ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ひっぱり

2010-02-27 15:52:57 | 着物・古布
嫁入りの時に、自分で作って持ってきたもの。
袂を少しゆったり作り、着物の袖がゆるく入るようにしました。
それで近所の買い物などにだけ使っていたので、ほとんど傷んでません。

このごろ「ネチネチ」と書いてしまっていることに、ちと反省!?
でも本日もしつっこーく「ちゃんと教えて」「ちゃんと知って」「ちゃんと伝えて」
というとんぼのオネガイ記事です。??

いやー、よそ様のブログで「水屋着」という言葉を久しぶりにみつけたのですが、
なんかごちゃごちゃになってまして「はんてん」「割烹着」という言い方も出てくる…。
しかも、こういうものも販売されているんですね。
私の中では、つまり母親の仕込みではってことですが、こうなってます。

はんてん…前はまっすぐで重ならない、袖口は普通の着物の感じ。
綿入れ……はんてんに綿の入ったもの。
ひっぱり…前が道中着のように着物の打ち合わせで紐がついていて結ぶ。
      袖口は普通の着物と同じ。丈はお尻が隠れるあたり。
      水使い用は袖口ゴム
水屋着……引っ張りの丈の長いもの。私のはひざ下まであります。
割烹着……後ろで結ぶ和風のエプロン、袖口はゴム。
作務衣……上下揃いで袖口と裾がゴム入りのもの。

こうなんですが…。さまざまな記事を読んでいると、
「作務衣」がひっぱりになっていたり、ひっぱりが水屋着になっていたり、
水屋着かと思うようなものが「丈長めのひっぱりです」とあったり。
なんと販売している呉服屋さんまでが、いろいろだったりします。
地方地域によって、ひっぱりと水屋着の区別はないんでしょうか…。
作務衣は、比較的新しい時代のものですが、元は「僧侶の作業着」、
つまり「上下一揃い」、宗派や格(僧としての)で、上だけ長いものもあります。
本来は、袖も裾もゴムではなく紐でしばるものでした。

あるサイトで「最近若い女性が、作務衣のようなひっぱりとお揃いのもんぺを着る。
着物より手軽でラクなので、はやっている」みたいなことがかいてあり、
紺地の絣の上下を着て、こぎれいなお店で買い物をしているところが写っていました。
近所に買い物籠さげて…ではなく「しゃれたショッピング」です。
どう見たって普段家で着る「部屋着」「家庭着」…。
これでしゃれた店へ買い物に行くんだーと、ちょっと唖然としました。
ひっぱりとはんてんは別でしょうし、作務衣はあくまで「家庭着・仕事着」だと思います。

新しいものを早急に消化しにくいのが和装の世界ではありますが、
いい加減になってしまうと説明にも困ります。
元々「水屋」というのは「水のあるところ、使うところ」で、
神社の手を洗う場所も「水屋」ですし、一般家庭でも台所を水屋といい、
今は「食器棚」とか「食器収納」とか言われていますが、
昔は台所の食器棚を「水屋」と呼んでいました。関西では今も言うでしょう。
どっちにしても「台所」ですがな。
前出のきれいな「友禅柄」なんてのが出てくると、
まぁちーっと「くくり」というものが変わっていくんだな、とは思います。
ただ、単純に考えて、なぜ着物文化のなかでひっぱりは木綿やウールで、
縞や絣などの色柄なのか、です。
つまり「あくまで、おウチ着、お仕事着、働き着」だから、なわけです。
私、この友禅ひっぱり、きれいでかわいいと思いますよ。
でも、本来は「ひっぱりにはありえない色柄」なわけです。
こちら、母が送ってくれたひっぱり、黒衿を掛けてくれました。
少し厚手で「防寒」にもなります。


        



そんなこといいじゃない…なんでしょうかねぇ。
私だって、洋服生地でひっぱりもいいと思ってますし、
ポリという洗える素材がでた今の時代、かわっていくのかなとも思います。
ただ、いつもいいますが、ちゃんと見極めていくことは「着物」というものを
ちゃんと伝えていくために、大切な要素だと思うのです。
何より、これもいつも言うことですが、
いろいろなことがまったく伝わらなかった着物というもの。
今新たに着物を着ようとする人にとっては、
着物は過去からつながってきたものではあっても、当人には「まったく新しいもの」です。
知識ごと、習慣ごと、いわれごと、伝えていかないと、
着物は形だけ残って、まったく別のものになっていくような気がするのです。

友禅のひっぱりで「ちょっとしたお出かけにも最適」…。
ちょっとしたおでかけって?「おでかけ」の範囲も、30年40年前とは違います。
私の子供のころは「おでかけ」といえば晴れ着を着て電車に乗ってデパートへ…という
いわばイベントでした。今は車でちょっと郊外のファミレスに行くのもおでかけです。
例え友禅柄ではなやかであっても、袖口にゴムの入った「働き着」で、
「今日はどこまで行ったやら」になってしまうのではないかと、危惧するわけです。

袖口にゴムが入る…というのは、その分「家」に近くなる、ということです。
たとえば、ウエストゴムのパンツ、私はずっとお世話になっていますが、
家の中にいるときのものは、それこそパジャマのような細いゴムが入り、
ウエスト全体にギャザーができるようなものですが、
外に出るときはベルトタイプのゴムで、脇の少し後ろ辺りに、
ちょっとギャザーが入っているような、つまり前からパッと見たら、
普通のパンツに見えるもの、を穿きます。これがおばさんなりのオシャレであり、
また人に「あ、部屋着、普段着」と感じさせないための工夫です。

オシャレって、自分が楽しむものではありますが、人に対しての心遣いも必要です。
普段なんだからなんでもいいじゃん、と言われればそれまでですが、
たとえば「友禅柄のひっぱり」をきれいだわ便利だわ、で着て、
本来の「着ていく範囲」を越えてしまって気づかなかったら…
なんて余計な心配をするわけです。
何でもそうですが、メリハリというものは大事だと思うのですよ。

私がよく見る「世界ふれあい街歩き」という番組で、
ヨーロッパの山間の街のリポートがあり、街の中に「民族衣装専門店」がありました。
その街ではお祭りや行事には、みんな民族衣装を着るのだそうです。
女性は決まりごとのあるドレス…男性は皮の半ズボンにチョッキが伝統衣装…。
チロルっぽいカッコ…ですね。そのズボンがずらりとならんでいました。
店主が「この皮のズボンを穿くときは、下着を着けないんだ」と言いました。
「えっパンツ穿かないの?」ですよね。なんかこすれて痛そうな気がします。
「旅人(リポーター」が「何で素肌にじかなのか」と聞いたら、
店主はこともなげに「それが昔からの決まりだから」、そんな意味のことを言いました。
伝統ってこういうことだと思うんです。理由がしっかりあることもあるし、
すでになんでだかわからない場合もある…でも「ずっとこれでやってきた」なんですね。

もしかしたら、そのうち「いくら伝統でも衛生的に…」だとか、
実際、皮のズボンが硬いのか柔らかいのか、その肌触りも知りませんが
「やっぱり痛いよね」なんてことで、いつの日か、
みんなが下着をつけるようになるかもしれません。
でも、あの街のように「必ず民族衣装を着る」という習慣が続き、伝統が守られ、
民族衣装店(けっこう大きなお店でした)が当たり前に存続していくようなところなら、
将来「なんだおまえは下着つけてるのか、ワシなんぞ今でも穿いとらん。
イマドキの若いモンは…」なんてことがあったり、
「君のおじいさんが若いころはね、パンツはナシだったんだよ」なんてことがあったり。
そうやってちゃんと「経過」ごと全てが「伝わって」いくとおもうのです。
モノはポリに代わろうと、柄が友禅にかわろうと、
大切なのは「そこ」だと思うのですよ。









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12 コメント

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Unknown (ゆん)
2010-02-27 16:48:10
 こんにちは。「ひっぱり」「水屋着」愛用者(笑)です。

 このサイトは私も見ました。水屋着じゃなくて、ちりよけのようなものかと思いますよね・友禅調で・つるつるポリで。

 
 着分けることって 大事だと、娘たちにはしつこく言います。車生活で、つい「上着なし」で 表へ出てしまうんです。

 内と外の区別だけはしないといけないと思います。だから、「(用事に合わせて)何か 羽織りなさい。」と…。
 
 引っ張りは、近くのスーパーと、もう一つ。お医者さんにかかるときにも、重宝してます。いろんな方に 手間をとらせたくないので。
 …一応、いいのを着ていくんですけど…全くの自己満足ですね(笑

 「ネチネチ(?)」記事、楽しみにしています!
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Unknown (陽花)
2010-02-27 19:44:55
ひっぱりとか水屋着は家で洗濯ができる
生地で、用事をするが前提ですからね。
この友禅柄の水屋着として売られているのは、どうみてもひっぱりですね。
水屋着はひざ下以上の長いものを言いますよね。
こんな風に言い方が色々になってくると
お若い方は余計混乱してしまいますね。

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キッチンコートと水屋着 (こいけ)
2010-02-27 20:14:14
昭和40年代以降でしょうか、普段着用の木綿反物は「キッチンコート地」と称して販売されていませんでしたか。キッチンコート=ひっぱりでしょうか。

茶道を始めたら、水屋仕事の際に羽織って着るもの(つまり割烹着以外)を水屋着と呼んでいました。昔は長さはいろいろでしたが、そのうち茶道具屋で対丈の色無地ポリの「水屋着」が販売され始めましたね。全身覆うと便利なので、キッチンコート地で対丈水屋着を作ったり、着なくなったポリやウールの着物の袖と裾を切って改造して水屋着にしたりしています。
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Unknown (りのりの)
2010-02-27 23:09:10
普段は着物で家事をすることはないので必要ないのですが
お正月に実家にいくときは割烹着を着ます。
かわいい木綿地でつくってそれはそれで気に入ってますが来年は水屋着をつくることにします。
とんぼさんのブログみていて最初はひっぱりをつくろうとおもってましたが、丈が長いほうがいいから長めにしようと思っていたところ、その長いのは水屋着というのですな。
さらに皆さんのカキコミを読んでいてそうか、着ないウールやポリの着物ちょんぎって作れば早いじゃん・・・とおもいました。
いやー、ためになるわ、とんぼさんのブログは。
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なるほどー (チヒロ)
2010-02-27 23:27:42
きもの初心者なので、長着の上に羽織るものの区別がわからんちーん、だったのですが、とってもためになりました♪

「ひっぱり」って「うわっぱり」とも呼んだりしますかね?うちの母はそう言っていたような・・・。上にひっかける的なものかしら。

最近はおでかけという定義もすごーくあいまいですよね。田舎住まいの私にとっては、近隣のモールに行くにもほんとに「おでかけ」で、デパートになったら「いいの着ていこうかな」って感じです~。
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うちの方では (わの字)
2010-02-28 14:59:36
ひっぱりも聞いたことはあるけど、「うわっぱり」「四つ紐」が一般的な言い方でした。
九州です。
ついでですが、どてらと丹前の名称の区別は西と東でかわるんでしょうか?
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Unknown (とんぼ)
2010-02-28 17:05:00
ゆん様
「着分けること」「ウチと外の区別」って、
普段の家庭着がつぎはぎ?だったりしたせいか
うるさく言われた気がします。
「上、着替えて行き!」なんてよく言われました。

ネチネチと…へへっがんばります。
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Unknown (とんぼ)
2010-02-28 17:06:35
陽花様
さんざんお世話になりましたわ。
袖口のゴムも入れ替えて…。
耐久性がないと、ただのおしゃれ着ですね。
なんだかいろんなことがあいまいで、
自分の知ってることが、間違ってるのかと
不安になります。困ったものですね。
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Unknown (とんぼ)
2010-02-28 17:10:10
こいけ様
はい、今日の生地にもかきましたが、
洋風モダンに感化されて、
なんでもアチラ風にしたんですね。
「キッチン・パラソル」と同じです。

水屋着は、作動からでたもののようですから、
長くないと、着物の保護になりませんよね。
私のは母が久留米絣の反物をもらったからと
作ってくれましたが、古着利用で作れますし、
元々、そういうものでいいと思うんですよ。
ポリなんか最適ですよね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-02-28 17:11:28
りのりの様
今日の記事に「作る方のこと」を書きました。
ご参考になるといいのですが…。
カンタンにつくれるものですから、ずぇひ!
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