萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚381

2018-09-18 22:40:27 | 雑談寓話
「ね、別れるか結婚するかって言われたらね?トモさんなら何て答える?」

なんて質問されちゃった告白された新年サシ呑み、
そんな質問者=花サンの貌と台詞に、

ソレってマズい質問じゃないのかな?

っていうのが率直な感想で、
っていうのも墓穴ワード2つもある、

別れる×結婚

どっちも御曹司クンには禁句、
どっちも古傷を抉られるから。

「ソレ本音で答えちゃってイイわけ?花サンがなんて答えてほしいかってわかるけど、」

質問に質問で返して、あらためて考える。
多分アイツなんも花サンに話していないだろ?

御曹司クン×古傷→禁句存在

きっと御曹司クンは何も話していない、
だから当然そーゆーアタリ花サンには解らない。
そんな状況だから解らなくても仕方ない、かもしれない?

「あー、そー言われるとナンカ怖いよ、トモさん?」
「怖がらなくってもいーよ?笑」

笑い返しながら正直、困るなあ思っていた。
彼女も笑っている、その貌に温度差が哀しかった。

別れるor結婚

そんな選択を迫った花サンのことも、
そんな選択を迫られた御曹司クンも、

どっちも結局のとこ相手の何を見ているんだろう?

「で?御曹司クンと家族になっちゃうコトにしたんだ?」

質問、というより答え合わせ。
その投げかけに彼女は頷いた。

「うん、」

肯いた貌は、ただ幸せ、とは言えない。

「幸せ花嫁ってカンジじゃないね?」

思ったまま声にして冷たい徳利かたむける。
日本酒は冷酒に限る・そんな主義の女性は猪口に口つけ言った。

「プロポーズされて結婚したかったなあ、って…乙女の夢と笑っていーよ?」

笑えない、どっちの意味でも。

「笑えないよ?花サンのためにも、カレのためにもね、」

本音そのまま言ったテーブル、色白の顔が見つめてくる。
この顔いつになったら満面笑顔で暮らせるのだろう?そんな願いに訊いてみた。

「花サンはさ、ひとの過去は大切だと思う?」

御曹司クンには大切だ、彼自身の過去は。

『男同士の恋愛も、俺には大切な俺のパーツだから』

幼馴染と恋して愛しあって、それは同性愛で、それが彼の大切なパーツ。
彼の幸福感の原点で原典みたいなもんで、その過去が彼の今を作りあげた。
それくらい大切な過去、でも世間では受入れ難いってことも彼は知っている。

その世間と彼女を御曹司クンは天秤にかけちゃったろうか?

「大切だと思うよ、私も大切にしてるから…」

ほら彼女は答えてくれる、だけどそれが「受容」かは別だろう?
そんな天秤のこと考えながら言ってみた。

「花サンはさ、御曹司クンと彼を天秤にかけないだろ?」

花サンの「彼」は、花サンの大切な過去。
正確には過去じゃないかもしれない、そんな宝物を抱く人は微笑んだ。

「かけないよ?比べる対象じゃないもん、」
「だよね、それってさ?どっちもソレゾレだからだろ?」
「それぞれって良い表現、ソンナカンジです?」
「ソンナカンジする、」

会話キャッチボールしながら箸を動かして、酒を呑んで。
まだ始まったばかりの時間に彼女は言った。

「あのね…御曹司サンは天秤にかけちゃうよねってこと、気づかせようとしてる?」

ほら、彼女は気づける。
けれど少し遅れた今に困りながら笑った。

「別れるか結婚か、っていうのも天秤にかけてるよね?」

世間と彼女、または過去本音と未来建前。

そんなこと考えたくないことで、けれど避けては前に進めない。
たとえ進んだところで不慮に幸福の逆方向が起きてしまいそうで。


ひさしぶり2年ぶり?にこのシリーズ更新ですが・3日連続で、笑
正しくありたいブログトーナメント
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村 blogramランキング参加中! 純文学ランキング
著作権法より無断利用転載ほか禁じます

PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 一軒茅屋 | トップ | 和田宿、古風端正 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

雑談寓話」カテゴリの最新記事