ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

手ぬぐい考

2021-06-29 22:01:03 | 着物・古布

 

写真は手持ちの手ぬぐい。いろいろ種類があります。

 

元々手ぬぐいは、読んだまんま「手を拭うため」のもの、つまり、今のハンカチやタオルですね。

長さは「三尺」と言われることが多く、鯨尺という昔の長さでいうとだいたい115センチ弱。

端は切りっぱなし。これは手ぬぐいが単純に「晒し木綿の布」としても使えたため。

例えば鼻緒が切れたときに、細く縦に裂いて応急に鼻緒を直したり、

何かを結ぶひもにしたり…端がそのままということは、すぐに裂くことができたわけです。

また端が汚れてきたり、糸がぶら下がったりしたら、またそこで切って使いました。

 

先日ふと思い立って、手ぬぐい2枚で赤ちゃんから3歳くらいまでの甚平を縫ってみようと、

手ぬぐいを探したわけです。私も結構手持ちはあるのですが、柄がイマイチかわいらしいものがなく、

だいたいが1枚ずつなので、パンツ分も合わせて3枚同じ柄のを買おうと思って。

そこでできるだけ長さのあるものを探しましたが、今のはほとんどが90センチ。

「長いです」とあっても100センチ。これはメートル法になったからなのかとも思いますが、

せめて100センチ標準にしてほしいですね。短いと甚平の丈が短くなりますから。

 

そこであれこれお店のレビューを見ていったら…あらら…

「端が縫ってありませんでした。生地だと書いてあったら買いませんでした」…えぇーっ。

「端が縫っていなかったので、手ぬぐいとしては使えませんでした」えぇーっ。

もう「手ぬぐい」というものがどんなものなのかも、知らない人が増えているのだなぁと。

実は、そのクレーム?対応や、端を縫う手間を省くために、端ミシンがかかっていたり、

メロウ仕上げなんてのもあります。これは使い方によってはありがたくもありますが、

端っこ反幅くらいまつるとか縫うとかって、そんなに手間でしょうかねぇ。

あ、針を持つことがなくなつていたんだっけ。

まぁそういう方のためにそれもいいかもしれませんが、手ぬぐいのことを知らないまま、

最初に買った手ぬぐいがそれだったら、次に買った手ぬぐいが切りっぱなしだったとき

「端が縫っていない」と思うのでしょうねぇ。さみしいなぁ…。

 

それと染のことでも「〇〇柄は裏が白かった」とか「眼が悪いので裏表がわからなかった」とか。

これも、昔ならすぐわかるもので、「注染」と書いてあるものは裏表同じ濃さに染まります。

手拭20~30枚くらいをピッタリ重ねて、一番上だけ柄同士が染まらないよう糊で土手を作って、

細くて長いじょうろのような口の容器に入れた染料を流し込みます。

同時にしたから強い力で「吸引」します。染料は一度に同じところが染まります。

これだと表も裏も同じように染まります。つまり裏表がありません。

「捺染(手捺染)」は、完全には色が抜けて通らないので、裏は表より白っぽくなります。

プリント、これはもう印刷ですから、厚地ほど裏は白くなります。

三種はこんな感じ。左端が「注染」裏表が同じです。真ん中は捺染、表より裏が少し薄めです。

右端がプリント、柄があるのはわかりますが、裏は染料が通っていないので白っぽいです。

 

     

 

使いやすいのは薄くて裏表がないもの。昔は台所の食器拭きも塵除けの掛物も、

台布巾も、雑巾も、みんな手拭でした。

もちろん最初は食器拭きから始まって、少しずつ汚れてくると台布巾、雑巾と、

使い方を変えていきました。

タオルというものがなかったり、あっても高級品だったころは、布巾が大活躍したものです。

酒屋さんや米屋さんが御用聞きに来ていた時代は、盆暮れには手ぬぐいとか布巾を、

ご挨拶にとくれたものでした。柄がちょっとよかったりすると、

母はとっておいて、何かいただいたときの「おうつり」に使ったりしていましたっけ。

もちろん端は切りっぱなしのものですよ~。

 

さてさて、手ぬぐいを買おうと思ったのですが、まぁお値段がねぇ。

安いものはどれだけ薄いかとおもってしまうし、やっぱりじかに見て買いたいものですわ。

しかしそうはいってもすぐに買いにいくのは無理なので、しかたありません、

なんとか「これかなあ」と思うものを選んで買うことにしました。

手ぬぐい、日本の暮らしの中では消えそうになって、またなにかしらブームのようになったり、

あれこれアレンジされたものが出て来たりで、まだまだ生き残りそうですが、

端は切ってないのが特徴なのよー、染料が通っているのもいないのもあるのよー、

同じ木綿でも厚さがいろいろなのよーと、それもついでにちゃんと伝わってほしいと思います。

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4 コメント

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はじめまして (万吉姐さん)
2021-07-02 15:18:06
日本画の道具として板ふのりを偶然手にいれて、使い方を検索しているうちに、偶然こちらのブログに辿りつきました。(参考にさせて頂きました。ありがとうございました。)
手ぬぐいも大好きで、売る程持っているのですが、浴衣と同じく手ぬぐいも、今はプリント印刷が多いですね。
ボブをオカッパとつい言ってしまう『昭和女』の私としては、元々を知らない世代の理不尽なクレームに対しては、(美川憲一さんの「もっと端っこ歩きなさいよ!」じゃないけれど)「じゃあ、ハンカチ持ちなさいよ!」「それならワンピース着なさいよ!」とついつい心の中で思ってしまいます。勿論思うだけで、直接言いませんが(笑)
ですからこちらのブログ拝読して、激しく同意してしまいました。
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こちらこそ (とんぼ)
2021-07-02 22:37:11
万吉姐さん様

はじめまして。コメントありがとうございます。
お返事が遅くなりまして申し訳ございません。

日本画をなさっていらっしゃるのですね、ステキです!
日本画でもふのりを使うのですね。何かお役に立つ情報があったらうれしいです。

私もしっかり昭和の女ですから「ボブはおかっぱ」です。
そうそう「はじっこ歩きなさいよ」、ありましたね。
世の中の変化が速すぎて、頭の中は「?マーク」だらけですが、
アタシは間違っていないっと、我が道を行ってます。
手ぬぐいも風呂敷も、新しい使い方はいいんですが、元々を知ってほしいですよね。
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Unknown (駒形)
2022-03-03 13:01:42
皮肉たっぷりでとても面白く読ませて頂きました。
勉強になりました。ありがとうございます。
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Unknown (とんぼ)
2022-03-03 17:08:55
駒形様

コメントありがとうございます。
皮肉のつもりはなかったのですが、まぁどんどん古いものが忘れられていきます。
私くらいの年齢だと、その大きな変化の真ん中あたりにいた感じで、
けっこう知っていることもあるものですから、寂しく思うこともしばしばなのですね。
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