萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

晩秋の大輪

2018-12-08 20:51:03 | 写真:花木点景
空まばゆい花翳、秋ゆく前に咲く。
花木点景:皇帝ダリア


陽に透ける花は好きです、雫も花脈も活きるかなーとモノクロにしてみました。笑
撮影地:神奈川県2015.11

第68回 ☆花って綺麗ですよね♪☆ブログトーナメント
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第86話 花残 act.3 side story「陽はまた昇る」

2018-12-08 00:21:01 | 陽はまた昇るside story
告知、
英二24歳3月末


第86話 花残 act.3 side story「陽はまた昇る」

かすかな苦い渋い、すこし甘い香。

「失礼します、」

整えられた空間に扉が閉じる、背後おだやかな静謐へ鎖される。
広やかで静かで端正な密室、デスク立ちあがるスーツ姿に頭下げた。

「蒔田部長、ご迷惑を申し訳ありませんでした、」

謝罪、まずここから始めるほうがいい。
想い自分の靴を見つめる絨毯の先、低く明朗な声が言った。

「おとといは話せなかったな、宮田君?」

こつん、

靴音かすかに近づいてくる、うつむける視界に影うつろう。
午後の陽さしこむ庁舎の窓、顔をあげ笑いかけた。

「おとといはご挨拶もできず、申し訳ありませんでした。」
「あれでは仕方ないだろう?宮田君はずいぶん人気者だった、」

明朗な低い声が笑っている、その視線も穏やかに明るい。
以前より何か近い、そんな相手に微笑んだ。

「私を酔い潰すつもりだったそうです、国村さんのご要望で、」
「ははっ、国村君らしい発想だな、」

闊達に笑う眼は冷静なくせに温かい。
その耳もと銀色いくつか光る、白髪こんなに多かったろうか?

―長野の件がストレスになったか、そんなに?

地域部長 蒔田徹。

階級は警視長、ノンキャリアで最高と言われる。
警視庁山岳会の副会長、そして湯原馨の同期だった男。
そんな男のストレスは「地域部長」それとも「湯原馨」どちら故だろう?

―どういう動機か解らないな…まだ、

馨の同期、それだけで信じる理由にできるだろうか?
まだ決めかねる判断むきあう先、上司がこちらへ歩みよった。

「輪倉さんが礼に来たよ、宮田くんのことを訊いていった、」

告げられた名前に分岐点また燈る。
その男もまた、どちら故だろう?

「そうですか、」

ただ微笑んで真直ぐ見つめる。
あの男は「あった」こと話したろうか?

―総務省官房審議官、輪倉義勝…か、

総務省、官房審議官、この肩書だけで「後輩」だと解かる。
あの男に無関係とはいえない男、けれど「近い」だろうか?

―どちらにしても観碕の情報をひっぱりだせるな、輪倉さんの立場なら、

どちらにしても駒にできればいい。
そんな思案の真中、静かな瞳が微笑んだ。

「まずは宮田君、2階級特進おめでとう、」

ああ、そういう話で呼ばれたのか?

『今日は午前の訓練が終わったら桜田門に行ってこい。日曜だが居られるそうだ、』

朝、直属の上司から出向くよう告げられた。
その理由に笑いかけた。

「ありがとうございます、これは内示ということですか?」
「まあ、明日には公示されるがね、」

穏やかな冷静な声が笑いかける。
けれど理由それだけではないだろう?予想に官僚の口ひらいた。

「宮田君がここへ来たのは、長野の報告だそうだね?」

これが「呼ばれた」本当の理由。
そう告げてくる視線に微笑んだ。

「それが今日、私を呼んだ理由ですか?」

そのための特進でもあるだろう?
答えた推論に執務室の主は言った。

「内示のついでだ、世間話をしても普通だろう?」
「そうですね、」

微笑んで肯定して、相手の思考トレースする。
こんなふう「普通」を装う、その真意は何か?

―長野の件は当事者が報告に呼ばれて当然だ、それを「普通」にかこつけるのは?

呼ばれて当り前の自分、それ相応の「問題」と「褒賞」を起こしているから。
そんな時系列に与えられた賞罰を笑った。

「私の2階級特進は、広告塔と口封じのためですか?」

雪山で起きた事件とテレビ報道、そこに世論は何を「見た」だろう?
そこに期待された結果の前、冷静な瞳が笑った。

「君は目立つからな、今回もテレビ局への反響が大きかったようだ、」

今回「も」そう言葉にされて山の炎が映る。

―奥多摩の山火事か、あれも色々あったな?

奥多摩の山中、発火した木を消化した。
そうして報道された映像に「鍵」ひとつ自分は掴んだ。
あの時と今は似て違う、この意図された結果に微笑んだ。

「それが私を退職させられない理由ですね?」

そうなると解っていた。
だから選んだ手段の結果に官僚は言った。

「警察への世論は決して良くはない、イケメンの英雄を退職させたらコトだろう?」

穏やかな静かな声が笑いかける。
たぶん解っていないわけじゃない、そんな口調が続けた。

「世論も味方にした君だ、官僚一人コントロールするのも容易いだろうな、」

穏やかな冷静な声、でも逸らさない。
そうして捉えたがる口調を見つめて、ありのまま笑った。

「私は山岳救助隊員として動いただけです、」

それだけだ、この「それだけ」が生んでくれる連鎖反応がある。
その反応の一つを見つめて頭きれいに下げた。

「その時の任務を果たしただけです、ですが、その結果お騒がせして申し訳ありません、」

まず謝罪、話はそれからだ。
想い見つめる爪先、染みのない絨毯はるか言われた。

「謝らなくていい、私こそ君に頼みがあるから、」

※校正中

第86話 花残act.2← →第86話 花残 act.4

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