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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着方の妙

2009-06-26 22:38:55 | 着物・古布
いえ、なんてことはない、着物姿の見た目のお話しなんです。
トップの写真は、一枚だめにしたとんぼ柄ゆかたのかわりに
ひっぱりだしてきた、同じく「とんぼ柄」、ははは。
これはたぶんあの白いとんぼと近い時期だと思いますが、
それにしても古いものではあります。なんたって…きつい…。

まず、こちらの写真をご覧下さい。
後ろの腰から下です。(見りゃわかりますがな)


         


わかりやすいように、ちょっと多めに裾から褄を上げています。
着物ってこんなふうに着ますよね。
最近の着付け教室で、どのように教えられているのかわかりませんが、
ちょっとネットで調べたら「5cm」「10cm」「10cmくらい」
「特別表示ナシ」…いろいろでした。
裾からどれくらい上がるかというのは、その人の体型や、
着物の種類などによっても違うわけですが、おおむねいいものほどあげる。
ゆかたは5~8cmくらいでしょうかね。
これ、年代や地域でも違うみたいです。母は多くあげました。

母は私に「壷を包むように」つまり裾すぼまり(裾つぼまり)に、と教えました。
人間の身体はアタマと足は小さくて、胴体が大きい、
つまり着物の腰から下は壷のように細くなります。
壷にもいろいろありまして、ボーリングのピンのようにすらっともあれば、
梅干やミソ甕のように「あんまり上下で差がない」もあります、ははは。
私はここ10年ボーリング・ピンもミソ甕も通り越して、
ビヤ樽に足二本つけた感じ…になりまして、
あまり裾すぼまりにきつく着ると、「歩けん!」
太ももの横部分がかなり張ってしまいましたから。

お福ちゃんに着てもらいました。
すみません、なんだかカメラが突然不調になりまして、
フラッシュたいても真っ暗けで…色はなしで形だけ見てください。
お福ちゃんは30年前の私ですからして、
まずは右前をいくら巻き込んでも足りないので、とりあえずおくみで折って、
右脇にあげ気味に押し込んで…


     


そうすると下がすぼまり、更に上前の褄をあげるとこんな。


     


下から覗くとこんな感じ(わかりやすくオーバー目)
こうして着ると、上のゆかたの後姿のようになるわけです。


     



さて、最近気になるのは、あまり裾すぼまりではなく、
どちらかというとストーンとそのまんまという感じの着方。
よく、こんな写真を見ています。(すみません、本から借り物)

   
     


これについては呉服関係の友人が
「裾すぼまりに着せると、前から見たとき前身ごろが斜めに上がって、
着物の前の柄がまっすぐにならないから、
柄がよく見えるように、着姿がきれいになるように、
まっすぐ平らに着せるのよ、細くて背の高い人多いから」」と
…なぁるほど、そーなんだー。どうせ私はチビデフだーい(ヒガミ)。
つまり上の写真みたいに…確かにこの方が、柄としてはわかりやすいですね。
同じ本で、これはモデルさんじゃなくて普通に着てる着物の前、
たしかになんか傾きますよね。この人、縦横私くらいです。


        


着物って、ちゃんとすぼめると、前から見たときちょっとななめるわけです。
でも、本の撮影用のように右前もまっすぐ着ると…。
これは振袖大集合の写真。

一番後ろの白い着物の人、後ろもすぼまっていてきれいですし、
袂の下の「脇線」が、少しななめになってますね。
つまりちゃんと下前もあげて、上前も褄をあげてるわけです。
でもその前の緑の人と、その前の人、なんかボテッと見えますね。
脇線はよく見えませんが、コレだけ下まで同じ幅でひろがっているということは、
下前もあげてないし、上前も上げていない…。
これはご本人が太っているかどうかは関係ないんです。


   


さて、本来着物の褄は「あげて」着るものですが、
でもね、どれくらいあげるだの、裾すぼまりだのっていっても、
長い着物の歴史からいったら、そんなの最近のことなんですよ。
たとえば以前出した写真、こちらの記事で着方など書いています。



      
    

こんな状態で着ていたのですから、前をあげるもへったくれもありゃしません。
またたとえ労働着の短いものでも、着物の着方全体が、
いまよりずっとゆるやかで「きちんとはしなかった」のです。
今見れば「なんかダラシない」とか「しまりがない」と見えるかもしれませんが、
私たちだって今、普段洋服を着るのに、きちんと着なきゃならないとき以外は、
上着の前ボタン留めなかったり、袖を捲り上げたり、衿を立てたりして、
好きなように着ていますよね。あまつさえ、穴あいてたり、
パンツにスカート重ねたり…あっありゃファッションか…。
つまり、昔だって着物で一日すごすのに、それぞれの年齢や立場や性別で、
動きやすいように、着ていたわけです。
今の着物の着付けは「一律きれいに美しく」です。
江戸や明治の女性が見たら「なんと苦しげな…」と思うかもしれませんね。

お話しを戻しましょう、今の時代、前裾は下から何センチ、
なんてのは、ただの基本です。「ちょっとあげて着る」でいいわけで、
昔とは着物の形(寸法)も着方も違う今の状態で
「美しく見えるにはどう着たらいいか」ということがダイジです。
それほど昔から決まっていたことではないんですから、
きれいに見えるように、また見え方だけでなく所作動作で
着崩れないということもありますからきちんと締めるところは締める…。

衣服というのは、身につけてそのままじっと立っているわけではありません。
いや、どこかの衛兵さんや門番さんなどは別としてです。
例えば最近シフォンのような薄くて軽い素材で
細かいキャザーの少し長めのスカートがあります。
穿いてそのままじっとしていたら、ただ身体に細かいギャザーの布が
まきついているだけですが、ひとたび歩くと、それがひらひらと波打って、
それが足の動きに合わせてまとわりついたり離れたり…とてもきれいです。
それが表情というものですよね。
着物の場合はカタチはみんなおんなじですから、歩いたり振り向いたり、
そういったときに裾や袂が揺れるのが表情…。
ですから、じっとたっているだけでなく、歩いたら、動いたら、
そのとききれいに見えるように…です。

実は「本人は着ているつもり」がそうじゃなくなる…もあります。
着付けの時に一番コケやすいのが、紐を締めるとき、です。
体にキッチリ着物をあてて、ここで、こうあげて…とやったのに、
紐を締めたときに緩んでしまったりズレてしまったり、コレに気がつかない。
腰紐の位置が決まってちゃんと締めたら、そこでおはしょりを作る前に、
下前と上前の「あがり具合」をちゃんと確認します。
通常着物を着るための姿見は全身の半分が写る長さがあれば、全部写りますが、
できれば小さい鏡でいいですから、足元の壁にまっすぐ立てかけて、
足元を見るといいんです。慣れてしまえばいらなくなりますが…。

着物ってみんなカタチが同じだからこそ、全体のシルエットや、
ちょっと手をあげ加減の時のたもとだとか、
歩いているときの、前の翻りで八掛が見えるあたりとか、
そんなところが個性の出しどころものひとつでもあります。
習ったとおり、はもちろん最初は必要ですが、
「自分が、着物を着て歩いたりすわったりしているときに
カッコよく見えるには、どこをどうするか」を研究してください。

ちなみにトップに書き忘れましたが、
不細工の見本として載せました。なんたってこれも「細身」で、
見幅が後ろに取られてしまい、結構引っ張ったのですが、
前が開きます。胸元は、たいして胸があるわけじゃないのに、
右にひっぱられるから、たるんで下に落ちてますね。
身丈にあうものを着るというのは、だいじですねぇ。





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Unknown (陽花)
2009-06-27 00:08:48
ゆかたらしいゆったりした着方で素敵ですね。
ところで、腰から下の部分、柄の妙でしょうか
グレーの縦線で、そこだけ生地が出ている
ように見えて、見幅の広いゆかたなのかと
思いました。目の錯覚ってあるんですね。
返信する
ファッションの撮影 (登夢)
2009-06-27 00:35:10
ずっとファッションのカタログの撮影の立ち会いをしていました。

洋服でも、モデルさんがとにかく商品が良く見えるようにだけ着て立ってますから、裏から見たら凄いですよ~。

シワが見えないように背中は洗濯バサミだらけだったり、パンツ(スラックス)の長さが足りないので、ウエストのボタンしないでずりおろして長く見せたり・・・

着物も補正もパンパじゃないらしいです。おはしょりが真っ直ぐなるよう、お端折りの中まで補正するのですが、ネットで一般人向けのお端折り用補正商品を見つけ、びっくりしました!

普通に着たら、雑誌のようになんか絶対ならないのに、そこまでしなきゃいけないのかな~?

ブランドもののファッション雑誌の方が、モデルさんに自然なポーズと洋服の自然なシワを綺麗に撮っています。

着物でもそんな撮り方があってもいいのにね。
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参考になります! (えみこ)
2009-06-27 05:19:50
おはずかしながら、胸乳たっぷりで加齢でますます…で
胸回りのあんばいに困っていました。浴衣は目立つし。なるほど、ゆったり着ればかえって浴衣らしくなりますね。
ありがとうざいます^^参考にさせていただきます。
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ちょうど (蒔 糊美)
2009-06-27 13:59:58
 いま、5~10月あたりのルールやマナーなどをモーレツにおさらいしてまして。
このキモノ雑誌の同じ号を見ていたところなので
「とんぼさんも同じのお持ち~❤」と勝手に小さな一体感♪ (キモィ)

 私は前か横かわからないくらい太ってまして
長じゅばんも前がやっと少しだけ重なる程度(爆!)
なのに目が雑誌のモデルさんを見慣れてるワケですから
鏡を見ながら、どうもモデルさん風味に着てしまって・・・
 足元のものを拾おうとして見事に!パッカ~ン!ですよ!パッカ~ン!!と。
無理ですよ、事件です!外歩けませんよ。
風吹いたらどーするんですか。 公害です~。
 モデルさんもきっと鎧のような補正具つけての撮影でしょうし
私もちょうしコィてないで、褄あげて着~ます(更生☆)

 上の「借り物①」写真ページの、前ページ。
はめ込んだ帯の写真、安っぽいと思いました(悲)
 
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Unknown (とんぼ)
2009-06-27 21:57:20
陽花様
生地のアップ写真を載せなかったんですが、
縞と言っても近くで見ると、グラデーションに細い縞がつながってるんです。
でも、写真で見るとほんとにそう見えますね。
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Unknown (とんぼ)
2009-06-27 21:59:36
登夢様
私呉服屋さんのウィンドゥでも見ましたよ。
洗濯ばさみ…寂しいですよねぇ。
あの「おはしょり整え具?」
あれはもぉ何をかいわんやです。
雑誌を見るから、アレでなきゃとか
あんなふうにとか、思ってしまうのでしょうね。
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Unknown (とんぼ)
2009-06-27 22:05:27
えみこ様
胸周りは着物にとっては
一番めだつところですから、
大きい方は苦労しますよね。
洋服とは正反対の悩みです。
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Unknown (とんぼ)
2009-06-27 22:07:55
蒔 糊美様
パッカーンは、つらいですっ!
私もいきなり太めになったので、
これは誰のよっと言いながら着てます。

あの「はめこみ」は、思わず
「なっなにがあったんだ、いったい!」
でしたねぇ。
よく校正がとおったものです。
ずれとるやん…。
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Unknown (A)
2009-12-28 14:53:32
はじめましてー。
上の写真はドレープ感があって、私は好きです。
せっかくたっぷり布地を使った衣装なので多少ずるずる纏う方が「らしい」と思うのですが「お着物」だと思うとなかなか好きなようには着れません。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-12-28 18:07:08
A様
こちらこそはじめまして。
「どのカタチをきれいと見るか」は、
時代によっても違いますから、
多少の変化はやむをえないと思いますが、
昭和30年代の、なんとか洋服っぽく見せよう
という無理な着方は、結局定着しませんでした。
着物の着姿、というのは、
形がほとんど変わらない以上、
そんなに変わらないと思いますが、
これも個人の好みですからね。
ただ、着物はきっちりかっちりまとっているようで、
実はゆるゆるでいいところもたくさんあるわけで。
着方のコツを覚えて、自分のゆるゆると
グズグズを体で覚えると、ラクなものですね。
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