ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

珍しい「お軸」をいただきました。

2021-10-14 22:21:43 | 昔の道具・暮らし

 

 

友人が「もらってぇ」と届けてきました。

数本の掛け軸、私はこういうものの目利きは全くダメなんですよねぇ。

友人も査定鑑定のために持ってきたのではなく、何かに使える?いらなかったら処分していいから、

と言う状況です。まぁ実は軸の表装部分だけは使えたりしますから…って、何を飾ろうと言うのかアタシは…。

とりあえず、お預かりして一つずつ広げてみました。

全てかなり古いもので、表装も天地がしわしわだったり、風帯(掛け軸の上の部分に下がっている細いもの)が

すでにヨレヨレだったり、肝心の絵や書の部分もダメージが多いです。

いよいよになったら軸棒だけはなんとか…なんてケチくさいこと言ってます。

 

絵もありましたが、書が多かったです。もちろん「達筆すぎて読めない」のですが。

そして私にもようやくわかるものが一幅だけありました。トップ写真のものです。

これは「押隈」でした。「おしぐま」と読みます。歌舞伎好きの方はご存じと思いますが、

歌舞伎役者さんが舞台を終えた後、顔に羽二重や絵絹(日本画のための細かい織り目の絹布)を

押し付けて、隈取を生地に写し取ったもの。魚拓ならぬ「顔拓」?

身もふたもない言い方ですが…。

今でも行われていることですが、役者さんが、まずはその役で舞台に立って演じる、舞うなどしたあと、

楽屋に戻ってからこれをします。演じる前ではダメで、実際舞台に立ってから。

そこが「価値」と言うわけです。こんなのです。

 

       

 

ひょっとしてあるかと思って調べたら実際に写し取ってるところの動画がありました。

なんか気の毒な感じがするくらい、生地を押し付けて、ペタペタやっています。

押隈というよりは「たたき隈?」

これは1回に1枚しか取れませんので、たいへん貴重になります。

だいたいはご贔屓様に差し上げたり、例えば親子共演など記念になる舞台のときに作ります。

 

そういうものだったよ、と知らせたら、友人は「これが出てきたのは鎌倉に住んでいた裕福な人」と。

きっと歌舞伎見物などもなさっておられたのでしょうね。

ところで、この「押隈」は、誰のものか…頑張って読みました。

「15代目 市村羽左衛門」さんでした。とはいっても、私なんぞ羽左衛門さんのお顔すら存じません。

18代目さんはまだ決まっていないようですが。

で、この15代目さんは、明治7年のお生まれ。終戦の年に亡くなっておられます。

これがまぁ数奇な運命のかたで…。父親はなんとアメリカの軍人、しかもけっこう上の人、

更に退役後は明治政府との外交に尽くした人だとか。母親はいわゆる「元藩主さま」の庶子、

つまりはお妾さんや側室さんの産んだ女の子ってことですね。

歌舞伎役者さんは、芸の伝統を守るために養子に行ったりもらったりは当たり前に今でも行われています。

それでも、役者の家柄でないと、なかなか有名な役者さんになることはできません。

15代目が有名な役者の家の養子になったのは、親の身分と言いますか、

そういうことも関係してしていたのでしょうね。

いわゆるハーフですから、目鼻立ちくっきり、たいへん美形だと、有名になったそうです。

写真は検索で出てきますが、今の「イケメン」ではありませんねぇ。

とりあえず、人気はあったようですが、芝居がうまいとは言われなかったようです。

この方の一生を少しだけでもしってしまうと、わかったらなんだかねぇ…ちなみに隈取は「助六」です。

 

お天気が悪かったので、今日改めて玄関先で一つずつ広げてみてみましたら…。

ひとつ米寿のお祝いに、名のあるかたがお描きになったものが贈呈されていました。

贈られたほうの方が「大正八年 米寿」とありましたので、贈られた時がすでに100年以上前です。

こりゃ古いわぁ…とあらためてびっくり。

残念ながら箱がないのですが、米寿のお祝いらしく、見事な「鯛」の絵。

作者は広田百豊画伯。あまり知られていないのですが、竹内栖鳳に師事した日本画家です。

 

もうひとつは立派な箱書き…なんとか読みましたら「徳富蘇峰」氏の書でした。

鑑定書も証明書もないので真贋のほどはわかりませんが、

とりあえずネットで検索した落款や筆跡はおんなじです。

好きにしてって言ってたけどいいのかしらん…で確かめましたところ「いいんだって、好きにして」。

ありがたいけれど、どうする?これ…。

ちなみに掛け軸は本紙(真ん中の絵とか書の修復もできますし、掛け軸事全部補修してもらえます。

でもねぇ、高いんですよ、ほんと。素人ですからピンキリのピンの方の価格だったらと思うと、

修復も考えてしまいます。自分でやるキットと言うのもあるんですけど、

徳富先生の書を私が…ムリムリぜーったいムリ。

というわけでしばらく手元に置いて、どれをどうするか、またまた考えます。

 

我が家はすっかり物流センターと化しておりますが、持ち込まれる着物はもちろんのこと、

古い道具やこういう軸物などがあると、ついついワクワクしてしまう私です。

さてさて、お天気が続いてくれるようになったら、このお軸も少し風に当てないとです。

暑くなくて湿気がなくて、スッキリ晴れる日、来週みたいですねぇ。

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