられだす。
そのターゲットは助手席の至近距離から自分を見つめて、値踏み続ける。
こんな今日の涯に信頼と疑惑のバランスは一日でどう変化する?そんな推定と見るフロントガラス、空は陰翳が濃い。







(to be continued)

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Short Scene Talk ふたり暮らしact.10 ―Aesculapius act.20

2014-01-07 01:39:18 | short scene talk
二人生活@bothy2
Aesculapius第2章act.11と12の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.10 ―Aesculapius act.20

「はい、雅樹さんお酌どうぞ(笑顔)」
「ありがとう光一、照(人前でつきっきりお酌されるって照れちゃうなでも幸せ照)」
「光ちゃんもなかなかの女房ぶりだなあ?お酌のタイミングが良いよ、巧いモンだ笑」
「に…照真赤(女房ってオヤジさんそんな僕と光一の関係を無意識に言い当てないで照る困るでもなんか嬉しい喜混乱)」
「うんっ、俺は雅樹さんの女房だね(ドヤ笑顔)だからお酌も雅樹さん限定だねっ(お酌もナンデも雅樹さん限定だもんね)」
「はっははあ、こりゃ別嬪な幼な妻だなあ?雅樹さんも果報モンだよ、なあ大笑(男が女房ってなあ笑でも光ちゃん似合うな笑)」
「はい…僕も果報モンだと思っています照(真赤×笑顔)(ああ本当に僕ってラッキーだよねこんな可愛い綺麗で優しいんだ光一は照大喜)」
「ほい?雅樹さんも認めちまうんだな、笑(雅樹さん真面目なのに冗談も言うのか意外だが面白いなあ)」
「はい、照(真赤×笑顔)(ほんと幸せなんだから認めたくなるよね喜いま光一どんな貌してるか、あれ?)」
「小屋オジサン、この酒なかなか旨いね(上機嫌笑顔)」
「光一、いつのまにお酒、」
「んっ、今ちっとコップに頂いたねっ(上機嫌笑顔)」
「ははっ光ちゃんもイケる口なんだな?やっぱり吉村先生のトコは皆して酒がイケるんだなあ、笑」
「光一ダメだよお酒なんて、まだ十三歳なんだから7年早いよ?お祭りとかじゃないんだし(お祭なら儀式だけどこんな外でなんて困)」
「だったら今日はイイね、今日は俺の誕生日で祭みたいなもんだねっ(笑顔)雅樹さん、チットだけお祝いに、ね?」
「そうか、光ちゃん今日が誕生日かい?だったらお祝いしてやらんとなあ、笑」
「ほら雅樹さん、小屋オジサンもお祝いって言ってるね(上機嫌ドヤ笑顔)ね、チットだけお酌して?(極上笑顔)」
「仕方ないな、すこしだけ舐めるだけだよ?(困笑顔)(ああ僕やっぱりこの笑顔に負けて甘くしちゃうんだ父親の威厳とか急には無理かなやっぱり溜息でも幸せだな照幸)」




Aesculapius第2章act.11と12の幕間、12/23掲載の続き。
光一のお酌×雅樹@富士山小屋のワンシーンです。

Aesculapius「Pinnacle13」加筆ほぼ終わっています、また読み直し校正の予定です。
ソレ終わったら第73話の続きor他の何かを掲載しようかなと。

深夜ですが取り急ぎ、




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山岳点景:落陽の瞳、黄昏×丹沢

2014-01-06 16:14:16 | 写真:山岳点景
落陽の瞳



The Clouds that gather round the setting sun 沈みゆく陽をかこむ雲達に
Do take a sober colouring from an eye 謹厳な色彩を読みとる瞳は

William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」
作中もよく遣う一節ですけどこの写真とイメージが合うかなって載せてみました。
稜線に懸る太陽がナンダカ空が瞳を瞑るみたいだなと、笑
で、上下で連続写真っぽく載せてみました。




私の好きな風景 27ブログトーナメント

Aesculapius「Pinnacle12」加筆校正も終わっています。
これの続き&第73話を夜は載せたいなって予定です。

眠気覚ましに取り急ぎ、笑














 
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Short Scene Talk ふたり暮らしact.9 ―Aesculapius act.19

2014-01-06 00:45:24 | short scene talk
二人生活@bothy
Aesculapius第2章act.11と12の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.9 ―Aesculapius act.19

「風呂はどうだったかい?」
「よく温まれました、ありがとうございました(笑顔)(ほんとうに有難かったな光一も喜んでるし嬉)」
「そりゃよかった、儂も先に入らせてもらっちまうよ。先に飯やっててくれ、冷めないうちに食ってほしいよ笑」
「うんっ、腹減ってるから先に食わせてもらうね(笑顔)オヤジさんの冬飯は旨いって楽しみにしてたねっ(ホント旨そうだね)」
「ははっ、そりゃあ嬉しいねえ(上機嫌笑顔)光ちゃんのお墨付き出ると良いがね、酒もストーブの薬缶に熱燗できとるよ、」
「はい、遠慮なく先に頂きますね(笑顔)光一、いただこう?」
「うんっ、雅樹さんお酌してあげるね(笑顔)あっ、」
「光一っ(薬缶の熱燗を素手なんて火傷が)」
「おいで光一っ、(ああ抱っこで連れて行こう)」
「あ、まさきさんコンロの火を消さないと、」
「はい消したよおいで(急いで冷やさないと雪で冷やそう)」
「ほら光一、雪に手を入れて、(ああ火傷させるなんて僕ほんと不注意だ泣)」
「ん…ごめんね雅樹さん…しんぱいかけて(涙目)(泣いちゃダメだね子供って思われちゃうのに)」
「光一、熱燗の徳利は火傷することもあるからね、急に持ったらダメだよ?温燗なら良いけど…先に言わないでごめんね?」
「ううん、俺が不注意だったね…ごめんなさい(泣いちゃダメだねっこんなことくらいで泣いてたら主夫失格だね)」
「そんな謝らなくて良いよ?いつもウチの人たちは温燗か冷酒だからね、光一が熱燗で火傷するって知らなくても仕方ないんだ、」
「ん、これから気をつけるね?…ね、手がだいぶ冷たいね、もうイイかね?(涙出そうだから拭きたいね)」
「見せて?…うん、あとは小屋に戻って手当しよう、おいで?(良かった軽度で済みそうだ)」
「あ…抱っこで戻ってくれんの?俺、ちゃんと歩けるのに(笑顔)(こんなに心配してくれてるね)」
「抱っこで戻るよ?照(つい抱っこしちゃったな僕こんなに密着したがりだ照)」
「光一、ストーブで温まってて?僕、救急セット持ってくるから、(外で湯冷めしていないと良いんだけど)」
「俺も一緒に行くね、(雅樹さんとくっついてたいね)」
「いま濡れた髪で外に行っただろ?風邪ひいたら困るからここで温まってて、僕のパーカーも着ていて?」
「ん、…ありがとう雅樹さん(極上笑顔)(雅樹さんのパーカー嬉しいね照嬉)」
「うん、すぐ戻るからね?(笑顔)(ああ光一その貌ほんと毎度だけど僕すごく好きで困るよ照)」
「あ…雅樹さんの匂いする(笑顔)(桜みたいな佳い匂いだね一緒にいるみたいで嬉しいね)」
「お待たせ光一、見せてごらん?(よかった本当に軽度だ)うん、薬塗っておこうね、」
「ありがとう雅樹さん(笑顔)ね、パーカー雅樹さんの佳い匂いして良かったよ?(極上笑顔)」
「そういうの恥ずかしいね?照(光一こそ佳い匂いするんだけどな水仙みたいな甘い香ほんと僕大好きでこの笑顔も大好きだ照)」




Aesculapius第2章act.11と12の幕間、12/23掲載の続き。
光一の火傷×雅樹@富士山小屋のワンシーンです。

Aesculapius「Pinnacle12」また読み直し校正たぶんします。
ソレ終わったらナンカUPしますが今夜は眠いので、笑

取り急ぎ、




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山岳点景:初雪の山

2014-01-05 22:02:06 | 写真:山岳点景
水源の森、雪



山岳点景:初雪の山

西沢渓谷@神奈川県の渓流です。

碧い渓流は水源に近くて、温度も一定に保たれます。
で、さわってみたら見た目よりは冷たくなかったです。




西沢出合へ登りあげると残雪が点々とありました。
白い河原が広々とした空間は細い清流が流れて、その先は堰堤に切れ落ちています。
それが何段か続いて、川沿いに登ってくカンジで標高1,293m畦ヶ丸へのルートです。
が、入山時刻は14時とノンビリだったのでモチロン登頂しませんでした、笑




西丹沢自然教室から吊橋を渡り、
堰堤の横から階段を登って、下って、河原に出ると次の堰堤が林間に見えます。
たぶん夏は梢が繁って見えないんですけど今の枯れ木シーズンは樹間から水流が鮮やかです。




西沢出合から檜洞丸方面を見ると、雪雲に煙っていました。
この雲が下がってくると降雪になります。




で、西丹沢自然教室まで戻って76号線沿いのロッジに寄ったら雪が降ってきました。
今シーズンは降雪を見るのは初めてだったんでナンカ嬉しかったです、笑
既に積もっちゃってるとこは行ってるんですけどね。




Aesculapius「Pinnacle12」加筆校正これからします。
これ終わったら極短篇と第73話orその他なんかしらUPしたいなって考えてます。

取り急ぎ、






雪9ブログトーナメント
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とりいそぎ

2014-01-04 14:54:04 | お知らせ他


第73話「残像3」加筆校正が終わりました、細部の表現変えてます。
このあとAesculapiusの加筆校正します。

で、写真は富士の南斜面@駿河サイド、山梨からとは雪の量が随分違います。
っていうか今年ちょっと雪少ないですね静岡からだと。

取り急ぎ、



第9回 昔書いたブログも読んで欲しいブログトーナメント
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年明×雑談

2014-01-04 13:27:31 | 雑談


正月って休めないなって毎年思うんですけど、
その忙しなさには親戚周り=久しぶり再会がセットだから楽しくもあり、
ちょっと途惑う事も考えこむことも多々あるなーっていう期間が正月休みだなあと。

ソンナ感じで慌しかったんで、
第73話「残像3」とAesculapius「Pinnacle11」加筆校正まだ完成では無いです、笑
それでも閲覧&バナー押して下さった方、忙しい時だろうにありがとうございます。
やっぱりアクセスやコメントなど反応があると続けようかなって思えるんですよね、

前に少し書きましたがDVちっく傾向の人がいたんですけど。
ココを通してのメール相手で、でも終わり悪ければ疑わしいっていう見本みたいな顛末でした。
アカウント削除した時点で利用目的確定なんですけどね、その呵責逃れに甘言や同情買うような台詞を言ってた人なんだろなと。
色々と小説を褒めてくれながら結局のトコ論文作成に利用→手伝われた事実隠匿したい→アカウント消した、ってカンジで。
で、論文に利用した理由はあなたが大学院に行きたくなるため云々言ってたけどソレホントなら教授に申告してるだろうに、笑
こういう正当化の嘘は卑屈で嫌いなんですよね、等身大で正直な本音を言ってくれる方がドンダケ好感UPだろうと。
そういうの連載始めた頃あった剽窃常習犯の人と変わらんなー思います、

論文嘘つきサンに想うのは、アレをきっかけにマトモな良い論文を沢山キッチリ書いてほしいなあと。
剽窃サンも妄想エロBLで文豪ぶったり司馬遼太郎がドウとか豪語するんならマトモな文章書けよと、笑
変テコな見栄言訳でカッコつけるヤツは等身大の努力が出来ないから、半端モンで終わっちゃうんですよね。
自分のココが苦手で無能だなって肚から認められると本気でやれる、で、能力がホントの意味で伸びる。
そういうの一流って言われる人達に共通するトコだなーと仕事でも研究でも公私共通で思います。

こういうコトってWEBで連載してみなかったら遭わない×考えない=解らなかったコトなんですけどね、
まあ嘘吐かれたり剽窃やらってメンドクサイし嫌だなーとか想うけど、嫌な想いするコトも「現実」です、笑
描きはじめた頃はコメントやメッセージをもらえること多くて、
ダイレクトな声を聴きたくてWEBで書きだしたんで、始めた甲斐があるなって思ってたんですけど。
最近は頂ける頻度も減って需要が解んないんで、もう閉鎖でイイかなとも思うけどとりあえず続けようかと。
書きかけた人物たちの物語をちゃんと〆たいんで、笑

ソノウチこのサイトは閉鎖するかもしれませんが、そんときはソントキで。
使ってるgooは最近アレコレ有料化が進んでるんで、ほんとに閉鎖or移転ってなるかもしれないんですよね。
もしサプライズで閉めても多分ドッカで書くんじゃないかなと思います、笑

ってコトなど改めて考えてみた正月休みでもあります。
取りとめないけど一時的掲載&いつかへの予告で、笑

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Short Scene Talk ふたり暮し前 New Year's Eve act.6 -Night Before Aesculapius

2014-01-03 03:48:00 | short scene talk
二人生活-4ヶ月@New Year's Eve 6
雅樹27歳、光一12歳の正月@社務所




Short Scene Talk ふたり暮し前 New Year's Eve act.6 -Night Before Aesculapius

「雅樹さん、元旦祭おつかれさまでした(笑顔)御神酒どーぞ(やっと二人きりだね)」
「ありがとう、光一こそおつかれさま(笑顔)(光一ほんと袴姿似合うな付毛も似合うよね綺麗だな可愛いな照萌)」
「ね、今年の俺の舞はどうだったかね?(ちっとは巧くなってたかね)」
「去年より上手だったよ、綺麗だった照(ほんと綺麗だったな乙女の姿しばし留めんって感じで照)」
「なら良かったね(笑顔)ね、俺にも御神酒くださいな?(雅樹さんのお酌嬉しいね)」
「光一、今年も三献までだからね?(まだ12歳なんだから御神酒で儀式でも駄目だ)」
「ん、三つだけ注いでねっ(極上笑顔)(こっそり呑んじゃおうかねっ悪戯笑)」
「うん、照(ああ光一その笑顔ほんと反則だよ可愛い何でも言うこと聞きたくなるでも酒はダメだ)」
「三献の儀式終わったね、もう脱いでいいねっ(こっからのんびりだね)」
「ぬ…(脱ぐねって光一そんなまさか昔通りに儀式するつもりかな照期待でもダメだ今まだ12歳なのにでも12歳だから稚児だしでも照混乱)」
「ね、袴脱いで同衾で神婚だねっ(笑顔)」
「あ、うんそうだね照(また僕ひとり妄想した光一は真面目に儀式の話してるのに反省照)」
「雅樹さん、脱がせて?(極上笑顔)(儀式でもナンかどきどきするね照)」
「うん、おいで光一?照(ああ光一そんな顔されたら僕ちょっと儀式でもときめき過ぎるよ照困喜)はい、寒いから布団に入って?」
「うんっ、雅樹さんも早くきて?(ナンか儀式でも嬉しいねどきどきするね照)」
「はい照(ああ儀式なのに僕ほんと今もう緊張と期待が照困ちょっと落ち着け僕)」

「ん…あ、(いつの間に僕眠ったんだろあれ光一は)」
「雅樹さん、おはよっ(極上笑顔)(寝起き雅樹さんほんと別嬪だねっ寝乱れがイイね照喜)」
「おはよう光一、あ…(稚児姿ほんとうに綺麗だ天女がいる夢より綺麗だ照)」
「ね、着物で寝乱れ雅樹さんって艶っぽいねっ(極上笑顔)」
「え照…光一こそ綺麗だよ(照笑顔)(ほんと綺麗だ夢じゃないよね光一だよねそれとも光一ほんものの天人なのかな照)」




Aesculapiusより年末譚、いま連載中の時間軸-4ヵ月のワンシーン。
昨夜掲載の続きで、雅樹27歳&光一12歳小学校6年生の元旦@社務所です。
第73話「残像3」加筆校正まだします。

新年深夜に取り急ぎ、笑




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第73話 残像act.3-side story「陽はまた昇る」

2014-01-02 00:33:18 | 陽はまた昇るside story
warder 番人の貌



第73話 残像act.3-side story「陽はまた昇る」

観碕征治 Seiji Kanzaki

1942年3月東京帝国大学法学部卒、同年4月内務省へ入省し警保局に配属。
1947年12月31日GHQの指令で内務省廃止、それに伴い警保局の廃止後は公安委員会。
1954年7月1日警察法施行により設置された警察庁へ配属、警備局、県警本部長など歴任。

戦前の内務省は「官庁の中の官庁」と呼ばれる有力官庁であり内務次官・警保局長・警視総監は重職で「内務省三役」と称された。
そして戦後、警察庁のように内務省の業務を継承する官庁を「旧内務省系官庁」と呼ぶことが多い。
この出身者であることが内閣官房副長官・宮内庁長官の任命に現在でも考慮されている。
いわゆるキャリアのなかでもエリート、そんな男とその部下に英二はただ微笑んだ。

「ご依頼の事件録はこちらで全てかと思います、ご確認頂けますか?」

書庫室の作業台、書類ひとまとめ示してスタンド点ける。
現場記録から日誌に地図、事件当日を記した全てへ現場係の男が問いかけた。

「昨日の夕方に依頼したものが、全て揃っているのか?」
「はい、」

頷いて微笑んだ先、隠した懐疑の視線は作業台へ向かう。
そんな傍らスーツ姿の老人は書類をとり、英二に笑いかけた。

「閲覧とお願いしたのにコピーまで準備してくれたんですね、君が全てを?」
「はい、不足があれば書架をご覧ください、」

答えながら向きあう白髪の笑顔は好印象だと普通なら思うだろう。
けれど「知っている」から想えない、この本音を隠したままシャッター音が鳴った。

かしゃん、

短く切られる音に振り向いた向こう、ファインダーから担当者が顔を上げる。
その眼差しにある賞賛を見とりながら快活に笑いかけた。

「川北さん、スナップ写真も使うんですか?」
「はい、もしマル秘とかのシーンなら削除しますので言って下さい、」

明確に答えてくれる言葉に、嬉しくなる。
いまスナップ撮影してくれるなら「証拠」がまた手に入るだろう。

―今この現場が写真に残せるのは好都合だ、俺にとっては、

いま観碕と共に自分が書庫に居る。
その状況を画像に残しながら同伴してくれるなら証人として一級だろう。
この幸運を贈ってくれたのは訓練中の山火事だった、こんな偶然と必然の廻りも自分に微笑む。

―雷も俺に味方してるな、

落雷による山火事、それが今ここへ観碕を呼びつけてくれた。
そんな雷は「神鳴り」とも書くと聴いている、こんなことにも運命わらう想いに声かけられた。

「宮田さんは本当に良い笑顔をしますね、青梅署のこと本当だなって納得です、」

ほら、また都合良い事実が披露される。
ただ事実なら嘘も詐謀も無い、その信頼度を遣うまま闊達に笑いかけた。

「青梅署のことも何か聴かれたんですか?」
「それは訊いてますよ、取材対象なんですから。この木村と先日おじゃましてきました、」

率直な笑顔が答えてくれる、その発言にまた幸運が笑いだす。
こういう展開は予想していた、そんなシナリオ通りへ爽やかな貌に微笑んだ。

「お恥ずかしいことも知られていそうですね?」
「いや、恥ずかしい事なんて何も無かったですよ、褒め言葉バッカリで。なあ木村、」

闊達な笑顔ほころばせながら広報二人とも手帳を出してくれる。
そのページ開きかけて、すぐ気がつくと観碕へ頭下げた。

「申し訳ありません、いま宮田さんとお話中だったのに横入りしてしまって、」

恐縮と困惑の貌は観碕の呼称を省いてしまう。
もう引退した男、けれど在任中の役職は自分たちより遥か上位にある。
そんな相手を今は何と呼んで良いのか?この迷いに元官僚は綺麗な笑顔ほころばせた。

「いいえ、お話を続けて下さい、」

白髪かしげた笑顔は涼やかな瞳を細めさす。
どこまでも穏健で親しみやすい威厳、そんな空気の男は何げない微笑で続けた。

「元は私が横入りした方ですし、それに私は宮田くんの用意してくれた資料をチェックしないといけませんから。遠慮なくどうぞ、」

押しつけがましさも恩着せがましさもない、尊大な嫌味もない。
自身の用を済ませるから遠慮はいらない、そう告げられて広報の二人組は安堵と笑った。

「じゃあ続けさせてもらいます、ご本人にも掲載許可をもらうのに説明したいので、」
「ええ、業務を優先して下さい。私の方こそ後入りなんですから、」

さらり笑って作業台の椅子にスーツの腰を下ろす。
その席が旧いパソコンに近いことを視界端に見、そっと心裡が嗤った。

―やっぱり確かめに来たんだな、ハッキングの正体を、

このPC端末から「誰」が何の目的でファイルを開いたのか。
それを知るためにこの現場へ訪れて、けれどそれ以上に知りたがっている。
なぜロック解除の「パスワード」2つとも教えていない人間に解けるのか?その正体を観碕は捜したい。

―あの番号とアルファベットを1回で当てられるのは本音を暴く人間だ、だから怖いんだろ?

“191912181962040419810526”
“FANTOME”

数字24桁とアルファベット7桁、その組み合わせパターンは多すぎる。
それを教えられること無く1回で解答できるなら観碕の心理と過去を暴く可能性が高い。
そんなふうに真意を悟られ探られることは多分きっと、観碕のような男ならプライドが抉られる。

Rule of law 法の支配
For the nation 国家のために

そんな大義名分は正義の権化であるよう錯覚させる。
だからこそ観碕も悪意など皆無の貌で笑う、けれど本音は善人だけじゃない。
本音と大義名分、その陥穽に歪んだプライドを見つめながらも業務の談話は進む。

「青梅には昨日行って来たばかりなんですけど、後藤副隊長と御岳駐在の岩崎さん、警察医の吉村先生にもお話を聴いてきました。
吉村先生を伺ったとき刑事課の澤野さんと消防庁の小林さんがいらしたのでお話を聴いたんです、鑑識と救急法の凄腕だと言ってましたよ、」

手帳をくる広報担当の言葉の向こう、作業台でスーツ姿は書類の山に半身隠す。
だから翳になって動き全ては見えない、それでも今何を行い何を聴いているのか解る。

―キーボードとコピー用紙から指紋を採ってる、俺の評判を聴きながら俺の値踏みをして、

いま笑顔で広報二人と会話しながら視界と意識の端はターゲットを捕えさす。
それは相手も同じだろう、そんなふう解かってしまう同類項に肚の底から冷徹が嗤う。

―おまえ自身で確かめに来た、それが俺の目的だって気づけるかな、

指紋を採ってくれて構わない、それも本人の採取なら都合が良い。
いま自分を疑って、けれど現場まで本人が訪れたなら疑念は信頼へ裏返る。
こんなふう本人が確かめに来た、その意図と性格が自分には解るから可笑しくて尚更に壊したい。

―おまえは絶対に自身の手は汚さなかった、いつも相手の心理を利用して、

50年前の銃声2発、そこから始まった罪と利用の連鎖反応は巧みな「他力」にある。

湯原家最初の銃殺被害者、敦を殺した相手は退役軍人だった。
この退役軍人は経済的に社会的に追い詰められて元上司を殺害してしまった。
退役軍人を殺害したのは敦の息子である晉、それは正当防衛に追い込まれた行動だった。
そして晉の殺害犯にされたのは晉の友人だった、その動機は「If」言動による煽動から生まれている。
そうして最後、馨を殺した犯人は多くに追い詰められた結果に意図せず発砲してしまった、でも本当は「意図されて」いる。

いつも他人を利用した殺人、だから法に裁かれない、だからこそ「観碕自身」を利用した連鎖反応を今、すべて始める。







(to be continued)

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soliloquy 睦月元旦―another,side story

2014-01-01 20:39:26 | soliloquy 陽はまた昇る
夢、小春日和の夏へ
周太9歳元旦




soliloquy 睦月元旦―another,side story

ふわり、陽だまりの風に前髪ゆれて額に光射す。

庭木立を仰いだ視界に梢がゆれる、その木洩陽まぶしくて瞳細まらす。
いま葉を落した木々は枝模様が綺麗で、それでも見える新しい息吹に周太は笑った。

「ね、お父さん…見て、梅の木にもう蕾ついてる、」

笑いかけ指さして、白い吐息あわく青空へ昇る。
麗らかな光ちいさな紅色の蕾を照らす、そんな梢に父は微笑んだ。

「ほんとだね、もう花芽がついてる…梅も迎春なんだね、」
「げいしゅん?」

新しい言葉に見上げた先、ウールのお対姿が陽だまり笑ってくれる。
午後の陽やわらかに黒髪ゆらせて穏やかな声は教えてくれた。

「昔は一月を春の初めの月にしていたんだよ?お元日は春を迎える日だから迎春とも謂ってね、だから年賀状も迎春って書いたりするんだ、」

そういえば今朝も「迎春」をいくつか見たな?
そんな記憶の漢字から周太は訊いてみた。

「お父さん、秋や冬のあったかい日を小春日和なんて謂うよね?あれと迎春はすこし似てるね?」
「そうだね、同じ春って書くから…でもすこし違うところもあるかな、」

笑いかけてくれながら思案するよう切長い瞳が見つめてくれる。
こんな貌のとき父は新しいことを話す、その楽しみに見あげた向こう穏やかな声が微笑んだ。

「小春日和の小春は春と似てるって意味で、元日の迎春は新しい春って感じなんだ…春のソックリさんと初めましての春って感じ、かな」

そっくりさんと初めまして。
そんな言い方が楽しくて周太は父の袂に抱きつき笑った。

「お父さん、そっくりさんと初めましてって楽しいね?ね、だったら今、僕は春と初めましてしてるんだね、」
「うん、そうだね?そうだ、」

笑って切長い目がふわり明るく燈る。
なにか愉しいことを思いつく、そんな笑顔が木洩陽のなか提案してくれた。

「周、来年は山のお正月しようか?お母さんも一緒に、家族三人で、」

山のお正月、ってなんだろう?

聴いた言葉に鼓動ひとつ弾んで楽しくなる。
父の提案なら楽しいはず、この信頼に笑いかけた。

「山のお正月って楽しそうだね?どんなことするの?」
「大晦日に山へ登って泊るんだよ、それで山の頂上からご来光を見るんだ。元旦の山は空気が澄んでね、本当に綺麗だよ?」

話してくれる笑顔は嬉しそうに明るくなる。
こんなふう父が笑う時はきっとそう、愉しい確信に周太は訊いてみた。

「ね、お父さん…山のお正月をね、ソネット18のひとも一緒にしたんでしょ?」

But thy eternal summer shall not fade, Nor lose possession of that fair thou ow'st,
けれど貴方と言う永遠の夏は色褪せない、清らかな貴方の美を奪えない、

英国詩になぞらす「貴方」は「友達よりも近くて大切」だと父は教えてくれた。
そんな大切な人が自分や母の他にも父にいる、けれど今は逢えずにいるらしい。
逢えなくて、けれど「貴方」の記憶を語る笑顔はまばゆい夏の陽を見つめさす。
だから今も語る記憶は「貴方」だろう?そんな確信へ父は綺麗に笑ってくれた。

「うん、そうだよ?大学生の時、一緒に山のお正月をしたんだ…あのとき楽しくて幸せだったから、周とお母さんと一緒にしたいんだ、」

きっと、父のいちばん輝いた元朝は「貴方」だった。

そう頷けてしまうほど今も切長い瞳は幸せに笑ってくれる。
こんなふう父を笑顔にしてしまう「貴方」はどんな人なのだろう?
そんな思案と見あげる父の笑顔は今、正月の朝の庭にも夏のよう温かくてまばゆい。




Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate.
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath all too short a date.
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature's changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st.
 So long as men can breathe or eyes can see,
 So long lives this, and this gives life to thee.

 貴方を夏の日と比べてみようか?
 貴方という知の造形は 夏よりも愉快で調和が美しい。
 荒い夏風は愛しい初夏の芽を揺り落すから、 
 夏の限られた時は短すぎる一日だけ。
 天上の輝ける瞳は熱すぎる時もあり、
 時には黄金まばゆい貌を薄闇に曇らす、
 清廉なる美の全ては いつか滅びる美より来たり、
 偶然の廻りか万象の移ろいに崩れゆく道を辿らす。
 けれど貴方と言う永遠の夏は色褪せない、
 清らかな貴方の美を奪えない、
 貴方が滅びの翳に迷うとは死の神も驕れない、
 永遠の詞に貴方が生きゆく時間には。
 人々が息づき瞳が見える限り、
 この詞が生きる限り、詞は貴方に命を贈り続ける。






【引用詩文:William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet18」】

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