Glorious―真実の罪、誇らかな嘘
第66話 光望act.7―another,side story「陽はまた昇る」
俺の幸運も周太にあげる、だから俺の嫁さんに必ずなって?もう周太以外は無理だから、お願いだから俺と家族になってよ?
そう告げてくれた綺麗な瞳に今、自分の貌が映る。
デスクライト煌めく瞳は漲らす、その水鏡に自分の心は今は映したくない。
もし自分の心が映ってしまったら、きっと大好きな瞳は泣いて怒って6月と同じことを願うかもしれないから。
―ごめんなさい、本当は英二のこと信じ切れてないの…英二の俺への気持を信じたらいけないから、光一とのことも認めたんだ、
どんなに約束してくれても信じてはいけない、そう想ってきた。
いつ心変わりされても自分は文句など言えない、そう解っているから自分の期待を小さくしたい。
それは祖父の罪を知った今は尚更に覚悟していたくて、それなのに綺麗な声も瞳も周太に笑いかけた。
「家も庭ごと奥多摩に引越すよ、墓ごと皆も奥多摩に連れていく、お母さんも一緒に暮らして貰えるようにする、全部ちゃんと俺がする。
周太が大学院に通う学費とかも俺が出したい、周太の夢を俺が手伝いたいんだ、こんな俺だから困らせる事いっぱいあるだろうけど信じて?
俺は一生ずっと山ヤで警察官だから心配も沢山かけるけど、笑ってもらう努力はもっと沢山する、いつも絶対に無事に帰るから、信じてよ、」
ふたり一緒に生きよう、そう見つめあってから重ねた約束たちを愛しい声が紡いでくれる。
綺麗な低い透る声、この声が本当に自分は好きで告げてくれる心が好きで、だから男の癖に英二を愛してしまった。
本当は同性愛を否定的に想ったことは幾度もある、新宿署の当番勤務で会った男から聴いた話を思い出してしまうから。
私はゲイと世間では言われます、同性の男にしか恋愛感情を持てません
だから何かが違うという訳じゃない、普通に仕事をして普通に食事し普通に人と話します
けれど世間から冷たい偏見で見られる事も知っている、ゲイだと知られて、それだけで全否定された事もありました
男同士の恋愛は相手を探す事が難しい、女性相手なら多くの出会いもあるかもしれない、けれど自分は同性にしか魅力を感じられない
だから彼に出会えた時は嬉しかった、だからさっきは悲しくて、どこかで死のうとすら考えました
でも話せてすっきりできました、もういいやと思えました、もうこれで他の男を探します
あの男と出会ったのは卒業配置されたばかりの夜だった、英二に初めて抱かれて恋愛を知ったばかりだった。
まだ一夜しか恋の夜を知らなくて、寄添う幸福しか恋愛を知らなくて、けれど同性愛の哀しい現実を初めて目の前に見た。
あのときから本当は幾度も考えている、どんなに想っても祈っても約束しても、やっぱり男同士の恋愛は幸福な最期など無い?
『どこかで死のうとすら考えました、でも…もういいやと想えました、もうこれで他の男を探します』
自分が消えてしまっても、きっと英二も他の誰かを探せるはず。
そう想う方が楽だった、けれど知らない誰かは嫌だから光一が相手で嬉しかった。
自分が大好きな友達なら、自分の大切な初恋相手なら、唯ひとり想う人が恋しても納得が出来る、諦められる。
そう想って未練ひとつずつ絶っていた、それくらい本当は英二の想いを信じられない、英二の隣にある自分の未来は、見えない。
―ごめんなさい英二、何も約束できない俺だから自信なんて無いの…愛して、って言うことすら出来ないから、だから、
だからお願い、自分に約束なんてもう、しないで?
祖父の罪を知ってしまった今は、あなたと家族になることは出来ない。
自分が喘息だと知りながら治療に専念しない、そんな自分に将来の約束をする資格は無い。
そして来週になれば自分は父と同じ扉を開く、それは「枷」を嵌められる可能性だと今は知っている。
そんな自分には「好きだ」と告げることすら赦されない、そう解っている、だからもう今は幸福な夢を告げないで?
―さよならを言わないといけないの、本当は英二も解ってるから今、こんなに約束をくれるんでしょう?
きっと英二も解っている、自分がSATへ異動することを気付いている。
だから今も約束を結んでくれる、そんな優しさは嬉しくて幸せで本当は信じたい。
けれど今はもう頷いて良いのか解らない、それなのに唯ひとり見つめたい綺麗な瞳は告白と笑ってくれた。
「もう二度と俺は周太を裏切らない、最高峰の神に懸けて誓うよ?だから俺の嫁さんになって下さい、」
ほら、真直ぐな聲が心をノックする、この聲に何て応えたらいい?
こんな約束を贈ってくれる心が愛しくて護りたい、けれど自分に資格はあるの?
ひとり問いかけと見つめる笑顔は泣きそうな瞳で、けれど幸せに笑って言ってくれた。
「俺と一緒に幸せになろう、」
あなたと一緒に、そう言ってくれるの?
自分と幸せになろうと願ってくれるの?
―本当にそうしたい、って、願うことだけでも叶えてみたい、
そっと心が本音に微笑んで、願いだけでもと望みを囁く。
約束なんて出来ないと解っている、けれど今だからこそ望みたい。
ただ願うだけでも自分には幸せ、そんな想うままに周太は真直ぐ見上げて綺麗に笑った。
「ん、一緒に幸せになろうね、英二…今すぐは無理でも、いつかきっと、」
いつかきっと、叶うことを信じたい。
今すぐは無理だと解っている、そんな「今」はいつ終るか解らない。
その終焉はもうじき向かう死線の先にある、それは生死すら解からない。
それでもきっと「いつか」は来るだろう、たとえ命消えても帰ることは出来るから。
―お祖父さんも帰って来てくれたもの、小説に全てを籠めて俺のとこに帰って来られた、だから俺もきっと帰れる、ね?
本当に想いがあるのなら、愛情も誇りもあるのなら、きっと愛する場所へ還られる。
そう自分は知っているから全てを懸けて願う、きっと、あなたと一緒に幸せになる。
いま自分が抱いている罪も病も過去も現実も、いつか全てを超えて自分は辿り着く。
だからお願い、どうか今は何も気づかないで、このまま笑っていて?
このまま綺麗な笑顔を見ていたい、今この笑顔を記憶しておきたい。
そうして帰る道標にしたいから想い知られたくない、そんな願いに綺麗な笑顔は咲いてくれた。
「絶対の約束だよ、周太、」
綺麗な低い声が名前を呼ぶ、その吐息ごと唇ふれてキスになる。
ふれる温もり熱を伝えて想い接吻けて、それでも隠す真実にキスが愛しい。
こんなふうに約束で心結ぼうとしてくれる、それが幸せで嬉しくて、だから自分はきっと帰る。
―英二、いつか全部を話すから聴いてね、俺を嫌いになっても良いから俺の素顔を見て…本当に大好きだから、嘘も秘密も消させて、
いつか真実を自分は告げる、この想いを嘘にしない為に秘密を壊す。
それは生きて声に伝えられないかもしれない、けれど祖父の誇りに懸けて自分も告白する。
きっと全てを英二なら見つけて解ってくれる、この信頼に微笑んでキス離れると周太は口を開いた。
「あのね、英二…俺ね、大学の研究生にならないかって言われたんだ。田嶋教授が大学に話してくれて、授業料も免除なの、」
言える真実は伝えたい、そんな想いに話しながら何か気恥ずかしい。
こんなふうキスした直後に大学の話をする、それがキスを晒すようで恥ずかしい。
こんなこと意識し過ぎ、そう解っているのに首すじ熱昇らす前で大切な人は嬉しそうに笑ってくれた。
「それって周太が優秀だからってことだろ、どういう経緯か聴かせてくれる?」
「ん…あのね、田嶋先生はお父さんの友達で、お祖父さんの教え子なの、」
ふたりベッドに腰掛けながら会話に嬉しくなる。
あの立派な学者との出会いも学ぶチャンスも祖父からの贈物、そう語れることが嬉しい。
―お祖父さん、たくさん嬉しいこと遺してくれて、ありがとう、
そっと心に祖父への感謝を想える、それが嬉しくて誇らしい。
何も知らなかった23年間よりも知った今が嬉しい、たとえ罪の現実でも本当を見つめたい。
何も知らないよりも真実を欠片でも拾うなら想いも抱きしめられる、この幸せに言葉を続けた。
「まだ先生にはね、お父さんとお祖父さんのこと話してないの、遠慮されそうだから悪いなって思って…翻訳のお手伝いしてるから。
それを先生が気に入ってくれてね、俺が研究生になれるようにしてくれたの。翻訳のプロを雇うより学費免除の方が安いって言ってくれて、」
自分が翻訳で認めて貰えたのは、父に語学を教えた祖父の想いが源泉にある。
こんなふう自分の全ては父から祖父へと祈りに遡らす、それを辿れる今の幸せに周太は微笑んだ。
「農学部と文学部の両方で研究生でね、どっちの講義も出て良いの。でね、翻訳した時にお礼ってお祖父さんが書いた小説をくれたんだ、」
祖父が遺した小説は、メッセージごと帰って来てくれた。
フランス文学への夢も誇りも、家族への愛も懺悔も、祖父の全ては一冊の本に輝いている。
あの一冊の光と同じよう自分も全て懸けて遺したい、そして大切な人たちに自分の真実を見つめてほしい。
だから自分の真実を遺すなら、なんて言葉を光に綴ろう?
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st.
So long as men can breathe or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee.
けれど貴方と言う永遠の夏は色褪せない、
清らかな貴方の美を奪えない、
貴方が滅びの翳に迷うとは死の神にも驕れない、
永遠の詞に貴方が生きゆく時間には。
人々が息づき瞳が見える限り、
この詞が生きる限り、詞は貴方に命を贈り続ける。
【引用詩文:William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet 18」】
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第66話 光望act.7―another,side story「陽はまた昇る」
俺の幸運も周太にあげる、だから俺の嫁さんに必ずなって?もう周太以外は無理だから、お願いだから俺と家族になってよ?
そう告げてくれた綺麗な瞳に今、自分の貌が映る。
デスクライト煌めく瞳は漲らす、その水鏡に自分の心は今は映したくない。
もし自分の心が映ってしまったら、きっと大好きな瞳は泣いて怒って6月と同じことを願うかもしれないから。
―ごめんなさい、本当は英二のこと信じ切れてないの…英二の俺への気持を信じたらいけないから、光一とのことも認めたんだ、
どんなに約束してくれても信じてはいけない、そう想ってきた。
いつ心変わりされても自分は文句など言えない、そう解っているから自分の期待を小さくしたい。
それは祖父の罪を知った今は尚更に覚悟していたくて、それなのに綺麗な声も瞳も周太に笑いかけた。
「家も庭ごと奥多摩に引越すよ、墓ごと皆も奥多摩に連れていく、お母さんも一緒に暮らして貰えるようにする、全部ちゃんと俺がする。
周太が大学院に通う学費とかも俺が出したい、周太の夢を俺が手伝いたいんだ、こんな俺だから困らせる事いっぱいあるだろうけど信じて?
俺は一生ずっと山ヤで警察官だから心配も沢山かけるけど、笑ってもらう努力はもっと沢山する、いつも絶対に無事に帰るから、信じてよ、」
ふたり一緒に生きよう、そう見つめあってから重ねた約束たちを愛しい声が紡いでくれる。
綺麗な低い透る声、この声が本当に自分は好きで告げてくれる心が好きで、だから男の癖に英二を愛してしまった。
本当は同性愛を否定的に想ったことは幾度もある、新宿署の当番勤務で会った男から聴いた話を思い出してしまうから。
私はゲイと世間では言われます、同性の男にしか恋愛感情を持てません
だから何かが違うという訳じゃない、普通に仕事をして普通に食事し普通に人と話します
けれど世間から冷たい偏見で見られる事も知っている、ゲイだと知られて、それだけで全否定された事もありました
男同士の恋愛は相手を探す事が難しい、女性相手なら多くの出会いもあるかもしれない、けれど自分は同性にしか魅力を感じられない
だから彼に出会えた時は嬉しかった、だからさっきは悲しくて、どこかで死のうとすら考えました
でも話せてすっきりできました、もういいやと思えました、もうこれで他の男を探します
あの男と出会ったのは卒業配置されたばかりの夜だった、英二に初めて抱かれて恋愛を知ったばかりだった。
まだ一夜しか恋の夜を知らなくて、寄添う幸福しか恋愛を知らなくて、けれど同性愛の哀しい現実を初めて目の前に見た。
あのときから本当は幾度も考えている、どんなに想っても祈っても約束しても、やっぱり男同士の恋愛は幸福な最期など無い?
『どこかで死のうとすら考えました、でも…もういいやと想えました、もうこれで他の男を探します』
自分が消えてしまっても、きっと英二も他の誰かを探せるはず。
そう想う方が楽だった、けれど知らない誰かは嫌だから光一が相手で嬉しかった。
自分が大好きな友達なら、自分の大切な初恋相手なら、唯ひとり想う人が恋しても納得が出来る、諦められる。
そう想って未練ひとつずつ絶っていた、それくらい本当は英二の想いを信じられない、英二の隣にある自分の未来は、見えない。
―ごめんなさい英二、何も約束できない俺だから自信なんて無いの…愛して、って言うことすら出来ないから、だから、
だからお願い、自分に約束なんてもう、しないで?
祖父の罪を知ってしまった今は、あなたと家族になることは出来ない。
自分が喘息だと知りながら治療に専念しない、そんな自分に将来の約束をする資格は無い。
そして来週になれば自分は父と同じ扉を開く、それは「枷」を嵌められる可能性だと今は知っている。
そんな自分には「好きだ」と告げることすら赦されない、そう解っている、だからもう今は幸福な夢を告げないで?
―さよならを言わないといけないの、本当は英二も解ってるから今、こんなに約束をくれるんでしょう?
きっと英二も解っている、自分がSATへ異動することを気付いている。
だから今も約束を結んでくれる、そんな優しさは嬉しくて幸せで本当は信じたい。
けれど今はもう頷いて良いのか解らない、それなのに唯ひとり見つめたい綺麗な瞳は告白と笑ってくれた。
「もう二度と俺は周太を裏切らない、最高峰の神に懸けて誓うよ?だから俺の嫁さんになって下さい、」
ほら、真直ぐな聲が心をノックする、この聲に何て応えたらいい?
こんな約束を贈ってくれる心が愛しくて護りたい、けれど自分に資格はあるの?
ひとり問いかけと見つめる笑顔は泣きそうな瞳で、けれど幸せに笑って言ってくれた。
「俺と一緒に幸せになろう、」
あなたと一緒に、そう言ってくれるの?
自分と幸せになろうと願ってくれるの?
―本当にそうしたい、って、願うことだけでも叶えてみたい、
そっと心が本音に微笑んで、願いだけでもと望みを囁く。
約束なんて出来ないと解っている、けれど今だからこそ望みたい。
ただ願うだけでも自分には幸せ、そんな想うままに周太は真直ぐ見上げて綺麗に笑った。
「ん、一緒に幸せになろうね、英二…今すぐは無理でも、いつかきっと、」
いつかきっと、叶うことを信じたい。
今すぐは無理だと解っている、そんな「今」はいつ終るか解らない。
その終焉はもうじき向かう死線の先にある、それは生死すら解からない。
それでもきっと「いつか」は来るだろう、たとえ命消えても帰ることは出来るから。
―お祖父さんも帰って来てくれたもの、小説に全てを籠めて俺のとこに帰って来られた、だから俺もきっと帰れる、ね?
本当に想いがあるのなら、愛情も誇りもあるのなら、きっと愛する場所へ還られる。
そう自分は知っているから全てを懸けて願う、きっと、あなたと一緒に幸せになる。
いま自分が抱いている罪も病も過去も現実も、いつか全てを超えて自分は辿り着く。
だからお願い、どうか今は何も気づかないで、このまま笑っていて?
このまま綺麗な笑顔を見ていたい、今この笑顔を記憶しておきたい。
そうして帰る道標にしたいから想い知られたくない、そんな願いに綺麗な笑顔は咲いてくれた。
「絶対の約束だよ、周太、」
綺麗な低い声が名前を呼ぶ、その吐息ごと唇ふれてキスになる。
ふれる温もり熱を伝えて想い接吻けて、それでも隠す真実にキスが愛しい。
こんなふうに約束で心結ぼうとしてくれる、それが幸せで嬉しくて、だから自分はきっと帰る。
―英二、いつか全部を話すから聴いてね、俺を嫌いになっても良いから俺の素顔を見て…本当に大好きだから、嘘も秘密も消させて、
いつか真実を自分は告げる、この想いを嘘にしない為に秘密を壊す。
それは生きて声に伝えられないかもしれない、けれど祖父の誇りに懸けて自分も告白する。
きっと全てを英二なら見つけて解ってくれる、この信頼に微笑んでキス離れると周太は口を開いた。
「あのね、英二…俺ね、大学の研究生にならないかって言われたんだ。田嶋教授が大学に話してくれて、授業料も免除なの、」
言える真実は伝えたい、そんな想いに話しながら何か気恥ずかしい。
こんなふうキスした直後に大学の話をする、それがキスを晒すようで恥ずかしい。
こんなこと意識し過ぎ、そう解っているのに首すじ熱昇らす前で大切な人は嬉しそうに笑ってくれた。
「それって周太が優秀だからってことだろ、どういう経緯か聴かせてくれる?」
「ん…あのね、田嶋先生はお父さんの友達で、お祖父さんの教え子なの、」
ふたりベッドに腰掛けながら会話に嬉しくなる。
あの立派な学者との出会いも学ぶチャンスも祖父からの贈物、そう語れることが嬉しい。
―お祖父さん、たくさん嬉しいこと遺してくれて、ありがとう、
そっと心に祖父への感謝を想える、それが嬉しくて誇らしい。
何も知らなかった23年間よりも知った今が嬉しい、たとえ罪の現実でも本当を見つめたい。
何も知らないよりも真実を欠片でも拾うなら想いも抱きしめられる、この幸せに言葉を続けた。
「まだ先生にはね、お父さんとお祖父さんのこと話してないの、遠慮されそうだから悪いなって思って…翻訳のお手伝いしてるから。
それを先生が気に入ってくれてね、俺が研究生になれるようにしてくれたの。翻訳のプロを雇うより学費免除の方が安いって言ってくれて、」
自分が翻訳で認めて貰えたのは、父に語学を教えた祖父の想いが源泉にある。
こんなふう自分の全ては父から祖父へと祈りに遡らす、それを辿れる今の幸せに周太は微笑んだ。
「農学部と文学部の両方で研究生でね、どっちの講義も出て良いの。でね、翻訳した時にお礼ってお祖父さんが書いた小説をくれたんだ、」
祖父が遺した小説は、メッセージごと帰って来てくれた。
フランス文学への夢も誇りも、家族への愛も懺悔も、祖父の全ては一冊の本に輝いている。
あの一冊の光と同じよう自分も全て懸けて遺したい、そして大切な人たちに自分の真実を見つめてほしい。
だから自分の真実を遺すなら、なんて言葉を光に綴ろう?
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st.
So long as men can breathe or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee.
けれど貴方と言う永遠の夏は色褪せない、
清らかな貴方の美を奪えない、
貴方が滅びの翳に迷うとは死の神にも驕れない、
永遠の詞に貴方が生きゆく時間には。
人々が息づき瞳が見える限り、
この詞が生きる限り、詞は貴方に命を贈り続ける。
【引用詩文:William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet 18」】
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